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本心 の商品レビュー

3.9

225件のお客様レビュー

  1. 5つ

    57

  2. 4つ

    98

  3. 3つ

    47

  4. 2つ

    10

  5. 1つ

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2021/06/21

2040年の日本。 自由死が認められる社会。 生前、自由死を望んでいた母親(自由死を望んでいたものの、結局事故死)の思いを知りたい気持ちで主人公は母親のAIを作成する。 低所得層の主人公は体力仕事(Uber的なもの)を行い客に言われた通りにどこへでも行き、汗水流しながら一生懸命...

2040年の日本。 自由死が認められる社会。 生前、自由死を望んでいた母親(自由死を望んでいたものの、結局事故死)の思いを知りたい気持ちで主人公は母親のAIを作成する。 低所得層の主人公は体力仕事(Uber的なもの)を行い客に言われた通りにどこへでも行き、汗水流しながら一生懸命お金を稼いでいる。 お金持ちで主人公の雇い主である下半身が不自由な少年は自身の豪邸からほとんど出ることなく、多額のお金を稼いでいる。二人の対比がある。ちなみに少年は自由死否定派。 格差と命の価値観。 近未来を感じる。何でもバーチャルでできるのはいかがなものかと思ったが、いつか世界もこうなるのかな。いや、なりかけているかな。 なんとも難しくて考えさせられる作品です。

Posted byブクログ

2021/06/20

読み終わった瞬間に、もう一回読もうと思った稀有な作品。 少し前に読んだカズオイシグロの『クララとお日さま』もAIがテーマであったが、それよりもずっと、思った以上に詰め込まれている要素が多く、心地良い疲労感を覚えた。 死生観、格差、仮想と現実。 こういったことを考え出すとずっと引...

読み終わった瞬間に、もう一回読もうと思った稀有な作品。 少し前に読んだカズオイシグロの『クララとお日さま』もAIがテーマであったが、それよりもずっと、思った以上に詰め込まれている要素が多く、心地良い疲労感を覚えた。 死生観、格差、仮想と現実。 こういったことを考え出すとずっと引きずってしまい、仕事中も考えてしまうし、日常生活に支障をきたしかねないため、あえて平日には読まず、土日に少しずつ読んでいた。 でも、こういったテーマを考えながら生きるのと、全く考えずに生きるのと、どちらかを選ぶとしたら、やっぱり考えながら生きたい。

Posted byブクログ

2021/06/18

(取り急ぎすぎる感想) とりあえず思ったこととしては、この質量(物理的にではなくストーリーから考えさせられる幅の広さと深み)で1800円か、、本の価格設定っておかしいな、でした 自分の思考力を超えた複雑さがあるもんで、もう存在しない母とVFとして存在する〈母〉の間で葛藤する主人...

(取り急ぎすぎる感想) とりあえず思ったこととしては、この質量(物理的にではなくストーリーから考えさせられる幅の広さと深み)で1800円か、、本の価格設定っておかしいな、でした 自分の思考力を超えた複雑さがあるもんで、もう存在しない母とVFとして存在する〈母〉の間で葛藤する主人公の心に、「最愛の人の他者性」を見たような、そんなぼんやりしたことしか残っていない笑 もっかい読みます!出直してきます!って感じだ!笑

Posted byブクログ

2021/06/16

「最愛の人の他者性」というメインテーマの周りに「自由死」「死の一瞬前」「リアルアバター」「格差社会」「外国人労働者」といった様々なサブテーマが知恵の輪の様に絡まりながら、一個の工芸品の様な見事さで構築されているといった印象。 氏曰く「2度3度読むと味わい深くなるスルメの様な小説...

