白の闇 の商品レビュー
人は理性ある存在とされるが、視覚という一機能を失うだけで社会は容易に無秩序へと崩れる。人間社会は虚構の上に成り立つ不安定な集団に過ぎない。しかしその極限状況においても、わずかな連帯や倫理が残る点に、作者の人間に対するかすかな希望を感じた。
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2026年読んだ中で1番おもしろい。 『進撃の巨人』もそうだけど、既成権力の転倒か墜落に対面するとおもしろいな。旧価値的なものの本質的な無意味さがよくわかる。例えば、お金が無意味なものとして、それに対する信頼が棄却されるような現象を扱った小説とか漫画とか映画があってもすごくいい...
2026年読んだ中で1番おもしろい。 『進撃の巨人』もそうだけど、既成権力の転倒か墜落に対面するとおもしろいな。旧価値的なものの本質的な無意味さがよくわかる。例えば、お金が無意味なものとして、それに対する信頼が棄却されるような現象を扱った小説とか漫画とか映画があってもすごくいいと思う。 ともあれ、動物的でない側面としての人間の価値をずっと問うている作品だった。その点で、組織化が大事な価値観になっていた。 病院内の状況が、社会の縮図のようになっていておもしろい。唯一持ち込まれた銃器が最大権力化していた。それだけ、弾がなくなったときの失墜が大きいが。寝るための道具であるベッドの部品から鉄の棍棒が作られて、銃器より弱いがそれも権力化していた。 それでも最も権力化できる武器は視力であった。1人だけ見えているという最高のアドバンテージ。それを権力に使うのではなく、組織化と力強く生きていくために使っていた。力強く生きるとは、無為と退廃に沈まないこと。 二点気になったことをとりあげたい。一つ目は、視力がなくならない人がいたのはなぜか。もう一つは、作品中で焦点化されたグループの外の人はどうやって生きていけるか。だれも目が見えないのだから、ほとんど絶望的な状況のはず。生きていくのは難しい。ただ最後の方で、目の見えない小説家が出てきたのはよかった。あの人がいるおかげで、考えうる限り絶望的な状況の中でさえ希望的な生き方を模索できた。 文体はおもしろい。特に、会話が地の文と融合していて、改行も少ない。 時間ある時に舐めるように読めたのでよかった。
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カミュの「ペスト」のようなパンデミック物のパニックストーリーの体をなしているが、白くミルク状に視界が覆われるという不条理な失明の仕方、終盤の教会で発見する聖像の状態などから、そうではない。どちらかというとマッカーシーの「ザ・ロード」に近い雰囲気で(会話文に括弧がない点でも似ている...
カミュの「ペスト」のようなパンデミック物のパニックストーリーの体をなしているが、白くミルク状に視界が覆われるという不条理な失明の仕方、終盤の教会で発見する聖像の状態などから、そうではない。どちらかというとマッカーシーの「ザ・ロード」に近い雰囲気で(会話文に括弧がない点でも似ている)、終始終末期の世界のような暗い雰囲気の中で、すべての人から視力が奪われたときに陥る、人間の暴力、狂気、それらに対抗する理性、勇気などが描かれる。特に食と排泄が人間の尊厳に及ぼす影響がいかに大きいかがわかる。極限状況にあるとき人としての尊厳を保つには?と読者に問いかける作品である。
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突然視界が真っ白になり失明する感染症が広まった世界。 寓意的に感じる部分もあるが、結構ハードな展開。
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久々に怖いと思える本に出会った。目が見えなくなるという恐怖と、そのパンデミックによって起こる強欲。ゾンビ映画とかでよくある展開が目が見えなくとも起こりうる世界が恐ろしい。いかに普段視覚によって生活や世界が成り立っているか、そして全員が失うとこうも人間は地に堕ちるのか思い知らされる...
久々に怖いと思える本に出会った。目が見えなくなるという恐怖と、そのパンデミックによって起こる強欲。ゾンビ映画とかでよくある展開が目が見えなくとも起こりうる世界が恐ろしい。いかに普段視覚によって生活や世界が成り立っているか、そして全員が失うとこうも人間は地に堕ちるのか思い知らされる。
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唐突に目が見えなくなって、唐突にそれが終わるのは何故か。 医者の妻だけ見え続けたのは何故か。 教会の目隠しは何かの暗示なのか。 ……ひとつも答えが無くて、全ては読者の解釈次第というところがもどかしい。 この時、私はどっち側の人間なのか。 私ならどうするのか。 眼医者がサングラス...
