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心淋し川 の商品レビュー

3.8

247件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    126

  3. 3つ

    70

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2024/01/17

 「心淋し川」は、2021年の第164回直木賞受賞作です。「うらさびしがわ」と読みます。  江戸時代、淀んだ川沿いの朽ちた長屋を舞台に、もがきながらも懸命に生きる人たちの物語でした。  久しぶりに時代小説を手にしました。今の時代のようにコンプライアンスや人権問題という概念もなく、...

 「心淋し川」は、2021年の第164回直木賞受賞作です。「うらさびしがわ」と読みます。  江戸時代、淀んだ川沿いの朽ちた長屋を舞台に、もがきながらも懸命に生きる人たちの物語でした。  久しぶりに時代小説を手にしました。今の時代のようにコンプライアンスや人権問題という概念もなく、身も心も貧しく生きにくい時代だったはず。そんな時代を懸命に生きてきた人たちがいたからこそ今の世代につながってきたんだと思うとちょっと感慨深いです。100年後、200年後に生きる人々は、今の令和を生きた人たちをどう思うのでしょうか。

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2023/12/18

塵芥をため込む小さな川の両脇に建つ長屋に住む人々の連作。貧乏な暮らしを送りながらも希望を感じ取っていく話が多いなか、「冬虫夏草」はまた何とも歪んだ愛情と希望。すべての話に登場して長屋の住人と関わってきた差配・茂十の最終話が印象的でした。流れ着いて辿り着いた心町。そしてここで行き直...

塵芥をため込む小さな川の両脇に建つ長屋に住む人々の連作。貧乏な暮らしを送りながらも希望を感じ取っていく話が多いなか、「冬虫夏草」はまた何とも歪んだ愛情と希望。すべての話に登場して長屋の住人と関わってきた差配・茂十の最終話が印象的でした。流れ着いて辿り着いた心町。そしてここで行き直す。鬱々とした始まりからさわやかな読後感でした。

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2023/12/01

どのお話も、すべてすっきり解決ハッピーエンドめでたしめでたし!とならないところが良い。 が、絵に描いたようなハッピーエンドにはならないけれど、どのお話もある種ハッピーエンドだ。含みを持ったハッピーエンドで、それが心に温かい。 人が生きるってこういうことだよね、ってじんわりくる。 ...

どのお話も、すべてすっきり解決ハッピーエンドめでたしめでたし!とならないところが良い。 が、絵に描いたようなハッピーエンドにはならないけれど、どのお話もある種ハッピーエンドだ。含みを持ったハッピーエンドで、それが心に温かい。 人が生きるってこういうことだよね、ってじんわりくる。 いちばん好きなのは、「はじめましょ」。 好きあった女が身ごもっているのを知りながら酷い別れ方をした与吾蔵が、偶然知り合った幼児、その母親はかつて自分が手酷く袖にした女性だった。与吾蔵はもう一度その女性と生きることを決意する。 秘密を打ち明けられても新しい一歩を踏み出そうとする与吾蔵に胸が熱くなった。 わたしはシングルマザーになってほどなく恋人ができた。息子は彼にとてもよく懐いていたが、彼は表面上息子によくしてくれるものの、自分の家族として受け入れられるかと言うとそれは出来ないと苦しんでいた。別れては復縁しを繰り返した数年。結局別れた。読み終わってふと、そのことを思い出した。 わたしも与吾蔵のような男性に出会っていたら、人生はどうなっていたかな。 なーんてね。 ぞっとしたのは、「冬虫夏草」。 時々読みに行くシニアブログ(はてなブログではない)に、結婚して別の地に住む息子への愚痴が書かれることがある。あーしてくれない、こーしてくれない。目にするたび、もう結婚して子供がいて彼の世界を作って生きているのにと思う。物語を読みながらこのブログを思い出していた。 ゾッとしたけれど、母親と息子の共依存を描くこの話もある意味ハッピーエンドだと思う。 最終章で、どの話にもいい味を出していた差配の茂十の物語が語られる。最後の最後に行き着いた真実に驚かされた。 人はおしなべて一方向から物事を見て捉えがちだ。でも、物事にはさまざまな面があるということ、それぞれの真実があるということを忘れないでおきたい。 誰にもある心の淀み、何があったのか聞かぬのがこの町の理。 生き直すには悪くないこの町のような場所が、今の日本にも残っているだろうか。残っていて欲しいと思った。

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2023/11/30

西條奈加の心淋し川を読みました。 舞台は江戸時代澱んだ水が流れる心淋し川 その側にある長屋に住む人達のそれぞれの生き方を、描いてあります。 貧乏でも懸命に生きる姿が良いですね。 でも昔の人はお金がなくても、博打と酒はやるのですね。

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2023/11/17

貧しい人たちが暮らす町での短編集。 貧困から抜け出せない姿を見ていると、やるせない気持ちになる。 彼らは幸せなのか、幸せになれるのか、どうにもならないのか、、、 水捌けが悪く、一年中じめじめしている土地で、薄暗い様子がずっと漂っている。 読み終わった後も、彼らの息遣いが残って...

