木挽町のあだ討ち の商品レビュー
時代小説は滅多に読まないけどこれは時代ものならではな設定ですね。芝居の基礎知識を持ってたらもっと面白く読めた気もするけど、大変堪能いたしました。
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時代小説をほぼ読んだことがない。しかし、直木賞候補作は発表までに読破したいので読んだ。 まだ5作中これが3作目だけど、「これかもしれない…」と思った。読みやすく、おもしろい。
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友人に「面白いよ!」と薦められた本です。登場人物のキャラが立っていて、場面も色彩豊かで、構成も論理的に積み重ねられていて、なるほど、評判になるのがよくわかりました。この気持ち良さ、それこそ歌舞伎のお芝居を見ているようなキレのいいケレン味みたいなものがあります。だからこそ、なんだか...
友人に「面白いよ!」と薦められた本です。登場人物のキャラが立っていて、場面も色彩豊かで、構成も論理的に積み重ねられていて、なるほど、評判になるのがよくわかりました。この気持ち良さ、それこそ歌舞伎のお芝居を見ているようなキレのいいケレン味みたいなものがあります。だからこそ、なんだか途中でストーリー見えちゃって、自分にはそこが難点だったかも。たぶんクリスティをオマージュしたような真相が、この小説の最大の見せ場なのですが、なんか惜しい気分です。でも作者が描いたのは推理小説の形を借りながら、「芝居」という芸術がいかに人生を豊かにするのか、というテーマである気もするのです。人の心を動かすファンタジーは、現実世界の矛盾を乗り越える知恵なのだ、という歌舞伎礼賛の想いを感じました。現実逃避ではなく、人生の灯りとしての歌舞伎の魅力が満ちあふれている小説でした。逆に、芸のファンタジーがリアルをインベージョンしたように見える最近の澤瀉屋の無残な出来事は、この小説が訴えている方向性の逆ベクトルに見えて、痛々しい気持ちになります。ファンタジーとドキュメントの境目の揺らぎ、芝居の持つ光と闇。そんなことまで考えてしまいました。
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一人語りでひとつの事件を描写するスタイル。 予想外の展開で面白かった。 読んでいる途中は今年出色の作品かとワクワクしたが若干のしりつぼみだった。時代小説風のミステリ
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雪の日の夜。赤い振袖を纏った若武者が、下男であった父の仇を見事に討ち取った。 赤い振袖の下には白装束。だが、仇の血に塗れて、それも朱く染まり、首級を持ち帰るその姿の勇ましさに江戸じゅうの話題となる。 その二年後、一人の若侍がそのあだ討ちのことについて、木挽町の人々に尋ね始める。なぜ、彼はそんなことを聞き出そうとしているのか? 最後の終章を含めて全六章。 最初は木戸芸者の一八。 次が武士から芝居の殺陣師となった浪人。 女形をしながら、役者の衣装の繕い物をしているもの。 仇を探す菊之助と共に住まう、小道具を作る夫婦。 そして、この芝居小屋で脚本を書いている元旗本。 最後の一人はネタバレになってしまいますので、ここではご遠慮させていただきます。 読み始めたら、これが面白くって♪ あだ討ちをしようとしている菊之助だけではなく、木挽町、いわゆる悪所で働く人々の姿がとっても素敵でして♪ 私のお気に入りは女形をしながら、衣裳部屋で繕い物をしているほたるです。その育ちもそうですけど、菊之助に生き方を教えてような気が私にはします。(それは彼に関わったすべての人がそうなんですけど) こういう潔い生き方っていいなと読みながら思っていました。 元々芝居小屋の話は好きなので、読んでいてとても楽しかったです。 直木賞、とってもおかしくない素敵な作品でした まだお読み出ない方は、どうぞ、小屋が込み合いませぬうちに、このあだ討ちの次第を楽しまれるとよろしかろうかと(*^^*)
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江戸時代に武士階級で慣習として公認されていた「仇討」。本文中では全てこの表記なのですが、表題は『あだ討ち』となっていて、何で? と思いましたが、最後にその訳が明かされます。 ネタバレは避けますが、「あだ」は「あだ」でも、かたきの意の「仇」とむだの意の「徒」があるのですね。読み...
江戸時代に武士階級で慣習として公認されていた「仇討」。本文中では全てこの表記なのですが、表題は『あだ討ち』となっていて、何で? と思いましたが、最後にその訳が明かされます。 ネタバレは避けますが、「あだ」は「あだ」でも、かたきの意の「仇」とむだの意の「徒」があるのですね。読み終えて納得しました。 芝居町の江戸・木挽町で、若い武士・菊之助が、父親を殺した元下男・作兵衛を討ち取る仇討がありました。それから二年、菊之助の縁者である武士が、木挽町の芝居の関係者に、仇討ちの話を聴いて廻る形で物語が進みます。 構成は、全五幕+終幕で、芝居町に生きる人々(木戸芸者、立師、女形、小道具職人、劇作者)によって語られ、その語り口調はあたかも芝居を観ているようで、惹き込まれます。 各幕で語られる、登場人物の芝居と関わるようになった経緯や人生の来し方が、各幕とも味わい深く、言わば苦労人ばかりです。だからこそ彼らが悲しい試練を背負った菊之助へ寄せる想いは、熱く強いんですね。とても爽やかな読後感でした。 題材としての仇討、芝居、展開での市井の人の語り口、ミステリー要素と、沢山の魅力の詰まった作品で、自信をもっておすすめできる一冊だと思いました。
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苦手な時代小説。 少し風変わりな構成で、とあるあだ討ちについて、1人の人物が関係者の話をそれぞれ聞いていく、という形式のみで進んでいく。 TPSでなくFPSのようなイメージ。(伝わってほしい。) 読むのに慣れるまで少し時間がかかるが、慣れてくるととても没入できる。 良い意味でシン...
