御社のチャラ男 の商品レビュー
軽そうで実はそうでもない。 フィクションとは言え、人物の述懐がこれほど重いとは。 絲山さんの作品の中でも重めな感じ。
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「石北会計」事務所所属のチャラ男さん。頭がよくて責任感はないけど危機管理能力は高い、自己中で支配欲が強い。器が小さくてキレやすい嫌なやつで、中身はばか女。 何も考えていない能力もないようなチャラ男だけど実際にはというか、本人の中ではとてもいろんなことを考えて、自分を嫌っているそれぞれに対してもある意味思いやりを持って接しているつもりらしい。 チャラ男と接するたくさんの人から見たチャラ男。いろんな面があるにはあるけどたいていネガティブな印象。 読んでいても「あぁ、いるいる、こういう人いるねぇ、ホント腹立つわ(苦笑)」と思うのだけど、なんだろう、なぜか嫌いになれない。嫌いになれない、というか、無視できないというか、気になって仕方ないというか。 その理由が最後まで読むとよくわかる。あぁなるほどな、と。どの会社にも、どんなグループにもいるチャラ男。でも実はチャラ男がいるのは自分のそばではなくて、自分自身の中だったんだ。だから嫌いだけど気になる存在だったんだ。なるほどね。 チャラ男が子供のころ欲しかったもの。あこがれていた家庭。彼がチャラ男になった理由の断片が嫌なやつの陰から見え隠れする。そのあたりのさじ加減がうまい。 あぁ、チャラ男も山田さんも幸せになってほしいなぁ。
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