百冊で耕す自由に、なるための読書術 の商品レビュー
「三行で撃つ」で文章論を開陳したユニークな朝日新聞記者が、読書論を展開するのが本書だ。前著がアウトプット、本書がインプットにあたるが、本書のほうがぐっと面白いし、著者もノっている。 「読書はやみくもにしていいものではない。気の向くまま、自分の好みにあった本ばかり読んでいたら、じ...
「三行で撃つ」で文章論を開陳したユニークな朝日新聞記者が、読書論を展開するのが本書だ。前著がアウトプット、本書がインプットにあたるが、本書のほうがぐっと面白いし、著者もノっている。 「読書はやみくもにしていいものではない。気の向くまま、自分の好みにあった本ばかり読んでいたら、じつにつまらん人間になっていただろう(中略)自分が変えられる。わたしにとっては、それが読書の最大の目的だ」(p63) そのとおり。子どもをほったらかしにしたら、マクドナルドばかり食べてしまう。任天堂ばっかりやってしまう。やはり、無理して外へ出てみないといけない。 ではなぜ読むのか。安易に答えをみつけるためではない。 「自分の問いの、ほんとうの意味が<分かる> 自分なりの、現段階での答えが<分かる>。」 (p92) 「読書とは、答えや結論を得る方便ではない。読書とは、新しい問い、より深い問いを獲得するための冒険だ(中略)終着駅ではない。始発駅に立つために、本は読む」(p111) ここは実のノっている感じだ。 「他者とまじわること、環世界に適合しようとすること、「世界内存在(In-der-Welt-Sein)」であることこそ、人間の人間たるゆえんではないのか」(p220)ここはアレント「人間の条件」につながるところ。 本を読む、勉強するのは実にいいものだ。太宰もいっている。不勉強なやつとは、「むごいエゴイスト」(p230)だと。 「本を読むのは、結局、ずれるためだ。 世界を疑う。ばっくれる。生まれた時代、家庭の環境なんか、関係ねえ。過去の自分から、自由になる。本気 (マジ)になる。真剣(ガチ)でやる。人には冷笑させておけ。自分の可能性を縛らない。 ずれる方がいい。」(p287) さあ読むぞ。そういう気にさせてくれる。巻末のリストも参考にしよう。
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今を、ほんとうにいきている姿を感じさせる著書。カッコよさを自分に持ち、他者とは一線を置く、だけれども惹かれてくるものを受け止める寛容さが大きい。百冊読みたくなった。
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文章の達人だけあって、つかみが上手い。 「はじめに」を読んで、近藤さんってこういう面があったんだ、と驚き、一気に親近感が湧く。 アロハでサングラスは攻めた格好に見えるが、色々あってのやむにやまれぬ最終形であるのだ。(それは私たちの周りにもよくあることだ) そもそも自分も読書好き...
文章の達人だけあって、つかみが上手い。 「はじめに」を読んで、近藤さんってこういう面があったんだ、と驚き、一気に親近感が湧く。 アロハでサングラスは攻めた格好に見えるが、色々あってのやむにやまれぬ最終形であるのだ。(それは私たちの周りにもよくあることだ) そもそも自分も読書好きなので、この本とは最初から相性は多分いいわけで、すぐに近藤さんの読書の世界に連れて行かれた。 いい旅行だったー。 私塾の始まりのエピソードにびっくり。私も多分近寄っていくだろうな。遠巻きに見ていた人がワラワラと集まってきたのはよくわかる。 村上春樹へのダメ出しに唸った。そう、確かに! 私は外国語で読むのは無理だけど、近藤康太郎選の100冊は読んでみたくなった。読んでいない古典、いつか読もうと思っている古典にチャレンジする気持ちが沸き起こった。15分で次の本へ。これは同時並行で何冊も読む私も取り入れたい。私は今のところ、30分なのだけど、難しい本は15分と決めれば、読めるかも。 読み終わるのが惜しい本だったけど、読み終わった今、これからの読書に繋がっていくだろうと確信する。
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著者の前作『三行で撃つ』が好きだったので手に取った。著者の独特な(でも、普遍的でちゃんと効力を持つ)読書術が各章ごとに二節で記されているのだけど、著者自身も言っているようにそれぞれの項目が「A面、B面」で表現されていて、まるでレコードをひっくり返しながら読んでいるみたいだった。レ...
