ある男 の商品レビュー
「私とは何か」→「本心」→「ある男」の順で本書読了。 原作を読んだ後に映画も視聴。 映画は十分に内容のあるものだった。しかし、先に原作を読んでしまうと、どうしても心理描写などの物足りなさは否めなかった。 人生を同じ自分としてやり直したいと思ったことのある人は多いと思うが、誰...
「私とは何か」→「本心」→「ある男」の順で本書読了。 原作を読んだ後に映画も視聴。 映画は十分に内容のあるものだった。しかし、先に原作を読んでしまうと、どうしても心理描写などの物足りなさは否めなかった。 人生を同じ自分としてやり直したいと思ったことのある人は多いと思うが、誰かになりすまして生き直したいと思う人はあまりいないのではないかと思う。 他人との戸籍を交換してまで生きようとする、生存能力と言ったらいいのか分からないが、それでも生きたいとする想いに少し驚いた。 私だったら人生を終わらせるなぁと。 颯太が将来、ふと、自分は愛されて育ったのだと、一片の疑いもなく信じられる日が来たなら、それに勝ることはない。 ※引用 ハイライト 「そうですね、……大祐さんの人生と混ざっていくのか、同居してるのか。──そうなると、僕たちは誰かを好きになる時、その人の何を愛してるんですかね? ……出会ってからの現在の相手に好感を抱いて、そのあと、過去まで含めてその人を愛するようになる。で、その過去が赤の他人のものだとわかったとして、二人の間の愛は?」 美涼は、それはそんなに難しくないという顔で、「わかったってところから、また愛し直すんじゃないですか? 一回、愛したら終わりじゃなくて、長い時間の間に、何度も愛し直すでしょう? 色んなことが起きるから。」と言った。
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面白かった。。。 余韻に浸る。そんな読後感。 愛した人は名前も戸籍も他人になりすました「ある男」だった。 「ある男」を掘り下げていく中で、人間の考え方、物事の捉え方について本当に考えさせられる。 また、5年後10年後に読んだら見え方が違ってくるのだろう。人の人生について、自分...
面白かった。。。 余韻に浸る。そんな読後感。 愛した人は名前も戸籍も他人になりすました「ある男」だった。 「ある男」を掘り下げていく中で、人間の考え方、物事の捉え方について本当に考えさせられる。 また、5年後10年後に読んだら見え方が違ってくるのだろう。人の人生について、自分の捉え方が広がっていく感覚は、平野啓一郎の作品の醍醐味とも言えるのだろうか。
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先に読んだ「マチネの終わりに」でも少し感じていましたが、10代の心・幼い子の仕草がとても共感できる細やかさで、思考が自分の未成年時代にさかのぼり、より深く物語に入っていきました。
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現代日本の小説家である平野啓一郎(1975-)の長編、2018年。 僕らの生は、アイデンティティは、何に縛られていて、でも実は何から自由になることができ、そして結局は何が一番大事なことなのか。これまで生きてきた時間、あるいはこれから生きていく時間が、その意味が、どれだけ変容の可...
現代日本の小説家である平野啓一郎(1975-)の長編、2018年。 僕らの生は、アイデンティティは、何に縛られていて、でも実は何から自由になることができ、そして結局は何が一番大事なことなのか。これまで生きてきた時間、あるいはこれから生きていく時間が、その意味が、どれだけ変容の可能性に開かれているか。 「未来のヴァリエーションって、きっと、無限にあるんでしょう。でも、当の本人はなかなかそれに気づけないのかもしれない。僕の人生だって、ここから誰かにバトンタッチしたら、僕よりうまく、この先を生きていくのかもしれないし。」(p313) おそらく作者自身のものと思われる死刑反対論が明確に述べられている。現代日本社会のさまざまな事象を作品に取り込んでいく傾向があるのか、本作でも、死刑、朝鮮人差別などが重要な要素として出てくるが、そうした諸問題に対する作者自身の立場が割とはっきりと表明されており、そこには身も蓋もない自己中心主義を超えた理念的なものが感じられる。 物語の終盤、ある人物にとって文学の存在が人生の困難を克服する縁(よすが)となっていることが、印象的だった。以前、作者が講演会で「文学を読む者は決して世間の大多数ではない。しかし、文学には、少数者の苦悩に対する、不思議な慰めの効果がある。」と話していたことと呼応する。
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あらすじに惹かれて読んでみたけど、色んな人の過去、立場、社会問題が複雑に絡み合ってて理解しながら読み進めるのに時間がかかってしまった...。 自分の身内が「〇〇人はろくでもない」「あの学校の子は不良しかいない」みたいな言い方をよくする人だったので、城戸さんのカテゴリ化する/されるのが嫌って考え方は共感したし印象に残った。 大きな属性だけでひと括りにしてここに所属してる人はこう!みたいなのって結構ありふれてるけど、ダイレクトに差別に繋がる考え方だしなるべくしないようにしたいな...結局人なんて一人一人違う生き物なので (よくTwitterで嫌われてる「主語がデカい」に通じる話かも) 自分に罪は無いのに殺人犯の息子として後ろ指指される人生、苦しすぎる。 彼を知る人の話からは良い人だったのが伝わってくるし、最後の数年が幸せそうで本当に良かった...。もし事故で亡くなってなければ、いつか自分の過去を告白して"原誠"として愛される未来もあったのかな〜原誠視点の描写は無かったから本人の考えは分からないし、墓まで持っていくつもりだったのかもしれないけど。 結局愛に過去は関係無くて、出会ってから何を積み重ねてきたかだと感じた。もし自分が愛する人の過去が他人のものだったとして、これまで過ごした時間は消えないし一緒に未来を歩んでいければいいんじゃないかな〜と思う。 重いし難しいし文体が自分の好みじゃない部分はあったけど、内容を咀嚼しながら読み進めるのが面白い一冊でした。
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「ただ忘れようとしても、忘れられないですよ。嫌な過去がある人は。だから、他人の過去で上書きするんですよ。消せないなら、わからなくなるまで、上から書くんです。」 平野さんの『私とは何か』を読んで、辛く苦しい状態も、自分を構成するたくさんの分人の一つが経験しているものにすぎない、と捉える分人主義的思想を知った。 ただ、その「辛く苦しい状態」が本人の存在を揺るがすほど大きなものであった場合、分人の一つどころか土台となってしまい、その後生じる新たな分人はどうあってもその影響を免れない。そこで必要になるのが、その土台を上書きできる別の人生、ということになる。上書きに利用できるような別の人生は当然、同様の重い過去を伴うが、その捉え方は千差万別、折り合いがつくものを得たところで落ち着くのだろう。しかし、引き受けた他人の過去を細部に至るまで慎重に反芻し言動に反映するその後の人生は、ともすれば浮き上がる自分自身の過去を必死に削いでは繕う、という作業の反復に思え、やるせない。
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差別や犯罪、社会について考えさせられるお話でした。ストーリー自体も面白く、登場人物の考えや行動がリアルで読み応えがありました。
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自分自身の対人コミュニケーションにおける考え方の根幹に影響を与えそうな面白い小説でした。 映画もNetflixで配信しているようなので、どのような描かれ方をしているのか観るのが楽しみです。
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ストーリーに必要?と思う登場人物がいて、話をややこしくしているイメージ 歳のせいか登場人物が大人多い作品が苦手 一度メモりながら読んでみようかな
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平野啓一郎は私には合わないと察した 内容も面白さと単調さがあって読み進むのも時間を要しました 好きな人は好きな表現なんかなぁ。 映画を見てみようかと思います
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