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破局 の商品レビュー

3.2

240件のお客様レビュー

  1. 5つ

    14

  2. 4つ

    72

  3. 3つ

    90

  4. 2つ

    33

  5. 1つ

    7

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2020/08/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

将来有望、頭脳明晰、鍛えられた体、彼女は途切れない、外側から見たらリア充な大学生の物語。 倫理観が強いが、自分の意志ではなく世の中のこうあるべき、を自分に当てはめている。悲しくて仕方がないと言いながら、悲しむ理由がないから悲しくなどない、という結論に至ったり私も幸福だったか?と自分に問うたり、日々心あらずで生きているのか。 最後、突然の破局に陥った際も、追いかけてどうしたいか分からない、空が気になる、やけに客観的に状況を見ている描写が猶更心の空虚さを感じてしまった。彼にとっては破局という出来事も大した意味を持たないのかもしれない。 模範的な学生というキャラクターで描かれていることもあり、意外と皆心の中はこんなものなのかもな、と思った。

Posted byブクログ

2020/08/22

大学四年生の日常から。よくドラマでもありそうな女性との破局が題材。ラグビーかアメフトが明確に書いてない気がするけどスポーツをして筋肉の鎧を纏った一流私立大学の学生。最後に畳みかけるように展開する。 毎度この芥川賞が載る文芸春秋を買うのですが、作品そのものよりも作家である選考者それ...

大学四年生の日常から。よくドラマでもありそうな女性との破局が題材。ラグビーかアメフトが明確に書いてない気がするけどスポーツをして筋肉の鎧を纏った一流私立大学の学生。最後に畳みかけるように展開する。 毎度この芥川賞が載る文芸春秋を買うのですが、作品そのものよりも作家である選考者それぞれの選評が(当たり前だけど)バラバラで面白い。ある方は深く評価しているのに、ある方は全然評価してなかったり。 平野啓一郎は「新しい才能に目を瞠らされた」と書いていて、島田雅彦は「不愉快極まりない」と書いている。結局は多数決で決まる選考なので、一意に芥川賞が全ての人が素晴らしい、と手放しで褒めているわけではないことがわかります。

Posted byブクログ

2021/09/27

「左手を使うことによって、利き手ではないので、他人に精器を触られている錯覚に陥り、射精に至る時間が短縮できる」男は、ラクビーをしていて、タックルはうまく、積極果敢に攻めることができる。左手が他人の手に思えるほどの身体感覚なのである。そんな男は、大学4年生となり、就職活動に勤しみ、...

「左手を使うことによって、利き手ではないので、他人に精器を触られている錯覚に陥り、射精に至る時間が短縮できる」男は、ラクビーをしていて、タックルはうまく、積極果敢に攻めることができる。左手が他人の手に思えるほどの身体感覚なのである。そんな男は、大学4年生となり、就職活動に勤しみ、高校のラクビー部のコーチもしている。 女に優しくしろという父親の言いつけを守り、公務員試験を受けるのだから、社会的な基本に従わねばならないと思いながらも、セックス依存症のような生活をする。ガールフレンド麻衣子は、政治家の秘書を目指し、新入生の灯は、スポーツ選手の筋肉質を好む女で、二人に翻弄されながら、セックスをひたすらする。灯は、精器に色々話しかけることが好きで、それが男は気に入らないのだ。 結局、二股がバレて、破局がおとづれるのである。 まぁ。実に若いなぁ。セックスが楽しい盛りで、文脈から精液がこぼれでるような勢いだ。 女という魔物に翻弄されるセックス依存症で社会規範観念が強い若い男の末路。

Posted byブクログ

2020/08/20

村田沙耶香さんを初めて読んだときのぞわぞわに似ている。あちらが「常識への挑戦」だとしたら、本作は同じ熱意で「定型」を描いている。 異様なほど冷静な語り口の主人公。取り立てて突飛な行動はなく、他者からすればスマートな常識人そのもの。汗臭いスポーツマンですらある。裏を返せば、何も考え...

村田沙耶香さんを初めて読んだときのぞわぞわに似ている。あちらが「常識への挑戦」だとしたら、本作は同じ熱意で「定型」を描いている。 異様なほど冷静な語り口の主人公。取り立てて突飛な行動はなく、他者からすればスマートな常識人そのもの。汗臭いスポーツマンですらある。裏を返せば、何も考えていない。 彼はなぜ「破局」しなければならなかったのか......? 大人同士で解釈を語り合いたい。

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2020/08/19

自分が何者なのかに疑問を抱く事なくも、体だけは成熟していく若い頃の虚無が、淡々と描かれている。どうしようもなさの描かれ方はとても良いなぁ。好き嫌いがあるだろうけど。

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2020/08/17

* 第163回芥川賞受賞作。 ストーリー性ではなくその文体や視点、思考に惹きつけられて読み進めた本はこれが初めてかもしれない。 芥川賞といえば純文学。 エンタメ性の高い作品にばかり飛びついていた自分にとってこれはちょっとした衝撃。 * 恋人を途切らせたことはなさそうだし、頭も...