著者の前作『三行で撃つ』が好きだったので手に取った。著者の独特な(でも、普遍的でちゃんと効力を持つ)読書術が各章ごとに二節で記されているのだけど、著者自身も言っているようにそれぞれの項目が「A面、B面」で表現されていて、まるでレコードをひっくり返しながら読んでいるみたいだった。レコード、ひっくり返したことないけど。 読書はかっこつけでいい、という考え方が好きだなと思った。私も正直、読書する人はかっこいいと思っているから読んでいるみたいなところが少なからずあるし。みんなと違うことがしたいから本を読む、みたいな不良マインド、ちょっとはあるよね。それでもいいんだよなあ。 あとは読書と愛の話が興味深かった。本を読むことは孤独に耐えられるということで、それはつまり人を愛せるということ、らしい。今はまだぴんとこないけど、いつか納得するときが来るんだろうか。それとも私はすでにわかっていて、それに気づいていないだけなんだろうか。 それを知りたいからまた本を読む。誰かのためではない、私のために読む。 【読んだ目的・理由】著者の前作が面白かったから 【入手経路】買った 【詳細評価】☆4.4 【一番好きな表現】自分が入れる範囲までしか、自分の心に入って来ない。ひとたび入れようとするなら、どこまでも入ってくる。意味を拡張する。染み入る。繊細で、微妙で、薄味な悦びが、頭と心を満たす。気持ちを、逸らす。「いま/ここ」から、逃避する、罰せられざる悪徳・読書。(本文から引用)
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ナルシストな感じもあるけど文章が小気味よく、読みやすかった。本を読むことはかっこいいことだ、ズレていきたい、など読書家ならうなずける部分が多くあったと思う。 本を読むことは楽しいことだ、意味あることだと再認識できる本。 古典や外国語を嫁などちょっと自分とは合わない部分や極論もある...
ナルシストな感じもあるけど文章が小気味よく、読みやすかった。本を読むことはかっこいいことだ、ズレていきたい、など読書家ならうなずける部分が多くあったと思う。 本を読むことは楽しいことだ、意味あることだと再認識できる本。 古典や外国語を嫁などちょっと自分とは合わない部分や極論もあるかなって思ったけど、かなり面白く読めた。 話題になった3行で撃つの作者なので、そちらも是非読みたい。
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先日、英語で書いたものが読んでみたくなって、ペーパーバック版を買ってきました。たまたま、この本を読んだらおあつらえ向きの御指南内容がかいてある。真似できるかな?ちなみに、手に入れたのは、定番の、#N ineteen Eighty-Four#the Catcher in the R...
先日、英語で書いたものが読んでみたくなって、ペーパーバック版を買ってきました。たまたま、この本を読んだらおあつらえ向きの御指南内容がかいてある。真似できるかな?ちなみに、手に入れたのは、定番の、#N ineteen Eighty-Four#the Catcher in the Rye#Never Let Me Goです。
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近藤康太郎(1963年~)氏は、慶大文学部卒、朝日新聞社に入社し、川崎支局、学芸部、「AERA」編集部、ニューヨーク特派員等を経て、文化くらし報道部で「朝日新聞」の文化面、読書面、音楽面を担当した後、2014年より諫早支局長、日田支局長、天草支局長を歴任。いくつかの著書を持ち、社...
