なめらかな世界と、その敵 の商品レビュー
素晴らしかった。2個目の話が分かりにくかったが、その他は想像力が掻き立てられ本当によかった。人格が変わった女の子を好きになるみたいな話?があったけど切なさがひしひし伝わった。なんとも言えない気持ち。最後の新幹線もよかったですね。次元を飛び交うthe sf感があり、おすすめの話。最...
素晴らしかった。2個目の話が分かりにくかったが、その他は想像力が掻き立てられ本当によかった。人格が変わった女の子を好きになるみたいな話?があったけど切なさがひしひし伝わった。なんとも言えない気持ち。最後の新幹線もよかったですね。次元を飛び交うthe sf感があり、おすすめの話。最初のかけっこの話もよかった。結論見かけたら買ってください
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長いこと読んでいなかったSF。"一秒分の息を吸うだけで、三百日が吹き飛ぶ世界に僕はいた。" そういう世界にも行けること、久しぶりの感覚で、とても面白かった。最近出たアンソロジーにも手を出してみよう。
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「広義のミステリ」なんて言葉や、本格・変格論争なんてものがあるように、推理小説はその定義をめぐって議論が繰り返されてきた。SFの世界にもそういう議論はあるのかな。あり得たかも知れない世界の擬似体験がSFの真骨頂なら、本書はまさにそのど真ん中である。 本書を構成する6つの短編は、も...
「広義のミステリ」なんて言葉や、本格・変格論争なんてものがあるように、推理小説はその定義をめぐって議論が繰り返されてきた。SFの世界にもそういう議論はあるのかな。あり得たかも知れない世界の擬似体験がSFの真骨頂なら、本書はまさにそのど真ん中である。 本書を構成する6つの短編は、もしもこんなことが起きたら、歴史がこう動いていたら、という仮想の上で主人公が動き出す。むしろ主眼は人ではなく、そのあり得た世界である。全体的に少し青臭い感じもするけれど、個人的に楽しめたのは、ミステリ色の強い「ホーリーアイアンメイデン」、書き下ろしの「ひかりより速く、ゆるやかに」。
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・短編が六編。 ・かつてジュディス・メリルさんが編んだ「年間SF傑作選」や「SF・ベスト・オブ・ザ・ベスト」に惹かれ繰り返し読んだ身としてはその方向性の進化形のように思えるこの作品集は素直に凄いなと思えます。 ・今の日本の作品らしくラノベ的にキャラが立っているのでそれらエゴの拡大...
・短編が六編。 ・かつてジュディス・メリルさんが編んだ「年間SF傑作選」や「SF・ベスト・オブ・ザ・ベスト」に惹かれ繰り返し読んだ身としてはその方向性の進化形のように思えるこの作品集は素直に凄いなと思えます。 ・今の日本の作品らしくラノベ的にキャラが立っているのでそれらエゴの拡大した身勝手なキャラたちの動きがドラマチックでもあり、先鋭的な設定のわりに意外に読みやすい。クールであり、情緒的でもある。 ・それにしてもSF小説もここまで来るとこれからの作家は大変やなあとも思ったりする。もっと牧歌的で何でもアリでツッコミどころの多い作品がなつかしくなったり・・・ ちょっと消化しきれてないとこもあるけど、とりあえず個々の作品についても。 ・「なめらかな世界と、その敵」時空がバラバラになっている、あるいはパラレルワールド間が溶け合って自由に往き来できる世界のようだ。と最初の方で思いこの世界を矛盾なく描いていくのは大変そうだとも思った。個人的に時間は流れではなくひとかたまりのものとして最初から最後まですでにあってその一点にぼくらはおりチーズの中の虫のように移動しているので流れに見えているだけかもしれないとか思っているのでこういう世界も受け入れはしやすいかなと。で、パラレルワールドは無限のチーズが重なっている感覚で。 ・「ゼロ年代の臨界点」。すんごい頭のいい作品って感じ(あ、悪口じゃないよ)。最後の「注11」がオチってことになるでしょうか。 ・「美亜羽へ贈る拳銃」「私」とは何か。多くの人が考えたことがあるだろう疑問。昨日の自分と今日の自分が本当に同一なのかとか。 ・「ホーリーアイアンメイデン」抱擁した相手を優しい性格にしてしまう能力をもっているらしい女に宛てた妹からの手紙。その優しさはほんとうに自分のものなのか。 ・「シンギュラリティ・ソヴィエト」最初のうちは70~80年代くらいのソ連の作品読んでる感じがしないでもない。最後は日本的に情緒的。 ・「ひかりより速く、ゆるやかに」二人を除いて卒業式に参加できなかった生徒たち。時間の檻にとらわれた新幹線。小松左京はんっぽい設定かもね。普通っぽいストーリーがあるのでこの本の中でもっとも読みやすい作品かもしれない。
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過去読んだ日本SF短編集では個人的に最高の部類の一冊になりました。改変歴史、AI、ソ連邦と好きなもの全部載せの「シンギュラリティ・ソヴィエト」と、こんな災害が今起きればこの小説で描かれているような騒ぎになるだろうなあ、と感心した、「ひかりより速く、ゆるやかに」の2短編が特に好みです。
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これは凄い! 普通、短編集だと「これ良かったなー」って作品が一つは簡単に思いつくんだけど、これは難しい。 選べない! こんな面白いバリエーション見せられると、一つ選ぶなんて時間の無駄に思えてくる。 もう全作オススメです
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傑作。ゼロ年代以降のSFの潮流をすべて取り込みつつ、百合やソ連などの独自性が際立つオリジナリティの高さ。今後の日本SFを背負って立つ作家になることは間違いない。
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描かれたのは青春であり、恋愛であり、そして何よりSFだった。過去の名作に引けを取らないようなSF的なアイデアを核にしながら、ストーリーテリングを疎かにすることなく、物語としてきっちり楽しめる、非常に欲張りな短編集。 バリエーション豊かな物語も魅力だけど、何より構成の上手さに舌...