「最愛の人の他者性」というメインテーマの周りに「自由死」「死の一瞬前」「リアルアバター」「格差社会」「外国人労働者」といった様々なサブテーマが知恵の輪の様に絡まりながら、一個の工芸品の様な見事さで構築されているといった印象。 氏曰く「2度3度読むと味わい深くなるスルメの様な小説」らしく、また言葉の紡がれ方は相変わらず美しいの一言に尽きるので、秋の夜長にじっくりと読み返したい。

Posted byブクログ

2021/06/13

分人という言葉はないけど、それに関するストーリー 自分が知ってる親の一面だけでなく、他者から見た面を理解しようと受け止めるという話かな 分人について読んでない場合はSF作品と思うかも...

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2021/10/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

何かのサイトで、著者が本作について「愛の話」というようなことを書いていたのを目にしていたので、てっきり「愛する人=恋人か妻」の「本心」やいかに?という物語だと思いこんで読み始めたが、主人公の朔也が、亡くなった母の「本心」が分からずに思い悩む物語だった。 舞台は今から2~30年後の日本。日本は経済格差が広がり、社会保障制度も崩壊。お金持ちの人たちは日本に見切りをつけて国外に脱出。日本社会の底辺で生きる主人公、朔也は、小説の前半は世の中に半ば絶望していて、母が自ら死を望んでいた(未来では”自由死”といういわば安楽死のようなものが認められている)ことを、受け入れられずにいる。最終的には母は事故で亡くなったのだが、母が自由死を望んでいたのは「本心」だったのかどうか分からず、それを知りたいという思いや、自分が母の希望を叶えなかったのは間違いだったのかという迷いの中で苦しむ。そして母の不在の寂しさから、母のVF(ヴァーチャル・フィギア)を作成する。VFの中のAIに学習させ、〈母〉をよりリアルにするために、母が生前唯一親しくしていた女性に出会うことで、朔也の人生(物語)が動きだす。 「自然死」は認められるべきか。この社会の「格差」を是正するにはどうすれば良いのか。自分は生きるために底辺の仕事をし続けるしかないのか。底辺の自分が、同じ底辺の仕事に就く人を見下してしまうのは、どういうことなのか。外国人労働者に対する差別…。朔也は懸命に生き、VFの〈母〉と対話し、内向していく。 平野啓一郎くんはメディアでよく、自分たちの世代の格差について意見を述べている。団塊ジュニアの私たちの世代が、大学卒業時に超就職氷河期で、そのタイミングで就職の機会を逸したためにずっと定職に就けず、結婚も子育ても現実的に不可能になってしまった人が少なからずいることを問題視している。自分だって母子家庭で、どうなったかわからないという切実な想いをもって。それは私も同じだ。就職浪人の末なんとか今の仕事に就いて、仕事を続けられているのは、もちろん、文字通り血のにじむような努力をしたのだが、それ以外にいくつもの「運」も重なり、たまたまそうなっただけだ。同じくらい努力しても仕事に就けなかった人をたくさん知っている。それを、「努力が足りなかった」とは言えないはずが、子供の頃から「競争を勝ち抜け!」と教えられ、競争に負けたら自己責任だというメッセージを受け取ってきた私たちは、自分が非正規雇用のままであることは、やっぱり自分のせいなのだと思い込まされてしまう。また、そもそも最初から努力できる環境になかった人だっている。私たちの世代は、競争が激しすぎた。 この物語の主人公、朔也の母は、団塊ジュニアで、大学を出て正社員として就職したのに(その時代の女性としては奇跡的)、朔也を生み育てている間は最低賃金の仕事でぎりぎりの生活をするしかなかった。そして70歳を前に「もうじゅうぶん」と言って「自然死」を望む。それは「本心」なのだろうか。 内向していく朔也は、本当に心が綺麗で、ルームシェアすることになった女性、「三好」に対する想いが切ない。三好に自分の気持ちを打ち明けないことこそが、本当の「愛」だと考えて行動する。(そのあたりは、これまでの平野作品と同様、「本当の愛とは何か」という究極のテーマを含んでいる)。 読んでいて、小説の最初では社会に絶望し、暗かった朔也が、最後の方にはどんどん魅力的な青年になっていくことに小説終盤で気づき、母のVFと一緒に滝を見ているあたりで大きな感動が襲ってきた。そしてあの奇跡の場面…。 VFの〈母〉は心はもたず、あくまでAIが学習してそれらしい受け答えをしているだけなのだが、朔也は最後に奇跡的に母に出会い、その手に触れる。母の死を受け入れることができず、〈母〉に依存しそうになっていた朔也の心が、新しい未来へ向かっていく。涙。 平野君作品では、私は、「ドーン」「ある男」「マチネの終わりに」がベスト3だったのだが、あぁ、これはどこに位置づけよう(悩)!しばらく余韻に浸ります…。

