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サル化する世界 の商品レビュー

4.1

59件のお客様レビュー

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2024/06/10

 「サル」とは、故事「朝三暮四」のあのサルである。では「サル化」とは何か。それは、"自己同一性の時間的・空間的な縮減"のことをいう(「今さえよければ、それでいい」「自分さえよければ、他人のことはどうでもいい」)。すなわち、長期的視野を持たない近視眼的思考、そし...

 「サル」とは、故事「朝三暮四」のあのサルである。では「サル化」とは何か。それは、"自己同一性の時間的・空間的な縮減"のことをいう(「今さえよければ、それでいい」「自分さえよければ、他人のことはどうでもいい」)。すなわち、長期的視野を持たない近視眼的思考、そして社会の分断。内田樹は、世界に広がるポピュリズムの潮流は「社会のサル化」に他ならないと喝破する。  ハッとさせられたのは、立場・意見の異なる人との向き合い方について。もし仮に、分断を煽り敵を弾圧しようとする人がいるとき、彼に対して我々がすべきは、「あいつはとんでもない奴だ」と切り捨てることではなく、あくまで"デモクラシーの本義(p.96)"を守ろうとすること、つまり、彼も共同体の一員として受け容れその言い分を聞くことだという。 "自分に反対する人間はすべて敵だ、すべて潰す、という政治的立場の人に対する根源的な批判は、「われわれは自分に反対する人間をすべて敵だとは思わない。反対者を含めて、同じ集団に属するすべての人々を代表する用意がある」と意地でも言い切るしかない。(p.98)" "日本の政治文化が劣化したというのは、シンプルでわかりやすい解をみんなが求めたせいなんです。(略)それをもう一度豊かなものにするためには、苦しいけれども、理解も共感も絶した他者たちとの「気まずい共存」を受け入れ、彼らを含めて公共的な政治空間を形成してゆくしかない。(p.102)" なんと非対称的でしんどく、そしてもどかしい仕事だろうか! それに比べ、歯切れよく言い放ってしまうことの実に訳無いこと!  内田樹の本を読むたびに大事なことを「思いださせて」くれるような感じがして、それと同時に、自分の頭で「まともに」考えること・当たり前を当たり前に考えることの困難さを思う。

Posted byブクログ

2022/09/26

哲学者であり武道家、内田先生が発信した様々な媒体の記事を一部加筆など手を加えて再録した一冊。 バラエティに富んだ色々な話題が掲載されているけれど、トーンは一貫していて、「サル化する」現代人が直面している暗い未来に対する警鐘が鳴らされている。 佐藤優氏の「大国の掟」という本のあ...

哲学者であり武道家、内田先生が発信した様々な媒体の記事を一部加筆など手を加えて再録した一冊。 バラエティに富んだ色々な話題が掲載されているけれど、トーンは一貫していて、「サル化する」現代人が直面している暗い未来に対する警鐘が鳴らされている。 佐藤優氏の「大国の掟」という本のあとがきに紹介される、「悲観主義者とは、事情に通暁した楽観主義者である」という言葉が思い出される。

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2022/09/22

経済活動とは、結婚とは、教育とは、などさまざまな社会システムを捉える視点を新たにさせてくれる良書。メタ認知が進む。

Posted byブクログ

2022/08/14

全く面白い!全部の意見に賛成では無いけれど、思考を組み立てる、もしくはアウトプットする際のロジックが、本当に為になる!この人が仏文の人だったことを初めて知りましたw

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2022/02/23

「学ぶ目的が示された子どもは、最少努力でその目的を果たそうとする」全くその通りだと思う。 市場の原理に骨の髄まで浸かっている我々は教育や医療等にも市場の原理を当てはめようとするが、その先にあるものはどんな未来なのか?一度立ち止まって考える必要がある。

Posted byブクログ

2022/01/27

タイトル通り、現代に通底する新自由主義と成績重視競走教育と部分最適化する公共に対して強烈な不満と批判をぶつけている書籍だった。 問題意識として非常に参考になったし、民主主義とは参画することで決定事項を自分事とするシステムであることや、結婚はリスクヘッジであること、異文化を知るワク...

