あなたの燃える左手で の商品レビュー
作品としては素晴らしいのかと。 短い中に色々な要素が含まれ、文字数少ない割にヘビーな印象。 ただ、戦争と、切り離された手と、その再生手術後のメンタル面や本人、医師描写がグロすぎて少し苦手。 視点とコロコロ変わる主語に翻弄され、またハンガリーやウクライナが舞台なのに、会話が大阪弁風...
作品としては素晴らしいのかと。 短い中に色々な要素が含まれ、文字数少ない割にヘビーな印象。 ただ、戦争と、切り離された手と、その再生手術後のメンタル面や本人、医師描写がグロすぎて少し苦手。 視点とコロコロ変わる主語に翻弄され、またハンガリーやウクライナが舞台なのに、会話が大阪弁風や、京都弁風と個性的… ハンガリーの医学界に日本他、外国資本が流れるよう授業料があまり高くないような話を聞いたことがある。作者が関係者なのか?ウクライナの侵略に胸を痛めて舞台にしたのか?なぜ東欧なのか?そこら辺を知りたいと思った。 ゾルタンは紙っぺらを一枚差し出した。病理検査結果と書かれた紙の中程に、切断された左手の写真、その横には病理結果:線維性骨異形成と載っていた。 端的にいうとね、肉腫ではなかったのだよ。ただの良性の骨の異常でね、手を切断する必要などなかった。… p.56 つまりは、この移植は失敗かもしれなかった。思えば、常に自我を押しだすことによって保たれる国境線、それを持たない人種にこの移植の適応があるとは到底思えなかった。他人の手が繋がるという意味すら、DNAや民族的な肌で理解できなかったのだ。p.146
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他人の手を移植した人の葛藤の話。 文章に熱が籠もっているようで、読んでいると沸々と伝わってくるものがあった。移植した手と自分の腕の境界の関係を、自国と他国の境界に例えるのが面白かった。 現実と妄想がごっちゃになりよくわからなくなる。
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朝比奈秋、3冊目。作品としては一番荒削りかもしれないが(構成やテーマ、それに対する回答など)、私は本作が一番好きだ。端正にまとまっていない、言語化しきれていない、繋がりきれていない、かもしれないが、それでも私は最も心を動かされた。 前作2作品は日本での医療を取り扱ったものであり、それはそれで新しい視点を提供されて面白かった。一方で、今回はウクライナ侵攻が起きる中、ウクライナ人を妻にもつハンガリーで働く日本人看護師・アサトを主人公に、誤診により切断された手、その後移植された手を、国境や領土を巡る紛争と同化のプロセスになぞらえると、場所もテーマも大きく転換したというか、拡大した、著者にとっても意欲作なのだと思う。勝手にその意気やよし!と思ったし、こうして実際にウクライナ侵攻が起きている現在に、こういう形でその現実に向き合うこともありうるということをよく示してくれた一作だと思う。 本は一人のウクライナ兵の自決の場面から始まる。なぜこの人は日本のことをここまで詳しく知るんだろうと言ったささやかな疑問や、「隣に座る夫の、透明になった左手を撫でた」という文章などは、その後に続くアサト視点、そして途中から医師ゾルタンの視点の物語を読んでいるうちに忘れていた。全て読み終わった後に、もう一度読み直して、震えた。ああこれはやっぱり紛れもなくハンナだったんだ、と。途中で腹が空洞になった死体を「ハンナ」だという義父とのシーンが入るが、その時点では、アサトに記憶障害が起きていることは、アサトが信頼できない語り手であることはわかっていないので、義父が認知症の症状から言っているだけという言葉を鵜呑みにしていた。 時間軸も、記憶も、うまい具合に胡乱に書かれているので、まさに術後のアサトの混乱状態で読めるのは、うまいなと思った。 それからハンナが大阪弁で喋ったり、リハビリを担当する理学療法士の台湾系フィンランド人の雨桐は"はんなり"と京都弁で(と認識したんですが笑)書かれているのは面白かった。私は他言語を喋るときにスイッチが入って、その言語の自分になり、性格や喋り方も少し変わり、アクセントを日本語に喩えて考えたことがなかった。こういうふうに聞こえる人もいるかもしれない、それは面白いなと純粋に思いました。 身体の境界線を国家の境界線に例えて、手の移植を取り扱ったことについては、アイディアとしては面白いと思った。けどちょっと消化不良、という感じ。 「今、ふと思いついたんだがね。日本が手の移植を行わないのは、日本に国境がないからなんじゃあないかな」 「国境?」 「そうさ。日本は他のどこの国とも繋がってはないだろう?」 … 「妻にも言われたことがあるよ。国境がないというのはどんな感覚なんだと、付き合った当初にかなりしつこく訊かれたっけ」(p.126) 「あのね。免疫とは他者に対する寛容性のことなのだよ。持論になるがね、免疫の寛容性は常に自我の容認性と密接に関連している。人種による自我の違い、特にヤパァナの自我の在り方は我々とは全く違うんだ。移植後の腫れぐあいから、リハビリの進みぐあいから、全く違う。君も彼の経過を見れば、自我と免疫が強く関係しているとわかってもら、」…今までの医療が、肥大化した自我を守るために病気になった身体の部分部分を切り落としてきたのだとすれば、移植は他者の一部を受け入れて自分の自我を削ぎ落とすものであるかもしれなかった。(p.152, 154)
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ハンガリーの外科医によって、左手を失った日本人患者に他人の手を移植手術する場面を軸に展開される話。 他人の手の移植にあたり、日本人は終始微笑して受け入れているように見えるが、徐々に本人にも耐え難い術後拒否反応が繰り返されることになる。 その反応を比喩として、ハンガリーの外科医は...
