文にあたる の商品レビュー
p155 しかしこの自信とは、裏を返せば慢心です。 p161 「ひところまで文章はこのくらいの『明るさ』のなかに立って、知るべきものを照らしていた」〜
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※このレビューにはネタバレを含みます
近ごろ書店で目立つのが、書店、出版業界関連もの、そして文章そのものや、表現力を磨くノウハウ的なもの。 本書も、書店に並んでいるころから気になっていた一冊。図書館の書架に置いてあったので手に取ってみた。 校正、校閲ものも、過去いくつか読んでいる。『校閲記者も迷う日本語表現』も生きた日本語表現を学べる興味深い一冊だったし、漫画で読んだ『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』が、まさに校正者の普段のご苦労が知れるお仕事マンガで良かった。 本書は、後者に近いイメージか。 著者が体験した、校正の難しさを、実際に触れた文章などを通じて語る。 とはいえ、それぞれのお話の結論としては、日本語の表現は、今現在も揺れ続け、迷いの中にある、というあたりに落ち着き、『校閲記者も迷う~』のように、用語、言葉遣いについての思索を深めていく姿を描く。 そうした言葉の揺れ、迷いもまた面白い。言葉は生き物だということを、都度都度考えさせられる。それを「お仕事」とされている身としては、たまったものではないとは、大いに分かるのだが。 特に、表現者としてオリジナルであろうとする小説家の(具体的な著者名は伏せられている)、「文法的におかしいセンテンスは身体に響く」からと、敢えて読者にひっかかる表現を使っている場合などは、どう直す? 直さないとしても、指摘はしておく? あれこれ、こうあるべきという日本語の常識と芸術的表現との板挟みの様子も可笑しいというか、言葉というものを考える時に、非情に示唆に富む。 海外ものの詩や絵本の翻訳で、よくお名前を見かける柴田元幸さんの、「ところどころで立ちどまらされるような文章が、いまふうに言う『サクサク読める』訳文になってもいけない」、「立ち止まざるを得ない」文章と「立ち止まらせる」文章は違う、という指摘は実に奥深い。 読みにくい海外翻訳ものも、その読みにくさも含めての味わいなのだなと、今後、心して読もうと思った。 そんな日本語表記の正誤のみならず、事実確認にまで及ぶ校正のお仕事は、なんなら、その文章の著者よりも世事に長けていなくてはならないのではなかろうかと、ひたすら感心もする。 「校正の技術とは、突き詰めていくと思い込みや先入観をいかに排するかというところに収斂するのではないでしょうか。」 と本書の著者は言う。田舎の町の描写だからと、大型ショッピングセンターや、国道沿いにファミレスが見える風景を容易に描こうものなら、その店舗が実際に存在するか否かまでも指摘するというフォローぶりに驚く。 “「すかいらーく」は2009年10月をもって最後の店舗が閉店” だそうだ。時代が2009年以降なら、登場させちゃいけない。 でも、我が町M市は、すかいらーくグループの本社所在地であり、街道沿いの目立つところに昔ながらのロゴと馴染みの雲雀のキャラのイラストが掲げられたビルが建つ。近所の人の会話で、「M鷹の直売所、ほら、あの、すかいらーくと藍屋の隣の…」と、ランドマークとして、今でも使わないでもない。 小説の舞台が、武蔵野界隈の場合は、「すかいらーく」を登場させても間違いではない。 そんな指摘を、この著者にはする必要はなかろう。どうやら、同じご町内在住のようだ。いつか、近所のブックカフェや、書店の店頭でお見掛けすることがあれば楽しいな。 いろいろ、勉強になる好著でした! 国語辞典は、あれこれ種類を変えて手元に置きたくもなった。
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頂き物の本。紙の本をいただくなど久しぶりの機会であった。 本を書く以外の方法で出版の根本的な部分に関わることができる大事な仕事で、人気がある仕事なんだろうとは思った。 ただ、この本を読み進めていて、あまり本ができるまでの裏側を知りすぎてしまうと、素直に本を楽しめなくなってしまうな...
頂き物の本。紙の本をいただくなど久しぶりの機会であった。 本を書く以外の方法で出版の根本的な部分に関わることができる大事な仕事で、人気がある仕事なんだろうとは思った。 ただ、この本を読み進めていて、あまり本ができるまでの裏側を知りすぎてしまうと、素直に本を楽しめなくなってしまうなとも思った。本は何も考えずに楽しみたい気持ちもある。
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校正・校閲のお仕事に興味があったので、読んでみました。勉強になって、何度も読み返したい内容でした。 校正・校閲って、とっても奥が深くておもしろそうだけど、日々のプレッシャーがとんでもないお仕事なのだと思いました。0か100の世界で、ミスしないのが当たり前、でも実際、誤植が存在しな...
