御社のチャラ男 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
多角的な視点で切り取ったどうしようもない会社のお話し。どこにでもありそうなエピソードの塊だから身近で面白いんだろうなー。本人にはそういう風にしか見えてないのだろうけれども、みんなどうしようもないよっていう。これだけ書き分けられるのはすごい。 平成が令和になって、働き方改革が叫ばれて。コロナはまだ影も形もなくて。ホントに何ヶ月かをうまーく切り取った作品。時代の空気を感じられる作品があるとすれば、まさにこの作品のことだと思う。だからこそ、賞味期限があって、今回読んだタイミングがギリギリなような。そんなことを考えました。
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新聞の書評を読んで、図書館に予約したのは8ヶ月前。随分と待った。 タイトルから、垣谷美雨さんのような痛快な小説かと思っていた(書評がどんなだったか、既に記憶がなくなっていた…)が、ちょっと違った。 東京に近い地方の『ジョルジュ食品』というだいぶブラックな食品会社に勤める人々...
新聞の書評を読んで、図書館に予約したのは8ヶ月前。随分と待った。 タイトルから、垣谷美雨さんのような痛快な小説かと思っていた(書評がどんなだったか、既に記憶がなくなっていた…)が、ちょっと違った。 東京に近い地方の『ジョルジュ食品』というだいぶブラックな食品会社に勤める人々が、社内の「チャラ男」と陰で呼ばれる三芳道造の人物像について、一章ごとに独白調で語っている。 そして三芳自身も自分について語っている。 ただチャラ男について語っているのではなく、語り手自身や会社の他の人物、ひいては社会に対する見方や、鬱屈なども語られている。 その「人物」や「社会」に対する見方は、人により全く異なるのだが、その描き方に唸るしかない。 高度成長期、バブル期、氷河期、ゆとり、男、女、などそれぞれの世代、ジェンダーが平成をどう捉え、どう生きたか。 同じ物を同じ時に見ていても、人格形成期をどの時期に過ごしたかで、その物に対する感想が全く違う。 絲山さんは、登場人物の口を借りて様々な視点から、読者に問いを投げかけている気がする。 また、ある章で書かれていることは、まるでこのコロナ禍を予測してたかのようで、鳥肌が立った。 最後は、世の現実の厳しさを突きつけられるようだが、社員が呪縛から解き放たれるようで希望もある。 絲山さんは芥川賞をはじめ、様々な文学賞を受賞されているが、一つ一つの文章表現があまりにも的確で、自分がモヤモヤと考えていたことに形を与えてくれたようで、目が覚める思いがする。 一度通して読んだだけでは、それらの表現が記憶の隙間からダダ漏れしてしまう。 出来れば、もう一度読み返したいのだが、次の人が待っている…。 予約が落ち着いた頃にもう一度借りてみよう。 2020.11.11
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タイトルに惹かれて芥川賞作家・絲山秋子作品を初めて読んでみた。タイトルから受ける印象とは全く違う印象で、東京からそれほど遠くない地方都市の食品会社を舞台設定にしてそこで働く人たちを媒介にしながら、現代社会に生きる我々日本人の精神の変遷を描いている、と思いながら読んだ。しかし何か書...
タイトルに惹かれて芥川賞作家・絲山秋子作品を初めて読んでみた。タイトルから受ける印象とは全く違う印象で、東京からそれほど遠くない地方都市の食品会社を舞台設定にしてそこで働く人たちを媒介にしながら、現代社会に生きる我々日本人の精神の変遷を描いている、と思いながら読んだ。しかし何か書いていることがぶれているようにも思われ(これは私の読解力がないだけかもしれないが)あまり良い読後感はなかった。しかし著者の表現力は抜群で、何か言葉にしにくい事象を、登場人物に比喩を語らせるようにして上手く表現させていたのは特筆ものだった。
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図書館の新着図書リストで目が合ったので借りてみた。こちらも、読み始めてすぐに「思ってたんと違う…」と、感じたけど、「違う…」と思いながら先が気になってイッキ読みした。 現在仕事関係で大概へばっている今のわたしが読んで大丈夫な内容なんか…? と、失笑したけど、結論としては大丈夫や...
