世界は贈与でできている の商品レビュー
資本主義 ー交換の原則ー は、私たちを「自由」にした。 いま、「自由」を謳歌できていることに、感謝しかない。 同時に、世界は、まるで丘の上に偶然置かれたボールのように、贈与という外力に支えられて成り立っていて、そのことに気づける力が「教養」だと筆者は言う。 世界を、くぼみに置か...
資本主義 ー交換の原則ー は、私たちを「自由」にした。 いま、「自由」を謳歌できていることに、感謝しかない。 同時に、世界は、まるで丘の上に偶然置かれたボールのように、贈与という外力に支えられて成り立っていて、そのことに気づける力が「教養」だと筆者は言う。 世界を、くぼみに置かれたボールのようなものだと思う人は、「電車の遅れ」や「コンビニの欠品」、「同僚が風邪で休むこと」など、世界の安定を乱すものとしていちいちイラつくことになる。 「教養」ある人に、私はなりたい。
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筆者の考えを素直に追っていきたかったものの、説明に使われる具体例に引っかかることが多く、全体的に筆者の主張を疑いながら読むことになった。 最初に引っかかったのはペイフォワードの例。贈与は先に受け取っている必要があるというのが本書の強い主張なのに、その説明に使われるのが映画という創作物。始まりの少年が死ななければいけなかったという記述も、宗教的な説明に感じた。 次に、実際に子育てしていて、親から愛されたから自分も子どもを愛さなければというような義務感は全く感じない。子育てを通して親の苦労を知り、素直に親孝行をしようと思った。 献血の例も、筆者は献血をしたことがあるのかな、と思ってしまった。献血の職員の方は協力者に最大限に配慮と感謝を示していて、感謝されたいという観点では最もコスパの良いボランティアでは。(実際に就活で疲れきっていたときに、献血に行って自分が肯定されたように感じ救われたことがある) このように、挙げられる具体例にいちいち引っかかってしまった。 筆者の主張の論拠として、ペイフォワードを始め色々なストーリーが引用される(16時の徘徊など)。主張をわかりやすく伝えるために物語を使うことは有効だと思うが、それを論拠にするのはあまりに説得力に欠けるのでは。 筆者の主張を要約すると 不当に多く受け取ってしまっていたという受け手側の気づきが、贈与の出発点となる。 歴史を勉強するとこで、私達は色々な人々に支えられて恵まれた現在に生きているということに気づき、その負債感を胸に届くか分からない誰かへ与えられるようになる。 というメッセージだった。 これを読んで科学史などの歴史を勉強しようというほどの説得力はなく、具体的にに自分の人生にどう活かせるのか、落とし込めなかった。
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偶然に気づくことを、贈与という言葉を使って哲学的に考察?! 交換の法則が支配的な資本主義社会の現代の、隙間として、贈与が存在していることを指摘。 そこで、贈与、という言葉を使って、等価交換の原理とは区別される概念をについて議論を深めています。 哲学書、見たいではあるけれども、身近な話題も取り入れられています。 参考にされているのは、 サンデル教授のあらゆるものの商品化、お金で買えないものーインセンティブとサンクションの話や、 ペイ・フォワードの必然的な悲劇、 ヴィトゲンシュタインの言語ゲーム、 SF作家の思想から考える、逸脱的思考、根源的問いと気づき、 内田樹さんの贈与論の思想、 テルマエ・ロマエから得られる、教養へのヒント、、、 ・・・ 贈与の行為者と、時間軸の話は興味深かったです。 サンタクロースが名乗らないのは、時間を生み出すための手段。 __贈与は差出人にとっては受け渡しは未来時世であり、受取人にとっては受取が過去時制にある だから、贈与は、未来にあると同時に過去にある。 ・・・ __贈与は差出人に倫理を要求し、受取人に知性を要求する いつか気づいてくれるといいな、という祈りが、差出人の倫理。 当たり前ではないと気づく想像力が、受取人の知性。 ・・・ そして、 贈与は、受取人から始まる。 __贈与はそれが贈与であるならば、受取人から逆向きに差出人自身にも与えられる 贈与の受取人は、その存在自体が差出人に生命力を与える、とも論じられていました。 ・・・ __贈与は与え合うものではなく、受け取り合うもの 贈与は届かないかもしれない、不合理で偶然の上に成り立っている贈与の本質を理解する資質が差出人には必要であり、それを支える受取人の存在合って、成り立つのですね。 ・・・ 偶然受け取っているものに気づくためには、教養を身に着けていくこと。 そこで今の当たり前が偶然であることを忘れない。ありがたみを忘れない。 自分の常識を、自分たちの常識を、新しい目で、より広い視野で、とらえることで出会い直す。 言語ゲームの視点。 __言葉は心の中で閉じているわけではなく、生活の中の行為、ふるまいと不可分に組み合わさって流通する __他者とともに生きるとは、言語ゲームを一緒に作っていくこと ・・・ 受け取っているものに気づいたら、 だから、メッセンジャーとして転送する。 賦。 交換しえないこと、唯一で偶然の自分の存在をもってするからこそ、仕事のやりがいや生きる意味が返ってくる。 頭の体操になりました。
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最近書店の書架で時々見かける『贈与』という単語。わざわざ贈与を取り上げるって何のことだ? 気になって手に取りました。 市場経済の隙間に贈与がある。贈与が存在するためには市場経済というシステムが必要である。受け取る人があってはじめて贈与は成立する。 「そうだったのか」という腑に...
最近書店の書架で時々見かける『贈与』という単語。わざわざ贈与を取り上げるって何のことだ? 気になって手に取りました。 市場経済の隙間に贈与がある。贈与が存在するためには市場経済というシステムが必要である。受け取る人があってはじめて贈与は成立する。 「そうだったのか」という腑に落ちる言葉が過去時制である理由とか面白い。 何でもかんでも『贈与』で説明出来て、贈与を感じるためには歴史を学び、その中に仮想的に自分を置いてみる必要がある…ていう結論には飛躍を感じないでもないが… 話題の贈与という考え方が良く分かる本でした。そして一番大事なのは『贈与』を考えることで普段からより他人に優しくなれそうなこと。社会が贈与の積み重ねから成り立っていると信じることで、自分も周囲に贈与したい。贈与できる人になりたい。自分の今も他者の贈与で出来ていたのだから。
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親が子を育てるのは一方的な贈与。 その負い目から人は子供に無償の愛を注ぐ。 映画ペイ・フォワードから学べること →贈与は受け取ることなく開始することはできない。 もしそれをしてしまったら、贈与の力を生み出す力が存在しないということになるので、力の空白の埋め合わせをしなければならず...
親が子を育てるのは一方的な贈与。 その負い目から人は子供に無償の愛を注ぐ。 映画ペイ・フォワードから学べること →贈与は受け取ることなく開始することはできない。 もしそれをしてしまったら、贈与の力を生み出す力が存在しないということになるので、力の空白の埋め合わせをしなければならず、それが主人公トレバーの命だった。 贈与はそれが贈与だと知られてはいけない。 もし知られたら、それは呪いへと転じて受取人の自由を奪う。そしてただの交換に転じる。 常識を疑うと、言語ゲームが崩壊する。 例えば、3+5=8を7だと言い張ると他の常識も疑わなければならなくなる。
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現代の私たちは間違いなく資本主義の下で物質的豊かさを享受してきた。しかし、今後は資本主義の(すきま)の中に、どう正当な負債感や反対給付義務を組み込むか、が心身的な豊かさにとって重要なのだと思った。都会の生活に疲れて、地方で自給自足するなどの極端な資本主義批判ではなく、資本主義のす...
