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森があふれる の商品レビュー

3.3

57件のお客様レビュー

  1. 5つ

    6

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

    26

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    1

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2021/01/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作家の妻が発芽し、森になった。 不思議なシチュエーションを背景に、夫と通じ合えない女性の気持ち、女性が女性の役割を引き受けさせられている/意識せずに引き受けている状況を丁寧に描き、その理由を解き明かしていく。 夫と接している限りなぜかズレていく妻の主張。ようやく反逆を起したが、やはり夫を愛する妻が進んだ先は。 女性の不公平だと思う気持ち、女性が性的役割に辟易するいろいろな瞬間は、論理的に説明しようとするとなぜか男に「バカバカしい」「細かいことをゴチャゴチャと」と言われ、ついには「理屈ばかりで魅力のかけらもない女」と評価されがちだ。 作者はそんな現実をすくい取り、作中の妻はどうにかしようと進んでいく。男が女に抱く幻想、わかりあえなさといったことが如実に描き出される。 フェミニズムという言葉を使うと作者が丁寧にじっくり突き詰めていく過程が先入観で汚れてしまうので、使いたくない。 作者はこの問題をどう解決すればいいか、考えながら描いた作品という気がした。 そのためか、やや問題が消化できていないというか、突き抜け感なく終わったのが残念。終盤、映画や小説はもっと女性中心の物語を扱うべき…と夫と議論するあたりなど、そのとおりだと思うものの、そこを超えて欲しかった。 全体としては面白かった。読みやすく感じのいい文章で、妻が魅力的だった。

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2020/12/02

綾瀬まるさんは3冊目か。面白くないわけではないのだが、あまり印象に残っていない気がする。 この本はなかなか奇天烈な設定。作家である主人公の妻が発芽するのである。そして関わりのある人達で視点が変わる構成。うーん、なかなか謎多き物語。妻が変容するという点で吉村萬壱さんを思い出す。 ...

綾瀬まるさんは3冊目か。面白くないわけではないのだが、あまり印象に残っていない気がする。 この本はなかなか奇天烈な設定。作家である主人公の妻が発芽するのである。そして関わりのある人達で視点が変わる構成。うーん、なかなか謎多き物語。妻が変容するという点で吉村萬壱さんを思い出す。 まぁとにかく、私の理解の範疇をはみ出していたのは間違いない。過去読んだ2作はまだ楽しめたが、今作は何をどう解釈していいのやら。不気味で不穏な物語だった。しかし、何故か魅力があるのは否定できない。他の作品も予約してあるのだ。

Posted byブクログ

2020/10/20

面白いとか面白くないとかよりも、この世界に浸りたいか、この狂気に逃げ出したいか、そんな評価の方が似合っている気がした。

Posted byブクログ

2020/07/10

作家の妻の身体から植物が生えてくる様子や、あっけらかんとした態度を取る妻にゾワゾワした。 作家の妻の異常な状態を見て見ぬふりをするか上司に伝えるか葛藤する編集者の様子が鬼気迫っていて怖面白かった。

Posted byブクログ

2020/06/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作家の妻が食っていたのは、ナッツと思ったら、庭に植えようとしていた植物の種でした。そして、彼女は体から発芽し家の2階が森になったのです。 物語のはじまりは幻想小説…でも、実は男には非常に耳の痛い女性の生き方の物語なのである。 物語の後半、小説家と森になった妻がお互いの存在意義をかけて対話をするのだが、それがまるでZガンダムの戦闘シーンでコクピット同士を通じて対話するニュータイプパイロットの様相なのである。 小説家が暴力で解決しかけるシーン、これは非常に耳が痛い。ここを責められたら俺も「ごめん、俺もや」って言わざるを得ない。 ジェンダーの問題、男女差別の意識の問題。社会的に強い側が無意識に弱者を傷つける行為…。せめて自分は一つずつでもこういうことから離れていこうと、啓も受けた作品だった。

Posted byブクログ

2020/06/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作家である夫が横恋慕した。 ショックにより森になった妻。 その森は10畳の部屋いっぱいに広がり、窓から外の雑木林へとつながるほど繁る。 言葉に力を持つのは夫。 その言葉は増殖し妻を諭す。 妻は、夫と話す度に、会話が意図しない方へ逸れると感じている。 男女関係と本を書くことの深遠を、「森」のイメージに集約させ、 じっとりと静かで優しい潤いに満ちた作品。 皮膚感を覚える作品だ。 首筋から脇腹に木の芽が吹く場面、私の肌が粟立った。 終盤、なんとなく『不思議の国のアリス』の世界。 夢なのか無意識なのか現実なのか境界がぼやけていて、読んでいてうたたねをしている心地良さを味わえた。 彩瀬まるさん…性差をかなり意識している作家さんでは? 他の作品も読んでみたい。

Posted byブクログ

2020/04/24

後任編集・白崎の件が一番共感できたけど、ジェンダー論とか言い出すわけではないけれど、性差はどうしたってあるわけで、生物学的に平等・公平ではないものを無理に同じにしようとするから歪みやひずみが生まれてしまうのではないだろうか。 意識して作れる森ならきれいにできそうだけど、無意識をた...

後任編集・白崎の件が一番共感できたけど、ジェンダー論とか言い出すわけではないけれど、性差はどうしたってあるわけで、生物学的に平等・公平ではないものを無理に同じにしようとするから歪みやひずみが生まれてしまうのではないだろうか。 意識して作れる森ならきれいにできそうだけど、無意識をただ反映してできたものが藪みたいなものだったらすごくショックだなぁ。

Posted byブクログ

2020/04/16

すごく幻想的なのにメッセージの棘が鋭利なファンタジー奇譚。綾瀬さんのユニークな感性と力強い筆致が、これでもかと降り注ぐ。 ゆっくり読んでいこうとしていたのに、あっという間に読み切ってしまった。 男と女の溝って最近では無くしていこうという動きが大きいけれど、そもそもこれほどまで...

すごく幻想的なのにメッセージの棘が鋭利なファンタジー奇譚。綾瀬さんのユニークな感性と力強い筆致が、これでもかと降り注ぐ。 ゆっくり読んでいこうとしていたのに、あっという間に読み切ってしまった。 男と女の溝って最近では無くしていこうという動きが大きいけれど、そもそもこれほどまでに分かり合えないものなんだよなとしみじみ。 埜渡先生の無自覚なモラハラが見ていて辛い。 でも琉生のあまりにも無防備な無知さにもなんだか 眉をひそめてしまうものがあった。 男と女はお互いが全く違う生き物だからこそ 永遠に向き合わなければいけなくて、 それが誰にとっても容易かというとそうでもない訳で。 「男らしさでも女らしさでもない部分で、人を愛するとはなんだろう。」 作中のこの一言が、読了後も ずっと胸に引っかかる。

Posted byブクログ

2020/03/11

ポップな色合いの可愛い表紙なんだけど、可愛い話じゃないんですよ。 この人はもっと書ける人のように思うんだが。

Posted byブクログ

2020/02/06

ファンタジーなのか現実なのか分からないほど、リアルで生々しい恋愛を見せられたようだ。 最後の展開には少しニヤっとした。

Posted byブクログ