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ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論 星海社新書187
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 星海社/講談社 |
発売年月日 | 2021/07/22 |
JAN | 9784065243275 |
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ライティングの哲学
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3.9
42件のお客様レビュー
本書は4人の共著であり、そのうち『現代思想入門』『勉強の哲学』の著者である千葉雅也氏と、『独学大全』の著者である読書猿氏が参画しており、"書く"ことについて哲学的に論じていそうだということで購入。 本書の構成は大きく3部に分かれており、まず4人の執筆者が&q...
本書は4人の共著であり、そのうち『現代思想入門』『勉強の哲学』の著者である千葉雅也氏と、『独学大全』の著者である読書猿氏が参画しており、"書く"ことについて哲学的に論じていそうだということで購入。 本書の構成は大きく3部に分かれており、まず4人の執筆者が"書くこと"に関しての苦労話を座談会の形で語り合うところから始まり、次に「座談会を経てからの書き方の変化」についてそれぞれの著者が8000字前後で経験談を述べ、最後に当初の座談会から3年程度を経た後に、互いの経験談を読みあったうえで、もう一度座談会の形でそれぞれの執筆論を語り合うという、新書にはあまり見られない構成となっている。 まず率直な感想として、本書のサブタイトルが「書けない悩みのための執筆論」とはなっているものの、著者の4人は元々書くことの達人だということである。 その達人たちの抱える悩みというのが、書くネタが無いから書けないのではなく、書くことや考えることががありすぎるがゆえに、どのように書き進めていったらよいか途方に暮れてしまうといった類の、非常にハイレベルな悩みなのである。 導入の第1部では、ライティングを効率化するためのツールとしてアウトライナーを利用する点は4人の共通点であることから、それぞれの著者がどのようにアウトライナーを利用して執筆しているかという体験談から始まる。 そのため、本書をライティング初心者のための方法論や指南書だと期待して読み始めると、期待外れとなるかもしれない。 また、『ライティングの哲学』と銘打っていることから、書くことに対する普遍的な哲学的考察やアプローチ方法が書かれていることを期待すると、千葉雅也氏の哲学的考察以外は基本的に体験談に基づいて議論が進められていくため、これまた肩透かしを食らってしまうかもしれない。 ただ、書くことの達人と目されるいる人間の書くことに対する悩み、葛藤、心構え、悩みつつも書くためのアプローチなどが赤裸々に綴られているので、それまで書いたことのない事項についてアウトプットしなければならない場合や、書き始めたものの行き詰まってしまった際の参考にはなると感じた。 また、本書の内容とは関係ないが、生成AIによる構造化文書や物語の生成が普及するようになると、"書く"という行為そのものに対する想いや悩みがどのように変化していくのか、AIにものを書かせる場合の新たな悩みや葛藤が生じるのかといった疑問(というより興味)が読了後にふと沸き起こったので、書くことを生業としている知識人の今後の論説を楽しみにしたい。
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書けない悩みの吐露が、とても有益。結局、モチベーションをどうやって保つか、苦手意識や先延ばしとどう向き合うかなのだなと、精神安定的効果の高い本だった。自他共に認める遅筆堂の主人たちにお薦め。
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「書く」ことを仕事にしながら「書けない」悩みを抱えた四人の識者が、二度の座談会を通じて新たな執筆法を獲得しようとする過程を追った良書。タイトルの通り、哲学的な視点で「なぜ書けないのか?」「どうすれば書き終えられるのか?」という悩みが赤裸々に語り尽くされている。 自分も月に数十枚の...
「書く」ことを仕事にしながら「書けない」悩みを抱えた四人の識者が、二度の座談会を通じて新たな執筆法を獲得しようとする過程を追った良書。タイトルの通り、哲学的な視点で「なぜ書けないのか?」「どうすれば書き終えられるのか?」という悩みが赤裸々に語り尽くされている。 自分も月に数十枚の小説原稿を書いているため、座談会で語られる産みの苦しみには大いに共感できた。意味もなくWordのレイアウトを調整したり、何時間もかけて副詞の位置を修正したり……本書の座談会では、そうした完璧主義的な強迫観念が〈幼児性〉として一刀両断される。要は「どうせ完璧な文章なんて書けないんだから諦めろ」という身も蓋もない話なのだが、頭では理解しているつもりでも実際に幼児性を放棄しようとすると、これが意外と難しかったりする(現に今書いているレビューですら「人に読まれる」という意識が働くためか、既に何度も修正を加えている)。読者視点に立って文章の読みやすさ・美しさを追求することは本来悪いことではないはずだが、際限なく「もっと書ける」「もっとできる」という万能感に溺れてしまうが故に、悪循環に陥ってしまうのである。 本書では具体的な遅筆の解決策として、様々な執筆論が提唱されている。いずれも突き詰めれば「雑に書いても良いじゃん」「身構えずにラフに書こうよ」という意識変革に帰結するのだが、それぞれ異なる視点を持った識者らによって〈執筆の脱規範化〉や〈断念の文章術〉といった表現に枝分かれしていくのが面白い。無論、こうした観念的な方法論だけでなく実践的な執筆術も多数紹介されている。チェックリストの活用やアウトライナーのようなツール(準‐他者)の導入は、すぐにでも始められる執筆論のノウハウだろう。千葉氏が小説執筆を経て獲得したという文章の脱力=冗長性についての考察も参考になった(余談だが、私は外山滋比古先生の文章が自然体とリズム感の極致だと思う)。とりわけ、読書猿氏が紹介する「ノンストップ・ライティング」の考え方は刺激的だ。本書では自身を画家に喩えるレヴィ・ストロースの言葉が引用されているが、全体の草稿を書き上げる行為を「執筆」ではなく「デッサン」と捉えることで、成果物に対するこだわりを一旦捨ててしまおうという視点は今までの自分になかったものである。『書き手として立つことは「自分はいつかすばらしい何かを書く(書ける)はず」という妄執から覚め、「これはまったく満足のいくものではないが、私は今ここでこの文章を最後まで書くのだ」と引き受けるところから始まる』という戒めの一文が深く身に沁みた。 「書くこと」に苦心している全ての人にお勧めしたい良書ではあるが、少しばかり惜しいと感じる点も。本書の座談会は元々「WorkFlowyというアウトライン・プロセッサの活用法を公開し合う」という趣旨で開かれた企画なので、執筆環境に関する話題がたびたび登場する。各ソフトの有用性は随所で述べられている通りだが、例えばEvernoteは利用料金の高騰と仕様改悪のためユーザー離れが進みつつあるし、WorkFlowyをフル活用するには海外サイトでのクレジットカード決済が求められるなど導入のハードルが少々高い。分筆業に携わっている方はともかく、私のような一般人が気軽に使える(痒いところに手が届く)アウトライナーが紹介されていれば嬉しかったが……こればかりは不満を言っても仕方がないことだろう。
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