あなたの燃える左手で の商品レビュー
苦手なんだよなこの類の本… なんて読み始め15分くらいで思ってしまったので、せめてざっくりでも読み終えようなんて思ったら、読み進めるうちにいや面白いなと思って読んでました笑 国境と手の移植による境目の比喩っていうのかな?これがすごく面白かった。改めて日本という島国に生きる人間...
苦手なんだよなこの類の本… なんて読み始め15分くらいで思ってしまったので、せめてざっくりでも読み終えようなんて思ったら、読み進めるうちにいや面白いなと思って読んでました笑 国境と手の移植による境目の比喩っていうのかな?これがすごく面白かった。改めて日本という島国に生きる人間として考えたけど、確かにどの国よりも何も受け入れてこなかった国と言われればそうかもしれないし、一見謙虚なようで、つまり、ひどく傲慢なのだ。という表現は腑に落ちるとこがあるなと感じた。 読んだ後には国外での手の移植について調べて、面白いな〜と色々ネットの記事を読み漁りました笑
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
誤診によって左手を切断されたアサト。幻肢痛が一向に改善されないため、異国の男性の手を移植する。しかしその手はアサトになかなか順応しなかった。 本作のキーワードは「境界」である。 上記のあらすじを見るとその「境界」は日本人の体と移植されたハンガリー人の体を指すと思うだろうが、本質は国にある。 目が覚めたらいつも通りにあるものである身体、そして国。それがある日、突然奪われる。 島国である日本に住むわたしには少し想像しにくい事柄だった。だからこそ朝比奈さんは身体の境界を国の境界のように見立てた本作を執筆したのだと思う。 そうすれば少しだけでも、その恐ろしさや痛みが理解できるような気がするから。 アサトはウクライナ人の妻・ハンナを持つ。そして彼女はロシアとの戦争の中で亡くなった。現実とリンクしているのである。 ハンナは自分の住んでる場所を他国の奴に取られたと怒る。そして元々住んでた人も別国の人間になったと嘆く。誰彼が可哀想だとかなんだとか大義名分を掲げるが、ゾルタンが「怒れ怒れ。それが国境を押し返す力だ」と言うように結局怒りが行動の源であり、戦争の核心なのだろう。 終始、題名の意味を考えていた。 「体の全ての細胞が左手を拒絶して燃えていた」と本文にある。 題名の『あなたの燃える左手で』って誰目線なのか、そして燃える左手で何をするのだろうか。拒絶するのか。受け入れるのか。もしくは他の答えか。
Posted by
無意味な切断による幻肢痛から始まって、臓器移植と違い肉眼で確認できる左手の移植。異物に対する違和感と不快感と拒絶感と、そこからの受容までの葛藤と苦悩の顛末がとても新鮮で生々しくてワクワクしながら読んだ。
Posted by
ヨーロッパの映画にありそうな感じ。と思っていたらばどうやら著者は"頭に浮かんだ映像やイメージを書く"タイプらしい(クロワッサンオンラインのインタビューより)。女性人物の視点の短い冒頭に警戒してハラハラしていると、あっさり、手を移植され目覚めるアサトのお話が始ま...
ヨーロッパの映画にありそうな感じ。と思っていたらばどうやら著者は"頭に浮かんだ映像やイメージを書く"タイプらしい(クロワッサンオンラインのインタビューより)。女性人物の視点の短い冒頭に警戒してハラハラしていると、あっさり、手を移植され目覚めるアサトのお話が始まる。映画みたいなシーンの切り替え。 専門的なことが書かれているけれど(手オタク医師・ゾルタンが関わると特に)、読みにくさはなかった。 個人的には、アサトが「どこも島国であったなら」と思う、そのささやかな数行で涙してしまった。妻がいて、手がなくなって、仕事が変わって、手を移植して、リハビリをして、苦しんで、でも生きていること。ラストも私は好き。 仕事場の方におすすめされて、読んでみて良かった。 20240109
Posted by
受け入れがたい喪失、受け入れがたい存在。それと自分が地続きであること。それに人は向き合えるのか。耐えられるのか。特に地続きの国境を持たない私たちは。そんなことがテーマなのかなと思うが、何せ読みにくい。主人公の妄想が混ざるので致し方ない部分はあるが、せめて単なる場面描写や時系列だけ...
受け入れがたい喪失、受け入れがたい存在。それと自分が地続きであること。それに人は向き合えるのか。耐えられるのか。特に地続きの国境を持たない私たちは。そんなことがテーマなのかなと思うが、何せ読みにくい。主人公の妄想が混ざるので致し方ない部分はあるが、せめて単なる場面描写や時系列だけでもすんなり入ってくる書き方をしてほしい。
Posted by
※ 誤診で手を失い、その後、移植によって 手を得る主人公の深い深い内省が続く物語。 移植によって体内で起こる反応と戦争という 名の国同士の奪い合いを喩えにして、 比較しているのは奇妙に感じられたけれど、 その癖妙にピッタリしているのが不思議だった。 何かを失うことや何かを受け...
