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ライティングの哲学 の商品レビュー

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42件のお客様レビュー

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2024/09/08

本書は4人の共著であり、そのうち『現代思想入門』『勉強の哲学』の著者である千葉雅也氏と、『独学大全』の著者である読書猿氏が参画しており、"書く"ことについて哲学的に論じていそうだということで購入。 本書の構成は大きく3部に分かれており、まず4人の執筆者が&q...

本書は4人の共著であり、そのうち『現代思想入門』『勉強の哲学』の著者である千葉雅也氏と、『独学大全』の著者である読書猿氏が参画しており、"書く"ことについて哲学的に論じていそうだということで購入。 本書の構成は大きく3部に分かれており、まず4人の執筆者が"書くこと"に関しての苦労話を座談会の形で語り合うところから始まり、次に「座談会を経てからの書き方の変化」についてそれぞれの著者が8000字前後で経験談を述べ、最後に当初の座談会から3年程度を経た後に、互いの経験談を読みあったうえで、もう一度座談会の形でそれぞれの執筆論を語り合うという、新書にはあまり見られない構成となっている。 まず率直な感想として、本書のサブタイトルが「書けない悩みのための執筆論」とはなっているものの、著者の4人は元々書くことの達人だということである。 その達人たちの抱える悩みというのが、書くネタが無いから書けないのではなく、書くことや考えることががありすぎるがゆえに、どのように書き進めていったらよいか途方に暮れてしまうといった類の、非常にハイレベルな悩みなのである。 導入の第1部では、ライティングを効率化するためのツールとしてアウトライナーを利用する点は4人の共通点であることから、それぞれの著者がどのようにアウトライナーを利用して執筆しているかという体験談から始まる。 そのため、本書をライティング初心者のための方法論や指南書だと期待して読み始めると、期待外れとなるかもしれない。 また、『ライティングの哲学』と銘打っていることから、書くことに対する普遍的な哲学的考察やアプローチ方法が書かれていることを期待すると、千葉雅也氏の哲学的考察以外は基本的に体験談に基づいて議論が進められていくため、これまた肩透かしを食らってしまうかもしれない。 ただ、書くことの達人と目されるいる人間の書くことに対する悩み、葛藤、心構え、悩みつつも書くためのアプローチなどが赤裸々に綴られているので、それまで書いたことのない事項についてアウトプットしなければならない場合や、書き始めたものの行き詰まってしまった際の参考にはなると感じた。 また、本書の内容とは関係ないが、生成AIによる構造化文書や物語の生成が普及するようになると、"書く"という行為そのものに対する想いや悩みがどのように変化していくのか、AIにものを書かせる場合の新たな悩みや葛藤が生じるのかといった疑問(というより興味)が読了後にふと沸き起こったので、書くことを生業としている知識人の今後の論説を楽しみにしたい。

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2024/09/05

書けない悩みの吐露が、とても有益。結局、モチベーションをどうやって保つか、苦手意識や先延ばしとどう向き合うかなのだなと、精神安定的効果の高い本だった。自他共に認める遅筆堂の主人たちにお薦め。

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2024/08/19

「書く」ことを仕事にしながら「書けない」悩みを抱えた四人の識者が、二度の座談会を通じて新たな執筆法を獲得しようとする過程を追った良書。タイトルの通り、哲学的な視点で「なぜ書けないのか?」「どうすれば書き終えられるのか?」という悩みが赤裸々に語り尽くされている。 自分も月に数十枚の...