描かれたのは青春であり、恋愛であり、そして何よりSFだった。過去の名作に引けを取らないようなSF的なアイデアを核にしながら、ストーリーテリングを疎かにすることなく、物語としてきっちり楽しめる、非常に欲張りな短編集。 バリエーション豊かな物語も魅力だけど、何より構成の上手さに舌を巻いた。様々なアプローチからストーリーを描こうという試みや、SFらしい仕掛けも見られて、一風変わった、けれど爽快な読書体験ができると思う。SF好きにこそ、ぜひ読んで欲しい一冊。 ワードのインパクトが重視されがちなSNSでは、絶賛の票は今ひとつ信用しきれないことも多いが、この本は間違いなく傑作だし、伴名練は間違いなく天才だ。 ついでに、各話の簡単な感想も記録として記しておきたい。ネタバレは基本的にないが、予備知識ゼロで読みたい場合は読む必要はない。 「なめらかな世界と、その敵」 特異な設定も相まって、読みやすいとは言い難いが、全貌が明かされる頃には慣れるだろう。特異(その世界では平常)な少女を通して、特異性を失ってしまった少女の苦悩を描く。読みながら、色々と想像が膨らんだ。 選び取られた結末は、美しいと思うけれど、すんなりと選び取るには酷過ぎるように思った。裏表紙にあるように、青春を描いた作品と見るなら、正しくそれに相応しい締めくくりだった。 「ゼロ年代の臨界点」 偽史に基づく、1900年代のSF文学史を扱った論説ーーという体裁を取ったフィクション。このアプローチも面白いが、これが一般的な小説的ではなく「史料的」な文章であることが、物語としてみた場合に、状況を描き切らないもどかしさというか、第三者の視点を通して記述されたことによる不透明感みたいなものが介在するように思う。漫然と文字を追うだけでは全貌が捉え切れないかも。 それによって解釈の余地が生まれるのは、また面白い部分でもあるだろうと思うけれど。 (6/13、再読記録に感想追記) 「美亜羽へ贈る拳銃」 伊藤計劃へのリスペクトがみられるだけじゃなく、名作が、とりわけ伊藤計劃の神話化が、ある種メタ的に取り入れられている。しかし、登場する技術の面白さ、それが物語に与える作用、叙述トリックめいた小洒落た言い回し、そして勿論、二転三転する物語としての魅力があって、オマージュ的な要素抜きでも十分に評価できる小説だろう。 「ホーリーアイアンメイデン」 ある人物からある人物へと向けられた手紙を通して、その間に何があったのか、どういう関係性なのかを浮き彫りにしていく、書簡小説。 内容に即した、良いタイトルだと思った。 「シンギュラリティ・ソヴィエト」 前4つの短編は、面白く読んだが、これを読んだときには打ちのめされた心地がした。負けたと思った。 詳しくは控えるが、歴史改変ものとしての面白さは勿論のこと、短編小説として凄まじい完成度を誇る一編だ。 冷戦下というシチュエーション、ぶっとんだガジェットが出てきても「まあ仕方ないか」と思えてしまう空気感、それを醸し出す独特のネーミングも刺さったし、作中メインとなる二人のバックに控える存在にも心躍る。その構図が凄く良かった。 「ひかりより速く、ゆるやかに」(感想をまとめたことで、物語の流れを予見させるような表現になってしまったので、ここだけは読破してから読んで欲しい) この一編によって、青春SFで始まって、青春SFで締めくくられた、という印象を受けた。 主人公が内に秘めた思いが好みだったし、物語としても、淀み、停滞していたものが一気に解放され、やがて疾走感へと変わる、非常に爽快な話だった。理論的な要素は少し控えめで、SFらしい解決ではないと感じたが、これはこれで良いだろう。これもまた、構成の上手さに度肝を抜かれた一本だった。
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2010年代以降の日本SF史を彩る傑作短編集。 表題作「なめらかな世界と、その敵」は無数の並行世界をスライドしつつなめらかに生きる少女と、それを可能にする「乗覚」に障害をきたして一つの人生しか生きられなかったマコトの物語で、まずパラレルワールドを行き来するというアイディアに脱帽である。ネタ自体は珍しくないのだが、自由意志で常に並行世界を行き来する日常というのが斬新で、それがそのまま未成年たちの無限の可能性を表しているという点が巧みである。そして「乗覚」が当たり前だからこそ、それができないマコトの絶望感は真に迫るものがあり、だからこそクライマックスは花火のように輝いている。