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首里の馬 の商品レビュー

3.4

98件のお客様レビュー

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    12

  2. 4つ

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  3. 3つ

    39

  4. 2つ

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2022/07/20

主人公の未名子は孤独だけど不幸ではない。側から見たら、お金をもらえるわけでもないのに、何のために沖縄の歴史の記録をしているのかと思ってしまう。本人には意思があり、それを正論や法律で捻じ曲げようとする存在(警察など)に苦手意識を持っているんだな〜 未名子みたいな子と関わるの難しい。

Posted byブクログ

2022/04/27

「居た場所」は未読だが、これまで読んできた作品の中で間違いなく、高山羽根子さんの最高傑作だと思います。 終戦間際の琉球の地獄のような状況も、今現在の様々な国の抱える悩みや苦しみも、周りの倫理観の違いによる痛みを抱える孤独な人たちも、すべて引っくるめて、絶えず変化している真実たち...

「居た場所」は未読だが、これまで読んできた作品の中で間違いなく、高山羽根子さんの最高傑作だと思います。 終戦間際の琉球の地獄のような状況も、今現在の様々な国の抱える悩みや苦しみも、周りの倫理観の違いによる痛みを抱える孤独な人たちも、すべて引っくるめて、絶えず変化している真実たちの、その瞬間瞬間を、大切に、愛おしく、汲み取っていくことのささやかな幸せを実感させてくれた、この物語は、高山さんならではの、淡々と穏やかな語り口でありながら、内奥で熱く猛り狂っている情念の凄まじさも感じ取れるような、底知れぬ深淵を見た思いがしました。 人の骨の一部でさえも、その人の生きてきたすべての体験や知識、思いや感情まで、すべて入っているように思われて、改めて、かけがえのない偉大なものであることを実感させられ、人生には良いことも悪いこともあるけれど、それらが形になっている、ただそれだけで何か讃えたい気持ちにさせられる。 また、主人公の「未名子」という名前にも意味合いを感じ、孤独な人生で毎日同じ暮らしをしていても、それなりに生きてはいるけれど、彼女自身の、ふと望んでいた事を実現させた、今の思いを巡らしてみると、彼女自身が生きている証、所謂、名前のようなものが新たに命名されたようにも感じられるのです。 おそらく、70年ぶりに琉球競馬が復活したことは(2013年)、高山さんもご存知だろうし、それを最も喜んでいる一人なのかもしれません。 歴史上のごく僅かな期間の、取るに足らない、些細なことなのかもしれない出来事や知識にも、大切なものは、たくさん存在するし、そうしたものに目を向けることの大切さを、高山さんは教えてくれた。 そして、それらを築き上げてきたのは私たち人間なのだ。

Posted byブクログ

2022/03/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最初は他にたくさん感想書かれてることだし、なんだか言語化するのが難しいな〜と感じたので感想を書かずにおこうと思ったが、じわじわ書きたくなったのでやっぱりちょっと書こ。うまく伝わらないと思うけど… タイトルに首里ってあるから分かると思うけど、主人公の未名子は沖縄生まれの沖縄育ちで沖縄在住。なので舞台ももちろん沖縄。 最初の数ページは、誰視点で語られているかもわからない、予備知識が全くなかったら沖縄の話をしているのだとわからないかも?というくらいには抽象的に感じた。 そして未名子が中学生の頃からずっと通って資料整理をしている順さん(元民俗学者でリタイア後沖縄を終の住処とした)の沖縄に関する民族や風土の資料がぎっちり詰まっている資料館。 パソコンを通して世界各国の顧客と一対一で問答のようなクイズを出題するという未名子以外誰も従業員がいない仕事。 淡々とした文体や設定も相まって、咀嚼できたようなできないような不思議な気持ちで読み進めた。 そして台風一過後に突然未名子家の庭に現れた宮古馬。最初は、未名子はこの馬を警察に預けることに。 この時未名子はまだ、誰かと繋がっているイメージがなかったのだろう。特別悲観するでもなく淡々と、何度も自分のことを「孤独」だと称していた。 それが、順さんが倒れ、資料館もなくなることになったと順さんの娘の途さんが未名子に伝えたとき、多分その時が未名子の変化の始まりだった。 でももっと劇的に心が変化したのは、職場に出入りする業者を未名子が訪ねた時、業者からあんな気味の悪い職場に関わりたくないんだと痛烈に訴えられた時だと思う。 唐突に浴びせられた拒絶と負の感情。 職場も、資料館も、周りには気味が悪いとしか思われていない。ここに来て初めて、未名子の心が大きく揺さぶられるのを感じ、気がつけば不思議だなとしか思わなかったエピソードがどんどん繋がっていく感じがした。実際、それまで生き物に無関心だった未名子は仕事を辞めた後、一度は他に預けた宮古馬を連れ出して飼い、その馬をヒコーキと呼びヒコーキに乗るようになる。ヒコーキに乗っている時、未名子はヒコーキと一体になっていると感じる。そう、繋がったのだ。 一体になる感覚を得るということは、孤独ではないのだ。 それまで読みながら灰色の世界を見ているように感じていたのが、未名子の変化と共に徐々に世界が色を帯びてきた。生気を感じるようになった。物理的な繋がりは減ったのに、もう未名子は孤独ではないと感じたのだ。 孤独と繋がり。そして直接書かれていなかったけど、未名子や未名子の職場、順さん、そして沖縄の歴史を含め、マイノリティの話でもあったのではないかと感じた。いや舞台の沖縄だけでなく、もっと広い視野でのマイノリティ。側から見たら異色に見られ拒絶されるような存在でも、玉石混交で何が悪い、意義のないものなどない、そういろいろなものを肯定してくれたみたいな。そして肯定に至るまでの葛藤も。 誰にも見られることなく眠っていた順さんの資料は、誰か必要とするかもしれない人たちに託すため、未名子がデータとしてささやかではあるが世界に発信した。 これもまた立派な繋がりなのだ。大きな繋がりだ。 それも未名子のはっきりとした意志のもとでの。 たとえ資料館がなくなっても、いやなくなったからこそ、未名子は繋がっていられる。生きている実感さえある。 最後まで大きく感情が揺さぶられることはない。 でもじわじわとした未名子と周囲の変化に、こちらもじわじわと心を満たされていた。最後には光を感じた。 不思議な世界観だったけど、優しい世界を教えてくれたと思う。 作者あとがき、あったら嬉しかったなあ。それともあとがきなんていらないくらい本編で語り尽くしたということだろうか。 

