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羊は安らかに草を食み の商品レビュー

4.3

202件のお客様レビュー

  1. 5つ

    87

  2. 4つ

    75

  3. 3つ

    28

  4. 2つ

    2

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2021/11/03

壮絶で圧倒的。 人間の逞しさに心揺さぶられたり、弱く儚い部分に目を伏せて溜め息をこぼしたり。 人間というものの様々な面に触れた気がした。 戦争を体験した人とそうでない人の違いは決定的だ。 戦争は、人を人で無くす。 そんなことは絶対にあってはならない。 戦争を知らないで生きる人た...

壮絶で圧倒的。 人間の逞しさに心揺さぶられたり、弱く儚い部分に目を伏せて溜め息をこぼしたり。 人間というものの様々な面に触れた気がした。 戦争を体験した人とそうでない人の違いは決定的だ。 戦争は、人を人で無くす。 そんなことは絶対にあってはならない。 戦争を知らないで生きる人たちは、戦争でのことをきちんと知るべきだし、二度と同じ過ちを繰り返してはならない。 戦地を生きた人たちの体験や、満州での引き揚げを生き抜くその姿に、これほどまでに辛い体験をしたのかと、読んでいて本当に苦しかったけど、この作品を通してそれを知ることができて良かったと心から思った。 私たちは、同じ世界にいながらも、様々な経験を積み、多様なもので形成され、それぞれの世界を生きている。 認知症を患うことで、それらが失われ、形成され積み重ねたものや、紡ぎ出された記憶が崩れていき、自分のいる、自分なりの世界を失うということがある。そのことについて深く考えさせられた。 こぼれ落ちずに残った記憶で、それぞれに創り上げた世界に生きていくということ。もし、親や自分自身がそうなった時に、どんな記憶を失くして、どの記憶が残って、どんな世界を創り上げて生きていくのだろう、と想像が広がる。そしたら、いろんなピースを持ちたいという想いがふわっと溢れた気がした。 たとえ失くしてしまうピースがあっても、足りない部分を悲しむのではなく、総じて眺めた時に、微笑みが浮かぶような、そんな安らかな世界を過ごせたらいいなと思った。 でもこれはけっして失くしたくはない、と祈りながらピースを大切に握りしめて、作中の彼女たちの記憶を引き継ぐ。そんな読書だった。 心に安らかに響くパイプオルガンの音に耳を澄ませて、そっと私の記憶へと優しい和音が重なってゆく。 どこまでも遠くまで届けたい平和の和音。 ページをめくり、重ねていくように、多くの読者の心へと響かせていきたい。そう思った。

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2021/10/31

若干冒頭からオチが読めてしまった箇所もあったけれど、それでも秀逸によく出来た作品だった。面白かった。本当によく描けている作品だった。

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2021/10/30

スゴイ本! 賛否あると思うけど、 内容が凄すぎる。 メチャメチャ濃厚で、多分一生忘れない。 忘れなくさせるためのラストと思う。 スゴイな。。。

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2021/10/22

私は戦争を知らない。 そして、私の義父は、満州からの自分の引き揚げの話を、家族の誰にも話すことなく、今年、天国へと旅立って行った。 戦争は、悲しい思い出しか、残さなかった。

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2021/10/21

第4章まで、とにかく素晴らしかった。最後の章はある種コミカルになってしまっているのだが、むしろそこで救われる気持ちになるくらい、4章までが苦しく哀しかった。

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2021/10/10

俳句仲間3人の老婆のうち1人(益恵)が認知症になってから度々なにか過去のことに苦しむようになった。 益恵の夫は益恵が施設に入る前に彼女の心のつかえを取り除いてあげたいと思い、仲の良い友人2人にお願いし、益恵が過去にいた思い出の場所を旅することになる。 3人の旅と益恵が過ごした満州...

