白の闇 の商品レビュー
恐ろしいと思いつつも読み進めずにはいられないほど面白かった!コロナ禍に通じるものがある。著者の他の作品も読んでみたい。
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この手の本や映画はその病に立ち向かう医者や科学者や政治家が主人公というのがほとんど。患者目線の内容は今までなかったのでとても新鮮だった。 このコロナ禍に読むとリアルさが増して人間の恐ろしさを感じた。
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1995年に発表されたこの作品、わりと最近復刊して話題になっていたらしい。映画「ブラインドネス」の原作。 「ある日突然白い霧がかかったように失明してしまう奇病」が伝染病として人々に蔓延していく物語。このコロナ禍だからこそ話題になり、だいぶ前の本だけど今の状況の本質を突いている。 ...
1995年に発表されたこの作品、わりと最近復刊して話題になっていたらしい。映画「ブラインドネス」の原作。 「ある日突然白い霧がかかったように失明してしまう奇病」が伝染病として人々に蔓延していく物語。このコロナ禍だからこそ話題になり、だいぶ前の本だけど今の状況の本質を突いている。 登場人物には名前がない。「最初に失明した男」「医者の妻」「サングラスの娘」などという風で、会話にかぎ括弧がついていないので最初は読みにくさを感じるけれど、物語が進むにつれてその独特なつくりが臨場感となって迫ってくるものがある。 ほとんど全ての人が失明してしまった世界ではどんなことが起こるのか。人から見えていない、という意識は人々にどんなものをもたらすのか。 人々からは清潔感という概念が失われ、盗みでもなんでも平気で働くようになる。 そんな中ただひとりだけ失明しなかった登場人物がいて、その人物の目に映った世界が「見えないこと」の真理を突く。 「ただ見ていること」と「見ようとすること」は、同じように見えているという状態でも全く違う。人と人との関係性においてはその違いは如実にわかる。 目が見えなくなったからこそ見えることもたくさんあるという皮肉。 コロナ禍の最初の頃にも、人の醜さだとか真理について考えさせられたことがいろいろあったな…とある程度馴れてしまった今になって思い返したりした。 かつて誰も触れたことのない事象が起こった時、自分が自分を保つのに必要なのは「見ようとすること」なのかもしれないと改めて思った。噂だとかに惑わされず、自分の目で見る力を備えておくこと。 名作は時代を超える、と思わされる作品は時々ある。読み応えのある小説だった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
わたしたちは目が見えなくなったんじゃない。わたしたちは目が見えないのよ。目が見える、目の見えない人びと。でも、見ていない。 *** 暗い作品の得意な私でも読むのに少々骨が折れた作品だった。読んで、考えて、手が止まる。とても面白く、そして恐ろしい作品。現在のパンデミック下で、状況は違えど同じようなことが起こっている。得体の知れない脅威と背中合わせの生活。いつまで続くかわからない、まさに「闇」だ。 ある時突然視力を失った男。 男を助けたあと男の車を盗んだ車泥棒。最初に失明した男の妻。眼医者の診療所にいたサングラスの娘、斜視の少年、白内障で眼帯をつけた老人。次々と失明していく。失明した人々の視界にはどこまでも続く、ミルクをこぼしたような一面に広がる白い海。彼らは使われなくなった精神病院の病棟へ隔離され、外に出ることは許されない。満足な食糧も提供されない上に、饐えた匂いのする水しか出ない水道、生きる上で必要なものはほとんど揃っていなかった。 目の見えない人々は増え続けて、三百人ほどの人が病棟へ収容された。 人が人らしく生きていくことを忘れる者。人間的でないならせめて動物的にならないようにしようとする者。 当然のように起こる想定しうる最悪の出来事。 医者の妻だけが、最後まで失明しなかったのは何故なのか。 ある日突然人々が白い闇から脱出することができたのか。 わたしたちはずっと、盲目だったことだけは確かなようだ。
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ある男が突然失明した。暗闇に包まれたのではなく、視界が全て白くなる「白の闇」に覆われた。その症状は、感染症のごとく広まっていき、最初は数人を隔離しておくだけで済んだのが、徐々に多くの人が罹患することになる・・ただ一人を除いて。そんな中、人々は何を考えてどういう行動をするのか?政府...
ある男が突然失明した。暗闇に包まれたのではなく、視界が全て白くなる「白の闇」に覆われた。その症状は、感染症のごとく広まっていき、最初は数人を隔離しておくだけで済んだのが、徐々に多くの人が罹患することになる・・ただ一人を除いて。そんな中、人々は何を考えてどういう行動をするのか?政府はどういう対応を取るのか?といった一種のシミュレーションを描いた物語。 これ完全にウォーキングデッドでした。というか、ウォーキングデッドより酷いかも知れません。いわゆる、ポストアポカリプスモノというのか、自分がこの世界に放り込まれたら、速攻で死ねる自信あります。衛生が失われる描写や、モラルが失われる描写、少ない食料を巡って争いが起きたりといったこともありますが、終盤の残酷描写がやばいです。気になる方はぜひ読んでみてください。
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コロナ禍ということもあり、感染病が蔓延する社会に於ける集団心理を主題化した作品(『ペスト』、『白い病』など)を幾つか読んだが、『白の闇』は特に描写が凄惨かつ圧倒的だった。ノーベル文学賞作家の文章力が光る作品。 「なにが正しくて、なにが誤りかを見きわめるのは、ただわたしたちが対人...