ハンガリーの外科医によって、左手を失った日本人患者に他人の手を移植手術する場面を軸に展開される話。 他人の手の移植にあたり、日本人は終始微笑して受け入れているように見えるが、徐々に本人にも耐え難い術後拒否反応が繰り返されることになる。 その反応を比喩として、ハンガリーの外科医は、日本人は健やかに笑っていているように見えても、何も(外国人を)受け入れない国民性に結びつける。 さらに、移植した手と本人の腕の境目を国境に見立て、日本人は四方に他国との国境があるヨーロッパとは異なり、似た者だけで排他的に暮らしながらも、自分たちは心優しい人種と思い込んでいる無知で幼稚な国民との印象を受ける。(移植した手を体が受けつけないことから連想したものと思われる。) 読む人により、かなり賛否が分かれると思いますが、その考えには自分自身にも思い当たる節が所々にあり、痛いところをつかれるような思いでした。
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この本はかなり描写が大人だった。難しくてあんまり覚えてない。 自分の体が自分のものでは無いような感覚になるのは当たり前だし、医療技術が発展すれば近い将来でも有り得るようになるのかなと思う。
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正直言って内容の3分の1ほどしか理解できていないと思う。 そもそも他人の手をそんな簡単に移植できるのもなのだろうか。 それも赤の他人で国すら違う人間のものを。 途中拒絶反応的なものが起きる場面があったが、 あくまでも精神的なものの影響というか、 自分の中での葛藤がありそこに打ち勝つことと 現実を直視することができるようになったことで収まったのか、 妻の死も自分の腕についても受け入れて生きていく。 …という解釈でいいのだろうか。 「日本人は寛容なようで実はとても閉鎖的」というのは 自分自身納得してしまい思わずフッと声がでてしまった。 ここだけは深く同意。 腕を移植されたことと国境のことや内戦のことがごっちゃになっていて これが理解できないというのはやはり私が島国育ち、 しかも平和な日本人だということが関係しているんだろうなと思った。
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外国人の登場人物の訛りを関西弁など日本の訛りの表現に置き換えているのが面白かった。 現在の話と過去の話がバラバラに出てくるのに意味があったのを終盤で知る。すごい構成。 国境や領土について、日本で生まれ育った自分には思い至れなかった感覚が書いてありハッとさせられた。ウクライナのこと...
外国人の登場人物の訛りを関西弁など日本の訛りの表現に置き換えているのが面白かった。 現在の話と過去の話がバラバラに出てくるのに意味があったのを終盤で知る。すごい構成。 国境や領土について、日本で生まれ育った自分には思い至れなかった感覚が書いてありハッとさせられた。ウクライナのこともっとよく知りたいと思った。 以前に「植物少女」を読んだ時も感じていたが、この方の感情の描き方がすごく好きだ。登場人物が抱える複雑な感情が読者にストレートに伝わる感じ。文章がうまい……。
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左手の移植をメタファーに、国の併合への苦しみを描いている。国境線のない日本人と常に領土争いに巻き込まれてきた東ヨーロッパの人々の意識の違いを肉体感覚の深い部分で抉ってくる。 最初の意識が朦朧した状態から、徐々に現状が明らかになるストーリー運びもうまい。妻への電話も埋められない喪失...
左手の移植をメタファーに、国の併合への苦しみを描いている。国境線のない日本人と常に領土争いに巻き込まれてきた東ヨーロッパの人々の意識の違いを肉体感覚の深い部分で抉ってくる。 最初の意識が朦朧した状態から、徐々に現状が明らかになるストーリー運びもうまい。妻への電話も埋められない喪失感として左手への幻肢痛とともに描かれてて、なんとも言えないもの悲しさを感じた。 読後感は良くないが、戦争や自国が奪われることの理不尽な不気味さを肌で感じることができるすごい作品だと思う。
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ロシアのクリミア併合、並行してハンガリーによるウクライナ西部の制圧、実際起こり起こり得ることを、日頃からの西ヨーロッパ目線と対比して考えるチャンスとなった。
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«左手の移植»に詰まった著者の平和への願い。島国に住む日本人の国民性や、この世界の現状を«左手»を中心に巡り描いた祈願と受け止めた。受け止めるだけで次への有益な行動に移れぬのがもどかしい。純文学はメッセージ性が強いから弱った現在の身にはキツイけれど、今作は150ページを越えた辺り...
«左手の移植»に詰まった著者の平和への願い。島国に住む日本人の国民性や、この世界の現状を«左手»を中心に巡り描いた祈願と受け止めた。受け止めるだけで次への有益な行動に移れぬのがもどかしい。純文学はメッセージ性が強いから弱った現在の身にはキツイけれど、今作は150ページを越えた辺りからのめり込んでしまった。ちょっとしたホラー要素はあるものの移植した左手と会話するファンタジーではない。そこは現実的。とても惹き付ける因子を持った作風。気になるなぁ。
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