龍の耳を君に の商品レビュー
デフ・ヴォイス続編。 「障害を持つ者が馬鹿にされ、それに気づかないわけないのだ。見下されていることを理解し、そのことに深く傷つき、そして悔しさを胸にしまう。そうやって生きてきた。」 ろう者、難聴者、中途失聴者、そしてコーダ、それぞれの世界の違い、その中での葛藤がリアルに描かれ...
デフ・ヴォイス続編。 「障害を持つ者が馬鹿にされ、それに気づかないわけないのだ。見下されていることを理解し、そのことに深く傷つき、そして悔しさを胸にしまう。そうやって生きてきた。」 ろう者、難聴者、中途失聴者、そしてコーダ、それぞれの世界の違い、その中での葛藤がリアルに描かれている。 今回は場面緘黙症の少年も、荒井の娘美和ちゃんの同級生として登場し、重要な役どころとなる。 第3話ではミステリー要素も強くなり、ドキドキした。 英知くんと美和ちゃんには、たくさんの笑顔で過ごしてほしい。荒井さんが優しくて、弱者と社会のかけ橋になってくれていると感じた。第3弾でまた会いたい。
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「デス・ヴォイス」シリーズ第2弾。 Audibleキャンペーンに乗っかり期間限定で利用を再開。気になっていた続編を見つけられて嬉しかった♪ 今作も、手話通訳士の荒井尚人が、ろう者と聴者の間で苦悩する姿が描かれる。 連作短編だったが、一番印象に残ったのは、彼が場面緘黙症の少年に手話...
「デス・ヴォイス」シリーズ第2弾。 Audibleキャンペーンに乗っかり期間限定で利用を再開。気になっていた続編を見つけられて嬉しかった♪ 今作も、手話通訳士の荒井尚人が、ろう者と聴者の間で苦悩する姿が描かれる。 連作短編だったが、一番印象に残ったのは、彼が場面緘黙症の少年に手話を教えることになった話かな。 手話はろう者が使うもの、という概念を取り払ってくれた。 恋人の娘の美和も、手話に興味を持ち、遊ぶような感じで覚えていく様子が自然でよかったなぁ。 ろう者が聴者に合わせなければならない社会ではなく、ともに歩み寄れる社会にしていけたらいいな、と思う。 それは、聴者が手話を覚えるというのも一つだろうが、ろう者の大変だと感じていること、聴者に理解してほしいことを知ることもそう。 そういった意味で、この小説は、聴者の読み手に、ろう者の現状を教えてくれる貴重な機会のように思う。 もちろん、ストーリーにも惹き込まれたし、荒井たちの今後も気になる!続編も楽しみ♪
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【「龍の耳を君に」丸山正樹】 「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」シリーズの第2作。丸山正樹さんの作品は、ミステリとしての面白さと、社会の中で見過ごされている課題への気付きが相乗りしている。読んでいる間はすごくドキドキ・ モヤモヤするのに、読後感か爽やかなところが好き。 不十分...
【「龍の耳を君に」丸山正樹】 「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」シリーズの第2作。丸山正樹さんの作品は、ミステリとしての面白さと、社会の中で見過ごされている課題への気付きが相乗りしている。読んでいる間はすごくドキドキ・ モヤモヤするのに、読後感か爽やかなところが好き。 不十分な通訳で無実の罪の被疑者となってしまった林部、 日本語対応手話での取り調べに応じなかった新開、 手話によって「自分の言葉」を得た場面緘黙症の少年、英知。 「意思を自分の言葉で伝える」ということは、「尊厳」そのものなんだと思った。 ろう者や日本手話、ろう教育の歴史などについても多くを知ることができる。その丁寧な描写から、ろう者やろう文化に対する作者のリスペクトが伝わってくる。一方で、いくら知識を得ても、手話を身につけても、ろう者のことを「完全に理解することはできない」ということも、登場人物たちの思いを通して伝わってくる。作者から「これを読んで『分かったつもり』になってはいけない」と言われているような気がする。ちょっと切ないけど、「分かったつもりにならない」 のは、どのような関係性においても大切なことだと思う。 美和ちゃんと英知君が屈託なく手話で遊ぶ様子は、「障害が本人にあるのではなく、社会がそれを障害たらしめている」ということに気づかせてくれる。
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『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』シリーズ第2弾とのことだが、第1弾を読んだのが6年も前で、人間関係などを把握するため第1弾を読んでから本書を。 おかげですっきりと「デフ・ヴォイス」世界へ入って行け、主人公新井尚人と彼の恋人安西みゆきとその娘美和、それにNPO法人のメンバーたち...