* 第163回芥川賞受賞作。 ストーリー性ではなくその文体や視点、思考に惹きつけられて読み進めた本はこれが初めてかもしれない。 芥川賞といえば純文学。 エンタメ性の高い作品にばかり飛びついていた自分にとってこれはちょっとした衝撃。 * 恋人を途切らせたことはなさそうだし、頭も良さそう、気も遣えるし、冗談で人を笑わせることもできて、筋肉ムキムキ、礼儀正しく、女性には特に優しく、使ったあとに便座を下げない男性に激しい怒りを覚える。 全然気持ち悪くないし、とても私が好きになりそうな人だ。 それなのに思考の根拠の主体性のなさにゾワっとする。 女性に優しくするのも規則正しい生活を送るのも筋トレをするのも全てそれがルールやマナーであるから。 ルールやマナー常識を根拠として行動を決定する主人公陽介のロジカルすぎる思考と、その思考の中に時折(というか頻繁に)現れる性衝動と、え?そこそんなに怒る?って場面で現れる怒りの感情とのアンバランスさがより一層彼の内面の奇妙さを際立たせていて、それは私にとっては気持ち悪くも魅力的だった。 * * #破局 #遠野遥 #第163回芥川賞 #純文学 #読書記録 #ブクログ #読書 #本

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2021/01/31

この「破局」の文体がたいそう面白かったので、前作の「改良」も読んでみた。 その「改良」が何故かブクログに登録されていない…。吹き出した回数が多かったからではないけれど、私は前作の方がお気に入り。 どちらの小説も ほぼ自分の主観のみを語っているので、読み手としてはその時の客観的...

この「破局」の文体がたいそう面白かったので、前作の「改良」も読んでみた。 その「改良」が何故かブクログに登録されていない…。吹き出した回数が多かったからではないけれど、私は前作の方がお気に入り。 どちらの小説も ほぼ自分の主観のみを語っているので、読み手としてはその時の客観的な姿も想像しながら読み進めなければならない。このギャップがたまらない! 突き放したような、とか、離人感とか乾いているとかいった言葉が浮かんでくるが、実際はその言葉の本来のニュアンスとは違うものを感じる。わたしには言いあらわすその言葉がない。誰かぴしゃりと当てはまる言葉を与えてくれないものか。

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2020/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

第163回芥川賞受賞作品。 不死身で何度も立ち上がり獲物に食らいつく。動揺させることはあっても自ら動揺することはない。目標達成へ一直線で揺るがない。ある意味ゾンビのよう。 そんな主人公陽介は、就活も公務員試験を受けて難なくクリア出来そうな状態。 傍らラグビーのコーチを続けているが気を抜かない。 私も…恐らく一度は優等生と言われたことのある人たちがぶつかる問題。 その一生懸命さを他人にも要求するなと言われたり、相手が変わってくれないことに腹を立ててしまうこと。 世の中も個人プレイではなく、人と人との繋がりでありチームプレイであって、どのような共同作業であっても相手があってのものである。ラグビーにしろ、恋愛にしろ、友人関係も、仕事も。 自分の凝り固まった信条のみではうまく事は進まない。 一生懸命の極限状態は、ちょっとした出来事で崩れ落ち、破局する。 どんなに屈強な肉体で以ってもあっけなく崩れる。ゾンビのように不死身だと思っていてもやはり人間だったということか… その後の陽介は読者の想像に委ねられる。

Posted byブクログ

2020/08/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かなり長めに語られた麻衣子の家に男が侵入していた話は一体何だったのだろう。 ピアノマンと飼い犬に名付ける麻衣子家のセンスは好き。(親がビリージョエルを好きな世代?) あと、灯(あかり)を灯(ともしび)と毎回読んじゃった。

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2020/08/13

人間には本能が備わっていて、理性はその後からついてくる。当たり前の事実は意外にも受け入れ難く、社会は2次元的で融通の効かない様相を呈している。その二つの乖離が人間を内側から破壊するのだけれど、他人から見るとその人間の行動や心理に理由があるような錯覚を抱く。理性を否定することは、文...

人間には本能が備わっていて、理性はその後からついてくる。当たり前の事実は意外にも受け入れ難く、社会は2次元的で融通の効かない様相を呈している。その二つの乖離が人間を内側から破壊するのだけれど、他人から見るとその人間の行動や心理に理由があるような錯覚を抱く。理性を否定することは、文明が許さないだろう。本能を否定することは、その肉体が許さないだろう。だから人間の精神はその狭間でただ「分からない」と呟きながら非存在的に存在していることしかできない。その無常感は昔からよく描かれているけれど、この作品は上手く時代性を捉えて更新させることができたのだろう。

Posted byブクログ