1,800円以上の注文で送料無料

香君(下) の商品レビュー

4.5

225件のお客様レビュー

  1. 5つ

    122

  2. 4つ

    69

  3. 3つ

    20

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/02/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

オゴダ国の秘密は、海風の当たる場所では栽培できないはずのオアレ稲を島嶼部で栽培していたこと。肥料には塩分が含まれているためオアレ稲は弱らされていること、肥料から塩分量を調整したら海の近くでも栽培できること、また肥料を限界とされた量より少なくしたら、オオヨマに食われても枯れないオアレ稲ができたことだった。 これは「救いの稲」として帝国各地で植えられることになった。 「救いの稲」が引き起こした悲劇、オオヨマを食べる新たな虫の発生。 その虫はオオヨマを食べるだけでなく、小さなうちはオアレ稲を食べ、十分に成長してから次の稲作地に向かって飛んでいく。 山林も、牧草も、壊滅的な被害を受け、新たな虫はすごいスピードで広まる。 アイシャはその場にいて、虫の生態を調べることはできても、稲を燃やして駆除させることはできず、無力感をもつ。 しかし、アリキの虫に関する知識、マシュウの政治的采配、アイシャ自身の才覚により、事態を打開する。 まず、植物や虫に対する知識と説得力がすごいと思ったら、参考文献の量に驚かされた。 それと、異界に行くのかな、と思っていたら結局行かなかった。 どちらも、都合の良い設定で解決するのではなく、アイシャたちが自分の現実の世界で解決したということだと思う。 上巻から指摘されてきた、オアレ稲ひとつに依存することの怖さが現れた巻だった。 自然界は何も、人間に都合よくできているわけではなく、もし全てを都合よく変えるなら、どこかに歪みが生まれる。それは結局人間にもはね返ってくる。

Posted byブクログ

2024/02/07

海に近いところでオレア稲が育つとは…。その秘密は帝国から下賜される肥料を使っていなかったことだった。肥料を使わないとオレア稲が育つ。下賜される肥料の中に塩分が含まれていると見つけた者がいる。稲を弱らせる塩分が入っているとは…。その塩分を抜いたらどうなるのか。そしてその結果、オレア...

海に近いところでオレア稲が育つとは…。その秘密は帝国から下賜される肥料を使っていなかったことだった。肥料を使わないとオレア稲が育つ。下賜される肥料の中に塩分が含まれていると見つけた者がいる。稲を弱らせる塩分が入っているとは…。その塩分を抜いたらどうなるのか。そしてその結果、オレア稲が育ったのだ。これはいったいどういうことなのか…。オレア稲に依存してきた帝国に危機が訪れる緊迫の下巻。

Posted byブクログ

2024/01/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

蝗害の恐ろしさ、それに対抗しようと奔走するアイシャや虫の専門家アリキ氏達のがんばりがひしひし伝わる下巻 毒におかされながらも人々のために立ち続けたオリエ、アイシャのような嗅覚は持たないけれど本物の香君だと思った(マシュウと幸せになれて良かった) オアレ稲からの脱却ではなく共存を選び、国の上層部だけに任せるのではなく民が皆、自分で考えて動けるように…と忙しく旅しているアイシャは自分なりの幸せを見つけたのだろう

Posted byブクログ

2024/01/16

上橋菜穂子の、よく言えば集大成、普通に言えば今までの作品のいいとこ取りをした作品。 内容は大人向けだけど、児童文学の流れを汲んで、子供に伝えたいこと(言い換えれば多くの人がそれらを持たずに大人になってしまったこと)が散りばめられている本だった。

Posted byブクログ

2024/01/03

人の上に立つ、とは「孤独」に他ならないと思う。人は小賢しく、上に立つものに権力を与える代わりに決断という責任から上手く逃れている。指導者側が圧倒的な力を持つほどその傾向は顕著だ。ナチスドイツの政権下、自分の罪を自覚すらせず人々を裁いたアイヒマンになぞらえて、権利という庇護の下で主...