唐突に目が見えなくなって、唐突にそれが終わるのは何故か。 医者の妻だけ見え続けたのは何故か。 教会の目隠しは何かの暗示なのか。 ……ひとつも答えが無くて、全ては読者の解釈次第というところがもどかしい。 この時、私はどっち側の人間なのか。 私ならどうするのか。 眼医者がサングラスの娘を求めた時の妻の感情を、どうすれば理解できるのか。 この後世界は元に戻れるものなのか。 などなど、考えることが多い作品だった。 この秩序ある清潔な世界は脆いのだ。
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ある男が交差点で車を待機させてる間、唐突に視界全体がのっぺりとした白に覆われるという形で失明したことをきっかけに、国中でこの失明が伝染した。 この荒唐無稽な設定の上で、全ての人が失明したら何が起きるのか、目が見えることを前提として作られた社会はどのような事態に陥るのか、を残酷なま...
ある男が交差点で車を待機させてる間、唐突に視界全体がのっぺりとした白に覆われるという形で失明したことをきっかけに、国中でこの失明が伝染した。 この荒唐無稽な設定の上で、全ての人が失明したら何が起きるのか、目が見えることを前提として作られた社会はどのような事態に陥るのか、を残酷なまでに克明に描き出した。さらにこれを通して、目が見えているように思われる私たちの日常の中における捉えがたい(見えない)現実をも鮮やかに表した この小説の特徴はなんと言っても、登場人物の名前がついぞ判明することの無いまま物語が終わることと、鉤括弧を用いずに会話文と地の文が入り交じって記述されることであろう。それに加え段落分けが極端に少ないこともあって、とても読みづらそうだと初めは思われるだろう しかしこの文体に慣れればすっと作中に入り込んで読むことができるようになるし、この物語にもこの文体が合っているように思われる 他人からの視線が無くなったことで現れる人間の本性、一方で他人の姿形に囚われないことで生じる人間の善性といったものがどちらも丁寧に表現されている 前者は中盤に非常におぞましく描かれ、人間なんて所詮は理性を失ったら野蛮な獣にすぎない、と思わせる一方、終盤では人間自らの努力によって友愛の情を獲得し垣根を越えた愛情を描くことで、人間も捨てたもんじゃないなと思わされる。作者の掌で転がされている感覚を味わうことができるだろう あらゆる人が光を失っているという状況において、他人から見られないという点で人々は悪事を働きやすくなる(お天道様も目が見えていないらしい)が、他人の姿を見ることができないという点では姿形からもたらされる第一印象を排して相手の内面と接触できるため、フェイス・トゥ・フェイス以上の心を通わせたコミュニケーションが可能になりもするだろう 本作が、登場人物の名前が明らかにしないこと、鉤括弧を使わないことで発話者を判然とさせてないこと、を通して示唆される匿名性という要素に注目すると、現代のSNSにおける人々の振る舞いは、ユーザー全員が失明している状態と似ているように思われる 匿名性を逆手にとって相手に誹謗中傷するような事態も起こるが、その一方でマッチングアプリなどに見られるように、匿名がゆえ相手の容姿というコミュニケーションにおける大きなハードルを通り抜けて、相手の内面に直に接触することが可能になってもいる 名前や顔などの相手の情報を制限することによって生じるコミュニケーションもあるのだろう そして、その逆もまた然り
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読み進めるのが苦しかった。でも最後まで読まずにいられなかった。人が安心して暮らす事ができるのはたくさんの前提があるから。その前提が崩れたとき、どんな恐ろしいことが起きるのか?その時、自分はどのように考え、どのように行動するのか。読書中はずっと、そんなことを悶々と考えていた。
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固有名詞が一切出てこない。 『 』で会話が書かれていない。 なのに個が判断できるし、どんどん読み進められる。 面白い作品に出会えた。 もちろん、訳者の多大な尽力にも感謝。
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※ 突然、目の前が真っ白になり目の見えない 男が現れ、そこから関わった人が一人また 一人と同じ状態に陥っていく。 感染性の病なのか、突然変異の奇病なのか 原因が分からないまま症状の現れた人たちは 隔離され、状況は次第に拡大していく。 正体不明のパニックストーリーなのに、 どこ...
※ 突然、目の前が真っ白になり目の見えない 男が現れ、そこから関わった人が一人また 一人と同じ状態に陥っていく。 感染性の病なのか、突然変異の奇病なのか 原因が分からないまま症状の現れた人たちは 隔離され、状況は次第に拡大していく。 正体不明のパニックストーリーなのに、 どこか淡々としている雰囲気が漂っていて 恐慌と冷静の対比が印象的。 登場人物に名前が付けられていない物語で、 それだけでも珍しいに、それぞれの人物を 特定しながらストーリーについていける。 海外の著者だと人物の名前がカナなので、 頭に留まりずらく本を手に取るのを躊躇する けれど、名前がないのに読めた点は未知なる 体験でした。
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