俳句仲間3人の老婆のうち1人(益恵)が認知症になってから度々なにか過去のことに苦しむようになった。 益恵の夫は益恵が施設に入る前に彼女の心のつかえを取り除いてあげたいと思い、仲の良い友人2人にお願いし、益恵が過去にいた思い出の場所を旅することになる。 3人の旅と益恵が過ごした満州での悲惨な戦争時代の章が交互に展開される。 戦争の生々しい話に耳を塞ぎたくなり、とても益恵のようには生きられないと思ったし、殺すか殺されるかの生き方しかさせてもらえない人生を送った人がいるのかと思うと心が痛む。 常にいつ死んでもおかしくない中で友人を思いやり必死に生きた姿、戦争により人格を奪われ苦しむ夫を理解し耐え支えた益恵、そんな心優しい益恵のためならと人生をかけて旅する友の友情に感動させられた。 ストーリーも良いし、戦争時代のことも学べてこんなにも平和で自分の意思で選択ができ、自由に生きられる今の環境にありがたみを感じた。 本こそ分厚いが、最後の最後まで予想しない展開があり楽しく読めた。

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2021/10/07

人生の終焉を迎える老女3人と終戦後の満州を生き抜いた少女のエピソードが、認知症を患った老女が詠んだ句と交差して展開する。 どんどん読み進めたくなる不思議な冒険譚と言って良いのか。ラストは賛否両論かもだが面白かった。

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2021/10/02
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主人公含め登場人物がほぼ後期高齢者。 自分が今までに読んでこなかったタイプのストーリーのため、入り込めるかという懸念がありましたが… そんな懸念を抱いてたことが馬鹿馬鹿しくなるくらいのドラマがこの作品にはありました。 だれの人生にもドラマはあるものですが…戦後の満州から引き揚げてきた益恵のそれは、ひとつ知るたびに重い鉛を飲んだかのようにひどく重いものでした。 ときおり益恵の読んだ句が出てくるのですが、事実を知らずに読むのと知ってから読むのでは、思い浮かぶ情景がまったく違っていて、益恵の人生の壮絶さが浮かび上がってくるようです。 旅をする3人にはそれぞれの背景があって、旅を通して自分の人生と人生の終い方について向き合います。 わたしは…長生きはしたくないタイプなんだけど、こんなお互いを思い会える友がいるのなら、長生きも悪くはないのかな、とちょっとだけ自分の考えを改めました(^^) いや〜おもしろかった!!!

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2021/09/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

著者の小説は初読。きっかけはWOWOWドラマの「黒鳥の湖」。 新刊が丁度出たとこなので、早速読んでみた。 満州の引き上げの様子の克明さ。 筆舌に尽くし難い状況、まるで経験者のような臨場感。 あまりにも悲惨すぎて胸が苦しかったよ。 でもきっと大袈裟でもなんでもなくて実際、このような体験した人は沢山いたんだろうな。 この時代もし、満州にいて引けあげる者の立場になったら、日本の帰れるのはまず無理なんじゃないかと思うほど、過酷だ。帰れた人はよっぽど幸運だと思う。 まあちゃんと佳代ちゃんがどうにかふたりで助け合って満州 から帰国し、その後もまあさんの結婚相手も満州での体験がトラウマになって赤子の泣き声に反応して暴れるて手がつけられなくなるひどさにずっと耐え続けて、やっと晩年に再婚した夫は穏やかで、アイと富士子という俳句仲間として出会って友情を深めてこれて救われた。 認知症になって、そっからの3人旅。 二度と会えない”かよちゃん”の謎。 そーか、読み進みうちにもしかしたら、宝塚の月影なぎさはまあさんの実子では?と思ったらやはりそうだった。 佳代が誤って大やけどを負わせて死んでしまった我が子とまあさんの咄嗟の判断で取り違えたとは… 島谷の殺害未遂は笑ってしまったけど、富士子さんとアイがの行動力がなんとも痛快だったわ。 なんかとりとめもない文になったしまったけど、大河小説を読み終えた気分だわ。 戦争に負けて満州に取り残された人たちの悲惨さがとにかく心にずっしり残ったし、中国人でも日本人に手を差し伸べてくれる優しい人もいれば、日本人でも鬼のように冷たい人もいて、国じゃないんだよ、個人の魂の高さなんだなとつくづく思ったね。

Posted byブクログ

2021/09/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

おばあちゃんの3人旅?それならハートフルな話かなと思っていたら、とんでもない。 そうだった。この作家さんは、怖いシーンほど臨場感があるんだった、と思い出す。 テーマも大きいので、片手間ではなく読むならしっかりと。

Posted byブクログ