本心 の商品レビュー
母親のAIを作った青年のお話。 単にAIと青年とだけの話ではなく、AIを作ったことによる他の人との関わりの話。 自由死についての話もあり、アバターやメタバースの世界の話もあり、近未来的な内容。 自由死を望んだ母親の、「もう十分」という言葉を巡って青年の心の移り変わりというか、気持...
母親のAIを作った青年のお話。 単にAIと青年とだけの話ではなく、AIを作ったことによる他の人との関わりの話。 自由死についての話もあり、アバターやメタバースの世界の話もあり、近未来的な内容。 自由死を望んだ母親の、「もう十分」という言葉を巡って青年の心の移り変わりというか、気持ちが揺れ動く様子が、心に沁みる。 もし死んだ人をAIで再現できるとしたら自分はどうするんだろう、死んだ人に永遠に囚われてしまう?それとも、しっかり気持ちを終わらせて次へ行くステップになる?なんかいろいろ考えてしまう。 本筋とは外れるが、介護施設で話し相手としてAIが働くというのはすごいいい案だと思ったので、これは現実世界で実装できたらよいなと思った。
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「分人」という概念を語る平野啓一郎が、「本心」をどのように描くのか。しかも、死者や他者から仮託されたアバターという「分身」や「化身」をテーマにした物語とあれば、それだけでも好奇心を擽られる。期待通り、あらゆるシーンでこのテーマについて考えさせられ、示唆に富む内容だった。 しかし...
「分人」という概念を語る平野啓一郎が、「本心」をどのように描くのか。しかも、死者や他者から仮託されたアバターという「分身」や「化身」をテーマにした物語とあれば、それだけでも好奇心を擽られる。期待通り、あらゆるシーンでこのテーマについて考えさせられ、示唆に富む内容だった。 しかし、構成されるストーリーも、登場人物の内省的世界も、そこに用いられる言葉も、極めて繊細で緻密である。それこそが平野啓一郎の才能であり、彼にしか描けない表現だと改めて思う。 最近、新聞記者と会話する機会があり、何気なくAIの影響について聞いてみた。AIが作文するなら、文筆業はどうなるのかと。いやいや、作文方法なんて若手が学んで直ぐ身につくもので元来大した事ではない。記者の真髄は情報元との関係性や、物事を見抜く感性、構成力にあり、それは人間関係において成立するのだと。自らの稚拙さに汗顔しつつ、小説も同様だろうかと感じた。 高い感受性で多面的、重層的に複雑な物事をインプットし、構成し直し、表現する。そこに作家の個性や能力の差が生じるのだろう。その領域に触れられる作品だった。
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2040年の近未来。 主人公は、自由死を望みながらも不慮の事故で死んだ母の本心を知りたくて、母のAIを作ってもらうことに… AIの母と接するとはどんなものなのか、興味があった。設定だけ聞くと、ハガレンの死んだ母を錬成しようとしたエドとアルを思い出したなぁ。 格差社会やアイデンティ...
2040年の近未来。 主人公は、自由死を望みながらも不慮の事故で死んだ母の本心を知りたくて、母のAIを作ってもらうことに… AIの母と接するとはどんなものなのか、興味があった。設定だけ聞くと、ハガレンの死んだ母を錬成しようとしたエドとアルを思い出したなぁ。 格差社会やアイデンティティーの話などは、平野さんの持論が如実に表れている気がして、それも興味深かった。
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テーマは「最愛の人の他者性」 どんなに身近な人でも、その人の本心はわからない。ましてや亡くなってからどんなに本心を探ろうとしても本当のところはわからない。 ただ、亡くなった母親がなぜ自由死を望んだのか、理解しようともがく中で、主人公は新しい人間関係や仕事に出会い、新たな「母の...
テーマは「最愛の人の他者性」 どんなに身近な人でも、その人の本心はわからない。ましてや亡くなってからどんなに本心を探ろうとしても本当のところはわからない。 ただ、亡くなった母親がなぜ自由死を望んだのか、理解しようともがく中で、主人公は新しい人間関係や仕事に出会い、新たな「母のいない人生」を築いていく。
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平野啓一郎本一年半ぶり。 時代設定は2040年頃。 テクノロジーは今の調子のまま進んでいて、貧富の格差も順調に(?)拡大し、世界における日本の相対的地位の沈没も進んだ世の中。非生産層としての高齢者や医療サービス受領者に対する社会の視線が厳しくなった感じは、今の風潮から予想できる...
平野啓一郎本一年半ぶり。 時代設定は2040年頃。 テクノロジーは今の調子のまま進んでいて、貧富の格差も順調に(?)拡大し、世界における日本の相対的地位の沈没も進んだ世の中。非生産層としての高齢者や医療サービス受領者に対する社会の視線が厳しくなった感じは、今の風潮から予想できる姿とぴたりと重なって憂鬱な気分になる。 そうした社会では、自分の意思で死ぬ日とその時そばにいて欲しいひとをコントロール出来る「自由死」が認められている。妙にリアリティを感じる。 主人公の職業は、「リアルアバター」。依頼主に代わって、ゴーグルを付けて動き回り、依頼主はそれを体験する。需要ありそうだし、実際、2040年にはそういう職業は普通にありそうな気がして来た。 主人公がルームメイトの三好さんに決して好意を告げない、という設定は、「マチネの終わりに」を読んだ時と同様に、とてもイライラするが、それが彼の人間としての「成熟」なのか、月並みながら「傷付くのが怖い」のか、よく分からない。 売れっ子アバターデザイナーのイフィー(もし、あのとき跳べたなら、if I …)と三好さんのその後、が気になる。うまくいくのだろうか。。 終盤に登場する、「最愛の人の他者性」という言葉がこの本のテーマかな。
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母親を亡くしたあまりぱっとしない人生を歩んでいる主人公が、母親を再現したAIを作ってもらい、そこに語り掛けてゆくことによって生前の母親を知ろうとする物語。難解そうなテーマの割には読みやすかったし、途中で退屈するようなこともなかった。今後映画化される予定と聞いたからもしれないが、...
