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すみれ荘ファミリア の商品レビュー

4.1

354件のお客様レビュー

  1. 5つ

    111

  2. 4つ

    154

  3. 3つ

    63

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

    2

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2022/09/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

すみれ荘に住む人たちは、みんな秘密を持っていた。 誰にも言えないそれを抱えて、「“普通の人間”でいよう」、「自分の良い面だけを他人に見せよう」として苦しんでいた。 しかし自分の本当の気持ちを無視できなくなったとき、様々な感情が渦巻く中で、自身を固めていたものが少しずつほぐれていく。 作品を読み進めていくごとに、登場人物の「普段とは違う側面」が見えていった。 誰しも皆、誰にも見せない側面がある。 どんな人にも「他人に見せない顔」があり、「言わない本音」がある。 それは良い悪いで判断できるものではなく、人間なら当たり前のことなのだと思う。 しかしどんな顔を持っていても、「自分」は「自分」でしかない。 『あとがき』に書かれていた言葉が、印象に残っている。 「誰もが持つ様々な顔。 ある人からは表で、別の人からは裏に見える。 曖昧で、安定性は皆無で、瞬間的に強くて、なのにほんの少しの衝撃で折れることもある。 そんな不可解な人の心を、わたしはずっと書き続けている気がします。」 (P306『あとがき』より) ◇ もうなにが正しくて、なにが間違っているのかわからない。 だったら当事者がよければそれでいいじゃないか。 すべてを清廉にすることができないのなら、濁ったまま、それでも少しでも良いほうに進んでいきたい。 (P301) これから少しずつでも関係が修復されていけばいいと思うけれど、無理かもしれない。 それは別にいい。 世の中の人すべてが理解し合い、許し合えるなんてのは幻想だ。 だからといって希望を捨てることはない。 世界にも、心にも、グレーゾーンというものがあっていい。 (P303,304)

Posted byブクログ

2022/09/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

著者の作品はどれも好きだ。けれど、その中でもこれはもう一段階上を行くかもしれない。 人の見せられない汚ない内側が濃く書かれている。誰でも人間の好き嫌いはある。それは赤の他人だけでなく自分が産んだ子供に対しても。。。子供にもそれぞれ別の性格があるということを考えると、紛れもない事実だと思う。ただそれが度を越すと悲惨なことになってしまうんだな。人を想う気持ちも、一歩間違うと変な方向に向かってしまう。良い人悪い人だけではくくれないその歯痒い感じが現実の人間なんだろう。

Posted byブクログ

2022/09/10

語り口は、穏やかで、もの静かに物語が進行していく。 一悟(いちご)くんは虚弱体質の33歳。 妻とは死別し、娘は妻の両親に虚弱体質が故にとられてしまった。 娘の誕生日プレゼントを選び、自転車で帰宅する途中で、男性と接触してしまう。 虚弱体質の一悟くんは、母親から譲られたすみれ...

語り口は、穏やかで、もの静かに物語が進行していく。 一悟(いちご)くんは虚弱体質の33歳。 妻とは死別し、娘は妻の両親に虚弱体質が故にとられてしまった。 娘の誕生日プレゼントを選び、自転車で帰宅する途中で、男性と接触してしまう。 虚弱体質の一悟くんは、母親から譲られたすみれ荘という下宿屋を営んでいる。 玉城美寿々、平光隼人、上郷青子がこの下宿屋の住人だ。 そのすみれ荘へ、先日自転車で衝突事故を起こしてしまった、芥と名乗る男がやってくる。 芥の右目の下には、涙形のほくろがあった。 小さい頃、両親が離婚し、自分は母親に引き取られ、弟は父親に引き取られたが、弟にも涙形のほくろがあった。 まさか、実の弟なのか? 穏やかな物語の中に、愛故の様々な事件が巻き起こる。 先日読んだ神さまのビオトープより、断然こちらの話の方が好みだな。 虚弱体質の一悟くんのお人好しさも大好きだ(^-^) すみれ荘の住人のキャラクターも非常に良い。 何より、怪し過ぎる芥くんと、一悟くんの関係が気になって仕方がない。 筆致は激しくないのに、それぞれのキャラクターはかなり激しい想いがあったりして、優しい本なのに、力強さも感じ、収まりも良く、とても楽しめた(*^^*)

Posted byブクログ

2022/09/05

最初は、すみれ荘に住む住民と病弱な大家のほんわかストーリーだと思ったら全然違った。 人は皆、別の顔や内に渦巻いている感情などそれぞれ抱えているものがある。 「愛ゆえに、人は。」 帯の言葉がぴったりな作品。

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2022/09/01

一見善良で無害っぽい人の真の怖さを思い知らされる内容だった。 青子は代理ミュウヒハウゼン症候群なんだろうけど、それを知っている人と見抜けないし、知らない人にはただただ親切で献身的に見えるからものすごく厄介だなぁと思う。けど、こんなに虚弱で入院繰り返してるんだったら、血液検査でばれ...