『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』シリーズ第2弾とのことだが、第1弾を読んだのが6年も前で、人間関係などを把握するため第1弾を読んでから本書を。 おかげですっきりと「デフ・ヴォイス」世界へ入って行け、主人公新井尚人と彼の恋人安西みゆきとその娘美和、それにNPO法人のメンバーたちの位置づけがよく理解できた。 本書は3話からなる連作短編とのことだが、第1話は、『逆転の切り札』というアンソロジーにて既読で、次の展開を予感させる終わり方だったが、2話、3話と続けて読むことで、納得。 荒井や他の人物たちの手話が丁寧に綴られており、読みながら思わず手を動かしていた。
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デフ・ヴォイスシリーズ第二弾。丸山さんの作品は、弱者に寄り添い、代弁者として声を上げているのに、少しも押し付けがましさや説教臭さがないのがすごい。知識や情報がたくさん盛り込まれているにも関わらず、それが会話の中なために、不自然さがなく、すっと頭に入ってくる。今回も純粋にミステリー...
デフ・ヴォイスシリーズ第二弾。丸山さんの作品は、弱者に寄り添い、代弁者として声を上げているのに、少しも押し付けがましさや説教臭さがないのがすごい。知識や情報がたくさん盛り込まれているにも関わらず、それが会話の中なために、不自然さがなく、すっと頭に入ってくる。今回も純粋にミステリーを楽しみつつ、たくさんの学び、気づきを得た。 『弁護側の証人』 聾学校の教師の教育法への自信に対する、生徒であった被告人の習熟感の低さ。教師と生徒の認識の大きな齟齬によって、聾学校の教育法に大きな疑問を投げかける。現在、日本の一般的な聾学校においては、聴覚口話法といって、補聴器を使って残存聴力を活用しながら、相手の唇の形や動きを見て話す内容を理解(読唇)し、同時に聴者の口の動き、喉や胸の震え、舌の位置だけを頼りに発声訓練(聴能訓練)を行う教育方法を採用している。難聴の程度や失官の時期がそれぞれ異なる複数の生徒を相手に行う訓練は困難を極め、習熟度にも差が出てくるために、その後にくる日本語の文法学習、その他教科の学習の遅れにつながることもある。被告人が、それだけで自身の無罪を証明できるのにも関わらず、発声を断固拒否した背景には、学校内でどれほどの成績をあげても、一般社会では通用しないという徒労感、虚しさ、失望、困惑顔を向けられる屈辱感があり、やり切れない。 『風の記憶』 どれほど読唇、口話に長けても聴者には決してなれないという劣等感と屈辱感に苛立ち、心にわだかまる憤懣を、人を疑うことを知らずのほほんと生きているように見える同じ聾者たちに向ける。被告人・新開の行動の底にある感情の機微に触れ切ないが、最後には、荒井の言によって自尊心を取り戻すに至り、安堵する。 『龍の耳を君に』 学校や公の場など他人と関わる特定の場面で話すことができなくなる場面緘黙症の少年・英知が手話により他人とかかわる言葉と勇気を得る。触覚過敏のために手をつなぐことができず、やむなく使用した幼児用リードを、他人に虐待呼ばわりされた、という母親の話には、同様にあまり良い印象を持っていなかった自分の無知さに深く恥じ入ってしまった。英知の証言によって明らかとなった事件の真相は、切なく悲しいものだったが、音声による会話がないゆえの親子の深い愛情の形に触れ胸が熱くなった。
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今回は場面緘黙の男の子に焦点が当たっていた。たしかに場面緘黙の子が手話を使うということもあるのか。と思った。でも手話はなかなか簡単には学べない。 ミステリー感もありつつ、というのもあるけどミステリーというよりも社会に訴えるものがある本だと思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
オーディブルにて。 今回はより法廷に寄せて。 個人的に興味のある発達障害のこともテーマとして含まれてたので面白かった。 普段読まない作者さんでも法廷系だと読めちゃう説か、作者さんと合っているのか。とりあえず読み進める。
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手話通訳士の荒井尚人を主人公にした推理小説『デフ・ヴォイス』の続編。コーダ(聾者の親から生まれた聴者)でもある荒井が聾者の心の声に迫って救いの手を差し伸べる。今作は3編の連作で対象者は聾者ばかりではないが事件を目撃した少年が緘黙症であり手話が重要な役割を果たす。この少年に限らず荒...