母親を亡くしたあまりぱっとしない人生を歩んでいる主人公が、母親を再現したAIを作ってもらい、そこに語り掛けてゆくことによって生前の母親を知ろうとする物語。難解そうなテーマの割には読みやすかったし、途中で退屈するようなこともなかった。今後映画化される予定と聞いたからもしれないが、以前に観た映画「PLAN75」の世界を思い出しながら読んだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
貧困、格差、差別、生と死、 仮想現実、戦争、自己肯定感と否定感… これでもかというほど あらゆるテーマが詰め込まれた小説。 主人公の思考をトレースするように 進む展開に引き込まれる人も多いはず。 難しいことを小難しく語る 平野作品は相変わらずですが…。 ただ個人的に 主人公の年齢と対象となったのが母であることに 少し違和感を感じてしまった。 母の死に対して どこまで受け入れられない とするのか、 その幅みたいのが 大きすぎた気がしました。 いろいろ考えさせられる作品ではあるので 個人的には好きな本の1つとなりました。
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これは少し未来の2040年の話。 他の先進国と同様、日本も経済格差が一層大きくなり、海外から出稼ぎにきた外国人が2世を産み、東南アジア系日本人という言葉もできた。生活はひっ迫し、家族にお金を遺すために"自由死"という選択をする人も増えた。テクノロジーは進化し、...
これは少し未来の2040年の話。 他の先進国と同様、日本も経済格差が一層大きくなり、海外から出稼ぎにきた外国人が2世を産み、東南アジア系日本人という言葉もできた。生活はひっ迫し、家族にお金を遺すために"自由死"という選択をする人も増えた。テクノロジーは進化し、人々は仮想空間に理想の居場所を追い求めることが日常となった。そしてVR上で故人を精巧に蘇らせることも。 けれど、この小説はSFのジャンルには入らないと私は思う。あくまでも社会的に、だけど繊細に人の心情の変化を描く人間ドラマ。 もうずいぶん前からこの本を手にとりたいと思っていたけれど、ようやく読めた。 そして、期待を軽々超えてきた。 449ページもある比較的長い小説だったけど、ページをめくる手を止められなかった。それほど引き込まれた。 最も近い存在である人が亡くなったとき、やっぱり私もヴァーチャル・フィギュアを作りたいと願ってしまうかもしれない。たとえ、AIが会話や情報の蓄積から学習し、人間に近づいているだけだと頭でわかっていても、本物そっくりなソレに心を感じ、本心を探ろうとしてしまうかもしれない。 P. 158 「知ってる?前の財務大臣をドローンが襲撃する事件があったんだって。」 「え、そうなの?」 「うん、ずっとそのニュースよ。知らない?」 「全然知らなかった。一日中、泥浚いしていたから。」 「夜の話よ。」 「そう?ーどうなったの?」 「失敗したみたい。まだ犯人は捕まってないって。」 「へえ、…そう。」 「庶民がこれだけ苦しい生活を強いられていたら、そういう人も出てくるでしょう。」 僕は、ニュースだけではなく、そこに寄せられたコメントまで学習してしまったらしい〈母〉の言葉に驚いた。そして、 「お母さんは、そんなこと、言わなかったよ。『どんな事情でも、テロで世の中を変えようとするなんて、間違ってるわよ。』って言ったはずだよ。『物騒な世の中で、恐いわね。』って。」と訂正した。〈母〉は、素直に、 「そうだったわね。お母さん、おかしなこと言ったわね。」と思い直した風の表情をした。けれども、僕は初めて、母ならこう言っただろうという確信がないまま、〈母〉に言葉を覚えさせたという、落ち着かない気分を抱いた。母だって、年齢と共に、様々な影響を受けて、何か意外なことを言ったりするはずだった。僕は、どうしてもそれを思いつけない。ー僕はただ、今、僕自身が、誰かから言って欲しい言葉を、〈母〉に言わせたに過ぎないのだった。
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近未来の話。全体のストーリーは面白かったし、何より作者の緻密な想像力に感嘆しました。主人公のモテなさそうっぷりが不憫になるほど。その一言を言う前にこんなにいろいろ考えてるの!?すごい思考回路だけど普通に怖い! あと、これは完全に好みの問題だけど、女性の描写がちょっと…受け入れられ...
近未来の話。全体のストーリーは面白かったし、何より作者の緻密な想像力に感嘆しました。主人公のモテなさそうっぷりが不憫になるほど。その一言を言う前にこんなにいろいろ考えてるの!?すごい思考回路だけど普通に怖い! あと、これは完全に好みの問題だけど、女性の描写がちょっと…受け入れられなかったです。もう少し思慮があってもよいのでは。他の登場人物とのバランスが取れていない気がしました。
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#読了 人の本心どころか自分の本心さえ疑わしいのに知ろうとするのは傲慢でしかない。さて、平野さんの文章力は唸るくらいに優れているが内容は最初から最後までぐだぐだの堂々巡りで長いだけだった。2040年の設定の意味ある?
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