「書く」ことを仕事にしながら「書けない」悩みを抱えた四人の識者が、二度の座談会を通じて新たな執筆法を獲得しようとする過程を追った良書。タイトルの通り、哲学的な視点で「なぜ書けないのか?」「どうすれば書き終えられるのか?」という悩みが赤裸々に語り尽くされている。 自分も月に数十枚の小説原稿を書いているため、座談会で語られる産みの苦しみには大いに共感できた。意味もなくWordのレイアウトを調整したり、何時間もかけて副詞の位置を修正したり……本書の座談会では、そうした完璧主義的な強迫観念が〈幼児性〉として一刀両断される。要は「どうせ完璧な文章なんて書けないんだから諦めろ」という身も蓋もない話なのだが、頭では理解しているつもりでも実際に幼児性を放棄しようとすると、これが意外と難しかったりする(現に今書いているレビューですら「人に読まれる」という意識が働くためか、既に何度も修正を加えている)。読者視点に立って文章の読みやすさ・美しさを追求することは本来悪いことではないはずだが、際限なく「もっと書ける」「もっとできる」という万能感に溺れてしまうが故に、悪循環に陥ってしまうのである。 本書では具体的な遅筆の解決策として、様々な執筆論が提唱されている。いずれも突き詰めれば「雑に書いても良いじゃん」「身構えずにラフに書こうよ」という意識変革に帰結するのだが、それぞれ異なる視点を持った識者らによって〈執筆の脱規範化〉や〈断念の文章術〉といった表現に枝分かれしていくのが面白い。無論、こうした観念的な方法論だけでなく実践的な執筆術も多数紹介されている。チェックリストの活用やアウトライナーのようなツール(準‐他者)の導入は、すぐにでも始められる執筆論のノウハウだろう。千葉氏が小説執筆を経て獲得したという文章の脱力=冗長性についての考察も参考になった(余談だが、私は外山滋比古先生の文章が自然体とリズム感の極致だと思う)。とりわけ、読書猿氏が紹介する「ノンストップ・ライティング」の考え方は刺激的だ。本書では自身を画家に喩えるレヴィ・ストロースの言葉が引用されているが、全体の草稿を書き上げる行為を「執筆」ではなく「デッサン」と捉えることで、成果物に対するこだわりを一旦捨ててしまおうという視点は今までの自分になかったものである。『書き手として立つことは「自分はいつかすばらしい何かを書く(書ける)はず」という妄執から覚め、「これはまったく満足のいくものではないが、私は今ここでこの文章を最後まで書くのだ」と引き受けるところから始まる』という戒めの一文が深く身に沁みた。 「書くこと」に苦心している全ての人にお勧めしたい良書ではあるが、少しばかり惜しいと感じる点も。本書の座談会は元々「WorkFlowyというアウトライン・プロセッサの活用法を公開し合う」という趣旨で開かれた企画なので、執筆環境に関する話題がたびたび登場する。各ソフトの有用性は随所で述べられている通りだが、例えばEvernoteは利用料金の高騰と仕様改悪のためユーザー離れが進みつつあるし、WorkFlowyをフル活用するには海外サイトでのクレジットカード決済が求められるなど導入のハードルが少々高い。分筆業に携わっている方はともかく、私のような一般人が気軽に使える(痒いところに手が届く)アウトライナーが紹介されていれば嬉しかったが……こればかりは不満を言っても仕方がないことだろう。

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2024/06/09

作家さん達は、Wordが本当に嫌いなんだな〜 とビックリした 人それぞれ、本当に色々な書き方があるんだ。と感心して 書くことが大嫌いな自分にとっては、とても慰めになった

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2024/05/28

著者4人による座談会→4人それぞれの執筆実践→再びみんなで座談会という構成。 仕事デキる物書きのけっこう具体的な方法論、と思ったけど(実際一つめの座談会はそう感じてとっつきづらかったのだけど)、 それぞれの所感やら苦悩やら挟み、 最後の座談会がとてもよかった。 あとがきの「言語...

著者4人による座談会→4人それぞれの執筆実践→再びみんなで座談会という構成。 仕事デキる物書きのけっこう具体的な方法論、と思ったけど(実際一つめの座談会はそう感じてとっつきづらかったのだけど)、 それぞれの所感やら苦悩やら挟み、 最後の座談会がとてもよかった。 あとがきの「言語は自分のものではない〜」のくだり。これはなんか、もの書く人間にとって絶望のような救いのようなことで。言葉という自然もしくは他者に委ねるということが、個人的に思想に合ってた。

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2024/04/11

「書かないで書く」ということを理解した。実践できるかはわからない。でも、そういう環境の用意というか、習慣を身につけるような行動をしていきたい、と思った。

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2024/04/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

面白い。ユニーク。ハウツー本のようで、その真髄はハウツーしないことという。 文章を書くハックがラディカルな次元で語られている。なのに実践的。 ・規範性の変化。小林秀雄を通して ・締め切りの意味 ・あたかも誰かになったかのように書く ・字数制限 ・オーディエンス ・最初の石を置く。次の石が呼ばれる。最初の石を取り除いて、自己とのつながりを薄くする。 ・もっとという幼児性が厄介。完璧に書くことへの諦めから書けるようになるとも。

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2023/03/14

この本はいかに文章を整えるかとか、読みやすくするかとか、そういった文章術を指南してくれる本ではない。 著者である4人がいかにもがき苦しみながら執筆に取り掛かり、原稿を完成させるのか。その過程を共有しながら、自らの執筆スタイルを振り返るきっかけを与えてくれるような本である。 多筆...

