首里の馬 の商品レビュー
第163回芥川賞受賞作。発想がユニークであり、古い資料館のデータベース作業や不条理なクイズ、ゲーム。そこに登場する宮古馬の「ヒコーキ」との出会い。なかなか体験できない芥川賞受賞作。
Posted by
未名子、激戦地沖縄、台風、民族学者の老女順さんと『沖縄及島嶼資料館』、『カンベ主任』とサンライズ・ヘルス・サイエンスシステム、問読者、ヴァンダ、ギバノ、ポーラ、宮古馬「ヒコーキ」、「様子のおかしいことをしっかり受け止め恐れない人」、「長生きして守る。記録された情報はいつしか命を守...
未名子、激戦地沖縄、台風、民族学者の老女順さんと『沖縄及島嶼資料館』、『カンベ主任』とサンライズ・ヘルス・サイエンスシステム、問読者、ヴァンダ、ギバノ、ポーラ、宮古馬「ヒコーキ」、「様子のおかしいことをしっかり受け止め恐れない人」、「長生きして守る。記録された情報はいつしか命を守るかもしれない」。 生き続けるに値する程度にはささやかな驚異に溢れているという著書の思いは読みとるには至らなかった。 過去2回の芥川賞候補作と対比して読んでみるのもいいかも。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
3.5点 なんともない話だった。つまらなくはない。人も亡くなるから適切ではないけど、ほっこりする気持ちにもなる。 未名子、順さん、途さん、カンベ主任、宇宙空間のヴァンダ、南極深海のポーラ、戦争ど真ん中シェルターのギバノ、宮古馬のヒコーキ、『にくじゃが』、『まよう』、『からし』
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
一個人が集めた沖縄首里の記録。集めた人が高齢で記録も場所も無くなろうとしている。 この資料の整理を手伝っている未名子の物語。彼女の本業がまた興味をひくし、一役買うのが想像を超えていて面白い。 今、何をやっても倒れない政権、荒んでいく日本に諦めを感じながら、一個人の存在意義や知識を得る事、書物を読む事の必然性を、宇宙にいるヴェンダに教えられる。 知っている情報や史実と乖離した、そこに生きた人達の声が、焦土と化した首里から物語となって発せられたのは、とても興味深かったし、なるほどなぁと唸った。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
第163回芥川賞受賞作。 読みやすい文体なので苦労はなく一気読みできました。 タイトルからも分かるように舞台は沖縄です。 個人の歴史資料館の整理の手伝いと孤立している外人との日本語のクイズでコミュニケーションをとる仕事とを並行している主人公の物語です。 物語が大きく動くのは台風の日に宮古馬が自宅に現れたところからで、琉球競馬やかつての名馬で本作の馬にも名にもなるヒコーキについては勉強になりました。 もちろん、この馬は何かの象徴なのだろうと思って読み進めましたが、孤独にとらわれていた主人公をその呪縛から解き放つためのアイテムと捉えました。 クイズの出題相手が宇宙空間や南極の深海や戦争危険地帯のシェルターにいるのも何かの象徴かと思いましたが、主人公が資料館のデータを託すことから近未来の人類の危機的状況を揶揄するものであるとともに希望の灯でもあると思いました。
Posted by
いまひとつ、かな。淡々とした物語は嫌いではないけれど、文章があまり得意な感じではなかった。何が伝えたいのか、一度で分からず何度か後戻りしてようやく意味が分かったりする。単純にこの作者の文章構成が苦手。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
未名子は確かに孤独だ。身よりもないし、何かあった時に気軽に相談できる友人や恋人もいない。 最後には、特殊な環境にいる自分と同じく孤独な人々にクイズを出すという変わった職をやめ、中学校から続けていた資料館の手伝いもすることができなくなる。 この先どうするのだろうと不安になるところだけど、未名子には生きる力がある。コミュニケーションの欠如を自分で認めているけれど、力がないのではなく、学校という場所になじめなかっただけだと思う。この作中の数多くない登場人物に存在感や確かな影響を与えている。テープデッキを盗んだり、ヒコーキを奪還したり馬に乗ったり大胆な行動にもでる。記録がこの先日の目をみるのかそうでないのか、それは分からないけれど、未名子は確実に自分の生を全うできるのじゃないかなとそう思った。
Posted by
芥川賞その2 沖縄の古びた郷土資料館の整理を手伝っている未名子は、宇宙や海底や戦地にいる人へオンライン通話でクイズを出題する仕事をしていた。 そして、双子の台風が接近した晩、幻の宮古馬が未名子の家の庭に迷いこんでくる。 さざなみのように広がっていく、 なんとも幻想的で不思議な...
芥川賞その2 沖縄の古びた郷土資料館の整理を手伝っている未名子は、宇宙や海底や戦地にいる人へオンライン通話でクイズを出題する仕事をしていた。 そして、双子の台風が接近した晩、幻の宮古馬が未名子の家の庭に迷いこんでくる。 さざなみのように広がっていく、 なんとも幻想的で不思議な世界観だ。 静かな小説だが、落ち着いて読ませてはくれない。 途切れた物語が多すぎた沖縄。 少しでも資料として残そうとする未名子。 でも、戦争がなく、大災害がなければ、その資料も役立つことなく消え去ってしまうだろう。 その方がすばらしいことと、宮古馬の上で揺られながら未名子が思うラストは、ほんわかと温かく素敵だ。
Posted by
同時期に受賞した「破局」とは打って変わって、とても静かな作品。一度でも沖縄に行ったことがある人なら、あの時の照りつける暑さ、砂埃、平屋等々沖縄の情景を思い出せるのではないでしょうか。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
現実とファンタジーが自然と入り混じる不思議な世界を垣間見ました。 個人的に、沖縄を舞台にした物語はどこか夢の中というか、神話的で靄がかっているというか、私の好きな意味で現実離れしている設定がしっくりくる気がします。 ちょうど「うんたまぎるー」を見たこともあって、余計そう感じたのかもしれない。 アート作品(それも映像)を見ている気持ちになりました。そのもの自体、力強さや美しさも備えていながら、背景には祈りや痛みや暴力がある。 沖縄の歴史は途切れていて、いまある建物なども人々の記憶をもとに「再現」されたもの、という趣旨のことが書いてあり、衝撃を受ける。
Posted by