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死刑について の商品レビュー

4.2

51件のお客様レビュー

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2023/09/06
  • ネタバレ

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死刑制度に賛成だった筆者が、廃止を求めるようになった過程について、そして廃止の実現のために何が必要かについてを語る。まず、廃止を求めるようになったきっかけとして3点挙げる。それは検察による捏造のおぞましさ、加害者の生育環境が必ずしも良くないこと、人を亡き者にしてよい社会に対する疑問である。 続いて、日本から死刑がなくならない理由を考える。筆者は主に4点挙げている。人権教育が十分でないこと、勧善懲悪を良しとするメディア、死んで責任を取る文化、近年見られる格差の拡大と自己責任論である。 では、死刑制度の廃止に向けて何が必要か?まずは人権教育をやること。基本的人権という概念は、この国にはあまり定着していなさそうだ。そして、被害者に十分なケアを施すこと。ともすれば我々は、憎しみという観点から被害者に共感しがちだが、彼ら・彼女らは社会から取り残されていることに注意しなければならない。  死刑制度に賛成か反対かを問われて、自分の考えをすぐ言える自信はない。でも、犯罪を犯してしまうことがもはや合理的だと思うまで追い込まれている人間を、死刑によって亡きものにしてしまうことには違和感がある。

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2023/08/21

死刑制度が無くなることが国家の成熟に繋がると思えたし、死を以て罪を償うということがある意味、思考停止であるといった主張に共感できた

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2023/06/20

素晴らしい本だった。数十年来の考え方がガラッと変わった。 現在、日本人の8割が死刑制度継続を支持しており、年に数件執行されている。死刑制度が無い国が多数派を占めるなか、日本で依然として死刑が行われている文化的背景などが書かれてある。 本書を読むまで知らなかったのだが、死刑制度が無...

素晴らしい本だった。数十年来の考え方がガラッと変わった。 現在、日本人の8割が死刑制度継続を支持しており、年に数件執行されている。死刑制度が無い国が多数派を占めるなか、日本で依然として死刑が行われている文化的背景などが書かれてある。 本書を読むまで知らなかったのだが、死刑制度が無いことがEU(欧州連合)に加入する条件なのだそうだ。私が居住する国も死刑制度は何十年も前に廃止になっているが、その理由は冤罪が後を絶たないからということだった。 死刑制度が存続する理由は、被害者に対して責任を取る、自分がしたことに対して罰を受けるというものだ。こういう行動に対して、従来から日本では潔く良いこととされてきた。一方、被害者のケアや、犯罪が起こった背景の分析にはあまり力を入れてこなかった。死刑を執行することにより、その人物がいなかった(社会から抹消する)ことになる。 著者の平野啓一郎氏は、本当に優しい人なのだと感じた。著者と同様に、私も死刑を積極的に支持というよりは、被害者の心情を考えるとやむを得ないのではないか、というスタンスだった。「大切な人が殺されても許せるのか」と問われれば、許せないし、これは当然である。著者は小説家であるが法学部を卒業している。本書では彼が死刑について考えることや外国の例が理路整然と述べられている。私の知人2人も、この本を読んで死刑に対する考えが変わったと言っていた。ぜひ一読いただきたい一冊である。

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2023/06/14

実際、あまり深く考えたことはない。死刑はニュースの中の話としてこれからもあまり考えたくない。でも平野さんの考えはものすごく納得できた。終身刑があれば廃止してもよいのではないかと思った。

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2023/04/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

私は死刑賛成派でした。揺らぎつつの賛成派で、本書を読んでからは揺らぎの振り幅が大きくなりました。 絶対支持ではないけど遺族がいる場合の感情を考えたら受刑者に死刑を望むのはやむを得ないのでは、とこれまで考えてきました。 ちょっと長いですが本書p37からの引用。 「劣悪な生育環境に置かれている場合だけでなく、加害者が精神面で問題を抱えている場合もあります。本来なら、そういう状況に置かれている人たちを、私たちは同じ共同体の一員として、法律や行政などを通して支えなければならないはずです。しかし支えられることなく放置されていることがあります。」 死刑についての話ではありますが、結局これは法で裁ききれないほかの犯罪についても当てはまる話でしょう。 例えば触法障害者の問題も上記引用と同じことが言える現状があります。不起訴になれば司法から離れます。福祉に持って行っても福祉でも対応できなかったり支えきれない場合、結局その家族が犠牲になります。 そして上記引用のさらに続きです。 「放置しておいて、重大な犯罪が起きたら死刑にして、存在自体を消してしまい、何もなかったように収めてしまうというのは国や政治の怠慢であり、そして私たちの社会そのものの怠慢ではないでしょうか」 本当にその通りと思いました。それはある意味思考停止の状態でしょう。 しかし犯罪と関わりなく暮らす世の中の大多数の人たちはそもそもそういうことを考えない人がほとんどなのではないでしょうか。 私もそれでいいとは全く思いませんが、まず日常の中で話題になること自体がほぼない気がします。こういうことに目を向けない人たちと議論を交わしたり問題意識を共有するというのは至難の業です。 p102にも似たようなことが書かれています。ヤングケアラーにはようやく目が向けられてきましたが、国はまだまだ生育環境に対するケアについて努力が足りないでしょう。一般の人の前に国がそういうところに目を向けきれていないと思います。 日本は死刑賛成派が多いというのは、まだ死刑というものについてたくさんの人によく考えられていない、議論が深まっていないからという点もあるように思います。

