今夜、すベてのバーで 新装版 の商品レビュー
中島らもさんの作品を初めて読んだ。毎日のようにアルコールを飲む人、時間があるお酒を飲みたいなぁと思う人は一読の価値あり。 この本とあわせて、「誰がために医師はいる」がオススメ。アルコールや薬物に対する理解が深まります。
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※このレビューにはネタバレを含みます
・1月13日に読み始め、16日に読み終えました。 ・母のおすすめ。おもしろかった~。 ・母が中島らものことを好きで、私はあんまり詳しくは知らないのだけど、人となりは少し聞いたりなんだりしていたので、自己問答自己問答自己問答の小説だなと思った。 ・解説でも語られていたけど、主人公の小島さんは一番作者に近い人で、アル中で入院した病院の中でこれまた作者の分身みたいな人と自己問答自己問答っていう雰囲気。ただ全然たいくつじゃなくて、それぞれのキャラクターがしっかりと存在しているからたのしい。赤河先生と話してるシーンはどこも良かった。頭のいいひとたちの会話というか、物事をよく考えることができる人同士の会話というか…… ・序盤で、同室の老人の大量のしっこと自分の病気のしっこを比べて(尿量を計測しないといけないから、採尿して袋に入れないといけない)惨めになり、水でしっこを薄めまくるところおもしろかった。なんか好きだ。だめだろ、そんなことしちゃ。 ・小島の仲の良かった友人として天童寺という人が出てくるのだけど(故人)、脳内の想像図が中原中也になった。なんとなく似てるなと感じた。モデルが居るらしいけどこれも中島らもの友人だったりするのかな~? ・そのつもりがなかったとはいえ病院を抜け出してお酒をたくさん飲んでしまって、帰ったら綾瀬少年が亡くなっていて、赤河先生と殴り合いして(すな。)、生と死の間でうっすらと暗いほうを向いていたのが、このあたりのできごとを境にガラッと明るいほうへ体ぜんぶをひたしていて驚いた。驚いたというか…… こんなに希望を見て終わると思ってなかった。そのへんの明暗のコントラストが綺麗だったな。 ・全然触れていなかったけど、お酒の話なんですよね。 ・私は全くと言っていいほどお酒を飲みません。どえらい弱いわけでも好きじゃないわけでもなく、誘われたら飲みます。シンプルに一人では飲まないだけ。なので、お酒の描写に関してはあんまり理解ができなくて惜しい~~。日常的に飲酒する人だったらよくわかる部分とかが絶対あるんだと思う。生傷触れられるような思いをする人もいるんだろうな…… ・それでも生活は続く、という作品が好きです(ずーっと言ってる。)。 小島さんが入院してくるところから本が始まるけど、それ以前の生活についても回想で触れられるんですよね。その辺の話も軽やかに語られているんだけど、内容は結構重ため。重ためというか泥沼にはまっていく過程が生々しい。 ・前後不覚になってもさやかちゃんに遺書のこして、入院までしてて、時間は経つし治療によって体は治っていく。ハチャメチャになっても生活は続く、続けなくてはいけない、さやかちゃんのためにもね。不安定ではあるだろうけど、命というものにかなり肉薄した「それでも生活は続く」だと思った。良かった。
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大きなドラマがあるわけでもないんだけど、主人公の自分をやけに客観的に捉える視点のおかげで、理路整然としていて淡々とした気持ちで読み進められた。 ドラッグとアルコールへの依存の仕組も説明してくれたし、 心理学専攻だったわたしからしてみれば、天童寺さやかと、その兄の体験を通じて、依...