一見善良で無害っぽい人の真の怖さを思い知らされる内容だった。 青子は代理ミュウヒハウゼン症候群なんだろうけど、それを知っている人と見抜けないし、知らない人にはただただ親切で献身的に見えるからものすごく厄介だなぁと思う。けど、こんなに虚弱で入院繰り返してるんだったら、血液検査でばれそうな気がするんだけどなぁ。

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2022/08/31

凪良さんの物語はやはり優しい。人の持つ不完全さをはっきりと描写するのに、それを否定するようなことはしない。だからどこか突飛にも思える登場人物の行動も、異質なものに思えず(100%共感もできないが)、愛せずにはいられない。 すみれ荘という下宿を舞台に、管理人代理である和久井一悟と...

凪良さんの物語はやはり優しい。人の持つ不完全さをはっきりと描写するのに、それを否定するようなことはしない。だからどこか突飛にも思える登場人物の行動も、異質なものに思えず(100%共感もできないが)、愛せずにはいられない。 すみれ荘という下宿を舞台に、管理人代理である和久井一悟と下宿人たちの暮らしの物語は、ある日和久井が作家の芥と衝突事故を起こしたことにより始まる。朴訥とした芥は実は和久井の生き別れた弟であり、何か意図をもってわざと事故を起こし、すみれ荘に転がり込むことになる。 月の半分はPMSにより自分が制御できなくなる美寿々。 テレビ番組の制作会社に勤め、ブラックな生活を送る隼人。 すみれ荘での下宿歴が最も長く花屋に勤める青子。 それぞれが抱える生きづらさにフォーカスし、芥がすみれ荘に引っ越したことにより和久井はこれまで長年下宿をしていた彼らの新たな一面を発見することになる。 これまでの凪良さんの本の中でもとてもテンポがよく、会話が楽しめた作品だった。特に正反対の考えを持つ美寿々と隼人の会話は、一見嚙み合わなそうに思えてなんだかんだで終着点が見つかる。読みながら何度か思わず吹き出してしまったところもある。個人的には、美寿々が店長に吐露した長台詞は読んでいて清々しかった。 あと、芥、美寿々、隼人が三上のことを終始「アバンギャルドな老人」と呼んでいるのが地味にツボってしまった。 血のつながった家族だから、母親だから、無償の愛を子供に与えられる、というのは確かに美しい考えだと思うけれど、家族や母親は同時に一人の人間にすぎないから、それを当然のことのように望むことはどこか間違っているし、傲慢のような気がする。だけど、人はそれができないと自分を責めてしまい、小さなことを拍子にボタンをかけ間違えてしまう。この物語は、ボタンをかけ間違えてしまった人も自分の思うように生きてもいいのだと優しく背中を押してくれるような気がして、温かい気持ちになった。 今作の最後には、タイガで出版するにあたり「表面張力」というエピソードが追加されている。途中は「これ誰視点だ?」となる場面もあるが、最後まで読むとなるほど一貫しているから面白い。個人的には、芥の人物設定がお気に入りだった。どうか小説内では管理人に見せ場があることを願っている。

Posted byブクログ

2022/08/31

愛の不平等さや人の裏表、グレーゾーンが世界にも心にもあっていい。なるほど。自分の感情にも当てはまることが書いてあってすんなり読めた。二人の息子を100パーセント平等には愛せてないのか、でもそれが普通なのかもしれない、とちょっと自分をゆるせたきがした。人間の複雑さを一悟を通すことで...

愛の不平等さや人の裏表、グレーゾーンが世界にも心にもあっていい。なるほど。自分の感情にも当てはまることが書いてあってすんなり読めた。二人の息子を100パーセント平等には愛せてないのか、でもそれが普通なのかもしれない、とちょっと自分をゆるせたきがした。人間の複雑さを一悟を通すことで優しい気持ちでスルッと読めた気がする。

Posted byブクログ

2022/08/29

表紙のやわらかい印象とはまるで違う物語。 愛とか裏表とか人間ってこわい。 世の中が『ひとり』イコール『独り』と定義するってわたしも分からない。芥といっしょ。

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2022/08/28

凪良ゆうさんらしい、人間の醜さと美しさ両方を丁寧に描いた作品だなと思いました。感情を無くした淡白な登場人物が出てくるあたりも、著者のカラーを感じさせられます。

Posted byブクログ

2022/08/19

いわゆるペルソナの話なのだけれど、 これにおいてはもっと広くて深い。 見えている「その人」がその人の全てでなく、 むしろ相手から見えないもののほうが多いのであれば、 「人がわかり合う」っていうこととは果たして何なのだろうか…などと読了後ふと思った。

Posted byブクログ