本心 の商品レビュー
波に乗れたり乗れなかったりしたけれど読み切れた。近い将来こうなりそうなリアルな近未来の世界観は好きだった。全体的に湿った雰囲気があるけど主人公やその周りの人生が好転したのは救いだった。
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高齢の母親が「マチネの終わりに」で平野啓一郎が好きになって、勇んで買って読み始めたけど、早々にギブアップした本です。息子に回ってきました。「もう十分に生きたから」という言葉からして彼女にとっては重たい言葉だろうし、そもそもアバターとか出てくる近未来SF設定もチンプンカンプンだった...
高齢の母親が「マチネの終わりに」で平野啓一郎が好きになって、勇んで買って読み始めたけど、早々にギブアップした本です。息子に回ってきました。「もう十分に生きたから」という言葉からして彼女にとっては重たい言葉だろうし、そもそもアバターとか出てくる近未来SF設定もチンプンカンプンだったろうし、もうそのチャレンジ精神だけでも拍手ということで。自分でも長らく積読でしたが、日本人の「弔い」の意識を研究している大学教授と話す機会があり、急にこの本のことが気になって読んでみました。「樹木葬」や「手元葬」とか葬儀の多様性も急激に広がりつつある現代の「生きている人」と「死んでしまった人」の物語として非常にライブなテーマを取り扱っています。SFというより半歩先の「今」という感じ。例えば「小さなお葬式」とか「死」がどんどんプライベートなものになっていく中で、でも「死」って社会的だったり時代的だったりするものであることに平野啓一郎らしさを感じました。この本棚では『私とは何か』『マチネの終わりに』『「カッコいい」とは何か』『死刑について』が読了していますが、その流れから考えるとこの小説が生まれたのは必然に感じます。
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2021年初版。近未来の日本が舞台。「安楽死」ではなくて、「自由死」と言う選択肢が生まれています。そんな時代、あり得るように思います。私自身、現在65歳。もう十分だなあと思ったりします。しかし、大事な人が、それを求めた時に認めることができるのかなあと思います。そこは主人公と同じか...
2021年初版。近未来の日本が舞台。「安楽死」ではなくて、「自由死」と言う選択肢が生まれています。そんな時代、あり得るように思います。私自身、現在65歳。もう十分だなあと思ったりします。しかし、大事な人が、それを求めた時に認めることができるのかなあと思います。そこは主人公と同じかなあ。それから、この作品にはタイトルにある本心ってなんだろうかと考えます。著者の作品は、読後にいろんなことを考えます。
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平野啓一郎さん著「本心」 ちょうど一週間前に映画も公開されている作品、「マチネの終わりに」がとても良かったので本作品も読んでみる事に。 物語の舞台は近未来の2040年の設定。 今よりもだいぶバーチャルリアリティが進歩している世界が描かれている。そしてその頃の日本では格差社会が加...