大きなドラマがあるわけでもないんだけど、主人公の自分をやけに客観的に捉える視点のおかげで、理路整然としていて淡々とした気持ちで読み進められた。 ドラッグとアルコールへの依存の仕組も説明してくれたし、 心理学専攻だったわたしからしてみれば、天童寺さやかと、その兄の体験を通じて、依存とそのバックにある各人の不安定性が、うまく描かれていておもしろい! 出てくるキャラクターも個性的でいい。 赤河との綾瀬くんを悼む?霊安室の対話が好きだ。たしかに若くして死ぬことに限らず、人生、他人のゴールを基準にしたってしょうがないね、自分基準で考えたい。 以下学びになった引用を。 アル中になるのは、酒を「道具」として考える人間だ。おれもまさにそうだった。この世からどこか別の所へ運ばれていくためのツール、薬理としてのアルコールを選んだ人間がアル中になる。 肉体と精神の鎮痛、麻痺、酩酊を渇望する者、そしてそれらの帰結として「死後の不感無覚」を夢見る者、彼等がアル中になる。これはすべてのアディクト(中毒、依存症)に共通して言えることだ。 単調な仕事は、続けているうちにけっこうハイになってくる。一定のリズムに乗っているうちにエンドルフィンだのエンケファリンだのの麻薬物質が脳内に分泌され出すのだろう。外見は退屈そうに見えても、単調な作業というのは案外「効く」ものなのだ。 「凡」なら「凡」という字についてずっと考え続ける。考えるというよりは脳裡に見るのだ。そのうちに凡の字に関連のあるようなないような、非現実的なイメージが一瞬浮かんでくる。「夢のしっぽ」と呼んでいるこいつをつかまえるのだ。この退屈な手順に慣れると、酒がなくても眠れる 心理学者は何でも幼児体験のせいにしちゃうからね。 「アル中の場合、たとえば親の言っていることと事実との間に、明らかに相違がある、矛盾があることが多い家に育つわけだ。子供はそれに気づくからそれを指摘する。すると、子供は黙ってなさい、とか、生意気を言うな、とか
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ドラッグカルチャーに詳しい中島らもの本はずっと読んでみたいと思っていた。本当は『アマニタ・パンセリナ』を読みたかったけど本屋には無く、店頭に並んでいたこの本を購入した。 文章も内容も読みやすく、すらすらと読み進めることができたが、内容としては主人公の入院生活が主なのでドラマチ...
ドラッグカルチャーに詳しい中島らもの本はずっと読んでみたいと思っていた。本当は『アマニタ・パンセリナ』を読みたかったけど本屋には無く、店頭に並んでいたこの本を購入した。 文章も内容も読みやすく、すらすらと読み進めることができたが、内容としては主人公の入院生活が主なのでドラマチックな展開とかは特に無く単調な印象。 アルコール中毒とは何かが学術的にも自身の体験としても詳しく書かれている。近年主婦のキッチンドランカーが増えているとあったが、自分の中でも思い当たる節があり(イライラを抑えるために飲む)、私のような酒の飲み方はアルコール依存症に繋がる片鱗があるように感じた。 物語に出てくる、主人公の担当医である赤河と主人公のやりとりが面白かった。 これは余談であるが、この本を読み終えた時丁度私は総合病院にいた。医者にとって私は大勢の患者のうちの1人だし、そこにドラマのようなやりとりがあるわけでもなく診察の内容は流れ作業になる。ましてや総合病院ならなおさら。まあ病気じゃない理由で受診してるわけだから、何もない方がいいんだけど。 単調な診察が終わった後に思ったのは、赤河は患者に対して熱意のある診察をしてくれたんだなということだ。じゃなきゃいちいち素人の患者を個別に呼び出し精神病理学の説明はしないし、患者の前で私的な感情など表に出さないだろう。とにかく赤河が良い。みんな赤河を見よう。
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アル中の話。私自身は機会飲酒で飲酒するのも月に二回程。二日酔いが気持ち悪すぎて、もう2度とお酒は飲まないでおこうと思ってもいつの間にかまた飲んでる。こんなに近くにあるお酒。そりゃーアル中の人は抜け出せないよなと思った。私はアル中支える自信ない。
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アルコール依存症で倒れた主人公は病院へと連れられる。医者はスパルタだし入院患者は皆個性派揃い。見舞いに来た亡き友人の妹からは罵倒とビンタをくらう。 好き嫌いの問題ではない。「手段」が「目的」になったとき、もうアル中の沼に足をとられているのかもしれない。 読み進めるうちに自叙伝かと...
