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破局 の商品レビュー

3.2

240件のお客様レビュー

  1. 5つ

    14

  2. 4つ

    72

  3. 3つ

    90

  4. 2つ

    33

  5. 1つ

    7

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2020/08/04

芥川賞受賞作品ということで手に取りました。物凄く淡々とした文章で書かれていて、描写される肉体、恋や性的な部分に至るまで、全く熱情を感じさせない。奇妙なくらいに淡白なのですが、でもそれが却って人との距離が近いようで遠い現代を感じさせます。物語の中で唯一、人間らしいような温度があるの...

芥川賞受賞作品ということで手に取りました。物凄く淡々とした文章で書かれていて、描写される肉体、恋や性的な部分に至るまで、全く熱情を感じさせない。奇妙なくらいに淡白なのですが、でもそれが却って人との距離が近いようで遠い現代を感じさせます。物語の中で唯一、人間らしいような温度があるのはお笑い芸人を目指している膝で、彼と主人公の対比によって物語のコントラストが強調されているように思いました。膝が語る「誰にだって欠点はあるはずなのに、そういうところには一切触れず、長所ばかり並べ立てないといけないんだよ。そういうの、気持ち悪くないか?」この言葉は実は主人公(の視点)も指しているのではないかなと。善良であるべきだと主人公は度々考えていますが、それは確かに間違いではないし、正しいけれど、でも見方を変えると膝が語るような「気持ち悪さ」が浮かび上がってくるように感じました。同著者の「改良」も読んでみたいです。

Posted byブクログ

2020/10/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

元ラグビー部員としてラグビーをコーチし、同時に公務員試験にきっちり備える、文武両道をいつも突っ走っているような男。 でも、快活さやエネルギッシュとは対極的な、このゾンビ感はなんだろう。 よく肉を食べ、よくセックスをする、若い男。 健康的であるはずなのに実質は不健康。 男の心が見えてこない。 ロールキャベツ男子という言葉があったが、その逆をいくのかな、陽介は。 熱い肉が冷めた心を包んでいる。 灯の手は冷たく感じる。(熱い肉) 一方、性欲の増した灯に辟易する。(冷めた心) 陽介は、ゾンビになることを回避しようとしてか、ラグビーのコーチの後、たくさん肉を食べて、そして日々肉欲に溺れる。 でも心は鍾乳洞のように虚ろでひんやりしたまま。 心の中で、笑いに手を打つ場面が何度もあった。 芸人志望の膝より、きっと、陽介の着眼点は笑いをとれる。 一般人が、十分滑稽に生きているということなんだろう。 陽介、この男は、ゾンビのように何度も復活するだろう。 こういう人は、きっと自殺なんかしない。 リビングデッドユース。 わりとたくましい。 大団円が近づくにつれ、中村文則の『銃』がチラつく。 不幸へのアクセルがかかり真っ逆さまに堕ちるという共通点。 『銃』は、銃を手にしてから男が主体的な人生を歩み始めたが、どこまでも銃という武器に支配され破滅に向かう物語だった。 かたや『破局』では、男の鎧は、こじんまりとした正義と秩序、そして僅かながらの筋肉である。 男には、この鎧がブカブカである。 心も身体もそれぞれ自分のものとして制御できないからだ。 しかしながらそれを冷徹に認識して、悲観もしない。 突発的に泣きたくなるが、なぜ自分が泣くのかわからないということを、よく理解している。 そのような男の振る舞いは空々しく、 おそらく他者からは演技のようにみえていたことだろう。 だからこそ演技できない局部(=陰茎)に向かって話しかける灯がいる。 男の着眼点は滑稽。 ふいに出現する陰毛にとらわれたり、麻衣子の服が食べ物の色にみえる。 この着眼点は、どんな事象にでも無意味に意味づけしようとする人間らしさの表れ。 この男の着眼点が描かれなければ、肉を食らい肉に溺れるだけのケモノのような生活しか男には残らない。 陽介の生活は、瑣末なことにとらわれ一喜一憂、アップダウンしながらも、全体的にはフラット。 それは近くでみるとさざ波だっているが、遠くでみると一枚の鏡のような海だ。 底になにが潜むやもわからない海。 心も身体もここに在らずで肉のみをひたすら求めるリビングデッドユースはこの海に漂うが、背面泳ぎをしていれば、「もっと早く見るべきだった」空に気づいたであろうに。 不特定多数の現代の若者のひとりを切りとっているのだが、 読後、読み手の中でいいたいことが膨れ上がる、そんな小説だった。

Posted byブクログ

2020/08/01

芥川賞受賞作ということで読む。自分が学生時代、就活で追われた日々を思い出した。今の先行きが不明な社会で、かつ抑圧された世界で一瞬思うささいなこと、理不尽なこと、空気感が淡々と描かれていたので、さらっと読めた。タイトル、表紙に、帯のキャッチコピーにひかれる人は多そう。

Posted byブクログ

2020/08/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

肉と酒、女が好きなストイックなラガーマンが、政治家志望の元カノから、お笑いライブで出会った新入生に乗り換えるも、破局するというお話。 最後に暴力もあります。 自分が慶應生であることや、登場人物の服装・仕草が詳細に描かれているため、状況がイメージしやすかった。 将来安泰の公務員に内定をもらい、彼女や友達もそこそこいる主人公から空虚感が漂う。 政治家志望の元カノが幼少期に男から受けたトラウマにまつわる夢をラガーマンと別れてから頻繁に見るようになったという箇所が個人的にすごく共感できた。

Posted byブクログ

2020/08/01

今の大学生の日常。人間の日常。現実を生きること。自分の人生を考えること。人の人生を主観的に客観視すること。自分の人生を主観的に客観視すること。 一人の人間が寂しさと孤独を紛らわせながら、ただ生きている日常。特に目的もなく、目の前の使命と欲望に流されて生きていく。人間の生なんて目...

