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白の闇 の商品レビュー

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44件のお客様レビュー

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2020/03/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 初読みの作家さんです突然人々が失明した世界に肉食の動く植物が闊歩する世界を描いたSF「トリウッドの日」が購入を決めたときに頭にありました。あとはこの素敵な表紙ですね。綺麗ですよね。  そんな割と軽い気持ちで読む始めた本書。途中からは今回のコロナウイルスの事とこの物語の内容が重なっていました。  絶対的な非常時に人はどうなるのか? どういう行動をとるのか?  失明した人々と感染が予想される人々は政府に集められて、今は無人となっている精神病院へ隔離されるのですが……。  その中にただ一人目、目が見えているのに見えていないと装い夫に付き添ってきた眼科医の妻の目に映る世界がすさまじい。    数人だった人々が増えるにつれて、不衛生な環境になり、こんな閉じられた場所で、少ない患者のなかで弱者と強者が生まれてくる。強者のグループは食料を自分たちで管理して、他の人々から貴金属や金銭を奪い、挙句、女性たちを自分たちの性的な欲望を満たすために連れ込んで強姦する。暴力が狭い世界を支配していく描写がおぞましくて、恐ろしい。  読んでいて、人とはこんなに簡単に堕ちていくものなのだろうかと思いながら、見えないことは欲望を見ないことになるわけだから、そうなることもありえるのかもしれないとも思ったのですが。  食事、排せつ、着替え、目が見えないということは本当に不衛生な状況に置かれるわけで、政府は彼らと閉じ込めて食料の配給をするだけなのですが、それも指導者たちにも患者が出たり、彼らを監視している兵士たちに患者が出てしまったことで、余計に追い詰められてしまう。  淡々と描かれる、暴力と死。抗うすべのない人々。真っ暗な闇ではなく、白の闇に閉じ込められている事実。  その中で一人だけ見ることを許された医師の妻の目に本当に映し出されいるのは何なのだろうと考えてしまった。見えないことが救いになることもあるのだと思う彼女の辛さがとても苦しい。  結局、強者のグールプは破綻を迎え、隔離されていた場所は火がついて、眼科医とその妻たちは彼らの家へと向かうのですが、その先に待っていたのはさらに悲惨な景色。  まさにすさまじい一冊でした。なのに、読み始めたら、読む手を止めることができませんでした。(なので、他の本が遅れているんですと言い訳をしてみる)  作者のサラマーゴはこの作品でノーベル文学賞を受賞するに至ったそうです。(今回はそんなことは関係のない本当にジャケ買いですよ)  読みやすくはないです、登場人物に名前はなく、会話に「 」はついていない。ですが、それを除いて全身に語り掛けてくる圧倒的な力がありました。他の作品も読みたいと思いますが、翻訳されているのか気になります。  そして、一番思ったことを一つだけ、私たちは本当にその目に真実を映しているのだろうか。見たいものだけを見ているのだけではないか、本当は彼らと同じような闇の中にいるのではないだろうかと思ったことを書き添えておきます。

Posted byブクログ

2020/03/15

ページをひらいたとき、文字の多さに怯んだが、途切れない緊張感にひきずりこまれてページをめくるのが止められなくなった。 見えること、見えないこと、見えない人の中で生きること、見えないままで死ぬこと。 ミルク色に崩壊した世界のなかで、「人間として」生きることを考えさせられる一冊。

Posted byブクログ

2020/03/15

ご時世のせいか、パンデミックものという紹介をされていることが多いように思うが、パニックSFと言われた方が近いんじゃないだろうか。人間が欲望を剥き出しにして行く姿はけっこうな迫力。続編があるらしいが、邦訳あるのかな~、後で調べてみよう。

Posted byブクログ

2020/03/13

パンデミックものというよりもむしろ、『蠅の王』と似たものを感じる。途中の、隔離された状況での人間の悪が露になる醜悪がつらい。しかし忘れ難い。

Posted byブクログ