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森があふれる の商品レビュー

3.3

57件のお客様レビュー

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    6

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

    26

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2019/09/18

体から植物を発芽させ、森をあふれさせる妻と、 それを題材にして物語を書く小説家の話。 一見するとファンタジーのようだけれど、実際には、男性性と女性性とか、社会性とエゴとか、芸術家の業だとか、リアリティのある問題がテーマになっているのだと思った。 一言で言ってしまう必要はないし、...

体から植物を発芽させ、森をあふれさせる妻と、 それを題材にして物語を書く小説家の話。 一見するとファンタジーのようだけれど、実際には、男性性と女性性とか、社会性とエゴとか、芸術家の業だとか、リアリティのある問題がテーマになっているのだと思った。 一言で言ってしまう必要はないし、そうすべきでもないのだけれど、 これは女性による「裏切りと復讐」の物語なのではないだろうか。 奪われ続けてきた女は、男の決定的な裏切りを受けて、世界を拒絶して森になった。 だから彼女の森は近寄り難く、おぞましく、恐るべきものとして描かれている。 対して、最後に現れるもう一つの森は、美しく、魅惑的で、まるで深入りさせるために作られたみたいに思える。 これはきっと、今まで本当の意味では全てを曝け出していなかった小説家が、漸く自分を直視して、その奥に踏み込もうとしたという、 その「無意識」の寓意なのだろう。 女はこうして、復讐を果たし、夫を奪う側に回った。 ただ立場が入れ替わっただけのように思えるけれど、それだけではない。

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2019/09/14

作家の妻が森になる。それはあり得ないことなんだけどこの作家の前では違和感なく納得させられる。遅れてやってきた反抗期に似ているようだが、全く違う。今までのいろんな不満が発芽して大きく育ったような感じ!

Posted byブクログ

2019/09/08

作家夫婦とそれを取り巻く人のオムニバス形式の話。 彩瀬さんは作品によってカラーが変わるからすごいなと思いつつ。入り口は読みやすいのに段々と難解になってくる。ファンタジー?いやいや私的には後半は完全にホラーでした。

Posted byブクログ

2019/09/07

初出 2019年「文藝」 妻との恋愛と性を描いて売れた作家埜渡の妻流生が大量の草木の種を食べて、からだ中から発芽して2回が密林化するが、埜渡は妻がいなくなってほっとし、担当編集者は冷静に対処して、作家に現状を題材に作品を書かせる。 担当編集者もその後任もそれぞれ配偶者との考えの...

初出 2019年「文藝」 妻との恋愛と性を描いて売れた作家埜渡の妻流生が大量の草木の種を食べて、からだ中から発芽して2回が密林化するが、埜渡は妻がいなくなってほっとし、担当編集者は冷静に対処して、作家に現状を題材に作品を書かせる。 担当編集者もその後任もそれぞれ配偶者との考えのすれ違いに戸惑い、埜渡の小説講座の受講生である不倫相手も埜渡とのすれ違いに苦しむ。 最後の章で、久しぶりに埜渡が流生のいる2階に行って話し合う。言葉巧みで主導権を握る夫が自分を理解しないことに怒り悲しんで流生は植物化していくことが分かるのだが、男性作家が描く都合のいい女性像への(たぶん作者の)痛烈な批判も展開される。それにしても、最後のページの結末には驚かされる。

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2019/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトル通り、森があふれていくお話。悲しいなぁと思う所多々。これが男女の違いなのか、と思う所もあり。愛はあるのに噛み合わない、そのもどかしさが溢れていくようでした。

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2019/08/27

あぁ。よかった。 彩瀬まるさん、デビュー作から大好きですが、今回のはなお秀逸。センスが爆発。。 妻を題材にして書き続けた小説家。不倫を疑ったその妻がある日発芽した。 もう、発芽って笑。 そして女は森となる。 森となった女の周りの視点で進む連作短編みたいな、章ごとに視点が変わるので...

あぁ。よかった。 彩瀬まるさん、デビュー作から大好きですが、今回のはなお秀逸。センスが爆発。。 妻を題材にして書き続けた小説家。不倫を疑ったその妻がある日発芽した。 もう、発芽って笑。 そして女は森となる。 森となった女の周りの視点で進む連作短編みたいな、章ごとに視点が変わるのですが、ギリギリ狂気なラインが絶妙で好き。

Posted byブクログ

2019/08/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作家である埜渡徹也の妻・琉生がある日植物の種を大量に飲み込んで発芽してしまう。埜渡は妻を治療することもなく、発芽していき、変化していく姿を観察しながらそれを題材に小説を執筆する。物語の視点は埜渡の担当編集者から埜渡の不倫相手、新しい担当、埜渡自身、そして最後に琉生へと移る。 それぞれが抱えている葛藤や問題は異なるが、共通して世間に対する自分の役割に疑問を感じたり、違和感を自覚することである。優秀な担当編集者、理想の妻や母親など、今までの当たり前が瓦解して本当の自分が分からなくなる。特に互いの性に対する男女の眼差しが取り上げられていて、今どきのテーマだなぁ…としみじみ。体から植物が生えるファンタジー要素は相変わらず彩瀬さんらしいが、『くちなし』よりも社会性が強い作品のように思えた。そしてその現実とファンタジーという設定上の乖離がありながらも、全く破綻していなくてむしろ現実味があるところがすごい。 琉生は寝室から徐々に森の範囲を広げ、次第に埜渡家の隣の空き地にまで届く。各章の語り手たちは琉生から生まれた森に対峙し、それをきっかけに自分の本当の姿(本能?)を覗き見ることになる。そういう意味では、森は本能を表しているのかな?と。 そして何より装丁が美しい~!

Posted byブクログ