タイトル通り、現代に通底する新自由主義と成績重視競走教育と部分最適化する公共に対して強烈な不満と批判をぶつけている書籍だった。 問題意識として非常に参考になったし、民主主義とは参画することで決定事項を自分事とするシステムであることや、結婚はリスクヘッジであること、異文化を知るワクワクこそが外国語を学ぶモチベーションであるべきこと、弱者でも貧困者でも共同体ネットワークにいれば相当に低コストで必要な支援が得られることなどは納得。 一方で、どうすれば世界が倫理的になれるかについての具体的で有効な手段はあまり示されず、批判一辺倒(であるがゆえに無責任で理想論)であるように感じられた。

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2021/09/12
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※このレビューにはネタバレを含みます

この本では著者内田樹さんのブログやこれまで発表してきたものを加筆・採録した、目先の利益にとらわれ、朝三暮四のサルのように将来のことを考えられなくなる世界についての警告が描かれていました。 AI時代の英語教育について、言語は「目標文化」にアクセスする「目標文化」である。 他国の言語で知りたいことがあるから学ぶということが現代では少なくなってきている。 私自身受験や就職で役立つからという理由で勉強してきたしたが、それでは意味がない。 「努力した先に得られるものが決まっていたら、子供たちは最少の学習努力でそれを獲得しようとする」 このような学生を消費者としてふるまう学生たちと述べていました。 学びというものはわくわくする楽しいものであるべきだと思います。人からやるべきだ、やらないとこの先痛い目に遭うぞという脅しではなくもっと学びたいも思う環境作りが大事なのだとかんじました。 また、新しいものを創造するためには母語でしか創造できず、そのためには外国語だけ英語だけ学ぶのではなく母語も豊かにしていかなければならないと著者は述べていました。

Posted byブクログ

2021/09/24

わたしたちの住む世界のどこかに生じた綻びに気がつきつつも、それをどうとらえ、どう対処すればいいのか思い迷うのだが、ここにはそれらの綻びの対処への、一つの明確な方向性を示唆されている。

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2021/07/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

現代の社会問題について考察した本。著者の本はよく読んでいるので、この本のタイトルを見ただけで主張の内容は大体推測できた。一言で言えば、アカデミズムの人間から見た現代の日本社会は嘆かわしいということ。気持ちはよく判る。傾向として、自分で考えることを止め、メディアや世間の風潮に流されやすい人が増えてきたという事だろう。でもこの流れは簡単には変えられない。「運」があれば、良い方向に行くかもしれない。世の中の事は、論理的に進むわけではないので。 参考:本の紹介文 「今さえよければ自分さえよければ、それでいい」――サル化が急速に進む社会でどう生きるか?ポピュリズム、敗戦の否認、嫌韓ブーム、AI時代の教育、高齢者問題、人口減少社会、貧困、日本を食いモノにするハゲタカ……モラルの底が抜けた時代に贈る、知的挑発の書。・「自分らしく生きろ」という呪符・なぜ「幼児的な老人」が増えたのか?・トランプに象徴される、揺らぐ国際秩序・「嫌中言説」が抑止され、「嫌韓言説」が亢進する訳・戦後日本はいかに敗戦を否認してきたのか・どうすれば日本の組織は活性化するのか……etc.ブログや複数の媒体で発表したエッセイに加え、堤未果氏との特別対談も収録。現代社会の劣化に歯止めをかけ、共生の道筋を探る真の処方箋がここに。

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2021/06/01

確か池袋のジュンク堂で初めて見かけて、タイトルに惹かれて買おうとしたが、結局だいぶ経ってから読むことになってしまった。 学校教育だったり、フランスは実は敗戦国で、イタリアは枢軸国だけど実は戦争に勝っていたという話だったり、そんな話は聞いたことがなかったというものばかりだったけど、...

確か池袋のジュンク堂で初めて見かけて、タイトルに惹かれて買おうとしたが、結局だいぶ経ってから読むことになってしまった。 学校教育だったり、フランスは実は敗戦国で、イタリアは枢軸国だけど実は戦争に勝っていたという話だったり、そんな話は聞いたことがなかったというものばかりだったけど、膨張し続ける(しかない)資本主義の話はこの前読んだ白井さんの本と同じことを言っているなと改めて、資本主義のどうしようもなさに思いを至らされた。 にしても、日本をこの先50年、100年守るためにはどうしたらいいか、考えようと書いてあって、自分がいざそう言われたら何も思いつかないことに愕然とした。 この先、多分50年も寿命はないだろうけど、その後のこと、その後の日本や世界を考えた日々を過ごし実践していくという仕事何やりたいなと切に思った。 古典、古文、漢文、そして外国文学。特に外国文学かな、彼の国の人たちが醸成してきた文化を原文で読んで、そしてこの国の文学、文化、ひいては自分がものを考えるときの拠り所にしているものを、見つめるには大事な、そしてとても良いことだと書いてあるのに、深く頷かされた。

Posted byブクログ