校正・校閲のお仕事に興味があったので、読んでみました。勉強になって、何度も読み返したい内容でした。 校正・校閲って、とっても奥が深くておもしろそうだけど、日々のプレッシャーがとんでもないお仕事なのだと思いました。0か100の世界で、ミスしないのが当たり前、でも実際、誤植が存在しない本はないっていう状況で仕事するってすごい! 誤字があると、気になって集中して読めなくなる経験は確かにあるけど、でも普段安心して私たちが本を読めるのは、こういったお仕事をしてくださってる方がいるからなのだと感謝の気持ちでいっぱいになりました。 普段あまりスポットライトが当たらないお仕事ですが、本のすべてを背負っているような、縁の下の力持ち的存在なんですね
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読者には見えない世界だが、なんと奥の深いことだと。決して押しつけがましくなく、そしてとても興味を引くように仕事の内容が綴られている。面白かった。、
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業界は違うけど私の仕事と間違いが許されないと言う所が共通項としてあったので、ミスしたら…の恐怖とか、正解がない中でどうしていくかの葛藤とか、ミスした時の落ち込みとかは理解出来て、大変さのない仕事なんてないよねと共感した。 プライベートで読む時と仕事で読む時とは読み方が異なるとは...
業界は違うけど私の仕事と間違いが許されないと言う所が共通項としてあったので、ミスしたら…の恐怖とか、正解がない中でどうしていくかの葛藤とか、ミスした時の落ち込みとかは理解出来て、大変さのない仕事なんてないよねと共感した。 プライベートで読む時と仕事で読む時とは読み方が異なるとは思うけど、でも校閲を仕事にしていると、純粋にプライベートで本を読むのが難しくなりそうだなぁとは思った。 読みたくもない暴力的なシーンがある本を読まなきゃいけないのもなかなか苦痛だよね。 校閲の仕事を知れて面白かった。 今度から本の奥付の部分も気にして、校閲者が書いてあるかとか見ると思う。
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校閲の方のエッセイ。 辞書の買い方がわからなった、が一番興味深かった。 辞書を一冊だけじゃなく二十冊以上引くなんて、なんて気の遠くなるような作業なのだろう。 本を読んで読んで、読みまくって本好きからすると羨ましい反面、辛いだろうなとも思ってしまう。
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つい最近、縁あって校正のお仕事を始めることになりました。こちらの本をたまたま図書館で見つけ、このタイミングはご縁かもと、すぐに読み始めました。 まだまだ、研修の身で習得段階ではありますが、この本と出会えたことは非常に良かったと思います。 校正ノウハウ本ではなく、校正の心得、本...
つい最近、縁あって校正のお仕事を始めることになりました。こちらの本をたまたま図書館で見つけ、このタイミングはご縁かもと、すぐに読み始めました。 まだまだ、研修の身で習得段階ではありますが、この本と出会えたことは非常に良かったと思います。 校正ノウハウ本ではなく、校正の心得、本が出来上がるまでの流れ、本に関わる人、などなど様々な視点から読める本です。 この本をきっかけに、本の中で紹介されている他の校正本も読んでみたいと思いました。
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ドラマ 地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子 で校閲という仕事は知ったけれど、実際に校閲を生業にしている方の言葉には、圧倒された。 読者を威圧することはなく、語りかける言葉づかいに著者の人柄をかんじるからご心配なく。 辞書についても興味深く感じられる部分があって、本から知ることが...
ドラマ 地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子 で校閲という仕事は知ったけれど、実際に校閲を生業にしている方の言葉には、圧倒された。 読者を威圧することはなく、語りかける言葉づかいに著者の人柄をかんじるからご心配なく。 辞書についても興味深く感じられる部分があって、本から知ることができる一冊だと思った
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校正は単に誤植を見つけるだけでなく、ファクトチェックや内容の矛盾が無いかの検証までしているとは、本当に驚きだった。 自分の仕事で言えばレビューという言葉になるが、ここまでの意識はなかった。 何より、本に対する愛情や筆者に対する敬意が伝わって来る、丁寧な文章が印象に残った。
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