貧しい人たちが暮らす町での短編集。 貧困から抜け出せない姿を見ていると、やるせない気持ちになる。 彼らは幸せなのか、幸せになれるのか、どうにもならないのか、、、 水捌けが悪く、一年中じめじめしている土地で、薄暗い様子がずっと漂っている。 読み終わった後も、彼らの息遣いが残っているようで、物語の舞台に引っ張られる。 身体が不自由になった息子を介護する母親の物語が一番印象に残った。

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2023/11/05

直木賞受賞で気になって手に取った。普段全く読まない時代小説に最初は戸惑い、無理かもと思ったが、慣れてくるとぐいぐい読めた!現代小説では味わえない奥ゆかしさみたいなものがあって、時代小説もまた読んでみようと思えた。『灰の男』『はじめましょ』が印象的。人物が重なり合って登場するのも心...

直木賞受賞で気になって手に取った。普段全く読まない時代小説に最初は戸惑い、無理かもと思ったが、慣れてくるとぐいぐい読めた!現代小説では味わえない奥ゆかしさみたいなものがあって、時代小説もまた読んでみようと思えた。『灰の男』『はじめましょ』が印象的。人物が重なり合って登場するのも心町でみんなが生きてるんだなーと感じられて好きだった。

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2023/10/24

時代小説はめったに読まない。 入院中に読んでいた『鬼平犯科帳』以来。 西加奈子さんが時代小説を書くんだなと、新聞広告を見て、 なぜだか敬遠してしまいがちな時代小説を、なんとなく手に取った。違ったけど。 とてもよかった。 「時代小説が」ではなく、この物語が。 水の淀んだ「心淋し川...

時代小説はめったに読まない。 入院中に読んでいた『鬼平犯科帳』以来。 西加奈子さんが時代小説を書くんだなと、新聞広告を見て、 なぜだか敬遠してしまいがちな時代小説を、なんとなく手に取った。違ったけど。 とてもよかった。 「時代小説が」ではなく、この物語が。 水の淀んだ「心淋し川」に沿う古い長屋に住む人たちの物語。出てくる人々が少しずつ不幸せで、だけど一生懸命生きていて、物語の終わりにはほんの少し、ほんのちょっとだけ明り、針の先の点のような明りが感じられるところがいい。途中で「この人が悪い人でありませんように」と思うのが、ことごとく裏切られるのがよかった。 物語の大筋とは関係ないけれど、心に残った表現は以下。 p231 息子を盗賊に殺され、その復讐を遂げたい思いで生きている差配の茂十が、仇と目す楡爺を相手に話しかける。 * 妻と同様に、からだから心を解放できればどんなに楽か。~ すでに頭とからだと心が、三つにちぎれているようなありおさまでもがいている。 ・かつてこう思ったことがある。それを文字化するとこうなるのかと得心した。

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2023/10/11

いわゆる不幸せな人が幸せになるファンタジーではないけれど、違った形で救われる話に心が動く。幸せのあり方は自分が思うほど単純じゃない。

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2023/10/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ラインのkeepメモを見返していたら、この本の感想をメモ書きしていたのを見つけたので、本当にメモ書きだけど、以下そのまま転記することとした。 差配の茂十 親と子 はじめましょ、父と子、店を譲ってくれた 与吾蔵、 灰の男で、差配の茂十さんの話、それまでの人物の後日談も分かったのがよかった。稲次さんが楡爺のことを見ていたこと 冬虫夏草の母は、吉さん、嫌な姑、不幸なのに世話してる 閨仏、木彫り、おりきさん、器用の悪い母から生まれた男が、見た目の良くない女ばかり妾にしていた 茂十さんがいてくれるのがいいな、おちほちゃん 淀んだ川では気持ちも沈む じめっとした所に住んでいても、それぞれドラマが、心がある 二十をすぎたら行き遅れてる

Posted byブクログ

2023/06/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

連作短編集。最初はただの差配だと思っていた茂十が実は己の中に闇を抱えつつも町を見守ってきたというのがあとから分かってあたたかいきもちになった。心町から出たい女の子の話から始まり、段々心町に肩入れしたくなるのが不思議。 特にお気に入りなのはやっぱり稲次のお話かなあ

Posted byブクログ