Posted byブクログ

2021/06/09

本心ってわからない。他人にも、自分であっても。 とても揺らぎやすくて、繊細なものだと思う。 2040年には、この物語が現実になっているのだろうか。 自分がもう少し大人になったときに、もう一度読み返したいと思う。

Posted byブクログ

2021/08/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

文学はあらすじだけに終わらない。幾たびか主題のリフレインが入る。同じ旋律が繰り返される。それはこの小説では、「もう十分」であり、「自由死」であるだろう。 そして「本心」も何度か違う文脈で表現される。 引用 197ページ  僕は無言で、足を踏ん張りならが行く手を塞いだ。岸谷が、僕を指嗾(しそう)していた、いや、違う。僕は、あの高校時代の「英雄的な少年」に憧れていたのではなかったか。そして今、僕は誰にも命令されていない。自分自身の本心から行動しているのだ。 主人公は一人母の死で一人残された時に、母が言ったその言葉の意味を問うようになる。そして、母に似せたVF(ヴァーチャル フィギュア)を作り、AIによってその作られたものが、学習していく事になる。しかし、そこに、心はない。限りなく学習してゆけば母のあの時の気持ちに辿り着けるのか、主人公は問い続ける。 その過程で、母の友達だった、三好彩花に出会い、ルームシェアをするようになる。 また、僕は良くきっかけが分らないのだが、アバダーを作る、非常にお金持ちの車椅子の男性イフィーに出会い。通い始める。  Cf。細野守監督の「竜とそばかすの姫」に出てくるBellというキャラクターは韓国のデザナーが描いた絵が採用されたようだ。もう本書のストーリーは現実になっている。 小説を通して、生きる力、生きる事を肯定してくれるもの、愛が語られている気がします。

Posted byブクログ

2021/06/06

近未来の日本を舞台にした作品。現在に萌芽した技術が花開き素晴らしい世界になっている……のかと思いきや、労働者の仕事はロボットやAIに奪われ貧富の差はさらに広がっている。半年ほど前に母を亡くした青年が、VF(ヴァーチャル・フィギュア)の製作を依頼するところから話は始まる。ヘッドセッ...

近未来の日本を舞台にした作品。現在に萌芽した技術が花開き素晴らしい世界になっている……のかと思いきや、労働者の仕事はロボットやAIに奪われ貧富の差はさらに広がっている。半年ほど前に母を亡くした青年が、VF(ヴァーチャル・フィギュア)の製作を依頼するところから話は始まる。ヘッドセットを装着すると、目の前にリアルな故人が現れる。彼は〈母〉になにを求めるのか? 仮想現実と他者との関わり、一番身近な愛する人の存在など、読みどころが多すぎる傑作だ!

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2021/06/04

会社で、ARやVRのコンテンツを開発しています。バーチャルツアーなどもその一つですが、リアルアバターという発想はなかったですね。 面白いと思いました。 内容的には、彼自身の本心が他者を通じてはっきりして行く過程が、ちょっと出来すぎという感じでした。ただ、一気に読み終える事が出来ま...

会社で、ARやVRのコンテンツを開発しています。バーチャルツアーなどもその一つですが、リアルアバターという発想はなかったですね。 面白いと思いました。 内容的には、彼自身の本心が他者を通じてはっきりして行く過程が、ちょっと出来すぎという感じでした。ただ、一気に読み終える事が出来ました。

Posted byブクログ