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死刑について の商品レビュー

4.2

50件のお客様レビュー

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2023/01/05

高校生の頃、「決壊」を読んだ。 「加害者家族の問題はあまり考えたこと無かったな…あくまでも尊重されるべきは被害者や被害者遺族だけど、加害者家族も在り人間や生活が存在するのも事実だ。それでも何よりも被害者や遺族がもっとも尊重されるべきだし、被害者遺族大なり加害者家族だろうよ」と感想...

高校生の頃、「決壊」を読んだ。 「加害者家族の問題はあまり考えたこと無かったな…あくまでも尊重されるべきは被害者や被害者遺族だけど、加害者家族も在り人間や生活が存在するのも事実だ。それでも何よりも被害者や遺族がもっとも尊重されるべきだし、被害者遺族大なり加害者家族だろうよ」と感想を抱いた…ような気がする。印象は強かった。 あれから10年経ち、この本で久しぶりに平野啓一郎の文章に触れた。10年も経てば人の考え方は別人のように変わる。社会や様々な環境に翻弄される生身の人間に触れた、私の道程を思い起こす本だった。 平野氏の伝えたいことにふれるほど、とても個人的な自分自身のあゆみについて考えてしまうのだ。 それは平野氏がこの本のあとがきで伝えたように、私にとって「決壊」が、受動的な変化を残す種そのものだったからだと思う。 どんな人間でも一人一人に人生や背景があることを最初に教えてくれた小説だった。 種はあの本だけではなく、たくさんの本が私にほかの種や水を与えて育ててくれたのだけれど、それでも間違いなく植えられた種の一つは決壊だった。 この本を読む前と読む後で自分の意見は少しも変わらないのは、決壊という種がわたしの人生を経て結実したもののひとつだからです。ありがとう。 また他の小説も読みます。

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2022/12/29

難しいテーマかつ、難しい内容。死刑制度を賛成か反対かの択一では議論し尽くせないことがよく分かる。世界、取り分け欧州での考え方の中枢、巻末の一覧は日本の特異さの一端を表すよう。

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2022/12/27

どういう場合に死刑が求刑されるのか気になっていた。裁判所の判決時の量刑判断の基準のひとつ「永山基準」というのがあるらしく、命を奪われたのが1人なら無期懲役、3人以上なら死刑、2人の場合はボーダーラインという考え方が形成されたそう。 けれど、本書にもあるとおり、死刑を求刑するとい...

どういう場合に死刑が求刑されるのか気になっていた。裁判所の判決時の量刑判断の基準のひとつ「永山基準」というのがあるらしく、命を奪われたのが1人なら無期懲役、3人以上なら死刑、2人の場合はボーダーラインという考え方が形成されたそう。 けれど、本書にもあるとおり、死刑を求刑するということは、相対的に見れば「人を殺してもよい社会」を認めているのと同じことになる。死刑を求刑しないこと=犯人を許すこと、という考え方が蔓延っているからだ。 "絶対的な禁止であるべき。事情があれば・・という相対的な規範であってはならない。ところが死刑制度というのは、人を殺すような酷いことをした人間は殺してものい、仕方ないという例外規定を設けていることになる。相対的態度。だからその思想は社会からなくならない" "死刑を求めないということと、犯人をゆるすということは一度切り離すべき。" "最悪の惨事が起きたノルウェーでは、首相は「これほどの暴力が行われたからこそ、より人道的で民主主義的な答えを示さなければ」と述べた。暴力による報復ではない「愛と知恵」によって解決を望むと、遺族たちも訴えた。"

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2022/12/22

死刑存置論から死刑廃止論に転じた小説家による死刑論。共感できない議論をいかに理解すべきかについて学ぶことができる。

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2022/12/12

講演会からの書き下ろしなので読みやすくまとまっている。 私も死刑制度には反対している。 自分なりの似たような理由はあるのだけれど、 この本で確認出来て良かった。 特に、著者が小説「決壊」を書くにあたり、警察を取材した所、非道な捜査による冤罪の可能性を強く意識した事。 殺人を否定す...

講演会からの書き下ろしなので読みやすくまとまっている。 私も死刑制度には反対している。 自分なりの似たような理由はあるのだけれど、 この本で確認出来て良かった。 特に、著者が小説「決壊」を書くにあたり、警察を取材した所、非道な捜査による冤罪の可能性を強く意識した事。 殺人を否定する社会が被告を合法的とはいえ殺す事の矛盾。 殺人を犯した人々は生育環境が悲惨な人が多く、本人の自己責任のみに帰するのは酷であるかもしれない事。 被害者家族が浮かばれないという話もあるが、今も被害者家族の救済は十分では無い。 話は別のところにあるのかもしれない。

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2022/11/19

死刑制度を取り巻く日本の現状と他国との比較をとてもわかりやすく書かれていた。 死刑を望むために犯罪をする者の存在や選挙などの政治による帳尻合わせとしての死刑を行うことなど、読んでいて死刑制度も意味、意義が一体何なのかよくわからなくなってきた。 私は日本の切腹という文化を持つ、...

