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白の闇 の商品レビュー

4.3

34件のお客様レビュー

  1. 5つ

    13

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

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2024/06/13

見えない人たちの物語を見ているという感覚がなんとも奇妙だった。 サラマーゴの「」がない文体、わたしは好きでした。

Posted byブクログ

2024/06/03

ある日突然、失明し視界がまるで「ミルク色の海」のように真っ白になる奇病が爆発的に流行する。運転中の男から車泥棒、患者から眼科医へと。 失明者を隔離したものの感染の連鎖はやまず、政府も対策の取れないまま社会機能は麻痺していく。 善意と悪意の狭間で試される、人間の価値とは。 ほと...

ある日突然、失明し視界がまるで「ミルク色の海」のように真っ白になる奇病が爆発的に流行する。運転中の男から車泥棒、患者から眼科医へと。 失明者を隔離したものの感染の連鎖はやまず、政府も対策の取れないまま社会機能は麻痺していく。 善意と悪意の狭間で試される、人間の価値とは。 ほとんどの人が視力を失う奇病にかかった中、ただ一人だけ目の見える眼科医の妻とその周辺人物を中心に、その生き様と秩序の崩壊を描くパンデミック、ディストピア小説です。 映画『ブラインドネス』の原作本。 目が見えなくなることも怖いけれど、周囲が全員目が見えない中、一人だけ視力を失わないというのもまた怖い。 作中の主人公のようなポジションにいる医者の妻は、ただ一人だけ視力を失わない事で、ただ一人その身に責任や秩序、汚穢、罪悪、葛藤などを背負う事になります。 社会インフラや秩序などが機能を失い、食事も届かず汚物に塗れ、そんな中でも冷静に対応を考え、食事を入手し分け与え、仲間を慰め、身を清めてやり、時には罪にその手を汚して。けれど、絶望的な状況に対して所詮たった一人の女性に出来る事はあまりにも小さすぎて、また自分もいつ視力を失うか分からない中、その悩みや苦しみがリアルに描かれています。 こんな状況で医者の妻や周囲の人間が正気を保てているだけでも奇跡的だと思いました。たまたま集まった仲間がみな善性や協調性が高く、冷静かつ論理的思考が出来ただけで、いつ破綻してもおかしくなかった。 もし現実にこんな病が流行ったら、そう思うと恐ろしくて仕方ない。あまりにも壮絶かつ恐ろしい話でした。 原題は日本語訳すると『見えることの試み』となるそうで、実際文体はなかなかに実験的。 作中には会話文を示すかぎかっこもなければ、段落も極端に少なくて、登場人物たちの固有名詞もない。ただ「医者」や「医者の妻」、「サングラスの娘」と呼ばれるのみで、「見えない事」によるパーソナリティの欠落・排除などを表現しているのかなぁと思っていたのですが、あとがきによると少なくとも記号がない事と段落が少ない事はJ.サラマーゴ の普段からの表現方法のようです。 *** 秩序を失った人間の獣性を描く作品はこんなのも。 『蠅の王』ウィリアム・ゴールディング

Posted byブクログ

2024/04/28

とても読み辛かった。台詞に「」が使われないし、段落もない。全体的にのっぺりとした印象になった。 映画を観た覚えはないのに結末だけは知ってた。何故だろう…。物語としては面白かったのでちゃんと映画を観てみたい。

Posted byブクログ

2024/04/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初作家。この作品の成功により、ノーベル文学賞を受賞。人間とは、個人と文明について、善悪とは・・・etc。あらゆる物事を全人類(ほぼ)失明という事象を用いて寓話的に淡々と、時に神の視点を挟みながら記された天から人類に齎された(——作者曰く、突然"全人類が失明したらどうなるのか"という…)書物ではなかろうか。作中一切キャラクタ名が出て来ず『医者の妻』『サングラスの娘』『黒い眼帯の老人』…等、眼が見えない世界では名前など不要ですものね。また台詞には「」が使用されておらず、最初は誰が言葉を発しているかわからず、大変読みづらい。しかし二つの事柄を合わせて考えてみると、読者をよりこの世界に取り込む(→読者すらこの物語の登場人物のひとりのように)のに大変効果的なことに気付かされた。結末はまた新たに生まれ変わった"新"人類の誕生(?)で幕を閉じた——。 (※続編もあるようだが、翻訳されておらず…残念だ。) 人によっていろいろ考察しながら読める、素晴らしき作品!全人類必読の書である。星五つ。

Posted byブクログ

2023/09/15

1度読むだけでは消化しきれない。説明っぽい語りだったから、こんなにグロテスクになっていくとは思ってなかった。人の尊厳ってなんだろう。

Posted byブクログ

2023/04/30

ある日突然、目の前が真っ白になり失明してしまう奇病が発生。 その奇病は伝染し、あっと言う間にパンデミックが起きる。  その状況下ではじめに発症した人々は隔離されるのですが、その状況下で発症してないのに、家族と一緒にいるために発症したと偽った女性がただ、1人、目が見える状況で語...