図書館の新着図書リストで目が合ったので借りてみた。こちらも、読み始めてすぐに「思ってたんと違う…」と、感じたけど、「違う…」と思いながら先が気になってイッキ読みした。 現在仕事関係で大概へばっている今のわたしが読んで大丈夫な内容なんか…? と、失笑したけど、結論としては大丈夫やった。 大丈夫というか大丈夫でないというか、なんちゅうか全体的にキッパリした結論がまったくでないことの繰り返しの内容やった。笑 でもそれが、社会人としてのリアリティすぎて怖いのなんの。 この、やるせないというか「誰もがおかしいと感じているけれどそれを演じ続けるしかやり方をしらない」と、いうこの状況が怖いなと改めて思った。 だからって何かをどうにもできひんねんけど。 群像劇風味に、いろんな視点を読ませてくれる構成もよかったなあ。結局何一つ憎めない。 こういうことが重なってできるのが現実やから、やっぱり、自分のことは自分でせなあかんよなと思った。 自分の機嫌を取るのも自分やし、自分の道を選ぶのも自分やし。 思うようにいかんことばっかりやけど、それを「思うようにいかん」と、考えるか、それなりに流すか、それも人それぞれなわけで。 とにかく、「考えることをやめる」と、いうことが一番アカンねやなと思った。 ほんで、自分がどういう人間だとか、どんなことができるとかできないとか、そういうことをこねくり回すのは「考える」ことではないんやなとも思った。 たしかに、視界が狭くなってるときって、そこをはき違えるわ。 著者の別タイトルも、読んでみたいような、見たくないような……。笑 面白かったよ。さらっと読めたし、読了感も悪くなかった。 わたしら世代には結構ささると思うし、せやな、もうわたしら世代って「ひと昔前のサラリーマン」なんやでな、とも思った。笑 バブル期でもないわたしらは、「名前のない世代」やでな。知ってる。
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メモ 責任者だから問題があればすぐに動く。問題がなくても年中動いている。 動くのは、それが仕事になるからだ。可能性が広がるからだね。小さいプライドにしがみつくのは弱いやつだよ。年齢は関係ない。思い切って動かないとじり貧になる一方だと思う。 誤解があったり、間違いがあったら...
メモ 責任者だから問題があればすぐに動く。問題がなくても年中動いている。 動くのは、それが仕事になるからだ。可能性が広がるからだね。小さいプライドにしがみつくのは弱いやつだよ。年齢は関係ない。思い切って動かないとじり貧になる一方だと思う。 誤解があったり、間違いがあったら謝ることも大事だね。私にとってそんなこと、なんでもない。簡単なことだ。私が謝ると殆どの場合、相手はびっくりする。でも顔を上げれば目の前がすっきりしていて、まっすぐ歩き出せるようになっている。 それが経営者の役割なんだよ。 道を拓くこと。会社のみんなを正しい方向に導くこと。(P139)
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絲山秋子節、さすが。 平成から令和切り替わりの刹那、 この国はどこに向かってるんだろうというぼんやりとしたざわつき、見事表現してる、、
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絲山さんを久しぶりに読みました。さすがだなぁと思いました。 タイトルの掴みがいいです。『御社のチャラ男』目を引きます。帯の「チャラ男って本当にどこにでもいるんです。一定の確率で必ず」という台詞もクスッと笑えて読んでみたくなるし、どんな話なんだろうと興味も湧きます。 開いてみると構...
