国宝(上) の商品レビュー
1964年、珍しく長崎に大雪が降ったその元旦、丸山町にある老舗料亭「花丸」で行われる立花組の新年会。その最中に起きた凄惨な抗争事件で組長・立花権五郎が命を落とす。長男の喜久雄は14歳。やがて彼は大阪の人気歌舞伎役者・花井半二郎のもとに預けられた。任侠の一門に生まれた少年がその美貌...
1964年、珍しく長崎に大雪が降ったその元旦、丸山町にある老舗料亭「花丸」で行われる立花組の新年会。その最中に起きた凄惨な抗争事件で組長・立花権五郎が命を落とす。長男の喜久雄は14歳。やがて彼は大阪の人気歌舞伎役者・花井半二郎のもとに預けられた。任侠の一門に生まれた少年がその美貌と信念をもって多くの人々を巻き込み、芸の道をひた走り、やがてはこの国の宝となる。その人生の舞台の幕が今、上がる――。 抗争で父を失い、その敵討ちを目論むも失敗。故郷・長崎にも居所を失くした喜久雄は、縁あって大阪の人気歌舞伎役者・花井半二郎のもとに預けられる。半二郎の長男・俊介は4歳から舞台に立つ梨園の御曹司。いずれ半二郎の名跡を襲名する身でもある。極道と梨園。生い立ちも持てる才能もまったく違うふたりだが、お互いをうらやみながらも彼らはともに切磋琢磨し稽古に励む。芸の前に血へのこだわりは無意味なはず。しかし、梨園の伝統はそれを決して許さない。 物語の舞台は長崎に始まり、大阪、そして東京へ。高度経済成長を経て変わっていく日本と、舞台から映画、テレビへと転換してゆく芸能界の変遷を背景に、技を磨き、道を究めようともがき続ける男たちの血と華の絆を描く。 「芸は身を助く」というけれど、芸はそれ以上に苦しみも与えるもの。「俺たちは踊れる」だから「もっと美しい世界に立たせてくれ」という、才能あふれる若き役者の魂の叫びが、美しい渦となって読者の心を物語に引きずり込む上巻。圧巻。
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波瀾万丈の人生の中、芸に全てをかける喜久雄。汗や涙、苦しみ、人情がひしひしと伝わってくる。 歌舞伎のことは全く知らないが、ひきこまれる。 俊介とのこれからの関係も気になるので、下巻もいっきに読んでしまいそう。
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序盤の長崎弁(さすが)から、大阪ことばの軽妙な会話。さらに独特な語り口調の地の文。上下巻の大作なのにするすると読めてしまう。
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待ちに待った文庫化。 期待を裏切らない面白さ。 主人公の喜久雄は、若くして結構な立場に追い込まれていくが腐らずに成長していく姿がグッと心を掴みにくる。ただ、喜久雄自体の感情の動きはつまびらかに描かれているわけではないので行間から読み取れる感じがまたなんとも想像力を掻き立てられる...
待ちに待った文庫化。 期待を裏切らない面白さ。 主人公の喜久雄は、若くして結構な立場に追い込まれていくが腐らずに成長していく姿がグッと心を掴みにくる。ただ、喜久雄自体の感情の動きはつまびらかに描かれているわけではないので行間から読み取れる感じがまたなんとも想像力を掻き立てられる。
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古典芸能である歌舞伎についてほとんど知識がないため、読むことを躊躇った作品。 しかしそんな不安も読み進める内に見事に払拭されていった純文学でした。
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極道の家に産まれた主人公が歌舞伎の世界で奮闘する物語。 怒涛の展開、スピードで織り成されるストーリーは1つの舞台を見ているような感覚。 今は壁にぶつかっている主人公が下巻でどんな役者に成長していくのかがとても楽しみ!
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単行本の頃から気になっていたもの。期せずして、”渦”に引き続き、古典芸能もの。でもその下地があったからこそ、本作では、すんなりとその世界観に入り込むことに成功。浮沈の激しい芸能界を、繰り返し起こる色んな出来事をまぶしながら、テンポ良く語られていく結構。ここまでは、とりあえずの人間...
単行本の頃から気になっていたもの。期せずして、”渦”に引き続き、古典芸能もの。でもその下地があったからこそ、本作では、すんなりとその世界観に入り込むことに成功。浮沈の激しい芸能界を、繰り返し起こる色んな出来事をまぶしながら、テンポ良く語られていく結構。ここまでは、とりあえずの人間関係が語られてきて、それを軸にしたドラマは下巻に譲る、って感じかな。今後の展開に期待大。
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たくさんの人が生きて、笑い、泣き、死に、その全てを糧に喜久雄は芸道を突き進む。 ヤクザの抗争、芸道との出会い、修行の日々、栄光とスキャンダル、歓喜と嫉妬、様々な人生が混じり合う。 血縁という一点で、結びつく芸道と任侠の世界の重ね方があまりに見事。 しかも大量のエピソード、登場人物...
たくさんの人が生きて、笑い、泣き、死に、その全てを糧に喜久雄は芸道を突き進む。 ヤクザの抗争、芸道との出会い、修行の日々、栄光とスキャンダル、歓喜と嫉妬、様々な人生が混じり合う。 血縁という一点で、結びつく芸道と任侠の世界の重ね方があまりに見事。 しかも大量のエピソード、登場人物が投げっぱなしで回収されない。それこそ、人生である。
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初読み作家、文庫化を待っていた本書。 任侠の家に生まれた喜久雄だか、上方歌舞伎の一門へ。任侠の坊ちゃん喜久雄と、梨園の坊ちゃん俊介の若き二人の青春篇の上巻は、しっかりと下巻へ引き摺り込んでいく。 文章の語りが、歌舞伎の解説イヤホンガイドのようで、作者の意図を感じた。さて、下巻...
初読み作家、文庫化を待っていた本書。 任侠の家に生まれた喜久雄だか、上方歌舞伎の一門へ。任侠の坊ちゃん喜久雄と、梨園の坊ちゃん俊介の若き二人の青春篇の上巻は、しっかりと下巻へ引き摺り込んでいく。 文章の語りが、歌舞伎の解説イヤホンガイドのようで、作者の意図を感じた。さて、下巻だ!
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