今夜、すベてのバーで 新装版 の商品レビュー
酒に依存する人間の弱さや愚かさを、個性豊かな患者たちや医者とともにユーモアや皮肉をこめて描いた物語、と読み始めたときは思いました。しかし読めば読むほどそう単純に割り切れないこの小説の世界に、はまり込んでしまいました。 人はなぜ酒を飲むのかという単純かつ根源的な問いを、様々な面か...
酒に依存する人間の弱さや愚かさを、個性豊かな患者たちや医者とともにユーモアや皮肉をこめて描いた物語、と読み始めたときは思いました。しかし読めば読むほどそう単純に割り切れないこの小説の世界に、はまり込んでしまいました。 人はなぜ酒を飲むのかという単純かつ根源的な問いを、様々な面から時に深く掘り下げ、そしてばかばかしい話かと思ったら、突然オシャレだったり、どこか高尚にすら思える文章にハッとさせられたり。 ストーリーもアルコール中毒患者である小島の日常と、周りの人々のやりとりをおかしく描いたと思ったら、小島の個性豊かな友人との強烈なエピソードの回想があり、夢や幻想の世界に入ったと思ったら、精神医学の話もあったりとまったくつかみどころがない。 病院の日常のリアルさが妙に印象に残っています。尿検査で自分の尿に水道水を足してばれたら仕方ないと開き直ったり、三人のおばあさんに絡まれたりと、それぞれのエピソードが妙にリアルで人間臭い。 さらには主人公の友人だったり、主治医だったりなかなかパンクな登場人物たちもいるのだけど、彼らもどこか人間臭さを感じさせて、登場人物それぞれに不思議な親近感を覚えました。 中島らもさん自身が相当にパンクな人だというのは、ネットを見れば一目瞭然なのだけど、そのパンクな人生と自身のアルコール中毒の体験が、作品に見事に表れていたと思います、 自分は生前の中島らもさんを拝見する機会はなかったのだけど、相当に面白い人だったのだろうな、と感じます。(友達になりたいかはまた別) そうしたつかみどころのなさやメチャクチャさ、ユーモアも楽しいのだけど、終盤の生と死であったり家族や人間関係を考えさせる展開はシリアスだったり、心が少し暖かくなったりと、本当に最後の最後まで読み心地がころころ変わる話でした。それでいて面白さはどんな展開でも落ちない。 思い出すのは同じ中島らも作品の『ガダラの豚』。全三巻の作品ですが一巻ごとにジャンルが変わるハチャメチャさ。それでいて各巻ごとの物語のエンジンが力強く、無茶苦茶になっても最後まで力強く走り抜ける、パワーにあふれる一作だったと思います。 この『今夜、すべてのバーで』も、ジャンルは大きく違えど似たものを感じました。いろいろな要素を含んだハチャメチャさがありつつも、人間というものに焦点をあてた素敵な一作だったなあ、と読み終えて思いました。 第13回吉川英治文学新人賞
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特別難しいことは描かれていないのに、非常に奥が深い作品だった。リアルな人物描写や心の機微、言葉の危うさが胸に突き刺さる。人生観が変わる一冊だった。
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面白かった。かなり夢中になって読んだ。最初のうちは物語やキャラクターが掴めなくて微妙だったけれど、回想と現実が一折りずつ進んでいくごとに物語にのめり込んでいく。登場人物が愛おしくなり早く続きが読みたくなる。文章は少し改行が多く目が滑ってしまう感じが時折あったが、要所要所の使い分け...
面白かった。かなり夢中になって読んだ。最初のうちは物語やキャラクターが掴めなくて微妙だったけれど、回想と現実が一折りずつ進んでいくごとに物語にのめり込んでいく。登場人物が愛おしくなり早く続きが読みたくなる。文章は少し改行が多く目が滑ってしまう感じが時折あったが、要所要所の使い分けというか、意図は伝わってきた。中島らもの作品を読むのは初めてであったが、かなり良い読書体験だったのでまた読みたいと思う。
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中島らも初めて読んだけど面白かった。文学とかじゃないけど、普通に面白い話。酒飲むの、考える。でも飲む。
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すらすらとよめて、楽しい「アルコール依存症」小説。酒を飲みながら読みたいが、真に迫る描写で飲む気が失せてしまった。名作である。
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ほーーって言う感じの本。お金持ちは一番健康にお金をかける。とか健康が一番お金がかかるという。お酒を飲まない自分としてはこんなにも体を酷使してまで飲むのがすごいと思う。 飲みニケーションやタバコミュニティなんて言うけど自分の身を滅ぼしてまで必要なコミュニケーションもすごいなと思う。...
