二人の嘘 の商品レビュー
なんて愚かなんだろう、と本を閉じて真っ先に思った。思うと同時に涙が溢れた。 私には、自分の心に残されたこの気持ちにつけるべき名前を持ち合わせていなかった。 人と人が惹かれ合う。それは愛や恋などという単純なものではなく、その人にとっての必然であるーそんな哲学を目の前に突きつけられ...
なんて愚かなんだろう、と本を閉じて真っ先に思った。思うと同時に涙が溢れた。 私には、自分の心に残されたこの気持ちにつけるべき名前を持ち合わせていなかった。 人と人が惹かれ合う。それは愛や恋などという単純なものではなく、その人にとっての必然であるーそんな哲学を目の前に突きつけられた気がする。それは理屈など抜きにして心の奥に突き刺さった。 一雫ライオンという作家さんとは初対面なのだけれど、なんという小説を書く人なのだろう。 衝撃なんて言葉では表しきれない。 面白いと思える本とは、理論的に言葉で説明できるようなものではなく、「読むことを中断できない」という行動に現れるものなのだと改めて思う。 エリートの世界をほんの少し覗き見ただけで、すぐさま湧き上がる嫌悪感。それが見事なまでに描かれている。 ピラミッドのトップの世界の中で見過ごされたまま当たり前となっている出来事は、現代社会において問題となっていることの根幹なのかもしれない。 非常に面白かった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
二人の関係を「運命」という言葉で彩るとして、その魂は救いを求めていたのだろうか。 出会ったときから始まる悲劇の中を堕ち続ける二人。読み終わった後の息苦しさにうろたえている。 本能を失い間違えることを避け続けた「美しい」判事と、罪をかぶり赦されることを拒む元受刑者の男。 強さとつよさ。 共有することのない過去の苦しみと悲しみが重ねた二つの道。凍り付いた魂が溶けた瞬間のその一瞬の灯が心に焼き付いた。あぁ、そうか。二人は堕ちることで赦されたのか。いや、違う。女は共に堕ちることで救われて欲しかったのに、男は救われることを拒んだのだ。どこまでも孤独な心を抱えて女の心を満たすためだけに選んだ旅。 氷のように冷たい手は、重ねたときだけ熱を持ったのだろう。 超越した頭脳と美しさという鎧をまとい、心を殺して生きていた女と、光を避けそれでも俯かず生きてきた男の、これが必然の終焉。
Posted by
一分の隙もない強く美しい女性判事。 物語を通して彼女は常に「孤独」だが、後半に描かれる「孤独」は、固く閉ざしていた心を開いてもなお感じる「孤独」。 一人でいる時に感じる孤独より、誰かといるのに感じる孤独の方が重く濃いように、彼女の「孤独」は深まっていく。 二人が惹かれあっていくの...
一分の隙もない強く美しい女性判事。 物語を通して彼女は常に「孤独」だが、後半に描かれる「孤独」は、固く閉ざしていた心を開いてもなお感じる「孤独」。 一人でいる時に感じる孤独より、誰かといるのに感じる孤独の方が重く濃いように、彼女の「孤独」は深まっていく。 二人が惹かれあっていくのはその「孤独」が共鳴するからだろう。 タイトル「二人の嘘」。 この「二人」が誰を指しているのかは読者によってわかれるであろうが、物語に登場する「嘘」はどれも切なく苦く、読んでいて思わず顔をしかめてしまうくらいに辛いものだった。
Posted by
こころ震えました とても美しいお話しでした ところどころ文章や表現には違和感も覚えたけど、そんなことよりストーリーと人物描写がとても魅力的で、サスペンス性も相まって、一気に読み進め、最後は読み終わるのが惜しくて少し間を置いてから読了しました。余韻もしばらく続きそう。
Posted by
本当に泣けました。 最後の章のタイトルが「悲劇」だったので嫌な感じはしていましたが、なんて残酷な最後かと思いました。 片陵礼子33歳は東京大学法学部三年生のときに司法試験にトップ合格。「十年にひとりの逸材」といわれる東京地方裁判所の裁判官です。 過去には母親に小学生の時に捨てら...
本当に泣けました。 最後の章のタイトルが「悲劇」だったので嫌な感じはしていましたが、なんて残酷な最後かと思いました。 片陵礼子33歳は東京大学法学部三年生のときに司法試験にトップ合格。「十年にひとりの逸材」といわれる東京地方裁判所の裁判官です。 過去には母親に小学生の時に捨てられ伯母に育てられたという経歴があります。 夫の片陵貴志40歳は弁護士ですが、裁判官になりたくてもなれなかったという過去があり、実家は資産家です。子どもはいません。 そして礼子はある日、裁判所の前に佇む「門前の人」蛭間隆也39歳に出会います。 礼子は蛭間が自分が以前判決を言い渡した事件の被告だったことを思い出します。 児童養護施設で育った蛭間は時計技師として働いていましたが、上司と口論になった末、殺害しました。罪状は過剰防衛で執行猶予なしの懲役4年でした。 礼子はある日、蛭間に「わたしの裁判を担当してくださった裁判官の方ではないですか」と話しかけられます。それから蛭間のことが気になり、事件をもう一度調べてみると蛭間は誰かをかばって罪を被っただけであり無罪であったという事実を突き止めます。 そして礼子は蛭間に恋愛感情を抱きます。 本当の蛭間の姿を知るにつれてどんどん礼子は蛭間に惹かれていきます。 そして、断り続けた参議院選挙に出馬するかわりに、蛭間の再審をするという願いを上司に取り付けますが…。 そのまま、幸せになって欲しかったです。 あんな意地悪な義母と、浮気ばかりしている夫なんかより蛭間の方が人間として上です。 メロドラマのようでもありますが、それで終わらせない確かな筆力がこの作品にはあったように思います。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
途中、推理小説のような感じで話しが進んでいっているところは、テンポ良く面白かった。蛭間の妹や、礼子自身の幼少期のシーンや、虐待のシーンは読んでいると、読むのが辛くなるほど悲しかった。 途中から恋愛モノ、しかも不倫モノのような様子になってきたところから何となく最期は死んでしまうのでは?と思いながら読んでました。礼子と蛭間が2人で死ぬのかなと思ってたが、そうではなかった。 ちょっと最後は物足りない感がありました。 アナザーストーリーとして、蛭間が再審をして無罪になり、一方で礼子も貴志や義母をぎゃふんと言わせて離婚をし、蛭間と礼子が何のストレスも無く過ごすというハッピーエンドも想像してしまいました。 金沢の街並み、食べ物の描写がすごく良かったです。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
女性判事・片陵礼子は男側からみた理想形であり、女性としては少々違和感を感じながらも、それでもとにかく先の展開を知りたくて、読み進めていた。 地元金沢の描写も、少々デフォルメ過ぎた感は否めないが、ラストは修羅場とかすのか、それにしてはページ数が足りないしなぁと思いながら、この結末か・・・と少々肩透かし。 とはいえ、この舞台は平成が終わる時代背景であるが、実際は昭和のメロドラマであった。
Posted by
ラスト数ページに胸が苦しくなる‥。 愛を知ることはとても素敵だけど、人から理解されないときもある。
Posted by
トイレに持って入るぐらい、読む手が止まらなかった(笑)どのシーンもどの言葉も読み逃したくない、そんな気持ちのまま6時間ぐらいで読了。色んな涙を流しながら、「ゔーーー」となる結末だけど、読み終えた後は思いがけずとても爽やかなので、お勧めです。
Posted by