平野啓一郎さん著「本心」 ちょうど一週間前に映画も公開されている作品、「マチネの終わりに」がとても良かったので本作品も読んでみる事に。 物語の舞台は近未来の2040年の設定。 今よりもだいぶバーチャルリアリティが進歩している世界が描かれている。そしてその頃の日本では格差社会が加速しており、その断層が際立って描かれていた。 読んでいる最中はこの作品のテーマである「本心」、死が自由に選択できる世界観、バーチャルリアリティが進行した世界だからこそ、より自分という自己アイデンティティーとその「本心」というテーマが冴えている様に感じられていた。 同じ境遇や立場や状況にあっても自分の心情と相手や他者の心情が決して同じではない、正に千者万別。その捉え方や噛み砕き方もまた然り。本作品では幾つもそういった相違点が状況状況で描かれていた。 そして読後いろいろと考えていて相対的に「自己」=「本心」だとは考えにくくなった。 人間にとって「本心」とはきっと凄く虚ろな物なのだろう。時に「言葉」や「表情」で実直な本心な場合もあるだろうが、自分自身を厳しく律しないと本心が不安定になる。時と状況と精神状態で虚ろうものだろうと考える。その揺れている状態も含めてその時の本心なはずだ。 自分自身でさえそうなのだから、相手の本心なんてもっと複雑さが伴い難解極まりない。 結局のところ「本心」とは「幾多の感情」なのだろうと思えてくる。 本作品を最終的に読み終えてハッピーエンド的な終わり方で幕を閉じている。未来に向けて前向きになっている様に読み取れたのだが、それがこの「本心」というテーマの作者なりの論決なのだろうか? 過去は過去として未来は未来として自分と他者の存在の肯定という事なのだろうか? 自分には深くは読み取れなかったし、物足りなさがだいぶ残ってしまった。 死とは?格差とは?自由とは?というサブテーマに沿ってその自分と他者との本心の探りあいがずっと描かれている作品だったのだから、もう少ししっかりと捉えられればもっと良かった。特にその経緯や形や枠や成り立ちがはっきりと描かれているだけに特にそう思う。 この結末ではその都度対面した出来事に擦り合わせる様に「本心」という言葉を用いていただけではないか?と錯覚するようにも感じる。 普通の日常で感じる事をただ小難しく疑問視して、多様な心模様を客観的に炙り出しただけに感じてしまった。 テーマがテーマだけに自分には中途半端感がだいぶ強く残った。 自己啓発的な面が強く印象に残るテーマと作風であるが為、読者が自分で自分と他者の「本心とは?」という問いに触れるきっかけ本の様に最終的に感じてしまった。
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急逝した母をAI / VR 技術で再生させた青年の話 愛する人の本当の心を、あなたは知っていますか? 芥川賞の側の人の本だよね、って改めて認識した一冊 結局、何なのかさっぱり分からん。 近未来の設定はいいけど、そうじゃなくても良くない?って気もする。 母親の愛情的な話かと思いきや、中盤はアバター作成で大成功した下半身付随の男の話だったり、イミフ 母が、僕ではない誰かとして自分を産んだ的な話も、そりゃそうだろってだけの話で、生きにくい人たちってめんどくさいね、という印象 全体的に読み進めるのに気力が必要で自分的には面白くない本
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これは、自分の話しなんだわ。 恥ずかしながら初めての平野啓一郎さん、 読後の余韻が深かった。 親のことを好きかどうか、 親子の関係がどうかなんて人それぞれ、 普段は意識する事もない。 でも失った時、または失いそうになった時、 『このいなくなった人は、ずっと自分を愛してくれてた人...
これは、自分の話しなんだわ。 恥ずかしながら初めての平野啓一郎さん、 読後の余韻が深かった。 親のことを好きかどうか、 親子の関係がどうかなんて人それぞれ、 普段は意識する事もない。 でも失った時、または失いそうになった時、 『このいなくなった人は、ずっと自分を愛してくれてた人だったんだ』と気づくんだな。 そしてその人は人生の最期に何を思って亡くなっていったのかを知りたくなる。 それは誰にでも起こりうる。 AIやAR・VF等はテーマとしては苦手で、 ずっと本棚に置きっぱなしにしてしまってたけど、 読み進むにつれてそれ自体がこの本の本質ではない事に気づく。
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まもなく(2024年11月)に池松壮亮主演の映画が公開されるので読んでみる。平野さんの作品を読むのは3冊目だけど、これはまた難解。私には合わんわ、残念