ほーーって言う感じの本。お金持ちは一番健康にお金をかける。とか健康が一番お金がかかるという。お酒を飲まない自分としてはこんなにも体を酷使してまで飲むのがすごいと思う。 飲みニケーションやタバコミュニティなんて言うけど自分の身を滅ぼしてまで必要なコミュニケーションもすごいなと思う。 結局今がよければ良いという考えは、自分が良いと思いたい=何かから逃げたいという現実逃避な気もする。省エネで生きていきたい私にとって、あの少量での体の気だるさと眠気は本当に行動するうえでの弊害がすごい。何かから逃げるための術として使用できるものでの逃避先のコミュニティが本当に重要かなんてよく分からない世界だなって思う。 会社の社長さんや一軒家を持ってる人や人との関わる仕事もそう、自分よりとても大きなものの管理をしてるのに、たかだか158cm自分を管理できないなんてって思えば脳もきっと気づくはず笑 明日からもっと腹筋頑張ろ!٩( ᐛ )و なんでもほどほどにして自分と向き合って、また本がたくさん読めるように長生きするか〜って思えばこんな幸せなことはないなーって思う
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前半はふっと笑ってしまうような個性豊かな人物紹介があったり、アル中になった人がどのような葛藤を抱えているのかなど、考えさせられる作品でした。 自分もお酒には気をつけなければ、アルコールを、道具にしたらいけないなと思います。
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長編小説なのに、短編集のような、 見どころがいろんなところに散りばめられてた。 でもやっぱり終わりの方にかけて、 少年の話くらいからが一番良かった◎ とても読みやすい小説でした
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読みはじめたきっかけは、作者の「ガダラの豚」がとてもおもしろく、もっと読んでみたいと思ったことと、アルコール依存症に興味があったから。 体調が悪いのに、飲み始めるとやめられない所とか、嫌なこととかを忘れるためにお酒を飲んでるところとか、すごくリアルだなって思った。 天童寺さ...
読みはじめたきっかけは、作者の「ガダラの豚」がとてもおもしろく、もっと読んでみたいと思ったことと、アルコール依存症に興味があったから。 体調が悪いのに、飲み始めるとやめられない所とか、嫌なこととかを忘れるためにお酒を飲んでるところとか、すごくリアルだなって思った。 天童寺さやかの描写が好きだったな
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タイトルだけだと、お酒がテーマになったとあるバーでの物語かな?などというイメージを持ってしまいそうですが、これは最初から最後まで、徹底してアルコール中毒者の物語。 最近ハートフルで優しい感じのお話ばかりを読んでいたので、久しぶりに読み応えのあるものを読みたくて手にした一冊。 な...
タイトルだけだと、お酒がテーマになったとあるバーでの物語かな?などというイメージを持ってしまいそうですが、これは最初から最後まで、徹底してアルコール中毒者の物語。 最近ハートフルで優しい感じのお話ばかりを読んでいたので、久しぶりに読み応えのあるものを読みたくて手にした一冊。 なので、もちろんアルコール中毒がテーマになっていることは確認の上購入しましたが、それにしても完全にガチでアルコール中毒のことが述べられているので、小説というよりも、医学を勉強しているようなそんな気分で読んでいました。 私自身はお酒はほとんど飲まないし、飲んだとしても楽しく飲んだ後にふわ~っと酔っぱらう程度の健全なものですが、依存症に陥りやすい人はどんな風に飲むのか、そしてどうなっていくのかなどとても勉強になり、そして恐怖も感じました。 お酒の飲みすぎに自覚がある人は手に取ってみたらいいんじゃないかな?私も飲みすぎ傾向のある夫に進めてみたいなと思えた一冊です。
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