臨床の砦 の商品レビュー
長野県にある病床数200という信濃山病院が舞台。 大病院でもなく、大都会にあるわけでもない 中小病院。 医師たちが必死の思いで 新型コロナ感染に立ち向かう ノンフィクションに近い作品のようです。 作者は、現役の医師として長野県で臨床の現場にいる方ですが、 見たこともないような景...
長野県にある病床数200という信濃山病院が舞台。 大病院でもなく、大都会にあるわけでもない 中小病院。 医師たちが必死の思いで 新型コロナ感染に立ち向かう ノンフィクションに近い作品のようです。 作者は、現役の医師として長野県で臨床の現場にいる方ですが、 見たこともないような景色を目にしたと発言されていました。 病院の外に並ぶ診察待ちの車の列に、タブレットPCでの診察。 人生の最期に、顔を見ることさえできない 患者と家族の現実。 自分と向き合うために、書かないと進めないと思われたそうです。 この物語の舞台は2021年1月。 現在、2021年9月とは状況が異なります。 ワクチン2回接種を終えた人が全国平均で5割になりました。 それでも、デルタ株という変異株の出現で 都市部では、まだ緊急事態宣言が解除されません。 マスクなしの日々が戻ってくることがあるのか、それさえ分かりません。 2020年、クルーズ船でのウイルス発見から2年半が経つというのに。 2020年4月早々に、ある友人がこんなことを言っていました。 「これって、明治維新くらいの大きな異変だと思う」と。 《特定の立場から大きな声を上げることには、危険が伴う。 立場の違う人間同士の繋がりを断ち切っていくことになるだろう。 負の感情のクラスターは何も生み出さない》 作品中のこの文言は、ぐさりと胸に刺さりました。 事業の経営者、雇用されて働く人々、介護や医療の関係者。 それぞれの立場で それぞれの利害がありますが、 お互いに負の感情をぶつけ合うことだけは避けなければ。 作品の中で、医師たちは暗中模索しながら必死で闘いますが その様子に とても危ういもの を感じました。 こんなことは、続けられないかもしれない…。 今必要なのは、全体を見通す司令塔ではないでしょうか。 てきぱきと采配を振ることのできるヒーロー、現れないかなぁ。
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3.8 コロナという、とてつもない怪物と闘う 医療従事者達の悲惨な現場。 普段から、ニュース映像等でそれなりに掴んでいたつもりの情報が、「誰か」ではなく、こうしてパーソナリティを持った1人の人間を通して受け止めると… その危うさや、緊張感が、比較にならぬ程迫ってくる。
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あまりにタイムリーな展開。これは決してフィクションではない。架空ではあるがノンフィクションと言ってもいいと思う。実際、医療崩壊と言ってもいいくらい過酷な現場で想像がつかない。たくさんの人に読んでもらいたい。
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コロナ禍に於いてコロナ患者を受け入れ、医療の逼迫にあえぐ信濃山病院。未曾有の災害。正体不明のウイルス、自分も感染するかもしれない、死ぬかもしれないリスクを冒している中で医師たちの間でも不安、緊張、殺伐とした空気が流れる。そんな中で主人公の敷島寛治は同僚から「いつも冷静で落ち着いて...
コロナ禍に於いてコロナ患者を受け入れ、医療の逼迫にあえぐ信濃山病院。未曾有の災害。正体不明のウイルス、自分も感染するかもしれない、死ぬかもしれないリスクを冒している中で医師たちの間でも不安、緊張、殺伐とした空気が流れる。そんな中で主人公の敷島寛治は同僚から「いつも冷静で落ち着いてますね」と言われ、院内の空気を和らげる存在。しかし彼も表に出さないだけで心中穏やかではない...。 物語を通じて改めてコロナウイルスの恐ろしさ、異常さを感じる。ベッド数が満床なのに発熱外来は常に長蛇の列。受け入れを拒否する非協力な民間医療。行政の認識の違い。同じ病院内でもコロナ診療をやってないと医師同士でさえ認識がずれる。家族に会うのが怖く、車の中で寝る生活。重症患者は家族にも会えず、孤独に逝く。死者は厳重に包まれ家族のもとに遺骨だけが届く。「死と別れ」という厳粛な体験を空疎に変えていくウイルス。人と人をことごとく分断する状況で敷島も心が麻痺していく...。答えのない戦いに放り込まれ、それでも戦わなければならない状況で敷島は何を思うのか。 他の登場人物もそれぞれの思いを抱えながら戦っている。前線で戦っている医師達に改めて頭が下がる思いになる話でした。
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著者の夏川氏は長野県の医療機関で消化器内科の医師として地域医療に携わりながら、作家として活動を続けている。 今回の作品は「コロナ診療の最前線」としての地域病院の実態を描くもので、フィクションではあるが、著者が勤務する病院の様子が投影されたドキュメンタリーともいえる。 主人公・敷島...
