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ミシンと金魚 の商品レビュー

4.1

230件のお客様レビュー

  1. 5つ

    82

  2. 4つ

    86

  3. 3つ

    43

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

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2024/05/12

心にずんと響いた。 その生涯は過酷そのものだが、その事実を淡々と受け入れ、あれこれ思い悩むことなく真面目一筋に生きてきたカケイさん。そんなカケイさんも今はオムツを履き、立ち上がるのにも一苦労だ。 周囲から見たら何も分からない痴呆症の老女かもしれないが、心の中は自由だ。語りに嘘...

心にずんと響いた。 その生涯は過酷そのものだが、その事実を淡々と受け入れ、あれこれ思い悩むことなく真面目一筋に生きてきたカケイさん。そんなカケイさんも今はオムツを履き、立ち上がるのにも一苦労だ。 周囲から見たら何も分からない痴呆症の老女かもしれないが、心の中は自由だ。語りに嘘や欲、忖度や計算は一切なく、今を全力で生きている。 ハッピーエンドではないが、不思議と哀しくも虚しくもならない。カケイさんの逞しさや清らかな心が印象に残った。

Posted byブクログ

2024/05/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かぎかっこもなく章もない。でも読みにくくはない。 主人公の視点から見た世界と主人公の頭の中を洗いざらい書き出した、斬新なかんじ。 認知症の人はヘルパーさんのことを自分の子供と重ねているのかなぁ… 壮絶な一生を1人語りで書き切っているのがすごい。 自分の親が認知症になったら読みたい本。少し優しくなれそう。

Posted byブクログ

2024/05/11

タイトルと装丁がよくて手に取った。 どんどん読めるけど、途中で辛くなった。 けど、がまんして読んだら、最後はなんとかなった。 そして、なんとも言えない読後感。密度がすごい。 死が近すぎる。危険な本だ。 ※でも犬の描写がめちゃくちゃかわいい。 次は犬がもっとでてくる軽い本を書...

タイトルと装丁がよくて手に取った。 どんどん読めるけど、途中で辛くなった。 けど、がまんして読んだら、最後はなんとかなった。 そして、なんとも言えない読後感。密度がすごい。 死が近すぎる。危険な本だ。 ※でも犬の描写がめちゃくちゃかわいい。 次は犬がもっとでてくる軽い本を書いてほしい。

Posted byブクログ

2024/05/08

むかし国語の授業で、すでにボケが始まっていた武者小路実篤が晩年に書いた文を読んだ時のことを思い出した。それを読んだ当時、人間ボケるのは怖いなって思いつつ、でもボケてたら本人は別に何も感じないだろうし、むしろ悩みもなくて幸せなんじゃないかと思いつつ、でもやっぱりボケるのは嫌だな…み...

むかし国語の授業で、すでにボケが始まっていた武者小路実篤が晩年に書いた文を読んだ時のことを思い出した。それを読んだ当時、人間ボケるのは怖いなって思いつつ、でもボケてたら本人は別に何も感じないだろうし、むしろ悩みもなくて幸せなんじゃないかと思いつつ、でもやっぱりボケるのは嫌だな…みたいな事をぐるぐるループして考えていた気がする。当時は認知症なんて言葉はなく、ボケとか痴呆症とか言ってた時代。 ここまでのレベルの認知症の人間が実際は何をどう考えてるかって、たぶん誰にも分からないし、分かる術もないと思う。動物や虫や魚が実際何を考えてるんだろうを想像するのに近いというか。主人公の一人語りの感じは、もしかするとリアルではないのかもしれないが、すごくリアリティがあった。話の流れの中で、すぐに話が堂々巡りになってしまう強めの症状が出ている時期もあれば、ある時期の思い出を回顧する部分ではよどみなく語り続けられたりと、そういう症状の波にもリアリティを感じた。 この感情は主人公視点、ひいては主人公になる事でしか味わえない、ある意味ホントの映像不可作品ってこういう作品なんじゃ。