絲山さんを久しぶりに読みました。さすがだなぁと思いました。 タイトルの掴みがいいです。『御社のチャラ男』目を引きます。帯の「チャラ男って本当にどこにでもいるんです。一定の確率で必ず」という台詞もクスッと笑えて読んでみたくなるし、どんな話なんだろうと興味も湧きます。 開いてみると構成にも工夫があって、読んでいくうちにその意図がしっかりと生きてきて、メッセージ性も強く、全然チャラくなく非常に真面目に問いかけてくる作品でした。とてもおもしろかったです。 複数の人物を登場させ、各々自身を語るという構成の意味にポイントがあります。語りの描き分けも巧いです。 人はそれぞれ違うようで違わないのです。
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タイトルに惹かれて図書館で借りました。 チャラ男といっても色んなタイプのチャラ男がいて、人によって「チャラさ」の捉え方も違うのだと思う。 生憎、知り合いにチャラ男はいないけれど、「チャラ男って別に悪い人ではないんだろうな」という思いを持てた、この本に感謝。
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僕だってチャラ男になれるならなりたかった。チャラくなれるにも才能と容姿の壁があると思います。 本書は、チャラい部長の周りの社員や、取引先をリレー形式で数珠繋ぎにした連作です。チャラいと言っても、流行りのEXITみたいなウェーイって感じでは無くて、しゃれた格好と妙に横文字の多い会話...
僕だってチャラ男になれるならなりたかった。チャラくなれるにも才能と容姿の壁があると思います。 本書は、チャラい部長の周りの社員や、取引先をリレー形式で数珠繋ぎにした連作です。チャラいと言っても、流行りのEXITみたいなウェーイって感じでは無くて、しゃれた格好と妙に横文字の多い会話。いわゆる意識高い系が含まれているような感じでしょうか。 如才なく世の中を渡っていくチャラい系。学生時代は本当に苦手だった・・・。 でも大人になってみると意外と気さくで付き合いやすい人が多いような気がします。コミュニケーション能力が高いし、一緒に居ると普段委縮して行けないような店に行っても楽しめたりします。 この本のチャラ男はそこまで良いチャラ男とは思えないけれど、まあこういう人いるよねというレベルのリアルさを持っています。 それを取り巻く普通の人々の様々な目線。ほぼチャラ男をよく思っていないのですが、これもまたリアルな感じです。
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タイトルから軽い男、お調子者の話かと思ったら、『チャラ男』こと三芳部長はちょっと違う。 でもこういう人いるなという、困った男。 そんな三芳部長を巡る、様々な視点で描く仕事と職場と人生の話。 社内の人間がのべ13人。これだけの視点があると、仕事にしろ会社にしろ生き方にしろ様々な見...
タイトルから軽い男、お調子者の話かと思ったら、『チャラ男』こと三芳部長はちょっと違う。 でもこういう人いるなという、困った男。 そんな三芳部長を巡る、様々な視点で描く仕事と職場と人生の話。 社内の人間がのべ13人。これだけの視点があると、仕事にしろ会社にしろ生き方にしろ様々な見方考え方価値観があって面白い。 会社は社会の縮図、色々な人がいて色々な人間関係があって複雑で難しくて面白い。 変わった人や病を抱えた人などもいてハラハラするところもあるが、それが社会の縮図であるゆえだろう。 人の見方もそれぞれ。三芳部長は部下から見ればクズな上司なのだが、三芳部長からの視点はお気楽なようできちんと見ているところもある。 他人から見られている自分、自分が認識している自分、自分が見ている他人。正解も間違いもない、見方が違えば世界も違う。 それにしても絲山さんの例え話は興味深い。例えば男の猿山と女の猿山、なるほどと思った。 舞台となっているジョルジュ食品の、ブラックとまでは言わないがグレーな感じにこういう会社もありそうだな、こうやってのらりくらりと続いていくんだろうなと思っていたら最後にビックリな展開が。 最後の一言に絲山さんの思いが伝わる。会社も仕事も人間関係も一時のものかも知れないが、人の人生はまだまだ続く。 チャラ男にもジョルジュ食品の面々にも幸あれ。
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