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なめらかな世界と、その敵 の商品レビュー

4.3

87件のお客様レビュー

  1. 5つ

    47

  2. 4つ

    18

  3. 3つ

    13

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

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2021/08/15

一つ一つの世界観と結末が素晴らしい。短篇集と一口に言っても、SF史考察、書簡ものといったものまで含まれていて、著者の想像力とそれを表現する手腕に驚かされる。「なめらかな世界と、その敵」で著者の世界観に引き込まれ、「美亜羽へ贈る拳銃」で圧倒され、「ひかりより速く、ゆるやかに」で爽や...

一つ一つの世界観と結末が素晴らしい。短篇集と一口に言っても、SF史考察、書簡ものといったものまで含まれていて、著者の想像力とそれを表現する手腕に驚かされる。「なめらかな世界と、その敵」で著者の世界観に引き込まれ、「美亜羽へ贈る拳銃」で圧倒され、「ひかりより速く、ゆるやかに」で爽やかに締めくくられる。素晴らしい短篇集だった。

Posted byブクログ

2021/08/03

「なめらかな世界と、その敵」☆☆☆ 冒頭から景色がぐるぐると変化し、登場人物は一行ごとに変わり、何が書かれているのかと混乱させられた。 この作品中の人間たちは暑いからと冬の並行世界に飛んだり、学校の先生と話しながら別の世界の友人と話したりと、とても自由に複雑にふるまうせいだ。 並...

「なめらかな世界と、その敵」☆☆☆ 冒頭から景色がぐるぐると変化し、登場人物は一行ごとに変わり、何が書かれているのかと混乱させられた。 この作品中の人間たちは暑いからと冬の並行世界に飛んだり、学校の先生と話しながら別の世界の友人と話したりと、とても自由に複雑にふるまうせいだ。 並行世界を行き来する作品は数あれど、これだけスムーズに行き来し続けるのは初めて読んだ。 物語には、並行世界に移動することが常識となっている世界で、それができない少女マコトが登場する。 その状態はつまり私たち現実世界の人間と同じなのだが、彼女にとってはそれは一つの制約を受けていることになる。 マコトの「私から目を逸らせないのは、私だけだからな」というセリフが印象に残った。 この短編集にはギミックとしては既存作にあるものの、そこにひとひねり加えた作品が多くおもしろい。 「ゼロ年代の臨界点」☆☆ 日本の架空のSF史についての解説で、注釈も含めて読み進めていくと、主要人物3人にしか見えていなかった世界が垣間見えてくるスタイルは面白いが、ほかの作品に比べて得るものが少なかった。 「美亜羽へ贈る拳銃」☆☆☆☆ 人の恋愛感情を固定するインプラント(ナノマシン)を開発した北条美亜羽は、敵対する神冴との勢力争いに負け、神冴家に取り込まれることになる。 それを嫌がった彼女は神冴への呪いの言葉を口にして、ほとんど自殺のように自らにインプラントを打ち込んだ。 その効果は、神冴実継を好きになるというもの。 美亜羽は別人のように実継を愛するようになるが、それがインプラントにより植え付けられたものだと理解している実継はその愛情に応えることができない。 二人は人格と愛情をどのように捉えていくのか。 タイトルは梶尾真治『美亜へ贈る真珠』をもじっているが、内容的には関係は薄い。 美亜羽の名前はもちろん伊藤計劃『ハーモニー』から。 「憧れてその名を僭称する人間は寧ろ、彼女から一番遠い凡庸な魂の持ち主だ」というセリフはBLEACHの「憧れは理解から最も遠い感情だよ」というセリフを思い出した。 「ホーリーアイアンメイデン」☆☆ 抱擁することによって相手の人格や態度を変えてしまう能力を持った女性と、それを間近で見続けた妹の物語。 姉がどういう考えだったのかも知りたかった。 「シンギュラリティ・ソヴィエト」☆☆☆ ソ連のAIが技術的特異点(シンギュラリティ)を迎え、アメリカに技術的に勝利した世界。 ソ連の市民たちはAIに制御され、彼らの脳はAIの演算装置の一つにされるまでになっている。 しかしアメリカもそのままでいるはずはなく……。 いかにも近未来っぽい作品で、アメリカとソ連の対決シーンがかっこよかったり、人間には理解の及ばないAIの技術の壮大さが感じられたりとワクワクする作品だった。 「ひかりより速く、ゆるやかに」☆☆☆☆ 高校の修学旅行生を乗せた新幹線が突然停止する事故が起きた。 しかも外部から干渉することができない。 しかし、停止しているかのように見えた新幹線は実は時間が遅くなっているだけで、少しずつ進んでいた。 ただし、新幹線の時間は外に比べて二千六百万分の一になっており、次の駅に着くのは西暦四七〇〇年ごろだ。 主人公のハヤキはインフルエンザに罹ったせいで修学旅行に行けなかった生徒で、新幹線の乗客を助けようとする人々や、勝手に話題性のある事件に盛り上がっている世間や、事故の被害関係者たちを見つめていく。 「時間停止」ではない「時間圧縮」モノにはいくつか既存作があり、本作中でも事件の解決策を探る参考書籍として挙げられている。 私が知る中では先ほども挙げた梶尾真治『美亜へ贈る真珠』、古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』に収録されている「むかし、爆弾が落ちてきて」。 時間という絶望的な隔たりとそれに挑む高揚感があったり、人間ドラマがあったり、主人公にももちろん物語があって青春ものとしての一面も持っていて面白かった。