この本はいかに文章を整えるかとか、読みやすくするかとか、そういった文章術を指南してくれる本ではない。 著者である4人がいかにもがき苦しみながら執筆に取り掛かり、原稿を完成させるのか。その過程を共有しながら、自らの執筆スタイルを振り返るきっかけを与えてくれるような本である。 多筆に見える筆者らも、時には原稿に取りかかれず、筆が進まず、締切に遅れることもある… なんだか著名な文筆家たちのそういうリアルな世界が見られただけでも、勇気付けられる本書。 著者らの共通点は「アウトライナーを用いた執筆」だから、アウトライナーというツールをこれからも使う予定がない人には冗長に感じる部分が多いだろう。 私は逆に、本書を通じてアウトライナーの存在を知り、絶対に自分向きのツールだと思ったので取り入れたい。 座右に置いて、書くことが苦しくなったときにまた読み返したい本。

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2023/02/08

決して「ライティング」の「方法」について書かれた書籍ではない。あくまでも、その「哲学」について書かれた書である。だから、具体的なツールや段取りを知りたいと思っても、あまり役には立たない。 ただし、何かを書かなければいけない人、何かを書き続けている人、そんな人にはきっと役に立つ書籍...

決して「ライティング」の「方法」について書かれた書籍ではない。あくまでも、その「哲学」について書かれた書である。だから、具体的なツールや段取りを知りたいと思っても、あまり役には立たない。 ただし、何かを書かなければいけない人、何かを書き続けている人、そんな人にはきっと役に立つ書籍である事は間違いない。 スーッと、サラッと読めてしまうが、真に必要な人が読めば中身の濃い有益な時間になるはずだ。

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2024/03/08

ツールにこだはる、物事を伝へるのが下手な人たち 【追記】『ライティングの哲学』ではさんざん書けない書けないと悩みながら、アウトラインプロセッサについて議論してゐる。これを読んだあとで野口悠紀雄の『「超」文章術』を読んだら、アウトラインプロセッサは書きにくいと書いてあって、思はず笑...

ツールにこだはる、物事を伝へるのが下手な人たち 【追記】『ライティングの哲学』ではさんざん書けない書けないと悩みながら、アウトラインプロセッサについて議論してゐる。これを読んだあとで野口悠紀雄の『「超」文章術』を読んだら、アウトラインプロセッサは書きにくいと書いてあって、思はず笑ってしまった。考へ方の相違がはっきりしてゐる。  ワークフローとか、〆切になるとなぜ書けるやうになるのかとかの、具体的な話は知らなかったのでおもしろく感じた。ほとんど全員Macを使ってゐるので、Winユーザーの私からするともどかしかったけど。  しかし、さすが全員哲学を齧ってゐて、簡単にわかりやすく言へることを、わざわざ誇張的に比喩を用ゐたり、カタカナや熟語を並べたりして、奥深さうに見せかけるのはいかがなものか。有限化だの幼児性だの無能さでフィルタリングだの、要するに限界とか欲とか、自分にできることしかしないってことだよねと思はずにはゐられない。ウィトゲンシュタインの《哲学は涙をこらへるのと同じくらゐ難しい》もさうだが、哲学ってまはりくどい表現が多い、と思った。  だが、いや待てよ、かういふ哲学者はそもそもものを伝へるのが下手なだけなのかも知れないと、ふと思ひついた。  だからかういふ風に、ものが書けない書けないと悩んでゐるのかも知れない。  ものを書くのにソフトやツールにこだはりすぎてゐるやうにしか見えない。まるで、自分がものを書けないのはwordなどのツールのせいだと言はんばかり。  抽象的な理論は、具体的な事例があってこそ導き出せる。一方で哲学のやうに抽象的なものから抽象的な理論を導き出すことはまづ無理で、だからアイデアが降りてくるのを渇望する。書けない理由もそこらへんにあるだらう。  結局この本を読んで一番印象に残ったのは、小泉義之が優秀だといふことだった。

Posted byブクログ