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夢見る帝国図書館 の商品レビュー

3.8

52件のお客様レビュー

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2022/11/18

帝国図書館の歴史とともに、戦中・戦後を生きた一人の女性の半生が描かれる。 なんとなく、作者の自伝的小説というか、モデルとなった出来事があったのかな?と思わせる構想。 作中で主人公が「書くことにしている」と言っている小説が、出来上がったものがこれなのか?という。 男尊女卑の価値観...

帝国図書館の歴史とともに、戦中・戦後を生きた一人の女性の半生が描かれる。 なんとなく、作者の自伝的小説というか、モデルとなった出来事があったのかな?と思わせる構想。 作中で主人公が「書くことにしている」と言っている小説が、出来上がったものがこれなのか?という。 男尊女卑の価値観に虐げられてきた女性の半生を描いたラストで、男女平等を謳った日本国憲法の草案について語れる構成も感慨深い。 この作者は他に『小さいおうち』しか読んでないけど、現代の登場人物からの回想で過去(大正~昭和あたり)を語る形式が多いのかな? それにしても、戦前の図書館の歴史を読むに、この国は明治の頃から文化・教養に金をかけないんだな……と、さもしい気持ちになった。 下手したら江戸時代の方が、為政者が文化・芸術に投資していた。

Posted byブクログ

2022/08/27

上野公園のベンチで偶然出会った喜和子さん。 作家の私に図書館が主人公の小説を書いて欲しいと持ち掛けてくる。 「図書館を愛した」喜和子さんと「図書館が愛した」人々の物語と 戦後を生き抜いた女性の物語が綴られています。 読書好きな方だったら図書館という場所は特別な場所だと思います...

上野公園のベンチで偶然出会った喜和子さん。 作家の私に図書館が主人公の小説を書いて欲しいと持ち掛けてくる。 「図書館を愛した」喜和子さんと「図書館が愛した」人々の物語と 戦後を生き抜いた女性の物語が綴られています。 読書好きな方だったら図書館という場所は特別な場所だと思います。 まして日本で古くからの歴史があり大きな図書館である 今の国立図書館の前である帝国図書館のことが描かれていると なるとタイトルだけでも惹かれるものあったので手に取りました。 読む前までは図書館の歴史が描かれているのかと思いましたが、 あらすじにもあるように図書館が主人公の小説ということもあって、 実際にも図書館が主人公のような描き方になっていて、 帝国図書館から現在の国立図書館になるまでの歴史と同時に その周辺で実際にあった出来事も交えて描かれているので とてもリアル感があって知らなかったことが沢山知ることが出来て良かったです。 ただ図書館の遍歴の途中で何度も戦争に遭遇し、 そのたびに大切な図書館が疎かに扱われてしまっていた ことと多くの上野動物園の動物達がお国のためにと 亡くなってしまったことがとても悲しかったです。 図書館の歴史を知ると同時にこの物語の主役である 喜和子さんの人生も波瀾万丈で、女性であったために 苦しい時代の荒波にもまれながらも力強く生きてきた ことが凄いなと思いました。 ここでも女性の価値観、現代にも通じるいくつもの 生きていくテーマについて語られていることが印象的でした。 喜和子さんの生い立ちを辿っていった物語でしたが、 最終的には徹底的な解決には結びつくことは出来なかったですが、 複雑な環境から一人で東京に出てきて、図書館に通って、 自分で自分を育て直したんじゃないか、記憶の断片を辿って 自分が自分であるために必要な物語を作ろうとしたんじゃないか という言葉がありましたが、これがぴったりだと思うと 納得が出来ました。 何気なく手に取って自由にして好きな本を読むという行為。 これも平和で穏やかであるからこそ出来ることであるということを 改めてこの作品で大事で貴重な時間だと感じることが出来ました。 この作品を通して近代文学や日本の歴史、社会問題などと 多方面から見ることも出来て読み応えのある作品で 学ぶことばかりの一冊でした。

Posted byブクログ

2022/08/23

これはなかなかに面白かった。 ふだん軽めの話ばかり読んでいるので、久し振りにしっかりした話を読んだ印象。 語り手であるフリーライターの〈わたし〉が、仕事で国際子ども図書館を訪れた帰りに上野公園のベンチでたまたま隣に座った女性・喜和子さんと言葉を交わしたところから始まる物語。 か...

