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推し、燃ゆ の商品レビュー

3.3

1898件のお客様レビュー

  1. 5つ

    218

  2. 4つ

    553

  3. 3つ

    688

  4. 2つ

    247

  5. 1つ

    69

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2021/12/23

二つの体験をする。 一つは、誰かを「 推す」とはどのようなことか。主人公が、大自然の中で日の光を全身に浴びながら空気を肺いっぱいに吸い込むように、推しから溢れるものを何もとりこぼさずに自分の中に取り入れておこうとする感覚が、心地よくて切ない。推しがいる楽しみよりも、その儚さや脆さ...

二つの体験をする。 一つは、誰かを「 推す」とはどのようなことか。主人公が、大自然の中で日の光を全身に浴びながら空気を肺いっぱいに吸い込むように、推しから溢れるものを何もとりこぼさずに自分の中に取り入れておこうとする感覚が、心地よくて切ない。推しがいる楽しみよりも、その儚さや脆さが強烈に残る。 もう一つの体験は非定型発達の人間として「普通」の社会を生きること。主人公と恐らく同じ診断名を持つ私にとっては、サブリミナル的に差し込まれる他人がリマインドしてくるあれこれや、マルチタスクの全てが停止してしまうときの思考回路、「またそのせいにするんだ」という家族からの言葉、全部恐ろしくよみがえってきた。アルバイトのシーンは、主人公の鼓動の速さまで体験させられるような辛い場面だった。 二つの体験が呼応し合って「誰にも私の気持ちはわかるまい」という諦観の念と、その諦めを拠り所として誰かと自分を重ねる気持ちと、「なぜわからないものをそのまま受け入れて許してくれないのだろう」という悲しみがたくさん押し寄せてくる。 苦しかったけど、良い体験だった。

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2021/01/22

芥川賞を受賞したとニュースになっていて、インパクトのあるタイトルと「推しが炎上した、ファンを殴ったらしい」という紹介文の一説が気になって電子版を即購入しました。 ページ数は140ページ程と差程多くはなく、数時間で読むことが出来ました。 アイドルファンの女の子が生活に悩み推し事に時...

芥川賞を受賞したとニュースになっていて、インパクトのあるタイトルと「推しが炎上した、ファンを殴ったらしい」という紹介文の一説が気になって電子版を即購入しました。 ページ数は140ページ程と差程多くはなく、数時間で読むことが出来ました。 アイドルファンの女の子が生活に悩み推し事に時間を費やしという、どこか泥臭さを感じる作品だと思います。 私にも推しがいるので、作品の主人公と応援スタイルは違いますが共感できる部分も多かったです。 また主人公の生活に関する描写が妙に生々しく、私もあまりまともな生活を送って居ないので胃が痛かったです。 しかし同時に今推しが存在していることと、家があり寝床があり仕事があり迎え入れてくれる家族がいることに感謝しようとも思えた作品です。 -追加- 幼少から本が好きで図書館を利用したり自分で購入したりもしましたが、近年は読書は好きだけど反面億劫にもなっていました。 買うにしても「推しが舞台をやったから」とか理由が無いと買えない感じで…タイトルに惹かれて衝動買いし、ほぼ1日で読み切ったのなんて久しぶりです!!

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2021/01/21

祝、芥川賞。 宇佐見りんさん、史上三番目の若さでの受賞とのこと。 芥川賞作品は短いので、何がしかの待ち合いに読むのにマッチする(笑) この本の場合は歯医者さんの診察待ちで読んだ。 「推し」についての小説。 全般に不安定でスマートには進まない。 つまづきながら歩む。 時に二本...

祝、芥川賞。 宇佐見りんさん、史上三番目の若さでの受賞とのこと。 芥川賞作品は短いので、何がしかの待ち合いに読むのにマッチする(笑) この本の場合は歯医者さんの診察待ちで読んだ。 「推し」についての小説。 全般に不安定でスマートには進まない。 つまづきながら歩む。 時に二本足歩行もできなくなる。 主人公のあかりはそんな女の子だ。 あかりの推しのアイドル真幸は、ある時ファンを殴って炎上する。 そんな行動に幻滅するファンも多い中、あかりは真幸を解釈し続ける。まるで、自らが生き続けるための証を探し続けるかの如く。 というお話だが、 うーん、 「推し」のことはよくわからない! なんだか、新しい世界に出会ってしまいました。 とても若い作家さんなのに、主人公も若いのに、小説から若い熱量を感じないのが不思議(笑)

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2021/01/20

推しという存在が主人公にとっての背骨、という文に感服しました。 普段気軽な気持ちで推しという言葉を使いますが、自分にとっての推しとは、ということを考えさせられました。生活の一部であったり、心の支えであったり、大事なものであることは変わりませんがここまで探求するほどの熱意はきっと自...

