改良 の商品レビュー
文体がとても美しい。水が滞りなく流れるような、そんなイメージ。最後の章は一気読み。暴行シーンもとても美しく感じたのは、この物語を語る主人公が「美しさ」だけを求めていたからか? 平野啓一郎氏の解説もセットで読むべし、と思った。「納得」の文章世界を体験できた。
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人はそれぞれに描き出したルールを持つ。それを自分自身や相手に強制することで納得させ、日々を送る。世の中には強制させられたらそれを受け入れてしまう人がいる。(私自身がそうであるように)これは社会的に問題視されるルッキズムや”普通”に対する考えにも通ずるところがある。世間一般的に言われる”普通は”という思想は人によって異なることがある。それを理解していながらも私たちはその普通を知らないうちに強制していたり受け入れてしまっていたりする。だからこそ、どこに自分があるのかが分からなくなってしまうのだと思う。 するべきはまず、自分の”本当”を知り、改良していくことなのかもしれない。
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『破局』に続いて二作目。 こちらも大変面白かった。人に対する世間の外見の評価、とりわけ女性に対するそれは本当に厳しくそれが生きづらさに繋がるのは女性である私も私も身をもって体験するところである。 美醜=人間の価値 に囚われていた主人公だが、その価値観から脱却できるのだろうか。
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遠野遥さんの本を初めて読みましたが、とんでもなく 引き込まれました。 ものの2時間で読める軽さなのにまるで主人公の人生をすべて追体験したかのような読後感。本当に感動すら覚えました。 ゆるやかに絶望しながら生きる大学生「私」の納得して生きる部分と、理不尽に納得させられる様を...
遠野遥さんの本を初めて読みましたが、とんでもなく 引き込まれました。 ものの2時間で読める軽さなのにまるで主人公の人生をすべて追体験したかのような読後感。本当に感動すら覚えました。 ゆるやかに絶望しながら生きる大学生「私」の納得して生きる部分と、理不尽に納得させられる様を追っていく物語。 男性であっても女装したい、美しくなりたいと願う「私」。それによる他者からの決めつけや性的暴行に抗えない「私」。その姿をみて我々、読者がなにを思うのか。 それを静かに強く問われているような作品でした。 まじでオススメです!
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幼少期の性の芽生えや裸を見られたくないという自意識から物語が始まっていき大学生になると健全に性的嗜好を消費し、美しくなりたいという願望から女装をする。努力をし若く美しい姿へと変われた矢先に理不尽な性暴力を受けるシーンは身も心もへし折られ、淡々とした日常を一気にひっくり返す。単純な...
幼少期の性の芽生えや裸を見られたくないという自意識から物語が始まっていき大学生になると健全に性的嗜好を消費し、美しくなりたいという願望から女装をする。努力をし若く美しい姿へと変われた矢先に理不尽な性暴力を受けるシーンは身も心もへし折られ、淡々とした日常を一気にひっくり返す。単純なルッキズム批判に終わってないところに読み応えがありました。
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短くて、話も淡々と進んでいくため一気読みしてしまった。とても面白かった。以前、『破局』を読んだがそれと同じようにですます調で話が進んでいったため、主人公の実際の喋り方とかなり異なり、すこし違和感を覚え た。 つくねの「ブスじゃなかったらする必要なかったんじゃないかって」という言葉は重く響いた。私も日本で暮らしていてルッキズムに支配された国だと感じたことは何度かある。ブスだということが、悪であるかのように思えるこの国は異常だと感じた。 最後、主人公が強姦まがいのことをされるシーンは、グロテスクだった。なぜあのナンパしてきた男はあそこまで怒っていたのかもわからないし、執着したのかもわからなかった。
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めくるページは決して軽くはない。 気持ちは晴れやかになるどころか反対にどんより重くなるばかりで、主人公が凄惨なシチュエーションに陥るあたりからは特に読み進めるのが、しんどい。 それは、描写があまりに直截的であり、剥き出しに過ぎるから、ともちろん言えるのだが、決してそれだけでなく、人により濃淡こそあれ、読者それぞれが"我が事"として自らを重ね合わせることになるからだ。 自分の人生とはまったく関係がない、接点などなさそうな物語に見えたとしても、必ずどこかに自身の生にフックする要素が潜んでいる。 そして心に引っ掛かってくるその何かは、読む人にとって決してポジティヴなものではなく、どちらかと言えば思い出したくないもの、積極的に他人に明かしたくはないものであるから、読んでいて苦しくなる、そんな普遍性を持った作品である。 答えは既に出ているので後出しじゃんけんになるが、このデビュー作をしたためた小説家は例えば遠からず芥川賞などを取って広くその文学性が評価されるだろう…と言いたくもなる。 文庫巻末に収められた平野啓一郎氏の解説がまた名文であり、読者が漠と感じていたであろう主人公のパーソナリティに対する印象を言語化して明瞭に説明している。 深く納得。
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一気読み! 平成生まれの芥川賞作家はやはり天才。 心理的に、男性?女性?と、悩むようなことも、あまりにも簡単に書き上げている。
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機械のような文体のなかで、比喩が入るところが好き。その入れ方が上手い。社会に対する考えみたいなものを、小説に落とし込めるのがかっこいい。読んでいるのはひとりの人間のことなのに、読み終わって見えてくるのが、ひとりの人間だけの世界に留まらない。私の場合は、それが自分にも広がってきた。...
機械のような文体のなかで、比喩が入るところが好き。その入れ方が上手い。社会に対する考えみたいなものを、小説に落とし込めるのがかっこいい。読んでいるのはひとりの人間のことなのに、読み終わって見えてくるのが、ひとりの人間だけの世界に留まらない。私の場合は、それが自分にも広がってきた。 自分の生活のなかで、気になっているけど気にしていないような、見えているのに見ていないような、そういう気持ちの悪いものにもっと目を向けて、私もそれを言語世界に表してみたい。
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たまにいる「なにを考えているかわからない人」が どんなふうに見えてどんなふうに感じているのかが 淡々と描かれている様がある意味でリアル 誰しもの「自己中心的」で世の中が形成されている
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