死刑制度を取り巻く日本の現状と他国との比較をとてもわかりやすく書かれていた。 死刑を望むために犯罪をする者の存在や選挙などの政治による帳尻合わせとしての死刑を行うことなど、読んでいて死刑制度も意味、意義が一体何なのかよくわからなくなってきた。 私は日本の切腹という文化を持つ、罪を償うには死ぬことであるという認識がとても強くあった。 しかし、本書を読んで死刑制度とは問題をうやむやにさせようとする思考停止の一種なのではないかと考えた。 また、殺人等を犯す人間の環境や社会的背景はその人間個人と完全には引き離せないということも理解できた。 凶悪犯はすべて死刑にするだけでは何の解決にはならず、もしろその死刑制度があることで凶悪犯と自分を全く別の人種であると線引きをする意識がより強くなる。 この本を機にもっと死刑制度についての活発な議論が生まれることを願っている。

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2022/11/06

この様な重たいテーマを、この短い論考で述べられていることに、まず感嘆した。著者の誠実な考え方が短く凝縮された秀逸な書である。「死刑」という国家による暴力で、問題を解決する社会でいいのか。死刑問題を考えるにおいては、この社会のあり方も含めて、大きく捉えていることが必要と思う。著者は...

この様な重たいテーマを、この短い論考で述べられていることに、まず感嘆した。著者の誠実な考え方が短く凝縮された秀逸な書である。「死刑」という国家による暴力で、問題を解決する社会でいいのか。死刑問題を考えるにおいては、この社会のあり方も含めて、大きく捉えていることが必要と思う。著者は当初は死刑賛成論者であったが、小説を書く中で反対論になった。その理由として、冤罪の問題、加害者の生育環境の問題を挙げ、根本問題として、「人が人を殺していいのか」という根本問題まで至っている。被害者に対するケアが弱いという面もある。最後に、この問題は人権として考えてみるべきであると提起している。と同時に日本の人権教育が感情論に偏っているために、きちんとした議論ができにくいという指摘もされている。「すべての人間が、人権という権利主体であることを認めた上で議論していかなければ、人間による人間の選別が際限なく行われていくことになってしまいます」という著者の言葉で感想をしめたい。

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2022/11/06

芥川賞作家である著者が、死刑制度存置派から廃止派に転向した経験も踏まえ、死刑制度について廃止論の立場から考察した講演をもとにした本。 流石、芥川賞作家だけあって、文章が洗練されてていて、主張の筋道を追いやすい。社会の側の怠慢を問わなくてよいのか、「人を殺してはいけない」ということ...

芥川賞作家である著者が、死刑制度存置派から廃止派に転向した経験も踏まえ、死刑制度について廃止論の立場から考察した講演をもとにした本。 流石、芥川賞作家だけあって、文章が洗練されてていて、主張の筋道を追いやすい。社会の側の怠慢を問わなくてよいのか、「人を殺してはいけない」ということは相対的な規範であってはならないなど、著者の主張は筋が通っていてよく理解できるが、個人的には、死刑制度存続はやむを得ないという思いを捨てきることはできなかった。 「人間は誰からも生存の権利を奪われてはならない」という基本的人権の観点から死刑はあるべきではないとはいっても、そもそも死刑になるような人がまず誰かのその生存の権利を情状酌量の余地なく奪い去ったという厳然たる事実があり、その償いはいかにして可能かと考えたときに、死刑の選択肢を完全に排除するというのは、なかなか心情的に納得しがたいところがある。 冤罪の可能性や加害者を生み出した社会的背景の考慮、被害者の死刑以外のケアの必要性などの著者の諸指摘はもっともなことであり、それらはそれらで社会として対応が必要だと思うが、だからといってすぐに死刑廃止という結論には個人的にはならなかった。

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2022/11/05

どうしても感情的になってしまう。人権というものが身に染み込んでいないせいもある。死刑は国による暴力でしかない。

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2022/10/31

倫理のレポート課題の為に読んだ本。 めちゃくちゃいっぱい考えさせられた。 被害者の事を想って、死刑!!っていうてたけど、何も考えて無かったこと。日本がきちんと人権教育をしてなかったこと。日本の浅ましい伝統『死を以て償う』精神。 また、冤罪の可能性。 はたして死刑は存続しても良いの...

倫理のレポート課題の為に読んだ本。 めちゃくちゃいっぱい考えさせられた。 被害者の事を想って、死刑!!っていうてたけど、何も考えて無かったこと。日本がきちんと人権教育をしてなかったこと。日本の浅ましい伝統『死を以て償う』精神。 また、冤罪の可能性。 はたして死刑は存続しても良いのか。 もう一度考え直さないといけない。

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