羊は安らかに草を食み の商品レビュー
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主人公含め登場人物がほぼ後期高齢者。 自分が今までに読んでこなかったタイプのストーリーのため、入り込めるかという懸念がありましたが… そんな懸念を抱いてたことが馬鹿馬鹿しくなるくらいのドラマがこの作品にはありました。 だれの人生にもドラマはあるものですが…戦後の満州から引き揚げてきた益恵のそれは、ひとつ知るたびに重い鉛を飲んだかのようにひどく重いものでした。 ときおり益恵の読んだ句が出てくるのですが、事実を知らずに読むのと知ってから読むのでは、思い浮かぶ情景がまったく違っていて、益恵の人生の壮絶さが浮かび上がってくるようです。 旅をする3人にはそれぞれの背景があって、旅を通して自分の人生と人生の終い方について向き合います。 わたしは…長生きはしたくないタイプなんだけど、こんなお互いを思い会える友がいるのなら、長生きも悪くはないのかな、とちょっとだけ自分の考えを改めました(^^) いや〜おもしろかった!!!
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著者の小説は初読。きっかけはWOWOWドラマの「黒鳥の湖」。 新刊が丁度出たとこなので、早速読んでみた。 満州の引き上げの様子の克明さ。 筆舌に尽くし難い状況、まるで経験者のような臨場感。 あまりにも悲惨すぎて胸が苦しかったよ。 でもきっと大袈裟でもなんでもなくて実際、このような体験した人は沢山いたんだろうな。 この時代もし、満州にいて引けあげる者の立場になったら、日本の帰れるのはまず無理なんじゃないかと思うほど、過酷だ。帰れた人はよっぽど幸運だと思う。 まあちゃんと佳代ちゃんがどうにかふたりで助け合って満州 から帰国し、その後もまあさんの結婚相手も満州での体験がトラウマになって赤子の泣き声に反応して暴れるて手がつけられなくなるひどさにずっと耐え続けて、やっと晩年に再婚した夫は穏やかで、アイと富士子という俳句仲間として出会って友情を深めてこれて救われた。 認知症になって、そっからの3人旅。 二度と会えない”かよちゃん”の謎。 そーか、読み進みうちにもしかしたら、宝塚の月影なぎさはまあさんの実子では?と思ったらやはりそうだった。 佳代が誤って大やけどを負わせて死んでしまった我が子とまあさんの咄嗟の判断で取り違えたとは… 島谷の殺害未遂は笑ってしまったけど、富士子さんとアイがの行動力がなんとも痛快だったわ。 なんかとりとめもない文になったしまったけど、大河小説を読み終えた気分だわ。 戦争に負けて満州に取り残された人たちの悲惨さがとにかく心にずっしり残ったし、中国人でも日本人に手を差し伸べてくれる優しい人もいれば、日本人でも鬼のように冷たい人もいて、国じゃないんだよ、個人の魂の高さなんだなとつくづく思ったね。
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おばあちゃんの3人旅?それならハートフルな話かなと思っていたら、とんでもない。 そうだった。この作家さんは、怖いシーンほど臨場感があるんだった、と思い出す。 テーマも大きいので、片手間ではなく読むならしっかりと。
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認知症を患った友人との旅行は、彼女がこれまでに住んでいたところを巡る旅。 それぞれの場所でその時代を過ごした友人と会うのだが、壮絶な人生で筆舌しきれないほど…
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三人の高齢者がたどる旅。度々戦争の辛いシーンが出てきて涙した。認知症になって自分の安らげる世界を作っていく、という表現がしっくり来た。敬老の日に読んで良かった。
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満州移民たちが、満州から逃れるための過程が生々しく書かれており、それらの場面を想像するだけで、しばらく恐怖感に陥りました。 登場する高齢者たちは、逞しく行動力に満ち溢れています。 「残った記憶を掻き集め、それぞれの『世界』を創り上げる」という言葉に共感しました。この本から、歴...