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2023/04/10

「決壊」、「ある男」の2作を読んだ後だったのでより、考えながら読めた。 自分の大切な人が殺された時、目を逸らしたくなるような事件を知った時、殺されたのが一人だった時、大量殺人だった時。 わたしはその犯人に対して「生きて償え」と思うのか「死んで償え」と思うのか。 考えさせられた。決...

「決壊」、「ある男」の2作を読んだ後だったのでより、考えながら読めた。 自分の大切な人が殺された時、目を逸らしたくなるような事件を知った時、殺されたのが一人だった時、大量殺人だった時。 わたしはその犯人に対して「生きて償え」と思うのか「死んで償え」と思うのか。 考えさせられた。決して他人事ではない。

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2023/04/08

他の死刑に関する書籍と大きくはことらなかったが、死刑制度に対して多くの日本人賛成しているというアンケート結果は単に知識不足なのではないかと改めて思った。 一度じっくりと向き合って考えてみると考えが変わる人も出てくるような気がした。

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2023/03/30

深く考え込んだことがなかったので読んでみて新たな認識や発見ができた。 日本の人権教育は失敗している点と憲法について確かにそうだと思った。 死刑制度について変わる時が来るだろうか。

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2023/03/08

正直に言えば、私は同じ死刑廃止論に賛成するものです。他者と議論が始まれば、必ず感情論になり、憂鬱になる話題でした。これまで、私は、自分の考えを、整理することもできず、対する相手に伝える言葉を探し得ないでいましたが、これを読んで、本当に整理された、まさに、そういうことだよ!と思うお...

正直に言えば、私は同じ死刑廃止論に賛成するものです。他者と議論が始まれば、必ず感情論になり、憂鬱になる話題でした。これまで、私は、自分の考えを、整理することもできず、対する相手に伝える言葉を探し得ないでいましたが、これを読んで、本当に整理された、まさに、そういうことだよ!と思うお話でした。この作家の見識、知識の豊富さ、理論的に展開できる力に感服しました。読んでよかったです。死刑制度に関心を持つ、すべての方にお勧めです。

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2023/03/05

著者の意見に概ね賛成。 死刑制度の何が一番問題かというと、被害者救済を何もしていないことの隠れ蓑になっているということ。 以前、報道で見たが、自宅で家族を殺された人が、その自宅に住むことはできず、しかし売れないので、ローンは払い続け、その上に賃貸で暮らす生活費がかかると嘆いていた...

著者の意見に概ね賛成。 死刑制度の何が一番問題かというと、被害者救済を何もしていないことの隠れ蓑になっているということ。 以前、報道で見たが、自宅で家族を殺された人が、その自宅に住むことはできず、しかし売れないので、ローンは払い続け、その上に賃貸で暮らす生活費がかかると嘆いていた。精神的にも経済的にも追い詰められ、立ち直れない状態だった。 心のケアはもちろん大切だが、ケアをしても傷ついた心がすぐに回復するわけではない。だが、経済的支援はすぐできること。犯人を殺しても負債が減るわけでもなければ、心が安らぐわけでもないのに放置されているというのは、被害者を再度鞭打つに等しい。 そこを放置して、殺人犯を死刑にした、と何の関係もない他人がスカッとしているなんてぞっとする。 もちろん本物の終身刑の導入、犯人に罪を自覚させるための教育も欠かせない。犯罪者の生育環境の調査と、同様の環境にある子どものケアも重要である。 しかし。本題からは外れるが。死刑制度を廃止した欧米の国々はキリスト教が根付いているので、人を裁くことのできるのは神のみで、人間同士はゆるし合うべきだという考えがある、というのは、どうなのか? じゃあなぜキリスト教徒は戦争するのか?神が最後の審判を下すんだから、裁きはそれに任せてゆるし合えばよいではないか。「殺してはいけない」が絶対的禁止であるならば、戦争は死刑よりもっとダメではないか?死刑はダメだが戦争は国家として行うというのは矛盾では? これは死刑制度に関する本なので、そういうことは書いてないけど。石川明人氏の本では、キリスト教と戦争は何ら矛盾しないとあり、私のような素人は混乱します。 平野さんには戦争についても書いてほしいと思います。

Posted byブクログ