現代の私たちは間違いなく資本主義の下で物質的豊かさを享受してきた。しかし、今後は資本主義の(すきま)の中に、どう正当な負債感や反対給付義務を組み込むか、が心身的な豊かさにとって重要なのだと思った。都会の生活に疲れて、地方で自給自足するなどの極端な資本主義批判ではなく、資本主義のすきまを埋めるという概念が腑に落ちた。
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「贈与は未来にあると同時に過去にある。だから僕らは何かに気づいたとき「そうだったのか」と過去時制を口にしてしまうのです。 なるほど! 本書が“デビュー著作”との事だが、わかりやすい言葉と身近な例を挙げて「贈与とはなにか」をさまざまな角度から説明する著者の文章は、読みやすく、何度...
「贈与は未来にあると同時に過去にある。だから僕らは何かに気づいたとき「そうだったのか」と過去時制を口にしてしまうのです。 なるほど! 本書が“デビュー著作”との事だが、わかりやすい言葉と身近な例を挙げて「贈与とはなにか」をさまざまな角度から説明する著者の文章は、読みやすく、何度も「そうだったのか!」「たしかにそうだなぁ!」と頷き、メモを取りながら読んでしまった。 読書会の課題図書として読んだのだけれど、この贈り物が多くの人に届きますように。
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本書の出だしは、ぴったり自分のテーマでした。 資本主義は、容赦なく拡大を目指す。 金銭を使った等価交換の世界に 持ち込もうとする。 一方、そうでない世界がある。 ざっくりいうと贈与の世界。資本主義のすき間に贈与の世界があるようです。ここまではokでした。 残念ながら、最初から...
本書の出だしは、ぴったり自分のテーマでした。 資本主義は、容赦なく拡大を目指す。 金銭を使った等価交換の世界に 持ち込もうとする。 一方、そうでない世界がある。 ざっくりいうと贈与の世界。資本主義のすき間に贈与の世界があるようです。ここまではokでした。 残念ながら、最初から60ページくらい読み進めると、 追ってけないグダグダぐねぐねした迂回路に なってました。 最終章近くでもう一度、贈与のしあわせの話?に戻ってきます。 そのあたりで閃いたのですが。 名作漫画「鋼の錬金術師」の主人公のひとりアルフォンスがたどり着いた世界観『(意訳です): 錬金術の基本原則 等価交換なんてくそくらえ、10もらったら自分で1を足して11にして誰かに渡す、これがしたいんだ』の境地、これこそが資本主義(等価交換)のすき間の行為すなわち贈与のことなのでしょう。 漫画でアルの考えを読んだ時には、なにやら煙に巻いたようなこと言ってると思ってましたが、 この本と結びつけると、アルの言ったことがすごく真っ当なことに見えてきました。 ……イマイチですねー。 感想がうまくまとまりませんでした。 自分、不器用なんで(笑)。
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ちょっと前から、私はこれまでずっと贈与されてばかりだと思っていて、贈与したいのに贈与する側になれないと思っていて、罪悪感があって、贈与できたかもと思う日はそれ以上に贈与されていて、負債が溜まっていって、そしていつか誰からも贈与されなくなる日が来るんだとひりついて生きている 「私に...
ちょっと前から、私はこれまでずっと贈与されてばかりだと思っていて、贈与したいのに贈与する側になれないと思っていて、罪悪感があって、贈与できたかもと思う日はそれ以上に贈与されていて、負債が溜まっていって、そしていつか誰からも贈与されなくなる日が来るんだとひりついて生きている 「私には育ててもらえるだけの根拠も理由もない。にもかかわらず、十分に愛されてしまった」、つまり「不当に愛されてしまった」という自覚
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資本主義の息苦しさを感じている時にこの本を読みました。贈与という考え方が資本主義に搾取されている感覚を和らげ、自身はたくさんの贈与を受け取っていたのだと思いました。 たくさんの贈与を受け取っているのだとすべてを納得してしまい、このままで良いのだ思ってしまうことは危険であると思いま...
資本主義の息苦しさを感じている時にこの本を読みました。贈与という考え方が資本主義に搾取されている感覚を和らげ、自身はたくさんの贈与を受け取っていたのだと思いました。 たくさんの贈与を受け取っているのだとすべてを納得してしまい、このままで良いのだ思ってしまうことは危険であると思いますが、それでも自分たちの社会の新たな一面を見て冷静になれる一冊です。
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