手話通訳士の荒井尚人を主人公にした推理小説『デフ・ヴォイス』の続編。コーダ(聾者の親から生まれた聴者)でもある荒井が聾者の心の声に迫って救いの手を差し伸べる。今作は3編の連作で対象者は聾者ばかりではないが事件を目撃した少年が緘黙症であり手話が重要な役割を果たす。この少年に限らず荒井を取り巻く人物がとにかく魅力的だ。荒井の同居人親子(みゆき・美和)もそうだしNPO法人の関係者もいい。更に何森刑事は今作の出番は少ないながらも強いインパクトを残す。スピンオフ作品で彼が主役を張ったのも頷ける。
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Audibleにて。 前作がおもしろかったので、オススメのままに読んでみた。 後書きによれば、もともと続編は考えてなかったが、文庫化をきっかけに要望があり前作から七年後に続編を発行なさったとのこと。 にもかかわらず、不自然なところなどまったくなく、変わらずキャラがよかった。 今作...
Audibleにて。 前作がおもしろかったので、オススメのままに読んでみた。 後書きによれば、もともと続編は考えてなかったが、文庫化をきっかけに要望があり前作から七年後に続編を発行なさったとのこと。 にもかかわらず、不自然なところなどまったくなく、変わらずキャラがよかった。 今作では子供を中心に話がすすむので、身につまされることも多かった。
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オーディブルで聴きました。 一冊目より面白かった。 龍はヒゲで聞けるから耳はない。落とした龍の耳はタツノオトシゴになった。。。とのこと。今年の年賀状に耳付きの龍を描いてしまったのを後悔。 どうやって学んでいるのだろうと思っていたが、聾学校では口の中を触ったり、触らせたり、ほっぺ...
オーディブルで聴きました。 一冊目より面白かった。 龍はヒゲで聞けるから耳はない。落とした龍の耳はタツノオトシゴになった。。。とのこと。今年の年賀状に耳付きの龍を描いてしまったのを後悔。 どうやって学んでいるのだろうと思っていたが、聾学校では口の中を触ったり、触らせたり、ほっぺの震えを確認しながら、発声を学ぶということ。すごい。 そして、「やはり」だったが、警察の取り調べでも、聾者をぞんざいにあつかっているようで、警察にさらなる不信感を抱いた。小説の中の話だろうと言う人もいるかもとは思うけれど、この本に出てくる性格激悪の警官は普通に存在するに違いない。絶対。 音声言語にもネイティブスピーカーがいるように、手話にもいろんなレベルがあることを知りました。手話を学びたいとちょっと思った時期もあったけれど、下手だと手話のネイティブスピーカーから見下されそう…ってか、絶対されるでしょ。そこはマイナスイメージがついたかな。 いい話だった。聾者の世界を少し見学させていただきました。ありがとうございました。…という感想。
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