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批評の教室 の商品レビュー

3.9

80件のお客様レビュー

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2022/01/02

小説や映画作品を、チョウのように軽いフットワークで理解し、蜂のように鋭い視点で読み解く批評の仕方を身につけられる本。 批判=ヘイト、議論=論破と考えがちな風潮が広がる中、正しい批評のフォームを身につけることは、本質を見極める力を養成し、思考の原点に立ち返ることができる。 「作...

小説や映画作品を、チョウのように軽いフットワークで理解し、蜂のように鋭い視点で読み解く批評の仕方を身につけられる本。 批判=ヘイト、議論=論破と考えがちな風潮が広がる中、正しい批評のフォームを身につけることは、本質を見極める力を養成し、思考の原点に立ち返ることができる。 「作者との対話」と言われるように、これは一種のコミュニケーションなので、無理にニュアンスやメッセージ性を読み取るのではなく、会話をするような感覚で向き合えると理想。 個人的にも知ってる作品が多かったので、勝手にテンションが上がって楽しく読めたし、そういう捉え方があったか、と勉強になった。 1. 精読する 批評をする上で、解釈に幅が生じるのは言うまでもないが、ここで一番やってはいけないミスは誤読による事実誤認。価値ある批評をするためにもファクトはしっかり抑えることが重要。 加えて作者と読者(自分)の距離感も意識できると全体像を掴みやすくなる。一般的に「語り手=作者の意向の反映」や「この作品のメッセージは何か?」といったような捉え方をしたくなるが、作者の作品に対する支配性を排除することで、読者は自由な読解が可能になる。本書では「とりあえず作者には死んでもらおう」といった言い方がなされており、自分なりに受容することで先入観にとらわれない読解ができる。 2. 分析する 作品の本質を追求するには、批評理論を理解することで、深い分析をすることができる。批評理論とは作品の読み解きというゲームの勝ち方を探す戦略のことを指し、「作品を面白く分析する」ことをゴールに設定する。時系列、人物相関図、物語の要素を分解など分析方法は多岐に渡る。また作品を同じ批評理論で切れるとは限らず、"批評における勝ち方"も定まっているわけではない。自分なりの方法を確立して、核心をつけるよう努める。 3. 書く 1、2が終わったら、実際に批評を書いてみる。これはライティングにも関連してくることだが、ポイントは自由にのびのびと書きたいという欲望を捨て、ターゲット層を想定すること。批評は一種のコミュニケーションなので、方向性を定めなければ何の批評なのかがよく分からなくなってしまう。 4. コミュニティをつくる ー 実践編 批評が書けたら、それを基に議論をする。人と意見を交換することで作品の周りにコミュニティができる。

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2021/12/31

批評とは何なのか、単なる感想とは何が違うのか、そのポイントがよく理解できました。本格的な批評を書く機会はなかなか少ないと思いますが、本書の内容を知ることで、ただ漫然とコンテンツを消費するのではなく、より深く味わうことができるようになるのではないかと思いました。

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2021/12/20

文学・演劇・映画を想定して読んでいましたが、最後には仕事でも必要な視点に思えました。先行する事例を抑えること、「規則にこだわると改善が見込めない場合はルールを無視しても改善すべき」(172頁)であることの前提がルールを全部理解していることも、批評にも仕事にも応用できる考え方に思い...

文学・演劇・映画を想定して読んでいましたが、最後には仕事でも必要な視点に思えました。先行する事例を抑えること、「規則にこだわると改善が見込めない場合はルールを無視しても改善すべき」(172頁)であることの前提がルールを全部理解していることも、批評にも仕事にも応用できる考え方に思いました。

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2021/12/20

批評により作品への理解が深まる。 それを知った後だと、某政治家の「批判なき政治」というツイートの空虚さがより際立つ。

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2021/12/14

ちゃんとした本の読み方を学びたく読んだ。分かりやすく、これならできるかもと思わせてくれる。最後に挙げられてる例は少し鼻に付くというか、目線落としてくれても良かったかと。

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2021/12/05

作品(文学、演劇、映画、など)の批評の仕方を、初心者向けに解説している本。著者の専門は演劇のフェミニスト批評とのことだが、汎用性の高い内容でとても学びがある。自分が、読書によって感情を確かめたり自分の中で反芻したり抽象的なエッセンスを抽出したりすることが好きなこともあり、読書術と...

作品(文学、演劇、映画、など)の批評の仕方を、初心者向けに解説している本。著者の専門は演劇のフェミニスト批評とのことだが、汎用性の高い内容でとても学びがある。自分が、読書によって感情を確かめたり自分の中で反芻したり抽象的なエッセンスを抽出したりすることが好きなこともあり、読書術という観点で参考になった。批評は、読書術とは異なり、自分なりのオリジナリティを見つける作業でもあるということに気づいた。

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2021/12/03

自分が想像していた内容と違った。日本では批判的に読むことを教わらないのでその辺りを知りたかった。あとは、映画や物語のネタバレが結構あるので注意が必要。

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2021/11/30

各章冒頭の挿絵や小見出しがどのように回収されるのかが気になってフィクション(とりわけミステリー)を読んでいるときのように、どんどん先が読みたくなるし、本文で紹介したポイントを本文で実際に使ってみせながら次のポイントを紹介していくという、非常にテクニカルかつ教育的な文章構成。巧いな...

