本心 の商品レビュー
著者の作品はこれで二作目。「ある男」でも感じたことだが、彼の作品というのは社会が抱える問題を小説で訴えていると強く感じる。人種差別や、ロスジェネ世代、社会的弱者(、死刑制度)...etc. 自由死が許される近未来で、自由死を選んだ主人公の母。そしてその「本心」を知りたいとAI化...
著者の作品はこれで二作目。「ある男」でも感じたことだが、彼の作品というのは社会が抱える問題を小説で訴えていると強く感じる。人種差別や、ロスジェネ世代、社会的弱者(、死刑制度)...etc. 自由死が許される近未来で、自由死を選んだ主人公の母。そしてその「本心」を知りたいとAI化された(VF:ヴァーチャルフィギア)母を作成し、本心をさぐろうとする。最後は本心がわかる流れになるのか?それとも…。 亡くなった後、心で生き続けるという言葉もあるがそれは正しくもあり、間違いでもある。家族といえど知らないことだらけ。その人の心の中で生きる誰かはあくまでもその人にしか見せなかった一面にしかすぎない。最愛の人の他者性。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
平野さんの文章は描写が文学的で美しく、それであって読みやすくとても引き込まれた。 VFを作るほど母100%だった主人公が、周囲の人との関わりを通して大事なものが増えていくところが良かった。やっぱり私はこういった、ある人の内面を丁寧に描写してある小説が好きだなと思った。
Posted by
すごく深い話だった。 この人の小説は初めてだった。マチネの終わりにを映画で観ただけ。初めての人の本を読むときは少し構えてしまう。 自分と合うだろうか、と。この人のこと好きになれるのかな?と。 心の機微をとらえ、真剣に考える方なんだろう、と思う。何冊もこの人の話を読んでいたら息が詰...
すごく深い話だった。 この人の小説は初めてだった。マチネの終わりにを映画で観ただけ。初めての人の本を読むときは少し構えてしまう。 自分と合うだろうか、と。この人のこと好きになれるのかな?と。 心の機微をとらえ、真剣に考える方なんだろう、と思う。何冊もこの人の話を読んでいたら息が詰まってしまいそうだが、出会えて良かった作品となった。
Posted by
2040年頃の話。 日本の経済がもっと破綻して、格差が大きくなった。AIや新しい職業に囲まれている。 お母さんのAIを作るなんて出だしだったから、どんな不気味な物語かと思ったら、 人としての権利のこと、家族愛、恋愛、死に様、生き方、いろんなことを考えさせられる大作だった。 決...
2040年頃の話。 日本の経済がもっと破綻して、格差が大きくなった。AIや新しい職業に囲まれている。 お母さんのAIを作るなんて出だしだったから、どんな不気味な物語かと思ったら、 人としての権利のこと、家族愛、恋愛、死に様、生き方、いろんなことを考えさせられる大作だった。 決して明るい話ではないけど、主人公の語り口が落ち着いていて、穏やかな気持ちで読めた。
Posted by
現在の延長線として納得できるくらいの近未来を舞台で、かなりの割合で主人公の自問で語られる人の関わりについての深い考察。 気候変動、ウイルスの蔓延、高齢化、自由死、生活格差、仮想現実、AI。どの問題も今より少し悪化したものとして存在しており、この本をきっかけにそれぞれの問題に更なる...
現在の延長線として納得できるくらいの近未来を舞台で、かなりの割合で主人公の自問で語られる人の関わりについての深い考察。 気候変動、ウイルスの蔓延、高齢化、自由死、生活格差、仮想現実、AI。どの問題も今より少し悪化したものとして存在しており、この本をきっかけにそれぞれの問題に更なる関心を持つきっかけになりそうです。主人公の自問はとても知的な深い考察で、自分より他者を気遣う行動を取ることで若干共感出来ないところはあるものの、納得性はある。表題の「本心」はこの本の核となるテーマとも言える「母親が何故自由死を選んだか」に言及しながらも最後はうやむやになっていることには不満を感じる。〈母〉であるAI が本当の母の人格を得て自死を選んだ理由を語るのではないかと考えながら読んだのだが。
Posted by
仮想空間が今より発達した少し未来の設定の話。弱体化した日本社会の中で格差を考える主人公。そんなに未来ではなく現実になりそうなリアリティ。
Posted by
最愛の人の他者性。 架空の未来の話だけど、リアルに想像できて怖くなった。 元気な時じゃないと読めない。 自由死について考える。 何歳まで生きるのか分からないから不安になる。 リミットが分かっていたほうが幸せなのか?とか思ったりもする。 考えてたら暗い気持ちになるから、軽やかな本を...
