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生命式 の商品レビュー

3.9

137件のお客様レビュー

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    36

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2023/02/09

狂った作品の群れだった。 私の価値観からすると狂った設定だけれど、その作品の中では当たり前の価値観で当たり前のように社会が回っていくのがすごく興味深かった。 一番目の短編なんか最たる例で、『生命式』という作品の中での常識に面食らった。 でも読み進めると、そこで動く個人の気持ちは...

狂った作品の群れだった。 私の価値観からすると狂った設定だけれど、その作品の中では当たり前の価値観で当たり前のように社会が回っていくのがすごく興味深かった。 一番目の短編なんか最たる例で、『生命式』という作品の中での常識に面食らった。 でも読み進めると、そこで動く個人の気持ちは共感できてしまう。 そこが面白い。 好きな作品は「素晴らしい食卓」と「孵化」。 「素晴らしい食卓」は『ある人から見たら常識だけど私から見たら非常識』という事実が幾重にも重なっていることを感じられた。 「孵化」は誰しもがちょっとだけしている内緒のことを自分の目の前にひっぱり出されたようだった。 この本を読むという時間の中で、自分の大事なものの位置が数ミリ移動したような気がした。 それを狂うというのかもしれないなと思った。

Posted byブクログ

2023/02/08

歴史、他民族文化を好んで漁り、また、幼少期に海外生活をしていて帰国後に自分の常識がひっくり返った経験が実際にある身としては少し陳腐に感じられてしまった。 それでも短篇なので「次はどうくるか?」と最後まで読ませてしまう力がある。 単に自分には合わなかっただけかな。

Posted byブクログ

2023/02/07

故人の肉を食べたり、死体を装飾品にすることが当たり前になった社会。 異常な価値観へと変わった社会で、古い価値観の中に取り残されてしまった人。変わらない社会の中で、異常な価値観を持ってしまった人。そうした人たちの中には、そんな自分自身に正直に生きられる人もいるし、生きられない人も...

故人の肉を食べたり、死体を装飾品にすることが当たり前になった社会。 異常な価値観へと変わった社会で、古い価値観の中に取り残されてしまった人。変わらない社会の中で、異常な価値観を持ってしまった人。そうした人たちの中には、そんな自分自身に正直に生きられる人もいるし、生きられない人もいるが、12編の短編の登場人物たちは、皆、自分の異常さを受け入れていく、と言うと聞こえがいいが、読者としては絶妙に共感できたりできなかったりする異常さがある。 読後、全く記憶に残っていなかったのが、「大きな星の時間」だった。4ページの本書の中でも極端に短い短編で、ファンタジックな世界設定と、児童文学風の文体も、他とは毛色の違った作品になっている。 ある女の子は、パパの仕事の都合で、遠い遠い国にある、小さな街に引っ越すことになる。その街は、崖の向こうから飛んでくる魔法の砂によって、誰も眠らない街であった。最初は喜ぶ女の子だったが、公園で出会った男の子に、魔法に一度かかると、たとえ街を出ても、二度と眠ることができないのだと教えられて、涙を流す。 自分は、生活の中で、嫌なことがあると、とりあえず眠って、起きるとまた1日が始まる感覚がある。眠ることが持っているリセット感は、とても、大切なような気がするが、この街では、それがない。女の子が、涙を流すのも、理解できるように思う。 最後に女の子は、大人になったら一緒に「気絶」しようと、男の子と約束する。でも、「気絶」することは、眠ることとは、やっぱり違う。

Posted byブクログ

2023/01/29

短編集。最後の「孵化」に一番心惹かれた。本当の自分とは何か、と問う時にだけ存在するまぼろしなのかな、と思う。

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2023/01/28

10篇近くの短篇がまとめられているものだが、その全てに一貫して「正常とはなにか」というテーマがあり、読んでいくうちに自分の持っている常識が二転三転していく様が面白かった。 たくさんのお話の中の必ず一つは、長い間忘れられない物語として心の中に引っ掛かり続けていくと思う。

Posted byブクログ

2023/01/28

著者の別作品「コンビニ人間」を読み興味を惹かれたので購入。「普通とは何か」「周りに同化して生きている個人」のようなテーマは通底していそうだった。が、普通ならざる人々を書いた短編がいくつも続くと若干胸焼け気味になってしまうところがあったかもしれない。最も好きだったのは「街を食べる」...