各章冒頭の挿絵や小見出しがどのように回収されるのかが気になってフィクション(とりわけミステリー)を読んでいるときのように、どんどん先が読みたくなるし、本文で紹介したポイントを本文で実際に使ってみせながら次のポイントを紹介していくという、非常にテクニカルかつ教育的な文章構成。巧いなぁと何度も思わせられる本でした。 読んでよかった。どのページも線引きだらけになるほど学ぶことが多かった。しかしそれ以上にあと1週間早く読んでいれば…という後悔が強い。 チューターをしている高校の現代文の先生が、『批評の教室』に乗った授業をしていて芥川『羅生門』の批評という課題が出ていた。 先生のすすめに応じて月曜日、1年生の男の子が相談に来てくれた。彼は A. 下人が抱いてる恐怖心 B. 下人と老婆の年齢差 に注目して批評を書こうとしていた。話を聴きながら年齢差よりもむしろ恐怖心の方により注目しているように感じたのでそちらに時間を割いて相談した。 恐怖心と年齢差についてはある程度文章になっていたのだが、その下にゴーリキー『どん底』の中心人物ペーペルと下人の比較を試みたメモがあった。相談に来てくれた生徒はロシアで14年間過ごしていたので、おそらく自分の経験を活かした着眼点だったはず。 批評について何もわかっていなかった私は a. 恐怖心、年齢差、ゴーリキー『どん底』との比較の3つ全てをA4で2枚の批評に盛り込むのは難しい b. 3つのうち、恐怖心に最も注目している ということを話しながら恐怖心に焦点を当てる方向に話を誘導指定ました。でも実際には『羅生門』の批評なのに『どん底』という別作品を持ち出してしまったら『羅生門』:『どん底』=1:1の文学/作品比較になってしまうのではないかと思ってしまったのが一番の理由でした。 切り口を1つに絞るという点ではまるっきり誤りではなかったかもしれないけど、セッションの前に私が『批評の教室』を読んで臨んでいれば、ゴーリキーの『どん底』と比較するというアイディアも肯定的に受け止めながら、ニュートラルなチュートリアルができたのではないかとすごく反省しました。 次回以降は同じ課題について相談してくる生徒に対して同じ過ちを犯すまいと、急いで『批評の教室』を一読したのですが、課題締切までにその機会はありませんでした。悔しいし申し訳ない。

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2021/11/23

著者は洋楽をジャンルを問わず聴く洋楽マニアである。フェミ批評を得意とするが理不尽な言いがかりで炎上するなど風変わりな経歴を持つ女性批評家だ。その著者が批評のいろはを1から丁寧に解説し、最後に自身の学生とディスカッションするという一冊である。 この作品の特徴は引用の多彩さにある。小...

著者は洋楽をジャンルを問わず聴く洋楽マニアである。フェミ批評を得意とするが理不尽な言いがかりで炎上するなど風変わりな経歴を持つ女性批評家だ。その著者が批評のいろはを1から丁寧に解説し、最後に自身の学生とディスカッションするという一冊である。 この作品の特徴は引用の多彩さにある。小説からの引用だけでなく、ロックバンドの歌詞、批評家の著作、映画やドラマなど多岐に渡る。中でもシェイクスピアからの引用が多く、著者のシェイクスピア愛が嫌というほど伝わってくる。また、ドクターフーのファンである評者にとって、同作屈指の名作である「暖炉の少女」が解説されたことに著者のセンスを感じた(かなり上から目線である)。 私のような評者入門者にとって非常に取り組みやすい内容で、いざこの場にそれを実践しようと試みたわけだが、果たして著者に褒められるような批評になっただろうか。この著書にあるコミュニティの形成とはまさしくこの場であり、この評を読んだ者に少しでも感銘を与えることができれば私の最大の喜びである。

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2021/11/18

本や映画、舞台などを見るにあたり、効果的に読む方法はきっとそれをどうインプットするか、アウトプットするかを知るのが必要だなと思って買った本。 批評の初学者向けと書いてあったとおり、批評の手順について丁寧に書いてありました。 とはいえ、当たり前の話ですが、批評についてきちんと論...

本や映画、舞台などを見るにあたり、効果的に読む方法はきっとそれをどうインプットするか、アウトプットするかを知るのが必要だなと思って買った本。 批評の初学者向けと書いてあったとおり、批評の手順について丁寧に書いてありました。 とはいえ、当たり前の話ですが、批評についてきちんと論じてある内容なので、 大学の講義を聞いてるかのような、少し懐かしい気持ちになりました。 新書を読むのはあまり得意ではなく、作者の専門性と知識量にとにかくついていけなくて置いてきぼりになりがちで、 この本においても読んでいない本や観ていない映画が題字に出てきて少し気後れしましたが、 何故かその後の内容がよく分かって、どんどん読み進めることが出来ました。 これからに生かせることはそう多くないかもしれませんが、 とてもいい本だと思いました。

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