コロナと潜水服 の商品レビュー

奥田英朗(著者)

2021/08/27

【海の家】
－－ひと夏、家族と離れて暮らすことになった－－

小説家の村上浩二は、妻の浮気をきっかけに葉山に古い一軒家を借りた。
嫌な思い出から離れ一人で暮らす夏。
ずっと空き家だったはずの屋敷で、思わぬ出会いが。

【ファイトクラブ】
－－早期退職の勧告に最後まで抵抗し続けていたら、総務部危機管理課という新設部署に異動させられた。実質的な“追い出し部屋”である－－

異動先には、ボクシングが本格的にできる施設があった。

同じ境遇の同僚たちと見よう見まねで運動していると、どこからともなくコーチが現れる。
そして終業後に指導を仰ぐ日々。

それはことのほか、充実していた。

【占い師】
－－プロ野球選手の恋人が、入団三年目にしてブレイクした－－

恋人の予想以上の活躍がうれしい反面、フリーアナウンサーの麻衣子は心配のほうが大きくなっている。
彼の態度もそっけない。

事務所の社長に紹介してもらった原宿の雑居ビル。
道に迷ってたどり着いた先には同年代で鏡子と名乗る占い師が、ため口で語りかけてくる。

気が付けば、常連になっていた。

【コロナと潜水服】
－－五歳になるなる息子・海彦が不思議な能力を持っているらしいと気づいたのは、ここ数週間のことである－－

コロナによるリモートワーク期間。

「バアバにスマホして」
「今日は出かけちゃダメ！」

突然の海彦の電話が、岐阜の母親をコロナ感染から救った。

感染対策には十分注意してきた康彦だったが、やむを得ずに休日出勤。

「パパ、出かけちゃダメ！」
康彦は、コロナウイルスに感染していた。

【パンダに乗って】
－－小さな広告会社を興して二十年、曲がりなりにも社長として頑張ってきた自分へのご褒美として、今年で五十五歳の小林直樹は二台目の車を買うことにした－－

新潟まで足を延ばして買った三十六年落ちの中古車フィアット・パンダ。
搭載されたカーナビに従って運転すると、思わぬ場所へ案内されていく。

そば屋にいくはずが、カレーとパスタの店へ。
日本海を経由して、サーキット場へ。
そして、新潟大学へ。

それは、この赤い車のかつての持ち主に縁ある人々が過ごすところばかりだった。

直樹は日帰りの予定を変えて、一泊していくことにした。

各話に出てくる重要人物は、いずれも通常ではありえないものばかり。
いわば、生者でも死者でもないひとたち。

主人公たちは、その存在との交流をきっかけに、大事なことに気が付いていく。
そして、明日への活力、生きる力を得ていく。

死者を忘れた文明だけでは、きっと行き詰まる。
見えないものにこそ、大切なものがある。

心が温かくなる少し不思議な怪談集。

2021/08/20

図書館で借りたもの。
5歳の息子には、新型コロナウイルスが感知できる？パパがとった究極の対応策とは…。表題作をはじめ、愛と奇想の全5作を収録。

コロナ禍の短編集かと思って読んだけど違った！けど面白かった！
不思議な体験(霊や不思議な力)の短編集。
怖い感じではなく、読後は心がほっこりするような話ばかりで良かった。

2021/08/19

読みやすかったです。

コロナの物語からクラシックカーの物語まで
ほっこりする短編集。

個人的には最後の「パンダに乗って」がお気に入りです。

2021/08/15

すごく良かった。
短編が５つ。どのお話も、ちょっとした「不思議」が起きるけど、どれも何故か自然に受け入れてしまえるようなお話。

「コロナと潜水服」「パンダに乗って」が特に好き。
コロナはコロナウイルスの話でびっくり。テレワークのお父さんと５歳の息子の会話が微笑ましい。お父さんが何かと「国会で決まりました」と言うのがツボだった。笑
パンダは車の名前。最後、ホロリと泣かされた。

最後のページに、この本に出てきた曲の、SpotifyプレイリストQRコードがあってびっくり。なんて粋な。今はそれを聴きながら感想書いてます。あんまりステキなので、今度これ聴きながらドライブいくと決めました！

