あなたの燃える左手で の商品レビュー
某本紹介インフルエンサーの方の紹介で気になって手に取った本です。 自分の勉強不足で、途中まで読むのが少しキツかったのですが、読み切れたことで、自分の狭い世界が一回り広がったような感覚を覚えています。 キツかった理由、それは自分が日本で生まれ育った生粋の日本人であるからに違いあり...
某本紹介インフルエンサーの方の紹介で気になって手に取った本です。 自分の勉強不足で、途中まで読むのが少しキツかったのですが、読み切れたことで、自分の狭い世界が一回り広がったような感覚を覚えています。 キツかった理由、それは自分が日本で生まれ育った生粋の日本人であるからに違いありません。 隣接する国を奪うこと、奪われること、奪われる痛み、取り返したいという渇望、不可逆な現実への絶望。領土を奪い合う複雑な歴史を紡いできたヨーロッパ諸国のような土地で生きる人々の意識に当然のようにあるナショナリズムの強靭さ。これらの感覚を心の底から理解できる日本人がどれほどいるでしょうか?恥ずかしながら、自分自身、北方領土問題や竹島問題などのニュースも全く危機感なく眺める程度のものです。でも、同じような人は多いのではないかなと思います。 この本ときちんと向き合うために、中ほどまで読み進めた段階で一度読書から離れ、ウクライナ、ハンガリー、ロシア、クリミアの歴史をざっと学びました。これが大正解で、登場人物たちの抱える葛藤や、アサトの手が理不尽に奪われたことに込められた物語的なメッセージを深く理解することが出来たと思います。 序盤で読むのがしんどくなって来た方、軽く歴史の勉強をしてみるのをオススメします。
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「国」に対する意識、その境界を侵されるということ。おそらく現代日本では想像しがたい事象を、そんなふうに喩え表現するのかという衝撃。出会えてよかった一冊。
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ハンガリーの病院で内視鏡技師として働くアサトは、とんでもない誤診の結果、左手を手首から失ってしまう。何年もの間、幻肢痛に苦しめられた彼は、他人の左手を移植する手術を受けるが……。 現役医師である朝比奈さんならではの作品である。理不尽に体の一部を奪われ、さらに他人のパーツにすげ替え...
ハンガリーの病院で内視鏡技師として働くアサトは、とんでもない誤診の結果、左手を手首から失ってしまう。何年もの間、幻肢痛に苦しめられた彼は、他人の左手を移植する手術を受けるが……。 現役医師である朝比奈さんならではの作品である。理不尽に体の一部を奪われ、さらに他人のパーツにすげ替えられた主人公の苦しみが全篇を覆う。 そして、ロシアによるウクライナ侵攻直前という時代設定、地続きであるハンガリーとの歴史や国民感情、冒頭に置かれた自爆する女性の謎などが重層的に絡む。
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クソほど読みにくい文 最初、読んで合わないと思ったら 離脱したほうがいい 人体と国家は同じだとでも言いたいのかね 興味が持てない体の描写も多く とても、つまらなかった
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とてもとてもわかりにくくてしんどかった作品でした。 難しいわけではなく、とにかくよくわからなかった。
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圧倒されちゃった! 左手を移植したことによって、肉体的、精神的にも境界が曖昧になっていくような話。 手術後の他人の手との接合部をウクライナ国境に例えているところ、意識の視野が広げられていくようで面白かったです。 でも、ちょっと難しいね。
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苦手なんだよなこの類の本… なんて読み始め15分くらいで思ってしまったので、せめてざっくりでも読み終えようなんて思ったら、読み進めるうちにいや面白いなと思って読んでました笑 国境と手の移植による境目の比喩っていうのかな?これがすごく面白かった。改めて日本という島国に生きる人間...
苦手なんだよなこの類の本… なんて読み始め15分くらいで思ってしまったので、せめてざっくりでも読み終えようなんて思ったら、読み進めるうちにいや面白いなと思って読んでました笑 国境と手の移植による境目の比喩っていうのかな?これがすごく面白かった。改めて日本という島国に生きる人間として考えたけど、確かにどの国よりも何も受け入れてこなかった国と言われればそうかもしれないし、一見謙虚なようで、つまり、ひどく傲慢なのだ。という表現は腑に落ちるとこがあるなと感じた。 読んだ後には国外での手の移植について調べて、面白いな〜と色々ネットの記事を読み漁りました笑
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
誤診によって左手を切断されたアサト。幻肢痛が一向に改善されないため、異国の男性の手を移植する。しかしその手はアサトになかなか順応しなかった。 本作のキーワードは「境界」である。 上記のあらすじを見るとその「境界」は日本人の体と移植されたハンガリー人の体を指すと思うだろうが、本質は国にある。 目が覚めたらいつも通りにあるものである身体、そして国。それがある日、突然奪われる。 島国である日本に住むわたしには少し想像しにくい事柄だった。だからこそ朝比奈さんは身体の境界を国の境界のように見立てた本作を執筆したのだと思う。 そうすれば少しだけでも、その恐ろしさや痛みが理解できるような気がするから。 アサトはウクライナ人の妻・ハンナを持つ。そして彼女はロシアとの戦争の中で亡くなった。現実とリンクしているのである。 ハンナは自分の住んでる場所を他国の奴に取られたと怒る。そして元々住んでた人も別国の人間になったと嘆く。誰彼が可哀想だとかなんだとか大義名分を掲げるが、ゾルタンが「怒れ怒れ。それが国境を押し返す力だ」と言うように結局怒りが行動の源であり、戦争の核心なのだろう。 終始、題名の意味を考えていた。 「体の全ての細胞が左手を拒絶して燃えていた」と本文にある。 題名の『あなたの燃える左手で』って誰目線なのか、そして燃える左手で何をするのだろうか。拒絶するのか。受け入れるのか。もしくは他の答えか。
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無意味な切断による幻肢痛から始まって、臓器移植と違い肉眼で確認できる左手の移植。異物に対する違和感と不快感と拒絶感と、そこからの受容までの葛藤と苦悩の顛末がとても新鮮で生々しくてワクワクしながら読んだ。
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ヨーロッパの映画にありそうな感じ。と思っていたらばどうやら著者は"頭に浮かんだ映像やイメージを書く"タイプらしい(クロワッサンオンラインのインタビューより)。女性人物の視点の短い冒頭に警戒してハラハラしていると、あっさり、手を移植され目覚めるアサトのお話が始ま...
ヨーロッパの映画にありそうな感じ。と思っていたらばどうやら著者は"頭に浮かんだ映像やイメージを書く"タイプらしい(クロワッサンオンラインのインタビューより)。女性人物の視点の短い冒頭に警戒してハラハラしていると、あっさり、手を移植され目覚めるアサトのお話が始まる。映画みたいなシーンの切り替え。 専門的なことが書かれているけれど(手オタク医師・ゾルタンが関わると特に)、読みにくさはなかった。 個人的には、アサトが「どこも島国であったなら」と思う、そのささやかな数行で涙してしまった。妻がいて、手がなくなって、仕事が変わって、手を移植して、リハビリをして、苦しんで、でも生きていること。ラストも私は好き。 仕事場の方におすすめされて、読んでみて良かった。 20240109
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