コロナ禍ということもあり、感染病が蔓延する社会に於ける集団心理を主題化した作品(『ペスト』、『白い病』など)を幾つか読んだが、『白の闇』は特に描写が凄惨かつ圧倒的だった。ノーベル文学賞作家の文章力が光る作品。 「なにが正しくて、なにが誤りかを見きわめるのは、ただわたしたちが対人関係を理解する手段なの。自分自身とのかかわり合いではなく。」 「わたしたちの内側には名前のないなにかがあって、そのなにかがわたしたちなのよ。」 「絵や彫刻は目が見えないよ。それは違うわ。絵や彫刻はそれを見る人の眼で見ているの。ただ、いまはだれもが見えないだけ。」 上記の引用から推察されるように、唐突に失明した人々を覆っていた「白の闇」を私は「自己中心的な自閉性」と捉え、この小説の主題は現代社会に蔓延する個人主義へのアンチテーゼだと感じた。
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2021.6.2 62 めちゃよかった! 糞尿たくさん出てくる。目が見えないとは何を表すか。 最後の方はソイレントグリーンや滅びの前のシャングリラを思い出した。 カギカッコがない。名前がない。
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『はじめての海外文学』でおススメされており、気になったので手に取った一冊。作者はノーベル賞作家、J・更マーゴで、もともとはポルトガル語の小説である。視界が真っ白に染まり失明する病が流行り、目の見える人間たちによって構築されてきた組織や世界が崩壊していく様子が、唯一視力を失わなかっ...
『はじめての海外文学』でおススメされており、気になったので手に取った一冊。作者はノーベル賞作家、J・更マーゴで、もともとはポルトガル語の小説である。視界が真っ白に染まり失明する病が流行り、目の見える人間たちによって構築されてきた組織や世界が崩壊していく様子が、唯一視力を失わなかった女性中心に戦々恐々と語られる。 前半は、伝染病の蔓延を防ぐため、視力を失った人間たちが使われていない精神病に隔離される。目の見えない人間達が人間としての尊厳を少しずつ失っていく様子が、本当に恐ろしい。人間らしく生きられるよう公平に、かつ、組織的に行動しようとする人たちがいる一方で、自分が損をせず、かつ、欲求を満たすために非人道的な行動にでるものもいる。特に、210ページあたりからは恐ろしすぎて先がなかなか読めなかった。見えない世界では明確な善悪が存在せず、生きていくためには、見える世界では罪とされることも犯す必要があったのでしょう。 後半に入っても世界の状況は何も変わらない。教会のシーンはかなりぞっとした。 この本のテーマは、病の原因がどうであるとか、どのように解決していくかとうことではなく、明確な善悪がなくなった『見えない世界』で、人間が尊厳をもって生きることが出来るのか否か、そこに価値はあるのか、というところにあるのかもしれない。 また、この本の特徴は文体にある。改行どころか鍵括弧もない。会話は字の文で語られ、誰が話しているのか、そもそもこれは説明なのか会話なのか、それすら考えながら読む必要がある。また、基本的には視力の失っていない女性中心に話がすすむが、視点は一人称でも三人称でもない神の視点である。読み始めた時はその特殊さに読みづらさを感じてしまったが(実際、読み終わるのに1か月以上かかっている)不思議なことに、途中からそれがほとんど気にならなくなり、どんどんページがめくれるようになる。 描写が厚塗りな海外文学は苦手意識があり、それもあって『はじめての海外文学』でおススメされていたものを試しに手に取ってみたのだけれど、これは本当におススメ。騙されたと思って読んでみて欲しい。
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人びとの目がいきなり見えなくなった。ただひとりを除いて。ということで何が起こるかについての小説である。ポルトガルの作家とあるがアメリカの状況でもおかしくない。いまのコロナの状況での推薦本であった。
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だれしも死の次に怖いのは病気、次に盲目になることではないか。 次々と、人々が盲人になっていく話。 見えなくなった目に広がるのは、白の闇。 ヒッチコックの映画を彷彿とさせる、決まり悪い臨場感。 私も目が見えなくなるのでは?と、本から汚染物質を感じるくらいの迫力。 自分も周囲の...
だれしも死の次に怖いのは病気、次に盲目になることではないか。 次々と、人々が盲人になっていく話。 見えなくなった目に広がるのは、白の闇。 ヒッチコックの映画を彷彿とさせる、決まり悪い臨場感。 私も目が見えなくなるのでは?と、本から汚染物質を感じるくらいの迫力。 自分も周囲の者も全員盲目になったらなんて、これまで想像してみたことがない。 原始的になるのか? 否、ベクトルが違う。 無秩序とも違う。 獣みたいになる、というのも違う。 名前が意味を失う。形容詞が役にたたなくなる。言葉への信頼がなくなる。 面白いと思ったのは、ひとりだけ、なぜか盲目にならない「医者の妻」が、盲人たちよりも地獄を味わうということ。家中、町中に溢れる糞便と、糞便をそこいらに垂れる人々の姿を見てしまうのだから。 この人の意味はなんだろう。 優れたファンタジーはリアリティと相反しないものだ、と痛感する作品。
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