アルコール依存症で倒れた主人公は病院へと連れられる。医者はスパルタだし入院患者は皆個性派揃い。見舞いに来た亡き友人の妹からは罵倒とビンタをくらう。 好き嫌いの問題ではない。「手段」が「目的」になったとき、もうアル中の沼に足をとられているのかもしれない。 読み進めるうちに自叙伝かと錯覚するかのようなリアリティ。と思ったら本当に作者の体験からきているらしい。 私も肝臓を労らないとな……
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Twitterのフォローしている人のオススメで読み始め。 アルコール中毒で入院したことがある筆者の書く小説。 リアリティはあった。 人類はみんな何かに依存している、だったり、寝酒をする人はアル中とも言える、など、面白い主張も多かった。 なぜ酒を飲むのか、というのにもっと深掘り...
Twitterのフォローしている人のオススメで読み始め。 アルコール中毒で入院したことがある筆者の書く小説。 リアリティはあった。 人類はみんな何かに依存している、だったり、寝酒をする人はアル中とも言える、など、面白い主張も多かった。 なぜ酒を飲むのか、というのにもっと深掘りしてほしかった気がするが、主人公が言っている通り、依存の理由なんて何とでもいえるような気もするから、これくらいが良かったか。 三婆やアル中のおっさんなど、どことなくリアルだけどもユニークな入院患者がキャラとして良かった。 が、流石に医者のキャラはぶっ飛びすぎて一人だけフィクションっぽさが強すぎたのが残念。 一人だけ男塾生いるやんって思っちゃいました。
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中島らもさんの生き様が詰まった一冊。 破天荒で、誰にも真似できないような波瀾万丈人生。 窮屈で生きづらい今の令和という時代では、絶対に味わえないし、許される事のない生き方。 だからこそ、なぜか…なぜか…そのらもさんの荒さや 自由奔放さに憧れを持つ。 読み終わった後に… ...
中島らもさんの生き様が詰まった一冊。 破天荒で、誰にも真似できないような波瀾万丈人生。 窮屈で生きづらい今の令和という時代では、絶対に味わえないし、許される事のない生き方。 だからこそ、なぜか…なぜか…そのらもさんの荒さや 自由奔放さに憧れを持つ。 読み終わった後に… 「らもさん、かっけぇー!!こんな生き方してみたかった!」って思ったのが正直な感想。
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中島らものエッセイは読んだことがあったが、小説は初めて読んだ。 人物としてはテレビ出演の映像などを何度かみたこともあるため、やはり小気味良くかつ芯を食った文体を書かれることは期待通りで楽しく読むことができた。 展開としても小島が尿量を恥ずかしいがためにごまかす馬鹿馬鹿しい人間...
中島らものエッセイは読んだことがあったが、小説は初めて読んだ。 人物としてはテレビ出演の映像などを何度かみたこともあるため、やはり小気味良くかつ芯を食った文体を書かれることは期待通りで楽しく読むことができた。 展開としても小島が尿量を恥ずかしいがためにごまかす馬鹿馬鹿しい人間味が垣間見えると思いきや、アル中の内的欲求やホメオスタシースの話を持ち出したりと振れ幅を持ちつつもどれを芯を食っている。 私自身もアルコールに頼っている節がある。そう言った日本人は少なくないはずである。そのため、この小説はどこか当事者性を持って読んでしまうし、実際日本人のアルコール依存性人口は100万人といまれている。そりゃ他人事ではないだろう。 明日は我が身とはまでは言わなくとも20年後、30年後は我が身である。
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同僚が好きといっていた作家さんなので予備知識ゼロで読んでみたら、冒頭から重篤な病気を患っている主人公。 救いの無いアル中患者の鬱屈した話か……と思ったら、そんな中でもどこか憎めない登場人物たち。 特に後半、終始居丈高な態度だった医師が見せた弱さというか、漏らした本音に胸を打たれました。 医者は患者を助けてあげることはできない。 人は自分の足で歩いていくしかない。 なら、きっと本当に救いの無い物語なんてないんだな、と明るい方へ歩き出すことを決めた主人公を見ていたら思えました。 期待以上に面白かったです。
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