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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2020/03/05 |
JAN | 9784309467115 |
- 書籍
- 文庫
白の闇
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白の闇
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商品レビュー
4.1
44件のお客様レビュー
「他者の視線によって人間は自己を形作る」 この小説を読みはじめたとき、一番に驚愕したのは、著しい改行と括弧の排除、登場人物全員の名前が明かされないことでした。 こうした特殊な手法は、読んでいるこちらを有無を言わさずミルク色の海の中に引き摺り込むようで気味が悪く、それでいて登場人...
「他者の視線によって人間は自己を形作る」 この小説を読みはじめたとき、一番に驚愕したのは、著しい改行と括弧の排除、登場人物全員の名前が明かされないことでした。 こうした特殊な手法は、読んでいるこちらを有無を言わさずミルク色の海の中に引き摺り込むようで気味が悪く、それでいて登場人物達の内面をこれでもかと描写することにより没入すればするほどにページを捲ることが苦痛に思えるような、他の小説では味わえない読書体験をさせてくれます。 とりわけ、印象深かったのは社会全体が失明してからの街を覆うリアルな悪臭と汚物に覆われた歩道を踏みしめる感触の描写です。 作中の文章を引用させていただくと「その道の権威によれば、罪人が耐えるべき最悪のものは、焼けた石炭ばさみや、煮えたぎるタールの大釜や、鋳造所と調理場にある種々の道具ではなく、鼻が曲がるほどの強烈な腐臭と、吐き気をもよおす有害な異臭だという」 失明社会は他者の視線がない分、皆が傍若無人に振る舞う様をこれでもかとたたきつけてきます。 序盤はただただ、登場人物達を襲う理不尽な苦難に対して苦痛を感じるばかりでしたが、視覚を失ったことで、それまで出会う等の無かった人々が衝突しつつも手に手を取り合い、助け合う姿を見て、少しずつ読み手の自分も救われていくようでした。普段は清潔な服に身を包み、自然の爽やかな風が当たり前のように吹くことが奇跡のような気持ちにさせられます。 「瓶を透かして明かりが光り、中身の宝物がきらめいた。医者の妻はそれをテーブルに置くと、夫婦の持っている最高級のクリスタルグラスを取りにいった」こんなにも美しい表現があるとは。瓶の中身はぜひ本書を読んで確かめて欲しいです。
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2024/11/22 ある日突然、原因不明の失明する感染病が世界に蔓延するとしたら、という非現実的な物語から伝わる、現実において見えない部分、見ようとしない部分を示唆される小説。 見えなくなることによって起こる無秩序な世界、隔離された小さな世界で抗えない行使を執行されるとどう...
2024/11/22 ある日突然、原因不明の失明する感染病が世界に蔓延するとしたら、という非現実的な物語から伝わる、現実において見えない部分、見ようとしない部分を示唆される小説。 見えなくなることによって起こる無秩序な世界、隔離された小さな世界で抗えない行使を執行されるとどうなってしまうのか。 行動描写と情景描写がありありと書かれ、心理描写はほとんど書かれないとかいう奇抜な1冊。 「」も一切使われていないので、失明した世界をさらに感じられるし、「」がないからこそ他の小説には無いテンポ感が面白い。 まさに、盲目な世界を体験させられる完璧な方法で、その不幸な世界へ道連れにさせられる。 見えるから見ていないのか、見えないから見させられるのか。 無秩序な世界での哲学を考させられる。 正直、情景描写がグロテスクすぎて夢に出てくる程には頭に残ってしまう、トラウマ級。
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突然目の前が真っ白になる感染症。感染したら自分なら何を思い、どんな行動をするだろう。困るのは容易に想像つくのですが、具体的に作中で表現される世界は救いようのないものとなっています。さらにはその惨状を自分だけが見えていたら…? 五感の中でも視覚を奪われるということがどれほど辛く、...
突然目の前が真っ白になる感染症。感染したら自分なら何を思い、どんな行動をするだろう。困るのは容易に想像つくのですが、具体的に作中で表現される世界は救いようのないものとなっています。さらにはその惨状を自分だけが見えていたら…? 五感の中でも視覚を奪われるということがどれほど辛く、そして目からの情報量がいかに膨大かということを思い知らされました。 そして、この物語はこれが伝染病によるもので、人としての尊厳を奪われるような隔離を強いられます。 そこでは一体何が起きるのか…ぜひ読んでもらいたい。 初めてアジアを飛び出して読んだ作家さんです。 故に理解できないような難しい表現もあり、1ページに書かれる文字数も満ち満ちで読了までに時間を要しました。 段落は多用せず、鉤括弧を使わない作風がこの物語では、そんなものは不要であると言われているようで、特に効果的に感じます。 おすすめいただいた『七坪書店』店長殿に感謝。 確実に私の読書経験値を大幅にアップさせる一冊でした。
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