ある日突然、目の前が真っ白になり失明してしまう奇病が発生。 その奇病は伝染し、あっと言う間にパンデミックが起きる。  その状況下ではじめに発症した人々は隔離されるのですが、その状況下で発症してないのに、家族と一緒にいるために発症したと偽った女性がただ、1人、目が見える状況で語る、壮絶な隔離生活とパンデミック下の街での生活のお話です。  まず、文章的なことを言うと、本書は鉤括弧がなく、ページ一杯にこれでもかというくらい文字が羅列しており、文章としては一見読みづらそうというものなのですが、そんな状況なのに、地文と話言葉の区別、誰が話しているかわかるので、読みづらいということはなかったです。  ただ、この本読んだあとに別の文庫を読むと、鉤括弧、行間のある素晴らしさに感動しましたけど(笑)  本作品は、ゾンビものやパンデミックものが好きな私は物凄く楽しく読めた作品です。  5感のどれか1つでも欠けたら不便であることこの上ないのですが、目が見えなくなるということの辛さ、これは本書に書いている通りの地獄だなと思いました。  これが、ある日自分だけではなく、1人の例外を除いて見えなくなるとどうなるのか、文字は見えないですし、トイレに行くのも大変、食べ物を見つけるにも一苦労などなど生活も大変ですが、更にライフラインが止まると悲劇になります。  この世界を想像しただけで、想像の世界ですが、いかに私達が目を頼りに生きているのか思い知らされます。  また、目が見えない状態ということは、周りからも見られない状況。  そんな中で行われる人間らしさというのはどういうものなのかを改めて考えさせられました。  たとえば、私が作品と同じように目が見えない状況になったとき、はじめはなんとか生きて行こうとするでしょう。身の回りに食べ物や飲み物で食いついないで、なんとかトイレも済ますかもしれません。  しかし、食べ物が尽きて外に探さないといけなくなったらどうするか。  生きるために食物を盗まないといけないかもしれませんし、トイレもその辺で済まさないといけない。  徐々に普段生活しているような状況というものからかけ離れていきます。  そこで、私がとれる方法は2つ。盗みを働いてまで生きたくないから死ぬか、生きのびるためにあらゆる行動をとる。  実はどちらも人間らしい生き方なんだろうなと思いながら、パンデミックのこの世界を通じて、人間らしさとは何なのかを問うた作品なのかもしれない。  私達は常に理想や建前の奥底の本心については常に盲目なのだということを。

Posted byブクログ

2023/01/19

目が見えなくなる伝染病が急速に伝播しパンデミックになる世界。一人、なぜか病に罹らず目が見える女性が主人公。身の危険を感じ、「見える」ことを隠しながら家族や仲間の世話をするのだが、食べ物がない、トイレもいけない、情報も途絶え弱肉強食、世界が無法地帯と成り果てる中、彼女たちは苛烈な状...

目が見えなくなる伝染病が急速に伝播しパンデミックになる世界。一人、なぜか病に罹らず目が見える女性が主人公。身の危険を感じ、「見える」ことを隠しながら家族や仲間の世話をするのだが、食べ物がない、トイレもいけない、情報も途絶え弱肉強食、世界が無法地帯と成り果てる中、彼女たちは苛烈な状態に追い込まれる。 2020年夏に読んだ。Covid19が世界に蔓延してパニック状態だった頃。現実と物語との境界が曖昧になるほどリアルな恐怖を覚えた一冊。傑作。

Posted byブクログ

2022/11/03

始まりはかなり面白くて、読むのが楽しかったのだが、途中から何故か苦痛になってきて、後半はまた、面白く読めた。 自分が失明してしまったら、それはもうものすごい悲しいことだと思うのだけれど、この物語のように、一人を除く全ての人が失明している世界に身を置かれたら、俺はどうなってしまうの...

始まりはかなり面白くて、読むのが楽しかったのだが、途中から何故か苦痛になってきて、後半はまた、面白く読めた。 自分が失明してしまったら、それはもうものすごい悲しいことだと思うのだけれど、この物語のように、一人を除く全ての人が失明している世界に身を置かれたら、俺はどうなってしまうのかな。 会話にカギカッコがなく、段落もないから、かなり読みにくいのだが、なんだかそれはそれで一つの味のようで。 登場人物も、医者の妻とか黒いサングラスの女とか、固有名詞がついていない。こんなの読むのは初めてだったかもな。 最後まで読むと、見えているのに見えていない、という深遠なテーマが通じていたんだな、この小説は。

Posted byブクログ

2022/09/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

あまりにグロテスクでなかなか読み進まなかったが、それが人間の負の部分を表していたのだと読後に納得。それでもやはり自分にはグロテスク過ぎた。見えることが全てではない、見えないから見えるものもある。

Posted byブクログ

2022/09/19

非現実的な恐ろしい状況設定ではありますが、読みながら自分だったらこの状況でどう行動するか、どういう心理状況になるのか、といった想像力を掻き立てられて、他のフィクションの作品を読んだ時の登場人物に感情移入したりするのとはまた少し違った没入感のある作品でした。

Posted byブクログ