国宝(上) の商品レビュー
吉田修一らしからぬ語り口が、 そもそも舞台の口上かのようで、 最初こそ読みにくさを覚えたものの、 ぐいぐい世界観に引き込まれていく。 もともと映像的、映画的な文章を書く印象だが、 ヤクザと歌舞伎の世界を、 喜久雄、徳次、俊介の青春が、 とても鮮やかに、雄々しく、生々しく、 時代...
吉田修一らしからぬ語り口が、 そもそも舞台の口上かのようで、 最初こそ読みにくさを覚えたものの、 ぐいぐい世界観に引き込まれていく。 もともと映像的、映画的な文章を書く印象だが、 ヤクザと歌舞伎の世界を、 喜久雄、徳次、俊介の青春が、 とても鮮やかに、雄々しく、生々しく、 時代の空気とともに駆け抜けていく。 歌舞伎の知識が私にあれば、 もっともっと楽しめるだろうなぁ。 抜群に面白い。
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レビューは下巻でまとめて。 文体と世界観に慣れるまで少し時間を要しましたが、とてつもなく面白い作品に出会ってしまった年末でした。 下巻が楽しみで仕方ありません。 2022年13冊目
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冒頭から、なかなか凄惨なシーンだったので読めるかな?と不安だった。 でも、素晴らしい才能の二人のに魅了された。 下はとんな展開になるのかドキドキ。
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語りの妙と魅力的な人物の一挙一動にどんどん物語の中に引き込まれていく。上巻青春編は喜久雄14歳から30歳までが描かれている。長崎の立花組の新年会から物語は始まり、喜久雄の父親であり立花組組長の権五郎が弟分の辻村に殺されてしまう。新年会には辻村が連れてきた歌舞伎役者の二代目花井半二...
語りの妙と魅力的な人物の一挙一動にどんどん物語の中に引き込まれていく。上巻青春編は喜久雄14歳から30歳までが描かれている。長崎の立花組の新年会から物語は始まり、喜久雄の父親であり立花組組長の権五郎が弟分の辻村に殺されてしまう。新年会には辻村が連れてきた歌舞伎役者の二代目花井半二郎も参加しており、それがひとつきっかけとなり喜久雄は辻村の紹介で大阪の花井家に世話になる。 旅立つまでにも仇討ち騒動があったり、花井家で修行するようになってからの実子俊介とのやり取り、喜久雄の世話役徳次や天王寺村の弁天の人柄など魅力満載。権五郎の後妻マツの大親分の妻としての心意気と、喜久雄を育てた母としての決意には思わず涙ぐんでしまう場面もあった。二代目半二郎の人生と三代目を襲名した喜久雄2人の女形を通して描かれる熱量も相当なもので、順風満帆とはいかないからこそ読んでいるこちらも喜怒哀楽を満載にして物語に入り込んだ。さて、下巻も楽しみだ。
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極道の息子と歌舞伎役者御曹司の波瀾万丈物語だが、芝居の語りを読んでいるようで早い展開に息付く暇もない。若き二人の辿る人生物語もあり得ない展開だが、任侠の世界はこうなのか、上方歌舞伎ってどうなんだ、などなど。歌舞伎役者を主人公とした青春の門、早く次を読まねば。
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頭の中に映像が鮮やかに浮かぶ。学生時代から最後国宝となる迄の人生のアップダウン。 読んでいて涙が出るほど悔しかったり嬉しかったり不安になったり、「人生って…」と考えされられました。 とにかく素晴らしい本だと思いました。
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まるで芝居を観ている感覚で、物語に没入しました。文体や構成が歌舞伎っぽく、その代表が人物の会話の合間にある口上だと思います。(例 〜と申しましょうか、〜なのでございます) お陰で、歌舞伎や伝統芸能のもつ堅苦しさや昭和の古臭さへの抵抗もなく、加えて展開の面白さに、するする読み進...
まるで芝居を観ている感覚で、物語に没入しました。文体や構成が歌舞伎っぽく、その代表が人物の会話の合間にある口上だと思います。(例 〜と申しましょうか、〜なのでございます) お陰で、歌舞伎や伝統芸能のもつ堅苦しさや昭和の古臭さへの抵抗もなく、加えて展開の面白さに、するする読み進められました。 片や人気歌舞伎役者の御曹司、片や九州にその名を馳せた任侠一家の跡取り息子。二人は切磋琢磨しながら芸の道に励み、時代の寵児として取り上げられるようになります。 しかし、師匠の事故・病気をきっかけにして二人の明暗が分かれ、運命が大きく動いていきます。出奔、暗転、そして再開…、まさに上巻の副題〝青春篇〟の如く、苦悩の先の希望を期待しながら、展開から目が離せませんでした。 下巻〝花道篇〟を早く手に取りたく、気がはやります。
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※このレビューにはネタバレを含みます