著者の夏川氏は長野県の医療機関で消化器内科の医師として地域医療に携わりながら、作家として活動を続けている。 今回の作品は「コロナ診療の最前線」としての地域病院の実態を描くもので、フィクションではあるが、著者が勤務する病院の様子が投影されたドキュメンタリーともいえる。 主人公・敷島寛治は40代の消化器内科医。彼は地域で唯一、コロナ感染の軽症・中等症患者を受け入れる信濃病院に勤務、感染症チームの一員として働き、同僚から冷静さを評価されている。チームは呼吸器の専門医がおらず、専門外の内科医、外科医で組織されていた。2021年の年明けからコロナ第三波に襲われ患者が急増する中、一般診療を継続しながらの対応は熾烈を極める。病床は拡充しても足りないところへ高齢者施設でクラスターが発生、さらに病床を増やして患者を受け入れる。だが、重症者が増え、トイレ掃除や風呂掃除もしている看護師が認知症患者の徘徊対応なども余儀なくされることになり、限界を超える激務となる。そして、恐れていた院内感染が発生する。 読んでいくにつれ、医療崩壊の現場の凄まじさが生々しく伝わり、自分も表情がこわばってくるのがわかった。同時に最前線スタッフに敬意を表さずにはいられなくなった。 なぜ、他の病院がもっと受け入れを増やしてくれないのか、スタッフはその怒りを発する余裕もなく働きっぱなし。著者は行政や周辺医療機関の無知と無関心が最大の敵となる地域医療の危機を強く訴えている。 病床使用率の分母はすぐに使用可能な病床数ではなく、使用率の数値より実態は逼迫度が高いこと、「感染症の戦いに正解はない」という重い言葉も胸に刻み込まれた。
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このコロナ禍における医療の現場を現役の医師が描くドキュメント小説。 コロナ第三波真っ只中の長野県にある病院を舞台に、医療現場の逼迫具合、そして国民や行政との温度差、医師の葛藤などが生々しく描かれています。 著者が現役の医師だけあって、かなりリアリティがありました。 ただ、最後...
このコロナ禍における医療の現場を現役の医師が描くドキュメント小説。 コロナ第三波真っ只中の長野県にある病院を舞台に、医療現場の逼迫具合、そして国民や行政との温度差、医師の葛藤などが生々しく描かれています。 著者が現役の医師だけあって、かなりリアリティがありました。 ただ、最後まで医師それぞれのキャラクターがいまいち掴みきれず終わってしまったのが残念です。登場人物が多く、中途半端な絡み方になってしまったことが要因かなと思います。 神様のカルテの続編として栗原先生が主人公で描かれていたら、より感情移入できたかもしれません。
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9月1日新着図書:【神様のカルテ著者による、コロナ診療を実施する病院を焦点に当てた医療小説です。今コロナ患者を受け入れられている病院では医療崩壊が叫ばれていますが、非常にタイムリーな内容となっています。】 タイトル:臨床の砦 請求記号:910.26:Na URL:https://...
9月1日新着図書:【神様のカルテ著者による、コロナ診療を実施する病院を焦点に当てた医療小説です。今コロナ患者を受け入れられている病院では医療崩壊が叫ばれていますが、非常にタイムリーな内容となっています。】 タイトル:臨床の砦 請求記号:910.26:Na URL:https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28184185
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今まさに病院で起こっているであろうことが、生々しく書かれていた。 果たして2021年9月、信濃山病院はどうなっているだろう。 『神様のカルテ』の舞台を使わなかったことが、凶と出た気がする。神様〜とは、環境、主人公のキャラクター、いずれも似通っており、改めて行われる登場人物紹介に、...
今まさに病院で起こっているであろうことが、生々しく書かれていた。 果たして2021年9月、信濃山病院はどうなっているだろう。 『神様のカルテ』の舞台を使わなかったことが、凶と出た気がする。神様〜とは、環境、主人公のキャラクター、いずれも似通っており、改めて行われる登場人物紹介に、(決して長編ではない200頁程度の)本作では感情移入が難しかった。 神様〜の舞台でも、今ごろ同じような状況にあろうはずである。
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みなさんが評されているとおり、まさに出来るだけ多くの人たちに読んでいただきたいドンピシャのコロナ禍に纏わるドキュメントですね! あの「神様のカルテ」の著者が現役Dr.ならではの医療最前線の苦闘と苦悩と問題点を実体験から提起してありますので凄く腑に落ちました♪ 政治家や評論家やM...
みなさんが評されているとおり、まさに出来るだけ多くの人たちに読んでいただきたいドンピシャのコロナ禍に纏わるドキュメントですね! あの「神様のカルテ」の著者が現役Dr.ならではの医療最前線の苦闘と苦悩と問題点を実体験から提起してありますので凄く腑に落ちました♪ 政治家や評論家やMCの諸君には是非是非これを読んでから言動して欲しいものです。 本当はもっと厳しく激しく政府や行政に物申したいところをグッと抑えた作品にされているのでしょう。たいへん興味深く崩壊寸前の医療現場の実態もよ〜く解りました!
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ニュースでは伝わらない医療現場崩壊の現実が生々しく描かれている。いい加減な政治家発言、風評被害、コロナ差別にもさらりと触れ今読むべき小説だと思う。
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