※ 誤診で手を失い、その後、移植によって 手を得る主人公の深い深い内省が続く物語。 移植によって体内で起こる反応と戦争という 名の国同士の奪い合いを喩えにして、 比較しているのは奇妙に感じられたけれど、 その癖妙にピッタリしているのが不思議だった。 何かを失うことや何かを受け入れることを とても大きな規模で捉えて描かれていて、 難解で斬新な感じでした。 終始、息苦しさと胸苦しさで胸が重くなりました。
Posted by
こんな小説は初めて読んだ。 誤診で切断された左手。つなぎ合わされた白人の手が、自分を侵食していく。自分の体はそれを受け入れ、また拒否する。 移植の話だったのに、それはいつしか文化や民族の受容の変容とは何かという話へと移っていく。 舞台はハンガリー。執刀医はハンガリアンのナショナリ...
こんな小説は初めて読んだ。 誤診で切断された左手。つなぎ合わされた白人の手が、自分を侵食していく。自分の体はそれを受け入れ、また拒否する。 移植の話だったのに、それはいつしか文化や民族の受容の変容とは何かという話へと移っていく。 舞台はハンガリー。執刀医はハンガリアンのナショナリストのゾルタン医師。ゾルタンには日本人であるアサトが左手を受容できないのは、ヤワな島国独特のものに映る。 「宗教でも、文字でもなんでも受け入れるのが島国文化、などとほざいてはいても、陸続きの国境を持たない彼らにとって、他国の宗教や文化を受け入れることと、他国を受け入れることは常に別個なのだ。移民も頑なに受け入れていないところをみると、日本というのは実のところ、どの国より何も受け入れてこなかった国なのかもしれない。」 「大陸よりもはるかに矮小で、しかし、島国というには長大な、日本列島。小さな領土のふりをして、西ヨーロッパのほとんどの国よりも大きく人口も多い。ぼんやりとした領海に囲まれて国境を知らず、似た者だけで排他的に暮らしながらも、自分たちは心優しい人種と思い込んでいる無知で幼稚な国民…。」 しかしそのようにアサトを断罪するゾルタンもまた、偏狭なナショナリストなのだった。 アサトの手の受容への変化がゾルタンをも変えていく。 文化も歴史も習慣も民族も違う手を繋ぎ合わすという医師ならではの驚くべきモチーフで、分断された世界を表現する著者の発想と、完成度の高さに感嘆。 この人の他の著作も読みたいと思った。この人すごい。 この本も、賛否あるみたいだったが、豊崎由美のオススメだったので読んでみたが、やはり、豊崎の読書眼は流石。
Posted by
久しぶりに読後引きずる本だー。 重く、考えさせられる、内容だった。 「手の移植」と聞いて、ただ手術的なコトしかとらえていなかったけど、自我であったり、国民性(島国とかの)であったり、支配したりされたり、その辺の綴りが興味深かった。 ハンガリー、ウクライナ、ドイツ、ロシア、今起こっ...
久しぶりに読後引きずる本だー。 重く、考えさせられる、内容だった。 「手の移植」と聞いて、ただ手術的なコトしかとらえていなかったけど、自我であったり、国民性(島国とかの)であったり、支配したりされたり、その辺の綴りが興味深かった。 ハンガリー、ウクライナ、ドイツ、ロシア、今起こっているコトなのも、リアルな感じ。 読み初めはちょっと苦戦したけど、読むにつれ色々考えながらずっしり読めた。 最後の章がよかったー。
Posted by
自分の体の一部の喪失と ウクライナ、クリミア、ロシア周辺で起こっていること どこまでがほんとでどこまでが幻想なのか読んでて混沌として不思議な世界に迷い込んだ感じだった。 島国と大陸の国民性の違い、そういう見方したことなかったので新鮮。 異国の友人がいればそういう会話をする機会...
自分の体の一部の喪失と ウクライナ、クリミア、ロシア周辺で起こっていること どこまでがほんとでどこまでが幻想なのか読んでて混沌として不思議な世界に迷い込んだ感じだった。 島国と大陸の国民性の違い、そういう見方したことなかったので新鮮。 異国の友人がいればそういう会話をする機会があるのかなとか…妄想してる。
Posted by
大陸ヨーロッパと島国日本の風土が造る人間の性質の違いについての記述が興味深い。 ウクライナ紛争も絡んでいて、全体的に重く暗い空気に、読んでいる間中囚われる。が、おもしろく、やめられない。 私自身、後遺症で右腕に麻痺が残ったこともあり、身体の苦痛の表現に共感できる。 最後がよくわか...
大陸ヨーロッパと島国日本の風土が造る人間の性質の違いについての記述が興味深い。 ウクライナ紛争も絡んでいて、全体的に重く暗い空気に、読んでいる間中囚われる。が、おもしろく、やめられない。 私自身、後遺症で右腕に麻痺が残ったこともあり、身体の苦痛の表現に共感できる。 最後がよくわからなかった。本当は、私が今、理解していることはカケラで、もっともっと深い意味が表現されている、と思う。もう一度読み直してみたい。
Posted by