苦手な時代小説。 少し風変わりな構成で、とあるあだ討ちについて、1人の人物が関係者の話をそれぞれ聞いていく、という形式のみで進んでいく。 TPSでなくFPSのようなイメージ。(伝わってほしい。) 読むのに慣れるまで少し時間がかかるが、慣れてくるととても没入できる。 良い意味でシンプルなストーリーで、流れるように読了しました。
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本屋のポスターを見て購入。 木挽町の芝居小屋前で赤い振袖を投げつけた白装束の見目麗しい若衆が大柄な博徒に名乗り、仇討ちを果たす。 仇討ちの主役、菊之助の縁者が芝居小屋の目撃者たちを訪ねていく。問われた方の一人語りという文体。 木戸芸者、役者のセリフの真似などする呼び込み役の一...
本屋のポスターを見て購入。 木挽町の芝居小屋前で赤い振袖を投げつけた白装束の見目麗しい若衆が大柄な博徒に名乗り、仇討ちを果たす。 仇討ちの主役、菊之助の縁者が芝居小屋の目撃者たちを訪ねていく。問われた方の一人語りという文体。 木戸芸者、役者のセリフの真似などする呼び込み役の一八。吉原の花魁の子に生まれ、幇間になれずの半生。幇間の師匠の言葉が刺さってくる。落語の幇間咄と違って江戸暮らしも気ままじゃないんだな。 武士を捨てた殺陣指南の与三郎、生倒れていたところを陰亡に育てられた女形のほたる、子供の死に目に会えなかった小道具の久蔵、小さなころからの許嫁と武士を捨てた戯作者、金治。一人一人の半生の辛さと芝居小屋の華やかさが胸に沁みてくる。 最後は菊之助の語り。若しかしたら、こういう種明かしかなと思うことはあった。でも、そんなことどうでもいいんだよ。何故、皆が菊之助を助けたのか、何故、一言も文の中では発しなかったその縁者に菊之助は皆の半生を、その人間を知ってもらおうとしたのかが判る。 最後、こっちまで泣いちゃったよ。 ちょっと読み返したら、第五幕の最後に (引用)ついてきな、これから奈落を見せてやるよ。面白い絡繰りがみられるぜ。 とある。成程、そういう意味だったんだ。
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昔は芝居や舞台を観に行っていた。中でもウェルメイドな作品が好きだった。 仇討ちをした菊之助のことを知る侍が、仇討ち現場の芝居小屋へ話を聞きにやってくる。 聞き上手な侍に、芝居小屋の面々が語る話は、菊之助の仇討ちと、それぞれの人生。一人ひとりの話が横糸、仇討ちの話が縦糸となり、物...
昔は芝居や舞台を観に行っていた。中でもウェルメイドな作品が好きだった。 仇討ちをした菊之助のことを知る侍が、仇討ち現場の芝居小屋へ話を聞きにやってくる。 聞き上手な侍に、芝居小屋の面々が語る話は、菊之助の仇討ちと、それぞれの人生。一人ひとりの話が横糸、仇討ちの話が縦糸となり、物語が織られていく。 その芝居小屋の面々の話が、涙なく読めない。じわ、じわと。 大変満足できる作品でした。
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普段読みつけない歴史物。直木賞候補作をなにか読もうかなと思い、みなさんの感想を見て、面白そうだったので読んでみることに。 最初は一八の調子のいい語りのおかげでなんとか読み進め、与三郎さんのかたい語りに眠くなったりもし、けれど読み進めるうちに、だんだん最初の話と違った真相が見え始...
普段読みつけない歴史物。直木賞候補作をなにか読もうかなと思い、みなさんの感想を見て、面白そうだったので読んでみることに。 最初は一八の調子のいい語りのおかげでなんとか読み進め、与三郎さんのかたい語りに眠くなったりもし、けれど読み進めるうちに、だんだん最初の話と違った真相が見え始めてくる。 え、なに、どういうこと?おかしくない?と思っているうちにページがどんどん進んでいく。 最後はあたたかい気持ちになる、そんなあだ討ちだった。 仇討ちをしなければならないと悩んでいた菊之助に助けの手を差し伸べた芝居小屋のみんな、その手をとった菊之助、どちらも偉い。 菊之助が言うように、菊之助のお父さんも誰かに助けを求められたら、よかったのになぁと、そこだけが悔やまれる。 苦境に立たされている人を放って置けない芝居小屋のみんなは、どの人も辛い過去を経験していて、だからこそ困った人を助けられるのだということ。かれらの義理人情に私も救われる思いがした。
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