吉田修一(2018年9月単行本、2021年9月文庫本)。上巻/青春篇、下巻/花道篇に分かれている大作の上巻。 凄い小説だ。長崎の任侠の家に生まれた一人の男が歌舞伎の世界に入り、頂点を極めるまでを描いた作品。 主人公の立花喜久雄が14歳の任侠時代から63歳で人間国宝になるまでの大河ドラマで、上巻/青春篇は14歳から30歳までの話だ。 舞台は長崎から大阪、そして東京へと移っていく。 最初から物語の中にぐいぐい引き込まれる。惹きつける魅力的なストーリー展開と情景描写が凄い。目の前に今起こっている情景がはっきり見える。歌舞伎の演目の描写も、歌舞伎なんて全く知らなくても演じている役者が見えるのである。 そして色んな登場人物が喜久雄を支える個性設定が共感できて気持ちいいのだ。特に長崎の任侠時代からずっと喜久雄を支え続ける2歳年上の徳治の存在が強く印象に残る。喜久雄は歌舞伎の世界でどうなっていくのかは想像つくが、徳治はどうなっていくのか非常に気になるのだ。もう一人同じく長崎からの付き合いで喜久雄より1歳年上の女性の春江だ。幼い頃から苦労しただけあって若い時から自立した女性で色んな人を支えて生きる頼もしい女性だ。 1964年元旦の任侠の新年会、喜久雄14歳の時、抗争で「立花組」組長の父親が殺され、その新年会に同席していた上方歌舞伎の大名跡「丹波屋」二代目花井半次郎との縁で喜久雄は一門へ入ることになる。喜久雄15歳の時で、同い年の半次郎の息子の大垣俊介(花井半弥)と出会い、任侠のぼんと梨園のぼんが歌舞伎の世界に青春を捧げる物語が始まる。 幾多の登場人物で二代目花井半次郎(四代目花井白虎)と俊介以外で喜久雄に大きく関わって来るのは、長崎で同じ立花組の2歳年上で常に喜久雄を守る早川徳次、喜久雄の女だった1歳年上の春江(後の俊介の女房)、立花組の弟分「愛甲会」の若頭で後の「辻村興産」の代表取締役社長となって喜久雄を援助する辻村将生(実は秘密がある)、大阪へ出て来てから出会ったお笑い芸人の弁天(後に売れっ子大物タレントになる)、半次郎の後妻の幸子(日本舞踊相良流家元、俊介と共に喜久雄も支える)、稀代の立女形「遠州屋」六代目小野川万菊、万菊と人気を二分する立女形の姉川鶴若、関西歌舞伎のもう一つの名家の生田庄左衛門、日本俳優協会理事長で江戸歌舞伎の大看板である吾妻千五郎とその次女の彰子、京都の舞妓の市駒、市駒が産んだ喜久雄との子の綾乃、興行会社「三友」の社長の梅木と新入社員の竹野、地方巡業での喜久雄の才能を見出す劇評家で早稲田大学の藤川教授。これらの人物が喜久雄の人生に大きく関わって来る。 喜久雄15歳で大阪の二代目花井半次郎の元で歌舞伎の修行を始め、17歳で半次郎の部屋子となり花井東一郎を襲名する。そして喜久雄20歳の時、半次郎が事故に遭ってしまい代役を俊介ではなく喜久雄を指名する。失意の俊介はこの時より10年間春江を伴って姿を消す。そして俊介が失踪して3年後、二代目花井半次郎は四代目花井白虎、花井東一郎(喜久雄)は三代目花井半次郎を23歳で同時襲名するのだが、白虎は既に病に侵され襲名披露の場で倒れる。そして喜久雄25歳の時、白虎は70年の生涯を閉じたのだった。 それからの喜久雄の歌舞伎人生の苦難が始まる。白虎の残した1億2000万円の借金を自分が負うことに決めたのだが、喜久雄の後見人になった姉川鶴若の喜久雄に対する処遇がいじめに近いものだった。地方回りに役も傍役ばかりで借金は減るどころか増えるばかりだった。 そんな状況の中で喜久雄30歳になった時、竹野が俊介を見つけて10年振りの再会となる。そして春江とも再会となるのだが、俊介との間に3歳になる子、一豊も一緒だった。俊介の後見人には小野川万菊がつき、喜久雄とは反対に順調にいい役で人気を集めていくのだった。珍しく悔しさを態度に出す喜久雄を吾妻千五郎の次女、彰子が笑顔で訪ねて来る。まだキャピキャピの女子大生だが、これからの喜久雄の人生が大きく変わる予感を醸し出すところで「青春篇」は終わる。
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1964年元旦。長崎の料亭。盛大な立花組の新年会から運命の物語が始まります。組長の息子立花喜久雄は、任侠の家に生まれながらも、その美貌を見初められ、歌舞伎の世界へ。 上巻は、 喜久雄の、極道から梨園へと目まぐるしく変わる怒涛の青春時代を描きます。 流れるような語り口で書かれた...
1964年元旦。長崎の料亭。盛大な立花組の新年会から運命の物語が始まります。組長の息子立花喜久雄は、任侠の家に生まれながらも、その美貌を見初められ、歌舞伎の世界へ。 上巻は、 喜久雄の、極道から梨園へと目まぐるしく変わる怒涛の青春時代を描きます。 流れるような語り口で書かれた文章にぐいぐい引き込まれます。まるでお芝居を見ているよう。 「覚悟してる。俺な、やっぱり歌舞伎が好きでたまらんねん…」 最後まで喜久雄から目が放せません… 下巻が楽しみです。
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主人公の喜久雄の成長を描いた芸道物語…だろうか。 流れるような描写が印象的で格言のような読み手に意図を押し付ける文章が少なく淡々と物語が進むので思いの外読みやすい印象。 まだ上巻だが印象に残るのは喜久雄と俊介の後継者決定までの一連の流れ。半二郎は何を思ってこの決断をしたのか、死...
主人公の喜久雄の成長を描いた芸道物語…だろうか。 流れるような描写が印象的で格言のような読み手に意図を押し付ける文章が少なく淡々と物語が進むので思いの外読みやすい印象。 まだ上巻だが印象に残るのは喜久雄と俊介の後継者決定までの一連の流れ。半二郎は何を思ってこの決断をしたのか、死ぬ間際に何を思ったか。 血は水よりも濃いと言われる歌舞伎の世界で喜久雄がどのようにのし上がっていくのか、下巻に期待。というか、そもそものし上がっていけるのか…。 「貧乏には品がある。しかし貧乏臭さには品がない。」
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