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2021/07/05

真っ向勝負のSFというよりも、超現実的な設定を取り込んだ作品集といった趣向。 表題策も面白かったが、個人的には「ホーリーアイアンメイデン」を面白く読んだ。 不思議な力を持った姉と、その姉に複雑な感情を抱く妹の関係を、妹が姉に宛てた書簡の体裁で綴る話。 姉の特別でありたかった妹の...

真っ向勝負のSFというよりも、超現実的な設定を取り込んだ作品集といった趣向。 表題策も面白かったが、個人的には「ホーリーアイアンメイデン」を面白く読んだ。 不思議な力を持った姉と、その姉に複雑な感情を抱く妹の関係を、妹が姉に宛てた書簡の体裁で綴る話。 姉の特別でありたかった妹の視点で進むストーリーだが 姉の目線でのサイドストーリーを読んでみたい気になった。 思春期の揺れ動く心理をSFに絡めて描くと 苦くて重いだけでなく、どこか爽やかで透き通った感覚が残るんだなぁ、というのが読後の印象だった。

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2021/06/12

六遍どれも珠玉の名作。特にトリを飾る「ひかりより速く、ゆるやかに」はここ最近読んだ中でベスト級の青春SF。ああなんて爽やかな傑作。良いもの読んだ!

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2021/06/06
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短編集 ・なめらかな世界と、その敵:設定がぶっ飛んでていすごかったです。最初しばらくはついていけず ・ひかりより速く、ゆるやかに:これが一番おもしろかったです。現実線の部分と、竜の話が交互ぐらいにあって、どこでどうつながっていくのかなと思いながら読んでいきました。 キャラクターが魅力的で読んでて飽きない。最後のオチも面白かった

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2021/05/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

俊英のハードSF。 並行世界を自由に行き来出ることが当たり前の世界で、それが事故でできなくなった旧友を救うために少女が起こした行動とは。(なめらかな世界とその敵) 明治時代、女学校に通う三人の少女がおりなすSF小説の勃興と、最後に巻き起こる時間漂流。(0年代の臨界点) 脳科学の俊英だった美少女は財閥にはいることを引き換えに人格変容のナノマシンを打ち込んでしまう。それを見守る青年の歪な恋の物語。(美亜羽に送る拳銃) 戦中、抱きすくめることで相手の意識を変革し聖人のようにさせてしまう秘技をもった姉。その秘技は世界をも変えてしまう。それを密かに恐れた妹の物語。(ホーリーアイアンメイデン) 人間を置いてけぼりにするほど発達した超人工知能が織りなす、西側と東側の対立の物語。(シンギュラリティ・ソヴィエト) 時間が極遅延する異常事態に見舞われた新幹線の乗客たちと、取り残された家族。主人公は全ての発端が自分にあることに気づき、叔父の残した手掛かりをもとに片想いだった同級生を救おうと決心するが…(光より速く、ゆるやかに) どれも驚く筋立てで、小説としてのギミックも鋭く何度も騙される。 最初はとっつきにくい感触だったが、登場人物の温もりも感じられる良き小説でした。