今の大学生の日常。人間の日常。現実を生きること。自分の人生を考えること。人の人生を主観的に客観視すること。自分の人生を主観的に客観視すること。 一人の人間が寂しさと孤独を紛らわせながら、ただ生きている日常。特に目的もなく、目の前の使命と欲望に流されて生きていく。人間の生なんて目的はない。目的を作りそこに向かうことは、寂しさや孤独を紛らわせることでしかないのかもしれない。そうならば、それが女でも授業でもスポーツでもなんでもいい。紛らわせ続けることができたら、その日は良い1日になる。でも、良い日があったところで、不安がなくなわけでもなく、何か変わるかわからないし、明日が来るかさえわからない。 それでも、生きていく。1日を過ごす。 人それぞれ目的は違う。考え方も違う。それを受け入れる社会。みんな楽しくて達成している社会。誰とも比較なんてせず、みんな正しい社会。そんななか目的を持つことは難しい。だって、そのまま生きてても個性なのだから。褒められるのだから。だらだらしてたって良いよね。犯罪者でも良いよね。その日が良い1日になるのなら。 現代に同じ大学に通う学生として共感できる部分もあれば、できない部分もあった。 結論は、テキトーに過ごしても、だらだらしても、弱い立場の人も生きていられる社会であるべきだし、アイデンティティは人それぞれの社会であるべきだと思う。 でも、俺は普通に頑張る、頑張ろう

Posted byブクログ

2020/07/30

何気ない日常的な表現の中にもユーモアがあって読んでいて楽しめた。ラストの展開は少し納得いかなかったけど、ドラマチックな感じが文学的でいいと思う。 性的描写は欲情的ではないので良い意味で気持ち悪くなく、さらっと読める。

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2020/07/29

よくある慶應生の話。 学校や部活に行ったら誰かが噂をはじめて、1ヶ月間はみんなが会話のネタにするような。 「あの法学部のラグビーコーチの子が〜」って。 本当に友達の話を聞いてるみたいだった。 割りかし普通の話に思うけど、これが芥川賞を取るのか…慶應生の性生活って面白い? 慶應生...

よくある慶應生の話。 学校や部活に行ったら誰かが噂をはじめて、1ヶ月間はみんなが会話のネタにするような。 「あの法学部のラグビーコーチの子が〜」って。 本当に友達の話を聞いてるみたいだった。 割りかし普通の話に思うけど、これが芥川賞を取るのか…慶應生の性生活って面白い? 慶應生の「普通」はやっぱり「普通」じゃないんだろうか。 そしてやっぱり、卒業しても慶應生は慶應生なんだな。こんな小説を世に出すんだから。

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2020/07/17

芥川賞受賞作ということで、受賞が報道された日に買って読んだ。 話の流れはスムーズで文章もテンポが良くて、どんどん先に進む。 そして主人公の虚無的な雰囲気も良かったし、性的描写も決して欲情的な感じではなく、淡々と書かれていて好きな雰囲気だった。 だけど、この話が何を表現したか...

芥川賞受賞作ということで、受賞が報道された日に買って読んだ。 話の流れはスムーズで文章もテンポが良くて、どんどん先に進む。 そして主人公の虚無的な雰囲気も良かったし、性的描写も決して欲情的な感じではなく、淡々と書かれていて好きな雰囲気だった。 だけど、この話が何を表現したかったのか、私には理解できなかった。 所々、伏線っぽいエピソードや設定なんかが出てくるのだけど、結局それらは回収されずに物語が終わってしまう。元カノが幼少期に負ったトラウマとか、今カノのカフェラテの設定とか、佐々木の部活より家庭を優先させた話の先とか… 全ては読む人の想像に委ねられるということか? 良くも悪くもの純文学だった。 読み終えてから「ぇ、なに、どういうこと?」となる。これは後からジワジワと読後の感情が滲み出てくるのか? だけど、読了後の感想は「ぇ、なに、どういうこと?」で、1日経った今も「ぇ、なに、どういうこと?」である。 他の人がこの本をどのように読んだのかを知りたいと思った。芥川賞受賞するくらいなのだから、きっと何かがあるのだろう。 何ががあるのだろうけど、残念ながら、私には見つけることができなかった。

Posted byブクログ

2020/07/13

これぞ純文学。 恋愛や人生に限らず、例えば鉄道でも工事現場でも海運でも、少しの掛け違いが不運に重なることで大惨事が起きる。 あと、「自分が普通」だと思ってるのは自分だけ。

Posted byブクログ

2020/07/08

第163回芥川龍之介賞候補作、遠野さんの作品は初読み。主人公の大学生は就活中で筋トレ・ラグビーに勤しみ、彼女もいるが関係は微妙で新しい恋を求めている。機械的に淡々と綴られる独特の文体で、主人公に共感できる人はあまりいない気がするし、他の登場人物もみんななんかおかしい(笑)。日吉の...

第163回芥川龍之介賞候補作、遠野さんの作品は初読み。主人公の大学生は就活中で筋トレ・ラグビーに勤しみ、彼女もいるが関係は微妙で新しい恋を求めている。機械的に淡々と綴られる独特の文体で、主人公に共感できる人はあまりいない気がするし、他の登場人物もみんななんかおかしい(笑)。日吉の〇應キャンパスや駅の銀玉とか出てきて地元住民としてはテンション上がった。

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