著者の別作品「コンビニ人間」を読み興味を惹かれたので購入。「普通とは何か」「周りに同化して生きている個人」のようなテーマは通底していそうだった。が、普通ならざる人々を書いた短編がいくつも続くと若干胸焼け気味になってしまうところがあったかもしれない。最も好きだったのは「街を食べる」。終わり方はともかく、著者の描く奇妙な部分が日常生活と丁度良くマッチしており、読み物としての面白さが高かった。また、「かぜのこいびと」も個人的に好み。詩を短編にまで膨らませたような趣を感じた。表題にもある「生命式」は、インパクト十分だが、それゆえストーリー自体の印象が読んでいて薄かったような。インパクトを求めて読むのであれば問題ない。

Posted byブクログ

2023/01/29

バスの中にいる全ての人間が、その”正しさ“で私を糾弾していた あの時私を裁いた倫理なんて何処にも無かったんじゃないか、と憤っているというだけなのだ。 「いえ、思いません。だって、正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」 「僕には決...

バスの中にいる全ての人間が、その”正しさ“で私を糾弾していた あの時私を裁いた倫理なんて何処にも無かったんじゃないか、と憤っているというだけなのだ。 「いえ、思いません。だって、正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」 「僕には決められない…。わからない…わからなくなってしまったんだ。『残酷』という言葉も、『感動』という言葉も、今朝まで確信があって使っていたのに、今は、どうしようもなく、根拠がないんだ」 薄い膜に包まれた血液と肉の塊か蠢き 蒲公英と親しんで楽しんで頃の記憶が蘇った 手作りの蓬餅 愛撫でもするように彼女の共感を撫で回しながら サステナブル(持続可能)でラグジュアリー(贅沢) 

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2023/01/18

図書館にて。 久しぶりに村田さんの本を読んだ。 本当に頭がおかしいと思った。 なんだこれは。 ちょうど同じタイミングで「呪術廻戦」だの「不滅のあなたへ」だの未知の生物が出てくるそこそこおどろおどろしい漫画を読んでいたのだが、それどころではない気持ち悪さ。 それはしかも自分自身の価...

図書館にて。 久しぶりに村田さんの本を読んだ。 本当に頭がおかしいと思った。 なんだこれは。 ちょうど同じタイミングで「呪術廻戦」だの「不滅のあなたへ」だの未知の生物が出てくるそこそこおどろおどろしい漫画を読んでいたのだが、それどころではない気持ち悪さ。 それはしかも自分自身の価値観のようなものを揺さぶられる。 最初の「生命式」の山本のカシューナッツ炒めでもうやられた。 どの作品もどうにも言いようがない、ただ圧倒される。 そしてこの人の言葉でどの出来事も肯定されているように感じるところが怖い。本当はこっちが正しいのではないかと。 怖いけれどこの人の本は全部読んでみようと思う。

Posted byブクログ

2023/01/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

後輩オススメ本。短編で良かった、長かったら消化不良起こしそうな話が多かった。中にはさわやかな話もあるけれど正直人に薦め辛い本。 表題作の「生命式」、超キモい。うわ…ってなりながら読み進めていくうちに『死んだ人の肉を食べて弔う葬儀の場で妊娠を望む男女が交尾相手を探し新たな生命を授かろうとする』って理にかなっているような気がしてきた。仮にどこかでそういう葬儀が行われていても「輪廻転生に基づいている」「死を無駄にしないため」とか言われたら何も言い返せない。「素敵な素材」は人間を素材として使った家具や小物が高級品として扱われている世界。嫌悪感を抱いてもそれを当たり前としている人に「1番オーガニックな素材だよ」って言われたら「確かに…」ってなる。 誰かの正常は誰かの異常なんだろうな。倫理観を問われる話が多いけどじゃあその倫理って誰の基準なんだろうね。全部の話に感想書きたいぐらいどれも印象深かった。お気に入りは夏の夜の口づけと二人家族と魔法のからだ。

Posted byブクログ

2023/01/07

〝クレイジー沙耶香〟短編集。 表題作「生命式」 お葬式の代わりに行われるようになった、「生命式」という儀式。 今の常識から考えるとなかなかエグくて驚いてしまうのだけれど。 〝この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶ。〟 「消滅世界」にも〝世界で一番恐ろしい発狂は、正常...

〝クレイジー沙耶香〟短編集。 表題作「生命式」 お葬式の代わりに行われるようになった、「生命式」という儀式。 今の常識から考えるとなかなかエグくて驚いてしまうのだけれど。 〝この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶ。〟 「消滅世界」にも〝世界で一番恐ろしい発狂は、正常だわ。〟という台詞があったけれど。 世界は常にグラデーション。 正しさ、はその時々によって変わっていく。 * 最後の「孵化」がよかった。 それぞれのコミュニティで使い分ける「キャラ」。コミュニティに呼応して作られるわたしの性格。 ここまで極端ではないにせよ、コミュニティに応じて自分のキャラが少しずつ異なるのは普通のことだよな。周囲に適応するための幾つものペルソナ。 「夫婦」という最少人数のコミュニティ…

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