Posted byブクログ

2021/05/12

SFってこれまで殆ど通ってないけど、読みやすい語り口で当たり前のように不思議な技術を教えてくれるしその枠組みの中でどう動くかの葛藤がリアルで良い。 表題作も書き下ろしも、ハーモニーのトリビュートもあって豪華だった…。

Posted byブクログ

2021/04/07
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面白かった。以前、話題になっていたので、それだけで気になって読んだ。SF短編集。取っつきやすくて面白い。すごい。 「なめらかな世界と、その敵」 パラレルワールドをぴょんぴょん跳び移るというか、片目で見ていくような、そんな描写が面白い。刻々と色んな世界の可能性を覗き見る描写がすごい。 そして、最終的に固定化されてしまっても、その決断に至るまでの流れが青春の爽快感で良かった。 「ゼロ年代の臨界点」 円城塔の真顔で嘘を付くような話。日本SF黎明期を3人の女流作家のエピソードで紡いでいくのが面白かった。たまにこういう系統の話を読むけどジャンル分けとしてはどう呼称するんだろう?日本酒と日本文学をかけてような作品も読んだけど、あれとも似てる。空想概念SF? 「美亜羽へ贈る拳銃」 壮大な愛の話じゃん。白鳥の寓話が面白かった。人間らしくなりたいという願いこそ人間らしいという矛盾。 インプラントという技術の描写が面白い。確かにインプラント。兄の出奔と主人公の特別性にちゃんと意味があって面白かった。ハーモニーっぽさも感じられるし、確かにハーモニー。 「ホーリーアイアンメイデン」 手紙形式だからこそ受け取り側の心情を想像するしかなく、ちゃんと子猫の伏線もあって面白かった。 「シンギュラリティ・ソビエト」 とんでも歴史SFというか。社会の描写と個人レベルで受ける生活の営みがうかがえて面白いし、どちらも人工知能に支配され、もはや駒なのか駒ではないのか思考するところが面白かった。冷戦下のチェスプレイヤーのボビー・フィッシャーとボリス・スパスキーみたいだった。 最後のオチには笑うしかない。誕生日の蝋燭として工場を燃やすとは。 どこまでは人工知能の思惑なのか。そう考えると義姉との対決から全て考えざるを得ない。 「ひかりより速く、ゆるやかに」 なんか泣いちゃった。遥か未来の話の部分も含めての話かと思ったら創作とは。しかもクラスメイト全員に読まれるとか。元の時間に戻りたくないよ、そりゃあ。 話の要点は昔の少女漫画のSFで読んだの思い出したし、叔父さんの本の中に「海を見る人」があってニヤリとする。他も時間関係ばかりだし。 なぜ遅れるという現象が起きるのかという理由もちゃんと説明されてて良かった。 主人公の心情も吐露されていて面白かった。そして、最後には二人を会わせたいという動機で時空を超えようとしたところも良かった。 2,700年ではなく10年かかったというのに、リアルさを感じた。リアルとはってなるけど、大災害から立ち直る期間としてとか?ただのぼうかんしゃとしてとか?まあそんなもんだよな、感。 まだ読んでてちょっとつまずくところがあるので、これからどんどん書いていけばもっとこちらも慣れてなめらかになっていきそうだなと感じたし、幅も感じたのでこれからももっとおもしろいのを書いてほしい。

Posted byブクログ

2021/03/02

実は人間なんて気分の変化で次々過去の自己を殺している。 私とはあなたの中の私、である。 美亜羽へ送る拳銃 → ホーリーアイアンメイデン → シンギュラリティソビエト → 光より速く、ゆるやかに →

Posted byブクログ

2020/12/21

久しぶりに、日本のSFで面白い、と思えるものに当たった。この作者の小説は初めて読んだけど、どの短編も考えられていて、それぞれの面白さがあった。勢いのある話が多く、今の時代をうまく反映出来ていてツボにはまった。

Posted byブクログ