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2022/03/06

zoomやPCを使いこなす描写があるのが、さすが現代の芥川賞受賞作。 ですが一読ではなにかを読み取るのが難しかったので、また改めて読みたい。

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2022/08/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

未名子はクイズを出すアルバイトをするかたわら、沖縄の郷土資料館でアーカイブを作るボランティアをしている。沖縄の歴史。戦争。そして突然現れる宮古馬。変容する土地の記憶を世界でもっとも不確かで孤独な場所に託す。読んだ後もうまく言語化できない、整理できていない自分がいた。「孤独とつながり。断絶と連結」と他のレビュアーの方が言っていてなるほどと思った。面白かったけど、あまりピンとこなかったところもあったので星3。

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2022/01/23

記録すること。知識を蓄えること。一見して無意味な物を収集して整理すること。 番号を振ってインデックスを作り、画像に残し、宇宙と深海と戦場のシェルターに保管する。いつか、断片が接続を試みられたときのために。 孤独な探究者たちの祈りの物語でした。

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2022/01/09

文春で読んだ。小川洋子さんの選評によると、「結局、人と人をつなぐのは、実態のある何かではなく、それが去ったあとの痕跡、幻なのだと思わされる」…うーん、プロの感性はさすがだ。

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2022/01/06

最初と最後でなんとなくこういう事が言いたいのかな??って推測… … 沖縄の(世界の?)悲しい歴史の上に今が…って事? 忘れてはいけない事…って事?? . いや…違うかも… …正直全然分かんなかった. ん??ちょっと難しい… 誰かに説明してもらいたい. 「にくじゃが」「まよう」「か...

最初と最後でなんとなくこういう事が言いたいのかな??って推測… … 沖縄の(世界の?)悲しい歴史の上に今が…って事? 忘れてはいけない事…って事?? . いや…違うかも… …正直全然分かんなかった. ん??ちょっと難しい… 誰かに説明してもらいたい. 「にくじゃが」「まよう」「からし」って何??

Posted byブクログ

2021/12/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

著者の作品は初読みとなりましたが、芥川賞受賞時から気になっていた一冊をようやく読み終えました。 過去に何冊か手にした芥川賞受賞作。 今度こそと思い本作も手にしてみましたが、残念ながらあくまでも私個人の評価としては☆2つ。 沖縄を舞台にゆっくりとした時間が流れる作品で、ほぼ主人公である未名子とほんの数人だけが脇役として登場します。 クイズの出題をオンラインで行う仕事をしながら、個人で収集した郷土の品で溢れかえった資料館の整理を手伝っている独身女性。 確かに世の中には様々な仕事があるのでこれ自体が問題ではありませんが、そんな生活をおくる未名子の家の庭に台風の夜1頭の宮古馬が迷い込んできます。 ……… どうしても取ってつけた感が否めない。 ゆっくりとした時の流れは大好きな沖縄のイメージ通りではありますが、読了までに4日もかかってしまいました。 内容紹介 この島のできる限りの情報が、いつか全世界の真実と接続するように。沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子は、世界の果ての遠く隔たった場所にいるひとたちにオンライン通話でクイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷いこんできて……。世界が変貌し続ける今、しずかな祈りが切実に胸にせまる感動作。 内容(「BOOK」データベースより) この島のできる限りすべての情報を守りたい―。いつか全世界の真実と接続するように。世界が変貌し続ける今、しずかな祈りが胸にせまる。第163回芥川賞受賞作。

Posted byブクログ

2021/11/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

沖縄の民俗資料を整理したり世界中の孤独な職業従事者人にクイズを出す仕事をしている主人公という設定は面白いけれど、主人公がなかなか馬と気づかないとか、あまりリアリティのない描写も多くて読みにくかった。自分が今見ている世界の情報を残したい、どこかの誰かにもアクセスできるようにしていたいという思いは分かるような気がする。それが何かの役に立てれば良いと思いつつ、そんな事態にはならない方がほんとうはいいのだよな、と思うところも。

Posted byブクログ