推しという存在が主人公にとっての背骨、という文に感服しました。 普段気軽な気持ちで推しという言葉を使いますが、自分にとっての推しとは、ということを考えさせられました。生活の一部であったり、心の支えであったり、大事なものであることは変わりませんがここまで探求するほどの熱意はきっと自分にはないだろうな、と感じました。 全身全霊をかけて推しに捧げる精神は周囲から理解されがたいものでも生きている瞬間を与えてくれるのだと思いました。

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2021/01/20

空虚な自己にとって「背骨」たる「推し」。 絶え間ない動揺と衝動は、「推し」が燃えたから、そしてその後の顛末ゆえなのか、自己の内面から発するものか。 息苦しさを感じるような鬼気迫る文章。どこまでいっても「自分自身」と「推し」という狭い世界が、この主人公にとってはまさに「全て」なのだ...

空虚な自己にとって「背骨」たる「推し」。 絶え間ない動揺と衝動は、「推し」が燃えたから、そしてその後の顛末ゆえなのか、自己の内面から発するものか。 息苦しさを感じるような鬼気迫る文章。どこまでいっても「自分自身」と「推し」という狭い世界が、この主人公にとってはまさに「全て」なのだ。それが説得力を持って迫ってくる。令和ならではの物語。

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2021/07/17

推し、燃ゆ 著作者:宇佐美りん 発行者:河出書房新社 タイムライン http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある推しがファンを殴った。

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2021/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

推しがいる身として気になっていた作品を一気読み。 「或るアイドルを推す話」って以上に、あかりの生きづらさがずしりと迫ってくる話だった。たとえば「携帯やテレビ画面には、あるいはステージと客席には、そのへだたりぶんの優しさがあると思う。」という部分。私も似たようなことを感じることがあるけど、あかりの生きづらさを絡めるとまた違った響きが出てくる。 推しへの感情の表現とか、途中で出てくるブログの文章とか、リアルだなこういうファンの子いそうだなと感じつつ、そこからあかりのアンバランスさが透けてくる具合が絶妙だと思った。

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2021/01/23

芥川賞ノミネートということで強烈なタイトルに釣られて読んでみた。 正直印象は薄い。読み終わった当日にこれを書いているからかろうじて内容は覚えているものの、1ヶ月も経てば全容は恐らく思い出せないと思う。 主人公が作中に話していた通り“ヲタク”にも様々な種類がいて、私の“ヲタク”...

芥川賞ノミネートということで強烈なタイトルに釣られて読んでみた。 正直印象は薄い。読み終わった当日にこれを書いているからかろうじて内容は覚えているものの、1ヶ月も経てば全容は恐らく思い出せないと思う。 主人公が作中に話していた通り“ヲタク”にも様々な種類がいて、私の“ヲタク”スタンスと主人公の“ヲタク”スタンスは別種類なので主人公に共感というよりも「あーこういうヲタクいるいる。」といった主人公の存在に対する共感を私は感じた。 ♡ 読了:2021.1.18 ♡

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2021/01/23

わずか21歳の女性が書いたにしては厚みのある生々しい作品。 主人公は推し活しか生きる理由のない女子高生。 ひたむきなのだけども、自分に無関心すぎる。 読んでてその危うさにモヤモヤした。

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2021/01/18

まず、「推し、燃ゆ」というタイトルが強烈で見事だ。 私自身も小さい頃から今でいう「推し」のような、大好きな存在がずっとあるような人間だった。その対象は少しずつ変わっていったけれど、その存在からもらったパワーは計り知れない。「炎上」という言葉は好きではないけれど、自分の大好きな対...

まず、「推し、燃ゆ」というタイトルが強烈で見事だ。 私自身も小さい頃から今でいう「推し」のような、大好きな存在がずっとあるような人間だった。その対象は少しずつ変わっていったけれど、その存在からもらったパワーは計り知れない。「炎上」という言葉は好きではないけれど、自分の大好きな対象がそれに近い状況になったこともあった。それでも、一緒に生きている、ということはいつだって自分の力になっていた。それが「推し」という存在なのだと思う。 アイドルや芸能界を中心に置いた小説は、どこかリアルさが足りないと思うことも多いが、この小説はとてもリアル。 あくまで「押しを推す」普通の一人の人間の細やかな心理描写や情景描写がとても素晴らしい。こういう人物を描いてくれたことに、安心感と、ありがとう、という気持ちを感じた。

Posted byブクログ