Posted byブクログ

2024/05/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

認知症のおばあさんの長い人生。 デイサービスのみっちゃんや訪問介護のみっちゃんたちは明るくて優しい。 時々様子を観にくる嫁は、うなぎを食べて長生きしろと言いながら、相続がどうとか言っている。 一人息子の健一郎はなかなか会いにきてくれず、嫁に聞くと2年前に自殺したと何度も教えてくれる。 乱暴だった父、耐えて耐えて死んでいった母、イカサマなパチンコ屋をやっていた兄と、兄の女だった広瀬のばーさん。 貧しい生活のなか、ミシン仕事に集中していた日々。 たったの3歳で死んでしまった、娘のみっちゃんこと、道子。 なんとか書き終えた遺言書と、目の前に広がる花の光景。 面白かった。 男性は先に死んで、残された女性の人生って、なんなんだろう。介護やだ。するのもされるもの。。。人生は果てしなく長いのかなあ。

Posted byブクログ

2024/06/02

老いとか、生きるとか死ぬとか。あれこれと考えさせられる。 生きるのはとてもたいへんな事だらけだけれど、悪い人は沢山いるけれど、意外と捨てたもんじゃないんだなと思った。 幸せな人生だったかどうかは本人にしかわからないのだ。

Posted byブクログ

2024/04/07

最初は読みずらさを感じたが、ケアマネージャーの作者だからこそ、書けた作品のように感じた。また、リアリティもそこには、あるのだと思った。

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2024/04/01

認知症を患い、身体機能も衰え、人生の終焉に向かうカケイ。その語りは、不思議なほど生命力に溢れている。それは優しいおばあちゃんがお茶菓子出しながら語りかけてくるようなものはなく、有無を言わせぬ迫力でもって顔面を固定されて対面で聞かされているような感じである。カケイが語り始めたら、も...

認知症を患い、身体機能も衰え、人生の終焉に向かうカケイ。その語りは、不思議なほど生命力に溢れている。それは優しいおばあちゃんがお茶菓子出しながら語りかけてくるようなものはなく、有無を言わせぬ迫力でもって顔面を固定されて対面で聞かされているような感じである。カケイが語り始めたら、もういっときも目を逸らすことは許されない。 カケイの語りがこんなにも強いのは、著者がケアマネジャーとして向き合ってきた老人の集合体がカケイだからではなかろうか。 読む前と後でタイトルに抱く感情が変わりますねぇ…

Posted byブクログ

2024/03/31

認知症を持ち、介護を受けて生活している高齢のカケイさん。 彼女の視点で日常が進みつつ、カケイさん自身がこれまでの人生を思いかえす物語。 作者の永井さんはケアマネジャーの仕事をしながら今作を執筆したとのこと。 読み始めてまず、文章の読みにくさを感じた。文章は全て地の文で進み、語り...

認知症を持ち、介護を受けて生活している高齢のカケイさん。 彼女の視点で日常が進みつつ、カケイさん自身がこれまでの人生を思いかえす物語。 作者の永井さんはケアマネジャーの仕事をしながら今作を執筆したとのこと。 読み始めてまず、文章の読みにくさを感じた。文章は全て地の文で進み、語りはあちこちに話題が飛んで、一文がやたら長い文章も度々あったからだ。 数ページ読んで、この物語は徹底して認知症の女性の目線を描こうとしているのだということが分かる。 長い人生を生きてきた女性の、これまでの人生を聞かせてもらっているような感覚があった。そのためカケイさんの言葉には重みが感じられて、特別な言葉ではなくても心に残るものがあったように思う。 ラストは切なさがありつつも、「良かった」と思える素敵なものだった。 認知症を持つ方のなかには、カケイさんのような世界を生きている方もいるのだろうと思う。 色々な世界を生きる人に思いを馳せ、その人の世界や人生を知ろうとする姿勢を持てる自分でありたいと感じた。

Posted byブクログ

2024/03/28

介護についているからこそ書ける物語。一生分をこの物語に乗せて、他者の中にもある生き様を、こういう経過をとるんだよ、と教えてくれてくれる様な物語である。誰にでもある生き方を俯瞰して読むのは、では、自分はどう生きるか? を問われているよう感じるね。人に対して優しく接することができる人...

介護についているからこそ書ける物語。一生分をこの物語に乗せて、他者の中にもある生き様を、こういう経過をとるんだよ、と教えてくれてくれる様な物語である。誰にでもある生き方を俯瞰して読むのは、では、自分はどう生きるか? を問われているよう感じるね。人に対して優しく接することができる人になりたいね。執着しないで生きることかな。

Posted byブクログ