読み終わった瞬間に、洗濯機が仕事を終えた「ピーピー」で現実に戻ったのも、この本の不思議が続いてるのかと錯覚しちゃった。

2021/08/13

どのお話もほろりとさせられて、すごく良かった。
現実に存在しない人との触れ合いだけど、すごく自然に受け入れられる感じだし。
表題作は、この頃よりも時代が悪くなってしまったからかなぁ、こんなふうに軽いタッチで大丈夫な時に戻りたくなってしまったよ。

2021/08/13

不思議な出来事を集めた短編集。
幽霊が出てくる話もあるが、ホラーというよりは心温まるファンタジー。
いらいらしがちな今のご時世、この本で心を静めたい。

2021/08/12

明治の偉大な噺家であり創作家であった
三遊亭圓朝さんの「三題噺」を思いました。

海の家
　海の家、夫婦問題、子どもの零
ファイトクラブ
　リストラ、ﾎﾞｸｼﾝｸﾞ、幽霊
占い師
　セレブ、恋愛、占い
ｺﾛﾅと潜水服
　ｺﾛﾅ禍、予知能力、潜水服
ﾊﾟﾝﾀﾞに乘って
　ｸﾗｼｯｸｶｰ、ｶｰﾅﾋﾞ、感傷

一見、無関係にあるような
それぞれの「お題」が見事に
ｽﾄｰﾘｰの中に読み込まれていく

酷暑の中を避けて
聞こえてくる蝉の声をBGMに
時折ﾁﾘｰﾝと風鈴の音を添えて
読み込んでいくのは
至福の時間でした

2021/08/11

5つの短編集。いずれもファンタジックな
味わいのある優しい短編ばかり。人生でうまくいかない時や辛いときに「霊」?がちょっとだけ助けてくれる…。妻に不倫された小説家、退職勧告され「追いだし部屋」にいる男性、彼の浮気が気になる女性、コロナが心配な家族等など…。その中の「コロナと潜水服」は、変わってしまった家族の生活と不安を感じる日々を潜水服と赤ちゃんを使ってユーモラスに描いてくれる。「パンダに乗って」は車を運転する人なら涙腺を刺激されて最後に暖かい気持ちになる…。長編も短編も、奥田作品にハズレなし!

2021/08/10

レビューを拝見して読みたくなった本です。ありがとうございます。

奥田英朗さんを読むのは『ナオミとカナコ』に続く二作目で、この作品は全く違うあたたかい作風で驚きました。

短編が五編です。
どの短編も、共通点は不思議な人（車）が出てくるところです。

「海の家」には６、７歳の男の子の幽霊。その幽霊のおかげで、主人公は命拾いをします。お盆に読むのにぴったりなお話です。

「ファイトクラブ」は早期退職者の勧告に抵抗した家電メーカーの社員らが追い出し部屋に追いやられた先でボクシングを始める話。どこからともなく現れたボクシングのコーチ。

「占い師」はこの短編集唯一の女性が主人公です。ぴたりと当たる占い師ですが、現代的な女子アナが恋愛相談をします。

「コロナと潜水服」は新型コロナに感染しそうになったり感染したことを察知する超能力がある5歳の男の子がでてきて愉快な話でした。

「パンダに乗って」は55歳になる主人公が買った初代ファイアット・パンダ84年型の赤がそのパンダの元の持ち主にかかわる人々のところへ連れていくカーナビが活躍します。このお話もお盆に読むのにぴったりな泣ける物語です。

お盆休みに読むのにぴったりな短編が2作入っていますので、お盆休みに読む本が決まっていらっしゃらない方は是非、選ばれてみてはいかかでしょうか。

2021/09/29

初めての読む作家さん。5つの短編集だが途中で一貫したテーマに気づく。
わたしが好きなのはタイトルと同じ作品。電車の中なのに吹き出してしまった。
中には爽やかすぎるものもあったが、80年代の洋楽も流れて昭和～コロナの令和まで繋がりましたね、良き良き。

私設図書にありオススメされた