これはなかなかに面白かった。 ふだん軽めの話ばかり読んでいるので、久し振りにしっかりした話を読んだ印象。 語り手であるフリーライターの〈わたし〉が、仕事で国際子ども図書館を訪れた帰りに上野公園のベンチでたまたま隣に座った女性・喜和子さんと言葉を交わしたところから始まる物語。 かつては図書館に「半分住んでいたみたいなもの」だという喜和子さんが〈わたし〉に、上野の図書館の小説を書かないかと持ち掛けて…。 二人のつかず離れずの交流が始まるのだが、二人の話の間に挟まる、日本で初めての国立図書館にまつわる「夢見る帝国図書館」と題された数々の話が、まず抜群に面白い。 図書館の創設前夜から始まり、樋口一葉から宮沢賢治や林芙美子、和辻哲郎に谷崎潤一郎その他多くの文士たちとの関わり、お隣の動物園の黒豹や象の花子の逸話、果ては蔵書たちの嘆息まで、時代の波に翻弄された図書館を取り巻く喜怒哀楽が色んな手際で語られて、こちらの好奇心も刺激される。 占領下の図書館にジープで乗りつけたアメリカ軍人の若い女性が、新しい憲法の草案のまっさきに「この国の女は男とまったく平等だ」と書いておかなければと誓うシーンのなんと眩しいことか。 喜和子さんと〈わたし〉に加え、喜和子さんの元愛人だという大学教授、元下宿人の藝大生、行きつけの古本屋などが絡んで語られる話は、現在の話とそれぞれの記憶の中の昔の話がないまぜになり、『どこかで時間を止めてしまったような風情が漂う』上野界隈の情景も相俟って、時空を超えて縦横無尽に展開し、その不思議な雰囲気に飽くことがない。 喜和子さんが亡くなってからは、喜和子さんが探していた絵本や彼女宛の葉書に書かれていた数字の謎を軸に、喜和子さんの生涯を辿っていくちょっと謎解きっぽい話になるが、どこまでは真実でどこまでが虚構か、いつの話をしているのか、まかれた伏線が次々と覆されるように色んな喜和子さんが現れる。 数奇な生涯、とりわけ戦後の荒波を生き抜く中で『記憶の断片をたどって、自分が自分であるために必要な物語を、作ろうとした』喜和子さんの深い内面世界が浮かび上がり、その心情が切ない。 「夢見る帝国図書館」の最後のエピソードの中には、図書館の前で復員兵と出会う幼い女の子。喜和子さんの生涯もこの図書館の歴史の一部であったことが知れ、とても感動的な幕切れだった。

Posted byブクログ

2022/08/17

図書館を主人公とした小説の話。図書館を巡る歴史の話。図書館をきっかけに出会った2人の女性の話。中々一文で端的にこのお話を表現するのは私の語彙力では難しい、それくらい稀有な題材のお話です。お話自体も図書館を主人公とした小説パートと現実パートが交互に出てきます。読んで感じたのは当たり...

図書館を主人公とした小説の話。図書館を巡る歴史の話。図書館をきっかけに出会った2人の女性の話。中々一文で端的にこのお話を表現するのは私の語彙力では難しい、それくらい稀有な題材のお話です。お話自体も図書館を主人公とした小説パートと現実パートが交互に出てきます。読んで感じたのは当たり前の事ですが、1人の人物に対しての印象や想いなんてものは個々で違うのだという事。そして自分が知らない、想像し得ない一面を誰しもが抱えている事。読後は上野散策をしたくなってしまいました。

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2022/08/14

上野の森、帝国図書館の歴史と図書館を舞台に出会う人々の壮大な物語。筆者の絶妙な語り口にグイグイ引き込まれます。 上野公園でだ偶然に知り合った作家の卵と謎多い高齢女性。語られていく図書館への思いと波乱の半生。挿入される実際の帝国図書館の歴史と合わせて、ストーリーはテンポよく進んで...