最愛の人の他者性。 架空の未来の話だけど、リアルに想像できて怖くなった。 元気な時じゃないと読めない。 自由死について考える。 何歳まで生きるのか分からないから不安になる。 リミットが分かっていたほうが幸せなのか?とか思ったりもする。 考えてたら暗い気持ちになるから、軽やかな本を読んで気持ちを変えた。笑 主人公が向き合って、考えて、徐々に動いていく心情が丁寧に描かれていたと思う。 最後はやっと前を向けた感じで、安心した。 家族の前での顔、職場での顔、友人の前での顔。 色んな顔。
Posted by
オーディオブックで完聴。最近、平野啓一郎さんの本にハマっており、「空白を満たしなさい」に続いて聴いてみた。 平野先生の小説はまだ、空白を〜とこちらのみだが、SF的な設定なのにすごくリアルで、またテーマや哲学が物語が進むに連れて深彫りされていくのがとても面白い。 人の本心、というの...
オーディオブックで完聴。最近、平野啓一郎さんの本にハマっており、「空白を満たしなさい」に続いて聴いてみた。 平野先生の小説はまだ、空白を〜とこちらのみだが、SF的な設定なのにすごくリアルで、またテーマや哲学が物語が進むに連れて深彫りされていくのがとても面白い。 人の本心、というのが大きなテーマなのだろうが、ここでも空白を〜にあった分人主義も垣間見えたし、他に社会の不合理、様々な差別、格差社会なども問うていて考えさせられる。 今回はちょっと盛りだくさん過ぎて、一番重要な母親の自由死についてや小説家との過去などについてが薄くなってしまった印象もある。母と小説家についてもっと深く描いて欲しかった。 とはいえ、現実と仮想現実を行ったり来たりするような近未来でさえも、仮想現実の中でも格差社会が生まれるという未来が人間の性を描いているようでなんとも悲しくなった。設定はもちろん面白いし、自分も体験してみたいけど。私はどんなアバターを着ている人になっているんだろう。
Posted by
財政破綻し、格差の広がる近未来の日本社会の底辺で生きる主人公の魂の再生の物語。ウーバーイーツの進化系とも言えるリアル・アバターとか、VRのキャラクター・デザイナーとか、とにかく平野啓一郎の構想力がすごい。最終部は少し尻すぼみで物足りない感じが否めないが、最後まで一気に読ませる筆力...
財政破綻し、格差の広がる近未来の日本社会の底辺で生きる主人公の魂の再生の物語。ウーバーイーツの進化系とも言えるリアル・アバターとか、VRのキャラクター・デザイナーとか、とにかく平野啓一郎の構想力がすごい。最終部は少し尻すぼみで物足りない感じが否めないが、最後まで一気に読ませる筆力は相変わらずだ。
Posted by
少し未来の日本で、AIに仕事を奪われた世界。格差が広がり、VRが発達していて、リアルだった。面白くてほぼ一気読みだったけど、正直、理解できなかった部分も多々あったかな。「本心」とは何だろう。哲学書のようだった。自分では本心と思っていても、社会によって言わされていることがあるんだね...
少し未来の日本で、AIに仕事を奪われた世界。格差が広がり、VRが発達していて、リアルだった。面白くてほぼ一気読みだったけど、正直、理解できなかった部分も多々あったかな。「本心」とは何だろう。哲学書のようだった。自分では本心と思っていても、社会によって言わされていることがあるんだね。では、本当の本心は何処にあるのか。難しい。朔也が前に踏み出せたラストは清々しかった
Posted by