本作は喧伝されている通りの百合であり、多少の陰謀などもあるものの、骨子はまさに女子高生同士の関係性にあり、その無鉄砲さと後悔を引き換えにしても失いたくないものが読後に突き刺さるのだ。 「美亜羽に贈る拳銃」は伊藤計劃の傑作『ハーモニー』に捧げるトリビュートであり、愛もそれに纏わる感情も人格さえもブレインインプラントで望むままに規定できる世界において、愛の本質を試される物語である。人間が人間であるためのほとんどが代替可能ながら、そこで描かれる葛藤はなによりも人間らしく、二転三転する展開に翻弄されるが、オチはやはり美しい。 個人的に目を引いたのは「シンギュラリティ・ソヴィエト」で、人工知能が東西冷戦を収束させたという歴史改変もさることながら、合衆国の人工知能「リンカーン」とソ連の「ヴォジャノーイ」の駒となってしまった人間を描きながら、スパイ同士の緊迫感のある問答が光る。作中に仕込まれた謎の正体も驚かされたが、人間の叡智を超えた「ヴォジャノーイ」が画策したものがただのバースデーケーキというオチのぶっ飛び具合が素晴らしかった。余談だが、ドウエル教授の生首というベリヤーエフネタが出てきたのには笑ってしまった。 書き下ろしである「ひかりより速く、ゆるやかに」はこの短編の殿を務める作品として一番完成度が高く、青春要素はかなり強い。低速災害と呼ばれる未曾有の時間災害に巻き込まれた新幹線と、そこから断絶して現代に取り残されてしまった少年という取り合わせが魅力的である。西暦4700年後に彼らを乗せた新幹線が到着するという絶望感と、足掻こうとする取り残された少女である薙原、そして人知を超えた災害によって徐々に壊れていく日本の描写には食い入るように読まされてしまった。ソシャゲやインスタ、LINE、ガチャ、小説投稿サイトなどの2010年代の高校生カルチャーなども相まって、ぶっ飛んだ設定ながら土台には現代的なリアリティがしっかりと根付いている。そんな中で、作中に挟まれた西暦4700年が主人公の小説というネタは完全に虚をつかれたし、そこから主人公の犯した罪と、それに対する購いのクライマックスへと繋がる手腕は見事。まさに青春であり、しっかりとしたハッピーエンドにまとめたのは作者の非凡さを感じてしまった。 どの物語も、問われているのは人間の本質であり、彩るのは人と人との関係性である。自由奔放なアイディアと、キャラクター要素が強いながらも感情に切々と訴えかけてくる登場人物たちの心境こそが最大の魅力で、判名練は追いかけて行こうと決意した傑作である。
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「これいいよ、すごく面白いよ」と妻と娘に本を見せて言うと「えっ、何この表紙の絵…まるで」「ライトノベルみたい?」「そう、それ」-ライトノベルばりにこの短編集は読み易いSFだ。 SFといえば、現実離れした訳の分からない小説だと思っていたが、このSF小説にはがつんときた。難解で哲学的...
「これいいよ、すごく面白いよ」と妻と娘に本を見せて言うと「えっ、何この表紙の絵…まるで」「ライトノベルみたい?」「そう、それ」-ライトノベルばりにこの短編集は読み易いSFだ。 SFといえば、現実離れした訳の分からない小説だと思っていたが、このSF小説にはがつんときた。難解で哲学的なテーマではなくて、ここで問われているのは、人への愛、文明の進歩への疑義なのである。どんな形態の小説であっても、普遍的なテーマはあり得るということを改めて知らされたし、物語性豊かであるほうが私にはそれが響いてくることも分かった。 「なめらかな世界と、その敵」並行宇宙を行き来する世界での少女の友情を描く。 「ゼロ時代の臨界点」架空のSF黎明期を描いてSFへの愛を謳う。 「美亜羽へ贈る拳銃」攻殻機動隊の世界ばりの脳を改変するのが常態となる近未来を描きながら、やはりテーマは愛なのだ。 「ホーリーアイアンメイデン」人を抱きしめるだけで性格を聖人並みにしてしまう能力について描き、極楽浄土の是非を問うている。 「シンギュラティ・ソヴィエト」IA社会の行きついた先に希望はあるのか。人間の自由意思がテーマか。 「ひかりより速く、ゆるやかに」主人公の弱さ、卑怯さは私のものだ。それでも彼はひとり身を投げ出して友を人々を救おうとした。やはり愛と再生の物語なのだ。 ―と勝手に解釈してみた。読者それぞれにいろいろ考えさせるのが優れた小説なのだろう。
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