満州移民たちが、満州から逃れるための過程が生々しく書かれており、それらの場面を想像するだけで、しばらく恐怖感に陥りました。 登場する高齢者たちは、逞しく行動力に満ち溢れています。 「残った記憶を掻き集め、それぞれの『世界』を創り上げる」という言葉に共感しました。この本から、歴史を知らない自分を恥じました。 2021,9/5-12
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満州引き揚げ、言葉では知っていたが実際どんなことがあったのかは知らなかったのでこの本を読んで、壮絶だったことを知った 11歳の女の子が生きていくには過酷という言葉では足りない よくぞ、日本まで帰ってこれたなと引き揚げ過程を読んでいて思った 戦争は戦中も戦後も正義なんてどこにもないなと思う 老婆3人が旅をする現在と益恵さんが歩んできた満州での記憶が交差する話 認知症の人は過去の記憶と現在がごっちゃになってしまい混乱するとどこかで読んだ記憶がある 三千男さんが提案したことだとはいえ、過去を思い出すような旅は負担にならないのかと心配だったが最終的に満州を一緒に生き抜いた佳代さんとめぐり合うことができ 架空の話とはいえ、ホッとした様子の益恵さんを読めてよかった 唯一無二の同志と会えないという心の負担を思うと… 月影なぎささんについてはおそらく実子なのだろうと2章くらいから思っていたので結末自体は驚かなかった が佳代さんがあやまって実子を亡くしてしまったとは思わなかった なぎささんには真実をもっと早く伝えても良かったのでは?と思うが部外者なのでなんとも… 益恵さんが北満からたどり着いた汽車の中で母をなくした赤子を新しい母親に渡したことに対する老婆の言葉が、実子の取り替えをした際に出てきたときは胸が詰まった 最終章でなぎささんの夫を殺す描写で雰囲気がガラッと変わってしまい少し置いてけぼりをくらったが それを除けばとても面白い小説だった 表紙の崖の上の教会、5章を読みながらふと見たときに小説にこんなにはまっている表紙もなかなかないなとなぜだか嬉しくなった 文庫化したら購入して再読したい
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東京で知り合った3人の老女は20年来の仲良し3人組。しかし、一人が認知症となり、意思疎通が難しくなってしまいます。そこで、2人は、彼女がかつて住んだ土地を辿る旅にでることにしますが…。
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読んでいくうちにどんどん引き込まれていく感じが ドンピシャに好みだった。 作中に出てくる戦争の話から目を逸らしたくなるくらい苦しいものだったけれど本当に考えさせられるものばかりで、途中から最初の雰囲気からは想像ができないくらいの展開になってきてすごく読み応えがあった。最後の真相に...
読んでいくうちにどんどん引き込まれていく感じが ドンピシャに好みだった。 作中に出てくる戦争の話から目を逸らしたくなるくらい苦しいものだったけれど本当に考えさせられるものばかりで、途中から最初の雰囲気からは想像ができないくらいの展開になってきてすごく読み応えがあった。最後の真相にたどり着いた時には泣いた。 他の作品も読んでみたくなりました!
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牧歌的な扉絵とタイトルに、穏やかな伊予弁のファンタジー予想してたら、ナントも重い女性たちの生き様に満蒙開拓。重い荷物てんこ盛りで、通しテーマは生と死、人生の終い方!そう言えば、「愚者の毒」の宇佐美さんだったよ。重たい話なのにクスっと笑ってしまうユーモアも。旅立つ前に行っておきたい...
牧歌的な扉絵とタイトルに、穏やかな伊予弁のファンタジー予想してたら、ナントも重い女性たちの生き様に満蒙開拓。重い荷物てんこ盛りで、通しテーマは生と死、人生の終い方!そう言えば、「愚者の毒」の宇佐美さんだったよ。重たい話なのにクスっと笑ってしまうユーモアも。旅立つ前に行っておきたいところ、ピックアップしておくか。「嘘の世界でもいいから安心して住める世界を用意してやりたい」石神井川の別名「音無川」初めて知った!静かな流れはコンクリートで固められてしまったが…
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