上野の森、帝国図書館の歴史と図書館を舞台に出会う人々の壮大な物語。筆者の絶妙な語り口にグイグイ引き込まれます。 上野公園でだ偶然に知り合った作家の卵と謎多い高齢女性。語られていく図書館への思いと波乱の半生。挿入される実際の帝国図書館の歴史と合わせて、ストーリーはテンポよく進んでいく。 そして明らかになる女性と図書館そして上野の森とのつながり。 見事な語り、構成に終始楽しく読むことができました。

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2022/08/12

図書館や博物館は、歴史を収蔵しながら、それ自体が人や時代(=歴史)を見守り続けてきた存在。 ゆえに舞台装置としてちょっと特別で、好きです。 「いつか、図書館で会おう」 守る守らないに関わらず、人の心の支えになる約束もありますよね。

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2022/08/11

2022年6月、トーハクで『東京国立博物館からの脱出』って謎解きに参加した。それは博物館(とその所蔵品)から見たトーハクの歴史だったり解説だった。 トーハクと同じ上野を舞台に、『帝国図書館』を軸にしたお話は、謎解きゲームと重なる部分があり、臨場感が増した。

Posted byブクログ

2022/08/11

15年ほど前、わたしは上野公園のベンチで、とても魅力的な白髪女性の喜和子さんと出会った。 約束もせずに別れたけれど、上野の図書館で私たちは再会し、わたしは喜和子さんに上野の図書館が主人公の小説を書いてほしいと頼まれる。 お題は『夢見る帝国図書館』。 福沢諭吉が発した「ビブリオテ...

15年ほど前、わたしは上野公園のベンチで、とても魅力的な白髪女性の喜和子さんと出会った。 約束もせずに別れたけれど、上野の図書館で私たちは再会し、わたしは喜和子さんに上野の図書館が主人公の小説を書いてほしいと頼まれる。 お題は『夢見る帝国図書館』。 福沢諭吉が発した「ビブリオテーキ!」という言葉とともに建てられたこの図書館には、多くの文豪や著名人たちが熱心に通い詰めていました。 名前を次々と改め、震災や戦争を乗り越えていく図書館の歴史が、中島京子さん独特のユーモアを交えて分かりやすく語られていきます。 けれど、これは単なる図書館の歴史をたどる小説ではありませんでした。 木造の小さな家で暮らす喜和子さんの、終戦直後の上野での思い出話に取りつかれたわたしは、喜和子さんが亡くなってからも、彼女の交友関係や幼い頃の曖昧な記憶をたどって真実を突き止めようとします。 「戦災で家を失くした人たちによって自然発生的に作られたバラック集落」であり、「上野はいつだって行き場のない人たちを受け入れてきた」 そんな時代を越えて、建物はいつもここにあり、人よりもずっと長生きするのです。 図書館を愛した喜和子さんの人生が尊く、儚く、そしてわたしと喜和子さんの偶然の出会いがまさに夢のようにも思える優しい物語でした。

Posted byブクログ

2022/08/03

図書館をを中心として描かれる喜和子さんの歴史。 作中の夢見る帝国図書館の書き手については読者によるところなのも面白い。

Posted byブクログ

2022/07/30

図書館が主人公の小説?? そもそも 日本の図書館はいつからあったのか? 図書館が過ごしてきた歴史も見せながら、喜和子さんと小説家の物語が流れていく。 図書館が話せたら口にしていたかもしれない、あんなことやこんなことも一緒に流れていく

Posted byブクログ