近藤康太郎(1963年~)氏は、慶大文学部卒、朝日新聞社に入社し、川崎支局、学芸部、「AERA」編集部、ニューヨーク特派員等を経て、文化くらし報道部で「朝日新聞」の文化面、読書面、音楽面を担当した後、2014年より諫早支局長、日田支局長、天草支局長を歴任。いくつかの著書を持ち、社内外の記者、ライター、映像関係者に文章を教える私塾を主宰している。 本書は、これまで膨大な読書をし、書いてきた著者が、「百冊読書家」になる、即ち、数限りない本の中から、自分にとってのカノン(正典)100冊を選べるようになるための方法を綴ったものである。 私は習慣として読書をし、読書論・術の類の本も、これまで、ショウペンハウエル、M.J.アドラー、小泉信三、田中菊雄、清水幾太郎、加藤周一、松岡正剛、ピエール・バイヤール、斎藤孝、佐藤優、小飼弾、成毛眞等による古今東西のものを読んできたが、本書は、読書の技術よりは、「なぜ本を読むのか」、「本を読むとはどういうことなのか」に重きを置いた内容となっている。 著者が、読書の技術の最終段階と位置付けているのは「抜き書きをする(そして、それを読み返す)」ことなのだが、それに倣って、印象に残った部分の幾つかを抜き書きすると以下である。 ◆「本棚の背表紙というのは、その人の脳を見せているようなものだ。・・・深みのある本棚を最初に作ってしまえば、その人は、いずれ深い人間になる。美しい本棚の持ち主は、やがて美しい人になる。本棚が人格を作る。」 ◆「「自分の好み」が変わっていくのでなければ、読書なんてなんのためだ、と思う。自分の好みが増える、好みの層が厚くなる。自分が変えられる。わたしにとっては、それが読書の最大の目的だ。」 ◆「個々の読書体験が、ふとしたことでつながる。<分かる>とは、そういうことだ。・・・<知る=follow>行為が堆積していって、<分かる=understand>が発火する。ある日、ある瞬間、「ユーレカ!(分かった!)」と叫ぶ。読書の楽しみといって、これ以上のものはない。」 ◆「読書とは、あらすじではない。・・・本を読むとは、本のシノプシス(梗概)を言えることではない。・・・むしろ、作品の<空気>を感じることが重要だ。本を読んでいたとき、どういう<空気>に包まれていたか。自分は何歳で、どんな環境にあって、どういう不安や悩みを持っていて、本を読むことで少し変わったのか、変わらなかったのか。自分が浸っていた<空気>を感じること。はっきり言語化できること。それが、「たしかに本を読んだ」というあかしだ。実感として何年たっても残る、読書の本体部分だ。」 ◆「読書とは、答えや結論を得る方便ではない。読書とは、新しい問い、より深い問いを獲得するための冒険だ。「問い」が、そのまま「答え」になっている。終着駅ではない。始発駅に立つために、本は読む。そして、問いを発見した人が、世界を変える。答えは、世界を動かさない。なぜなら、世界にも、人生にも、そもそも「答え」はないから。・・・人生に答えなどないと覚悟を決めたなら、その人生は<迷宮>である。答え、正解がない。そんな答えも包含する。飲み込んで、新しい問いを生ぜしめる。無限の宇宙。」 ◆「強い人とは、与える人のことだ。報いられることを求めない人のことだ。迫害されても、自分の人生を愛する。そのためには、ひとりきりでいることに慣れる。孤立を求めず、孤独を恐れず。本を読む。その、もっともすぐれた徳は、孤独でいることに耐性ができることだ。読書は、一人でするものだから。ひとりでいられる能力。人を求めない強さ。世界でもっとも難しい<強さ>を手に入れる。読書とは、人を愛するレッスンだ。」 ◆「<百冊で耕す>とは、ついに、人を愛せるようになるためだった!そして、人を愛せる人こそ、自分を幸せにする人だ。自分を愛するのが幸せなのではない。・・・幸せな人を、よく観察するといい。幸せな人は、必ず、人を愛している人だ。・・・なぜ、本など読むのか。勉強するのか。幸せになるためだ。幸せな人とは、本を読む人のことだ。」 読書について語りつつ、最終的には、人生とは何か、幸せとは何か、に行き着く、味わい深い一冊である。 (2023年6月了)
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ぐいぐいと引き込まれて、久々に一気に読みきった。自分を律するために、自分を耕すために、強くなるために、人を愛するために、本を読み続けたいと共感。古今東西、読みたくて読んでない本のなんと多いことか。本は読めば読むほど、読む前の自分を越えていくことを再認識。日々成長し続けたい。
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感想 本を読んで生活の糧を得る。良書を選出し、形式はどうであれ情報を貯蓄しておく。それだけでは不十分。自分の言葉で考える努力も必要。
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大量に読書する中で「自分にとっての百冊」を見つけながら、さらに抜き書き帳や暗唱カードでそれらを自分の脳内に吸収させていく。線を引く→ドッグイヤーをつける→抜き書きするという三段階の方法もそうだけど、「絞り込んで、深くインプットする」というその視点は自分も大事にしたいですね。
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