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241021*読了 終わり方は、そんな感じなのか…となってしまったけれど、展開としてはとても惹きこまれた小説だった。 発想がとても平野さんらしくて好き。 平野さんらしさとは?なんだけれど、SFチックであってもその根底は哲学であるところがまさしく平野さん。 2024年の今よりも未来の出来事。 特に日本の国力の低下、今以上に貧困層が増えるであろうことがリアルで恐れをなした。 テクノロジーが発達し、死者をVR空間で再現できるようになった時代。 そして、人が死期を決められる「自由死」が法律で認められている時代。 母を亡くした主人公、朔也は母をAI技術でVR空間に蘇らせる。 私もそんな時代になったならば、愛せる人を蘇らせようとするのだろうか。 朔也の仕事がまず未来的で、リアルアバターとして、依頼者ができないことを現実世界で代わりに行う。 そんな仕事も本当に近い将来できそう。 なんでも屋は「ランチ酒」、代わりに旅をするのは「旅屋おかえり」を想起させるけれどそれよりも未来っぽさがあるし、依頼が手厳しい。それが現実なのだろう。 エフィの存在もなかなかのもので、その出会いがなければ朔也も同居していた三好さんも、こんな風に行動をせず、変わらぬ毎日を送っていたことと思う。 大半の人はそんな人生を送るのだろうし。 エフィの登場は小説的だと言えるけれども。 遅かれ早かれ解消される同居ではあったと思う。 結局、母との暮らしから、リアルに出会った人たちとの交流が増え、母から離れていくところが感慨深かった。 人はこうして喪失を乗り越えていくのだろうか。 アバターの人格と感じられる点にも、違和感ではなく共感を覚えた。 また、母の隠された過去というのも、誰にもあって当然と思いつつ、私の両親にも秘めた部分はあるのだろうかなんて想像しつつ。 ここも秘められている匂わせが強かったので、結局そんな感じなのか…と確かに衝撃は受けつつも、すとんと腑に落ちた。 ここに出てくる誰もが幸せになれるのだろうか。この先続く人生において、幸せを感じられるのだろうか。 決して明るさだけがあるわけではなくて、不安の残る終わり方だったと思う。 本当にこれでよかったのだろうか。
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母親が突然『自由死』をしたいと言ってきた。息子の「僕」は猛反対するも、結局事故で母は無くなってしまう。 母を失った寂しさと、彼女の「自由死への本心」を探すため、「僕」は仮想空間に母を作り出す『VF』を購入するところから物語は始まります。 母の本心がわからないまま、彼女の生前の友人...
母親が突然『自由死』をしたいと言ってきた。息子の「僕」は猛反対するも、結局事故で母は無くなってしまう。 母を失った寂しさと、彼女の「自由死への本心」を探すため、「僕」は仮想空間に母を作り出す『VF』を購入するところから物語は始まります。 母の本心がわからないまま、彼女の生前の友人だった女性とルームシェアを始めたり、セレブの家で働くことになったり。だんだんと母を失った寂しさも薄れていくなか、「僕」は自分の出生の秘密を知ります。 「もう十分」という言葉がよく出てきます。 「もうこれ以上はいらない」という意味ですが、その人の状況によってニュアンスが変わってきます。 小説の中で自由死は、高齢者増加対策だったので「これ以上は生きなくてもいい」というようなニュアンスだと「僕」は捉えたのかな。母としては「もう十分幸せを味わった」だったんだろうね。 自由死については、最近北欧で安楽死を決行した女性がいたし、小説やSF(三体もあったね)の話ではなく、日本でも今後リアルに議論されていくのだろうけど、「死ぬ権利」を選ぶ人を尊重したい気持ちもあるけど、「それでもやっぱり自分は全力で止めさせる」という気持ちもあるんだよね... 私らの未来の倫理観ってどうなっていくのだろう。 「生きる」or「死ぬ」 ではなく、 「死ぬ」or「死なない」 この発想になると辛いね。 あらすじに「衝撃の事実」って書いてあったのだけど、 令和の物語でこの展開は特に「衝撃」ではないよな。ちと残念。
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初めて平野啓一郎さんの本を読みました。 自由死が合法化された2040年代の日本、そう遠くない未来にリアルさと緊張感を味わいながら読み進めることができました。
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