人の上に立つ、とは「孤独」に他ならないと思う。人は小賢しく、上に立つものに権力を与える代わりに決断という責任から上手く逃れている。指導者側が圧倒的な力を持つほどその傾向は顕著だ。ナチスドイツの政権下、自分の罪を自覚すらせず人々を裁いたアイヒマンになぞらえて、権利という庇護の下で主体性を捨てる人の姿をアーレントは「人格なき専門家」と評した。権力に従う人間は、不合理や理不尽を権力者に押し付ける権利を持っている。逆に権力を持つ者は不満も理不尽も全てを容認する覚悟を持たねばならない。そういうところが孤独なのだ。 それでもアイシャは、人が自ら考え、自分が神ではないということを人に伝えようとした。その上で、民を守ろうとした。一生を飾り物の神として過ごそうと腹に据えていたオリエも、民と関わりながら香りから知り得ることを人に伝えようとしたアイシャも、力を持つ者の孤独と戦った強い人だと思った。

Posted byブクログ

2023/12/22

テーマは違うけれどこの時代に生きていくにあたって大事なことを教えられている気がした 香君というタイトル通り読んでいる間中、気品に満ちた温かい香りが漂っているような作品だった 設定の細かさ、秀逸さに脱帽した 800ページ越えだったがあっという間に読めた

Posted byブクログ

2023/12/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

私はジブリ作品ならもののけ姫が好きです。 上橋作品とは共通する部分があるように感じるのですよね。。 さて下巻です。 本作下巻も単純に悪役を倒して終わり、という展開ではなく、皆、信念と道理があり、それぞれの立場なりの決断をしながら新しいものを作り上げようとする姿に私自身も共感したり苦悩したりしました。 また、ひとつのものに頼る危うさと、自然界の多様性の意味と重要性についても改めて考えさせられました。 色々問題を起こすのも人間だけど、それでも経験を引き継ぎ、知恵を出し合うことで人間の強みが生きてくる。人間だけでなく、生きるものすべての幸せのために我々は考え続けていかなければいけません。

Posted byブクログ

2023/12/03

少女が国や民を救う話ですが「孤独」についても書かれた素敵な小説だった。今のこの時のわたしが読めて良かった本。

Posted byブクログ

2023/11/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

久々の上橋菜穂子、今回は動物ではなく植物、穀物との共存をテーマにしたファンタジー。と言っても特殊な嗅覚以外は魔法や能力的な話はない、かなりリアル。 上巻を読んでいて、既知感があったがやはり「世界からバナナがなくなる前に」にインスパイアされてたんや。そこから色んな知識を吸収し積み上げて、こんな話を作りあげるってのは、やっぱ上出来の小説家ってのはただものじゃない。 単一の穀物に頼ることの危険性から派生して、多様性を否定することによる硬直化の怖さ、何かを盲信することは逃げであり弱さであること、ライフラインを人質に取って支配することの卑劣さなど、考えさせられることが多かった。 尊敬したり推したりする気持ちの裏側に、責任や自分で判断すべきことを押し付けて責任転嫁しようとしていないか。気持ちを裏切られた時に、失望から這い上がる手だてを模索できるか?気力を奮い立たせられるか? 答えが一つであることは意外と少なく、これしかないというのが思い込みかも知れない、というダンパーを心に持っておくことは重要なことなのだと思う。

Posted byブクログ

2023/11/20

鹿の王を読んでから上橋先生の作品を好きになって、今回この作品を読んでまた好きになりました。 人間が知らないだけだったり、都合の良い悪いに関わらず、世の中では全ての事が複雑に絡み合っていて、バランスをとっていること。またバランスを保つことが大切だということを、いつも感じさせてくれる...

鹿の王を読んでから上橋先生の作品を好きになって、今回この作品を読んでまた好きになりました。 人間が知らないだけだったり、都合の良い悪いに関わらず、世の中では全ての事が複雑に絡み合っていて、バランスをとっていること。またバランスを保つことが大切だということを、いつも感じさせてくれるように思っています。

Posted byブクログ